2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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長谷川敦弥氏(以下、長谷川):こんにちは。LITALICOの長谷川と申します。
藤田晋氏(以下、藤田):サイバーエージェントの藤田です。よろしくお願いします。
長谷川:今回は「サイバーエージェントの今」ということで、サイバーエージェントさんの最新の状況について私のほうからインタビューさせていただきたいと思います。
まず僕自身、ウチの会社の事業としては障害者の就労支援とかからスタートして、今は発達障害の子どもたち向けに教育を提供しています。特に最近注力してるのがものづくりの教育で、発達障害の子どもたちがプログラミングに取り組むというようなところを展開している会社です。
教育をやっているという流れもあって、実は半年くらい前に「藤田さんの幼少期はどんな環境で育ったのか」というのをインタビューさせていただいて。その節はどうもありがとうございました。
藤田:そうですね。今まで質問されたことがないことも、結構インタビューしていただきましたね。何でしたっけ。小学校時代に、習字を習っていたとか。
長谷川:結構いろんな習い事をされていたんですよね。あと、将棋がすごく強かったとか。
藤田:話しましたね。今は麻雀ですけどね、私がやってるのは。
長谷川:当時は「ケンイチくん」って呼ばれてたんですよね、確か。
藤田:福井県大会で優勝したんで「県一くん」って呼ばれてました。
長谷川:そういうインタビューをさせていただいたところもあって、今回も私のほうがサイバーエージェントさんの今についてインタビューさせていただきたいと思います。今年の状況でいくと、たぶん2年前から「スマホにシフトする」ということをブログとかでもかなり大々的に告知されて、やってこられたと思うんですね。
2年前から(スマートフォン分野への投資が)だいたい80億円くらいですかね。利益が順調に……前年が170億円くらいの営業利益であったところを、翌年たぶん100億円まで下がる。
藤田:去年(2013年度)は営業利益を100億しか出さないと決めて、それ以外は全部スマホ事業への投資に回そうという感じでした。
長谷川:利益的には、初めて減益って形になったんですか?
藤田:初めてではないんですけど、増益にできるような状況だったので。先行投資をしようという考え方でした。
長谷川:なるほど。80億円って大胆ですね。
藤田:そうですね。でも、ちょっとスマホの大きな事業を買収しようと思ったら何百億円、下手すれば1000億円以上で買ったりする風潮があるくらいですから、一気にそれくらい投資するのは安いものだと思います。
長谷川:2年間でだいたいどれくらいのサービスを作られたんですか?
藤田:「100サービス作る」と言って本当に100以上作りましたからね。それはゲーム、コミュニティなどが中心ですけど。
長谷川:実際に2年間経って、今年はだいたい結果が出てきたと思うんですけど、手応えとしてはどんな感じですか。
藤田:今年(2014年度)は200億円以上の利益が出ましたので、先行投資としては成功でしたね。
長谷川:引き続き、投資というのは継続されている……?
藤田:今はもう収穫期に入ってますけど、先行投資というか新規事業は相変わらず注力しています。
長谷川:今年のもうひとつのトピックとして、東証一部に市場を変更されたのがあったと思うんですけど、これまでマザーズのほうにいた理由と、このタイミングで一部に変更された理由というのを教えていただいてもいいですか。
藤田:マザーズでは時価総額が首位だった時期もあったので、東証一部で埋もれるよりは、マザーズで目立ってるほうがいいんじゃないかというのもありましたね。
あと、マザーズがアメリカのNASDAQみたいにIT企業の集まるような市場になればいいと思ってたのですが、東証はそういう方針ではなくて「通過市場」という指針を出したので。それに、マザーズでは常に売買代金も首位でだったのですが、最近はバイオやロボットなどの会社が目立ってきて。
長谷川:ああ、出てきましたね。
藤田:「サイバー」といえばサイバーダインを連想する人もいるくらいで(笑)
長谷川:それが実は大きかった(笑)。
藤田:それで寂しくなって、「マザーズを卒業しようか」みたいな感じになったっていうのもあるんですけど(笑)。
長谷川:議論のきっかけがそこだったんですか(笑)。
藤田:そういうのもある。
長谷川:なるほど。何年か前にも、マザーズから東証一部という議論は社内的にはあったんですか。
藤田:ほとんどないですね。正直言って、IPOするのはかなりインパクトがあるじゃないですか。社外に対しても(あるし)、社内にもあるんですけど、マザーズから一部に行くというのは、何事もなかったように毎日が過ぎていきますよ。別に株価も大きく変動するわけではないし、社内でも「東証一部です」「へー」みたいな感じで終わり(笑)。
長谷川:以外にあっさりしてたんですね(笑)。
藤田:あと、若い世代にとっては東証一部企業に勤めるステータスってちょっとなくなってきてますよね。
長谷川:みんな、そこにモチベーションはなかったんですね?
藤田:そうですね。
長谷川:実際に市場を変更されても、あんまり変化がないっていうのが現状……?
藤田:お祝いのお花をたくさんいただいて、初めて実感が湧きました(笑)。
長谷川:(笑)。
藤田:おかげさまで受付がお花畑みたいになりました。社内との温度差の違いはすごいなと思いましたけど。
長谷川:なるほど。2年前からスマホを勝負どころにするということで大胆な革新をされてきて、それからかなり成果に繋がってらっしゃると思うんですね。スマホにシフトしようとかゲームに注力しようって、業界の中でもここ2年くらいかなり各社さんが動かれたのかなと思うんですけど、最近ちょっと落ち着きつつあるのかなと思うんですね。
そういう状況も見ながら、サイバーエージェントさんとして今後は何に注力されていくのか。
藤田:落ち着きつつあるというか、やっぱりスマホが出てきたときとかソーシャルゲームが出てきたときみたいに「とりあえず早くやったほうがいい」っていう時期ではなくなってますよね。ひとつのサービスを作るのに、ゲームであれば1年くらい開発期間がかかって莫大な投資になるので。
ひとつのプロジェクトが30人とか50人とかになっちゃうから、失敗したらまたやればいいって感じではなくなってきてるんですよ。そうすると、資本力や組織力が必要になってくるので。それだけじゃないけど、スマホも徐々に組織力になってきてるという……まあ、残存者利益みたいなのが発生する時期にはどこかで差しかかってくると思ってますけど。
長谷川:なるほど。
藤田:我々はそれをちゃんと集中してやっていくのと、あと最近力を入れてる音楽や動画、そういったエンターテイメント分野を一生懸命やってます。
長谷川:あくまでそれはスマホっていう中での……。
藤田:もちろんスマホですね。音楽に関しても動画に関しても。動画再生が増えたっていうのは、やっぱりスマホ・タブレットが普及したことが直接の原因だし、若い子はほとんどスマホ経由で音楽を聞いていますから。スマホが音楽や動画を変えているのが間違いないので、そこはチャンスがあると思ってるんです。
長谷川:スマホの中で、引き続きそういったところに注力されると。他の会社さんはロボットとか遺伝子のほうをやられたりとか、ウェアラブルだとか、いろんなテーマが出てきつつあるんですけど、そういうあたりって藤田さんとしてはどう見られてらっしゃるのか。
藤田:一見、遺伝子とかロボットとかにしてもすごく有望そうに見えるんですけど、ネットが作り上げる市場の規模・収益性を考えると、明らかに効率が悪いというか、市場が育つまでかなり時間がかかるので。
そういう意味では、当社のミッション・ステートメントの中に、「インターネットから軸足をぶらさない」というのが書いてあるんですけど、インターネットから逃げないでやろうっていうのがまずありますよね。
長谷川:なるほど。
藤田:ただ、一生懸命成長の分野を探しても、今はちょっと見つけづらい状況であるのも確かなんですよ。そうすると、他の分野に目が行くんですよね。ネットで見つからなければ、ネットと連動したリアルとかに手を出し始めたり。そこに結構落とし穴があると思っているので、そうならないようにしています。
長谷川:そういう、注力分野をドーンと決めてドラスティックに革新をしていくという、大胆な決断がなかなかできない企業さんが多いと思ってるんですけど、そういう決断ができる経営者としての決断力であったりとか、それを受け入れてくれる社内の風土であったりとか、そのあたりって……今回もアメーバ事業部から社員の半分、800人くらいがスマホのほうに異動するっていうことでしたよね。
藤田:ドラスティックな決断ができるのは、私が創業者だから仕方ないかと社員が思ってくれてるところもあると思うんですよね。中長期にちゃんと組織を見てるし、短期的な成果だけで判断しているのではないというふうに。
もうひとつは組織を作る上で「会社が好きだ」という人間を集めてきたし、そうなるような組織づくりをしてきたので、この会社を良くするためなら喜んで協力しようという会社の風土があります。アメーバ事業部の構造改革時には、社員に対して私が直接説明する場を3回設けました。
長谷川:3回も説明してるんですね。
藤田:はい。(異動を)発表したら翌日の朝には全員集めて説明して、実際に動くときに説明し、最後に「これで頑張ろう」という決起会のようなものを開き、合計3回やりました。そういうときにはトップが逃げずに、目の前で「なぜその決断をしたのか」ということを丁寧に説明するっていうのが大事なことだと思うんですけど。
長谷川:なるほど。そういう意味じではとても丁寧ですね。事業部長とかに任せるって感じじゃなかったんですね。
藤田:やっぱりそれは私が出て行ってやらないと、納得しないと思いますからね。でも社員もすぐに協力してくれて、今は何事もなかったかのように新しい部署で頑張ってくれてるんで。「新しい組織でまた頑張ろう」という雰囲気になっています。
長谷川:そういう文化は強いですね。会社として。
藤田:そうですね。そういう意味では、先に良い人材を選んで、やることを決めるという考え方をしてるので、そこの違いはありますね。
長谷川:「何をやるか」っていうよりは「どの人とやるか」とか、会社が好きだから会社を良くすることに対しては柔軟でいられるっていうか。
藤田:ピボットしやすい組織ですよね。この後に出てくるスポットライトの柴田(陽)さんとかは「ピボットはしない」と。事業も「事業ベースで人を集める」「チームベースでやるんじゃない」ってはっきり言い切ってるんで、それはそれですごく一貫性のある組織のグランドデザインだと思うんです。
我々は元々ピボットを前提として、どのような市場環境にあれど会社を成長させると言っているので、それは元々の考え方の違いなんですけど。必ずしも我々のやり方が正しいとは言えないですが、サイバーエージェントの組織の中では一貫性がある。
長谷川:広告の事業からスタートしていって、メディアに移って、今回メディアからスマホにという流れの中で、広告代理店部門の方ってどんなモチベーションで今やられてるんですか。
藤田:それは心配になって焦るんじゃないですか。不思議なことに「これはこの部署にとって危機かもしれない」と思うと、みんな一致団結して頑張るんですよ。その前のスマホシフトのときに、(広告部門から)優秀な人材を200人近くスマホ事業にガサッと異動させたんです。
「人を減らす代わりに、そんなに成長させなくても維持してくれたら十分だから、何とか耐えてくれ」みたいな感じで言ったら、その部署は逆にグンと伸ばしてきたんですよ。
長谷川:へえ~。
藤田:組織を引き締めるときっていうのは、意外とそういうのが効きますよね。
長谷川:でも、そういうの嬉しいですよね。
藤田:どの会社でも「この人が辞めたらまずい」みたいな社員が辞めることってあるじゃないですか。ただ、意外となんとかなったりするんですよね。
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