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グリーの創業ストーリー(全2記事)

ベンチャー企業が化けるために必要な要素とは? グリー副会長が語る「人材・サービス・マインド」

今やベンチャー界の看板とも呼ばれるグリー。いちベンチャーだった彼らは、なぜ今の地位を築けたのでしょうか。同社を創業時から支える現副会長の山岸広太郎氏が、ベンチャー企業が化けるために必要な要素について人材・進出分野・社風の3つの観点から語りました。(IVS 2014 Fallより)

モバイルシフトに成功した秘訣

佐俣:今のグリーさんを見ると、すごく大きな会社になっているというか、ベンチャーの中でも看板のような企業ですけど。そのしんどい時期、今思うと何でティッピングポイントを越えられたのかっていうのは、どう思われますか?

山岸:うーん……まずひとつは、そうは言っても組織が強かったかなと思っていて。あの頃勝ち組かどうか分からないグリーに来てくれた人たちって、もちろん誘ってきてもらったっていうのもあるんですけど、一方で給料も良くないし、何で来るの? みたいなところで、「何か面白いんじゃないの?」っていう風に思っていて。

「自分が入ったら、なんかこの会社変えられるんじゃない?」ってくらい、自分にわりと自信がある人たちが集まってたと思うんですよね。うまくいってなくてもみんなが、別に嬉しくはないんだけど、ダメだ、逃げ出すみたいな感じじゃなくて、「どうやったらうまくいくんだっけ」ってことしか考えない人たちが多かったかな、っていうのがひとつ。

あとはやっぱり、進んだ方向が正しかったというか、PCじゃなくてこれからモバイルなんじゃないかっていうこと。モバイルの中でやるんだったら、キャリアさんと組んだほうがいいんじゃないか、みたいな。そこらへんがハマったっていうのもすごく良かったかなと思っていて。

モバイルに行くときに、「よくわからないけど自分たちだけでやるんだ」って思わずに、自分たちだけだとモバイルやったことないし、どうしたらいいかな、みたいなところをちゃんと考えたのが良かったかな。

っていうのと、その時にモノづくりのやり方を変えたんですね。それまでは、自分たちはネットのことをよくわかってるから面白いもの作れる、みたいな感じだったんですけど、モバイルはあんまりみんなユーザーじゃなかったんで。ガラケーの勝手サイトとか、中高生が使うもので、社会人はPCで使ってたので。逆にへビーユーザーじゃなくてモバイルをわからな過ぎるから、ユーザーの声を聞こう、みたいになって。

これまではプロダクトアウト型だったのを、マーケットインっていうか、98%男子みたいな会社で女子大生の話を聞いてみるとか。

佐俣:自分たちがユーザーではないサービスを作るほうに変わっていったってことですよね。

山岸:そうですね。ちゃんと、お客さんってどういう人なんだろうとか、どういうものが受けるんだろうとか、そういう自分たちが欲しいものではなくて、世の中から求められるものを作る、みたいに発想を変えたっていうのがあって。違う場所に進んだっていうのと、その時に戦い方を変えたっていうのがすごく良かったのかなと思います。

仲間集めで重要なのは「同質性」

佐俣:今、僕もベンチャーキャピタルをやっているので、たくさんのベンチャーと一緒に戦っているんですけど、正直基本的にベンチャーって苦しい戦いで、やっぱり人もいないし、お金もないし、サービス始めていても競合が一気に伸びてて苦しいです、みたいなところが多いじゃないですか。

そういう会社は、グリーさんを見て、どうやって超えたんだろうとか、そういう時どう踏ん張ればいいんだろうとか思うと思うんですけど、まず人を頑張れば…。

山岸:まずチームが大事で。よく言う「どこへ行くかじゃなくて、誰をバスに乗せるかだ」っていう話で。行き先変わるんで、基本的に。

佐俣:すごいなと思うんですけど、お話を聞いてると「うどん食べてやろうって言った」とか、「近くにいた必殺仕事人を呼んだら、それが藤本さんだった」とか、何でそういう人がうまく集まれたんだと思いますか?

山岸:多分、100人ぐらいまでの頃って、ここは自分たちの会社だって意識が強く持てるような(人が良い)。田中も別に実績あるわけじゃないし。でも面白いこと言ってて、僕もずっと思ってたんですけど、お互いに「こいつは自分と同じくらいは頑張るんじゃないか」みたいな、そういう感じの集まりなんですよね。

藤本もスゴいっちゃスゴいんだけど、超有名人なわけじゃないですし、知る人ぞ知るだし。年齢的にも僕らの2個下なのかな。なんで、ほとんど自分たちと同世代からちょっと下くらいの人たちで集まって始めたんですけど、突出したカリスマみたいなのがいない分、みんな自分が頑張らなきゃみたいに思えて、そういう感じの会社になってこられたのかなと思います。

僕もグリーをやる前に何社か声が掛かって「一緒に会社やらない?」って言われたことあったんですけど、大体自分より一回りか二回り上の人が社長で、ほかにもいろんなメンバーがいてとか、「One of themになるな、これは」っていう感じのところだったんですよね。自分の能力だけじゃない変数が多過ぎ、みたいに思ったのもひとつ、踏み切れなかったのもあるのかなと。

佐俣:当時としては、すごい人をとるというよりは、自分も頑張るし、自分と同じくらい頑張れるという、比較的世代の近い仲間を。

山岸:そうですね、でも同世代の中で、なんか多分ちゃんと信頼できる人を集めたっていうのがあったかなと思いますね。

佐俣:結果的にそれが良かった。

山岸:そう思いますね。主要メンバーは今もいる人が多いし。

佐俣:そうですね、皆さん今も会社に残られてますしね。

山岸:はい。それは、いろんな意味でライフステージも近いから。いっぱい働いても平気とか(笑)。今になると多様性が大事になってくるんで、いろんな人の働きやすさを考慮しないといけないですけど、最初の2、3年っていうのはモノカルチャーで、ガーッと一体感を持ってやっていたので、スキルセットはいろいろなんですけど、割と同質。

佐俣:同質性みたいなのを重視した、と。

山岸:そうですね。

佐俣:じゃあ、割と今もがいてる最中の3人とか5人とかの会社でも、すごい無理して上の人をとって起死回生の一手とかいうよりは、同質性の中で待ったほうがいいなっていう感じですか。

山岸:そうですね、やっぱり自分と同じくらいやれるって相手を見つけられるかっていうのと、これはよく言ってるんですけど、やっぱり技術のところが大事なんで、最初に(CTOの)藤本が来たっていうのはすごく良かったと思うんですよね。

佐俣:初期に藤本さんが来られたっていうのが大きいですよね。

山岸:そうですね。

佐俣:でも、最初は誰がすごいのかって目利きが難しいと思うんですけど。

山岸:そういう意味では、ネットの会社をやるんだったら、社長やほかのメンバーもちょっと技術わかってないと。僕も昔はプログラムやってた……っていうと、社内では「嘘こけ」みたいなかんじですけど(笑)、始めた頃は「俺もわかる」と思ってたんで、そうすると「このくらいすごい」っていうのは、それはそれでわかりますよね。自分よりすごいから、みたいな。

まったくわからないと、しょぼい人でもすごいのかなーみたいになっちゃうから、目利きできないじゃないですか。そこがやっぱり(大事)。そうは言っても、インターネットのサービスのプログラミングってめちゃめちゃ難しいわけじゃないんで、普通のレベルにはすぐいくと思うんですよね。それを理解した上で、普通じゃないっていうのはこういうことなんだ、って。

佐俣:自分がいわゆる普通のレベルまで頑張って、どう考えても自分よりすごいなっていうレベルを見分けるということですね。

小さくまとまらないためにとった手段

山岸:あとは、メンバーも大事なんですけど、僕らが最初にいた環境っていうのは、競争がそんなにない、もしくは競争をブロックするようなところからスタートするみたいな。KDDIさんがいることによって、集客っていう意味ではそこで下駄履けたっていうのはすごい大きかったと思います。

けど、もう一方でモバイルのSNSっていうのは、mixiしかなかったけど、mixiもモバイルよりはPCもあるし、っていうところがあったと思うんで。ソーシャルゲームを始めたときは本当に競合がない状態で始めたので、まずそういう競合がないところに行くって、ベンチャーとしては大事かなと。

平場で勝負すると、物量で負けることもあるじゃないですか。だから、いかにそういう物量で負けないように軸をずらすか、そういうことするのも大事かなと思いますね。

佐俣:僕はその当時ユーザーだったので、その感覚からすると、一気に方向性を振りきりましたよね。そういう意思決定をベンチャーがするのは怖いじゃないですか。既存のユーザーの満足よりも新しいほうへ全力へ踏み切るみたいな。あれはどういう考えでやったんですか?

山岸:やっぱり社内でもね……例えば、アバター強制化とか事件がいくつかあるんですけど(笑)、それで炎上するんですけど。社員もお客さんから文句言われたくないから、いろいろ思いますよね。でも、結局その会社が何を目指しているのかっていうことだと思うんで、この10万人のサービスで終わるの? ってことだと思うんですよね。

佐俣:当時、山岸さんとか田中さんが、社内に言ったということですか?

山岸:ここまでの言い方はしなかったですね。でもどっちかっていうと、社内のコンセンサスとして、小さくまとまったサービスをやりたくてここに来てるんじゃなくて、世の中に自分たちの物を問いたいという気持ちがあってやってるんだ、っていうのはあったので。

退路を断つというか、このままmixiと同じようなサービスを作ってもしょうがないよねっていうところはあったので、まぁいろいろ言われるんだけど、それはそれで乗り越えようと。もちろん、そこを言われないでやる方法もあったかもしれないけど、それは(僕らのやり方が)不器用だったかもしれないですけど、結果的に進むべき道は正しかったかな、と。

それで終わってもいいと思うのか。ベンチャーなんで、勝負しないとしょうがないと思うんですよね。

佐俣:そこが自然に意思決定を統一できているのがすごいなと。怖いじゃないですか。自然に社員の中でそれが出来てたってことですよね。

山岸:すごくいい環境をあえて辞めてきている人が多かったので、中途半端にまとまることに対する恐れのほうが(大きかった)。それなら潰してやめたほうがいいっていうか。

佐俣:出来る人がいっぱいいるから、それなら元の仕事に戻ったほうがいいよっていう。

山岸:中途半端なことをやるなら、っていう人が多かったから、やっぱり退路がなかったんじゃないんですかね。

佐俣:考え続けていったのが、ある意味ティッピングポイントを越えられたっていう(ポイントですかね)。

山岸:そうですね。まぁ運も良かったとか、いろいろあると思いますけどね、そこは。

人に理解されない分野こそチャンス

佐俣:この動画見ている人は多分、グリーさんみたいになりたい、大きくなって、インターネットで世の中を変えるようなことを、大きな影響力を持ってやりたいっていう起業家予備軍の人がいっぱいいると思います。そういう方にアドバイスの言葉を頂きたいんですけど。

山岸:最近、起業家とか新しくサービス立ち上げた人と話すと「世界一になりたい」みたいなことを言っていて。僕なんかは始めた時にそんなこと思ってなかったし、田中も世界一とかを思ってたのかよくわからないですけど、ただ漠然と「このインターネットの歴史に名前を残したい」みたいなのはすごくあったかなと思うんですよね。

だから、そういう志みたいなもの、野心とか、そういうのがないとしょうがないかなと。でも、最近の人は、言ってみているだけかもしれないですけど、そういうのがある人多いと思うんで、そこはいいかな。

あとは、チーム作りとか、エグゼキューションがちゃんと出来るのかなっていうところに尽きるのかなと思うんですけど。

あとは、(メルカリの)山田進太郎は覚えてないって言ってるんですけど、うちの会社が「釣りスタ」っていう最初のソーシャルゲームを始めた時に、「グリーって最近釣りのゲームとかやって、終わってますね」みたいなことを進太郎が僕に言ったことがあったんですよ。久しぶりに飲み会に行ったら進太郎がいて。

みんな、最初はそういう感じなんですよね。「意味あるの、これ?」みたいな。そういうほうが僕はチャンスがあるんじゃないかと思っていて。みんな「この分野来るでしょ」と思ってる時って競争激しいし、ベンチャーだったら戦いにくいですよね。

ソーシャルゲームだって最初に始めた会社が絶対有利だったと思うし、人が面白いと思う前に、自分たちで「これ、来るんじゃねーの」と思うところにベットするっていうのがすごい大事なんじゃないかな。

佐俣:それ面白いですね。例えば自分の友達とか親とかに話して、「何それ」っていうのはチャンスだっていう。

山岸:自分でもちろん(これから来るっていう)仮説があるっていうのが大事なんですけど、そういう分野のほうがみんなしばらく気付かないんで、自分たちの競争優位を積み上げていけますよね。

佐俣:それは本当にそうかもしれないですよね。そういう意味では、グリーさんもそういう(批判や評価)をいっぱい受けながらもやっていって、誰も攻めていないところを開拓していったってことですよね。

山岸:そうですね。やっぱりPC的なベンチャーが多い時にモバイル行ったっていうのも「えっ」って感じだったと思うし、アバターも「えっ」みたいな。「えっ」っていうところの中を突き進んできたかな。

佐俣:「えっ」っていうところを突き進め! っていうことですね。

山岸:そうですね。

佐俣:ありがとうございます。今日のグリーの創業ストーリーというか、こんな感じでやってきたっていうのを、この動画を見て「グリーさんみたいになりたくて起業しました」という人が一人でも出るとうれしいなと思っております。

山岸:いいですね、うれしいですね。

佐俣:今日はどうもありがとうございました。

山岸:ありがとうございました。

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