CLOSE

パネルディスカッション(全3記事)

投資の基準は「2度目に会った時に成長している人」 エンジェル投資家たちが明かす、伸びる起業家の見分け方

East Ventures とYJキャピタルが共同運営するアクセラレータープログラム「Code Republic」にて、 日本を代表するエンジェル投資家3名が一堂に会するトークイベント「Angels’ Night」が開催されました。登壇したのは、株式会社フリークアウト・ホールディングスの佐藤祐介氏と株式会社クラウドワークスCOOの成田修造氏。モデレーターにイーストベンチャーズの衛藤バタラ氏とYJキャピタルの堀新一郎氏を迎え、エンジェル投資の知られざる裏側について語り尽くします。

本業の傍ら複数の企業に投資

堀新一郎氏(以下、堀):先ほど、本日のイベントの登壇者の顔合わせで初めて知ったんですけど、成田さんと佐藤さん、普段は面識があまりなかったということで(笑)。ほぼ初なんですが、仲良く1時間やっていきたいと思います。よろしくお願いします。

それではまず、2人のことを知らないという人、正直に手を挙げてください。

(会場挙手)

ほぼいない? でも、ちょっといましたね。1名いました。ということで、一応お決まりですけども自己紹介を、成田さんからお願いします。

成田修造氏(以下、成田):はい。クラウドワークスの成田と言います。初めまして。

僕自身は創業者ではなくて、6年前にクラウドワークスに入りました。創業者と、あと取締役が1名いるタイミングで入って、そこから6年間ずっと経営に携わってるという感じです。

クラウドワークスは3年前に上場しまして、そこから副社長になって。今は全体のナンバー2という立ち位置で、経営に携わっています。エンジェル投資は最近始めまして、今数社投資してます。もう1社決まっていて、これから投資も増やしていこうかな、と思っていますので何かお役に立てたらと思います。今日はよろしくお願いします。

:ありがとうございます。続いて佐藤さんお願いします。

佐藤裕介氏(以下、佐藤):フリークアウトの佐藤と申します。

経営しているフリークアウトがこの9月末で丸7年を迎えました。個人での投資は今40社ぐらいですかね。2012年ぐらいからやっています。あとは「TOKYO FOUNDERS FUND」というファンドを友達8人といっしょにやってます。

ファンドからは海外のスタートアップ、30社以上に出資をしている、って感じです。今日はよろしくお願いします。

:ありがとうございます。

(会場拍手)

最低で200万円ほど出資

:さっそくですが、お2人はだいたい1社にいくらぐらい出資されるんですか?

佐藤:僕は、この前はじめてちゃんとエクセルに書き出しました。

(一同笑)

もうだんだん覚えてられなくなってきて、平均が1,200万円ぐらいでした。高いところは1社あたり1億いかないぐらい、低いところで200万円ぐらいですかね。

:わかりました。では続いて成田さん。

成田:佐藤さんはほぼVCですね。

(一同笑)

僕は200万から、最大でも1,000万弱ぐらいがレンジですね。

:200万から1,000万。

成田:はい。ほとんどが最初に入るしかやらないようにして、300万ぐらいが普通のレンジですかね。

:お2人とも、ステージはとくに決まりがあるとか、最初しかやらないというお話をしていますが、どういう条件だと投資するんですか?

成田:基本はシードで、スタートアップのときに入るって感じです。数百万単位でやるのが普通かな、と思ってます。

衛藤バタラ氏(以下、衛藤):その数百万って、だいたい1人で出す場合が多いんですか? それとも何人かで?

成田:最近は若い起業家の資金調達能力もすごくて、エンジェル投資はだいたい5、6人で合計2,000万集めます、みたいな場合がほとんどじゃないですかね。だから1人で出すのはほぼないですね。友達と一緒に出します。知り合いの人ばっかりですね。5人、6人いて、あの人もこの人も知ってるという感じの投資家軍みたいな、そんな投資ですね。

Facebookの連絡で取引が始まるケースも

衛藤:バリュエーション(注:投資の価値計算や事業の経済性評価のこと)で言うと、どれぐらいのところが一番投資しやすい?

成田:1億から5億の間ぐらいだったら検討しやすいかなという感じですかね。

:佐藤さんは?

佐藤:そうですね、僕も基本的にはシードばっかりで。だいたい2億円未満の会社に投資をしています。フォローオンもやっていくスタイルです。

:なるほど。今の話の流れだと、どういう感じでアプローチするのが一番多いんですか?

成田:なにでいきます?

佐藤:エンジェル投資やってる知人だったり、VCだったら(佐俣)アンリが入るとか、East Ventures やスカイランドベンチャーズが入るタイミングで紹介いただくことが多くて、それがたぶん8割ぐらいです。

残りは、個別にきたメッセージに対応するケースと、あとは自分が連絡する。FacebookやTwitterで連絡して、会いましょう、みたいなのもありますね。

:へえ。自分からもいかれるんですね。

佐藤:自分からもいいなと思ったらいきます。別に投資にかかわらず、何かいろいろ聞きたいな、って思っていって、もし資金需要があれば、みたいな感じですけどね。

:広告の媒体というか、取引先にもなり得ますもんね。

佐藤:そうです。

(一同笑)

成田:伸びていれば(笑)。

佐藤:はい。

出資は個人以外に、会社としてする場合もある

:なるほど。成田さんはどうやって起業家と会うんですか?

成田:最近はほとんど紹介ですね。スカイランドやANRIさんとかに紹介いただいて、お会いする。あとはTwitter、Facebookで突然メッセージがくることもあり得ます。

一応今のところ、まだ僕は初心者なんで、ほぼ全部リプライして、ほぼ全員と会ってます。あとは、僕も1社だけ「POL」という理系学生とか研究者のためのデータベースとか、人材斡旋をやっている会社には個人的にアプローチしましたね。

その領域をやりたくて、この会社いいなと思ってアプローチして、「もし入れさせてもらえるなら入れてください」って言って投資した感じです。

だから事業内容がドンピシャで、会いたいなって思ったときはぜんぜん自分から行くのも、選択肢として持ってる感じですね。それが第1号だったので、そういう感じでやることもあります。

:ちなみに、クラウドワークスの吉田(浩一郎)さんからの紹介はあるんですか?

成田:吉田さんからの紹介は、僕もしないしむこうもしないですね(笑)。

:そうなんですね(笑)。

成田:お互い、ぜんぜん別ルートで投資してます。吉田も投資自体は結構やっているはずです。

:そうですよね。

成田:やってるはずで、会社として出すときもあるんですよ。だから会社として10社ぐらい出してるんですけど、それはお互い半々ぐらい持ち寄って出してます。自分が持ってきた案件と吉田が持ってきた案件でそれぞれ検討して会社として投資する、みたいな。

会社として出しましょうという時は紹介し合うんですけど、個人として出すときはぜんぜん関わらずにやってます(笑)。

短期間で成長できる若手を応援したい

:同じ質問です。本田さんと連携することはあるんですか?

佐藤:僕は本田とは、数社いっしょにやってますね。

:なにか決めている投資領域とかあるんですか? 先ほどポルの話もありましたけど。

成田:最近は投資領域は決めてないですね。リリースで出てちょっといいなと思ったら、直接アプローチするっていうケースはありますけど、特別これって決めてるわけではないです。

どちらかと言うと、若くて、苦しむポイントとか、自分が1回目に起業したときに近い感覚を持って、これから伸ばすために必要なことがわからず、僕がアドバイスできそうな会社、かつ、けっこうちゃんと進化してくれそうな人。

例えば話していて、あるタイミングごとに成長してくれそうな感覚を持てる人に(値を)張るって感じでやってますかね。あんまり事業領域は決めてないです。

:ちなみに、すごく僕も知りたいんですけど、成長してくれそうな人ってどうやって決めるんですか?(笑)。

成田:2回目に会ったときに、すごい成長してる人とかいるんですよ。例えば……。

:1週間や2週間とかで?

成田:成長します。数回話したうえで投資した会社で「ワンダーナッツ」っていう会社があるんですけど、ワンダーナッツって本当に最初、ぜんぜんだめで。もうプランもなかったんですよ。

ただ、最初に話してブレストした2、3個のアイディアの事業計画やモックを速攻でつくってきたり。その1ヶ月後に会うと、ちゃんと融資で資金調達して生き延びていたり。なんかそういう、話したうえで必要なことをちゃんとやってるなあっていう若い世代は、けっこうこれからも進化してくれそうなので。そういうのに信頼してたりしますね。

:年齢って、やっぱりあるんですか?

成田:あるんじゃないですかね? 僕はほぼ若い世代、20代前半とか、ちょっといってても27、8ぐらいのメンバーにしか入れてないですね。僕自身が若いので、あまり年上の人とやるイメージが湧かないのもあるんですけど(笑)。

独自の観点を持っている人も投資対象

:なるほど。わかりました。佐藤さんは、領域はありますか?

佐藤:僕は、たぶん10社あると6社、7社ぐらいは自分でもう事前に、ある程度決めてるセクターで、いい感じにやってる人とかやりそうな人に投資をしてます。どれくらいだろうなあ、1割ぐらいはすっごい若手で、プロダクトもなにもないみたいな人たち。

残りの1割、2割ぐらいを、自分がまったく見通せてなかったところを見通してるというか、独自のビューを持ってる人。最近だと「Tastime」の根本(淳成)さんとか。これは、自分が見えてないなにかの可能性があると思って。

:なるほど(笑)。

佐藤:はい(笑)。別に厳密にやってないですけど、一応なんとなくのバランスを見ながら。delyがいいなと思ったのも、本当に成田さんがおっしゃってるように、1週間単位で成長していく姿が見えたので。堀江さんが、その業界とか市場について新しく発見したことが、どんどん増えていってたんですよね。別にそれ自体はあんまり、しょうがないことでもいいんです。

当時彼は、最初の事業でフードデリバリーをやってたので、「佐藤さん、今週はとうとう、汁物をこぼさずに持って行けるやり方を得ました!」みたいなことを言ってて。

(一同笑)

:そば屋の出前みたいな。

佐藤:そうそう(笑)。どうすればこぼれずに運べるのか、みたいな。

成田:そこ大事ですよね(笑)。

佐藤:そうそう。やっぱりそういうのを、毎日とか1週間ごとに積み重ねていってる人たちの、結局複利になっていくっていうか。それを1年続けていったときの差分が、めちゃくちゃ大きくなるので。それを嬉々として報告してくれるのは、やっぱり頼もしいなと思いましたけどね。

素直に喜べるほどの前向きさが起業家には必要

佐藤:はしゃげる人のほうがいいんですよ。ラーメンの汁こぼさないように運べるっていうのを、大きい声で言う人っていうのはやっぱり、なんか恥ずかしいじゃないですか。

でもベンチャーなんて嫌なことばっかり起きるんで、そういう素直さや喜びを炸裂させられる前向きさ。汁がこぼれないことを人の100倍喜べるぐらいの精神性を持ってるほうが、つらいときにもちますよね。

結局彼らも創業事業をクローズして、苦しい時期を乗り越えて成長していますが、そういう無邪気さがないとしんどいでしょうね

衛藤:あと、シード投資が多いと思うんですけど。なんだろう、最低限ここまでないと投資できないとか、プロトタイプだけでいいのか、チームがないと、トラクションがないとだめなのか。どこが1番最低限ですか?

佐藤:いやあ、あんまり決めてないですね。プロダクトがないパターンで投資することもぜんぜんありますし、社長しかいないときに投資するってこともありますね。とくに、そこで何かしらの足切りをしてるっていうのはないですかね。こだわりもそんなにないかも。

理解しにくいビジネスモデルには投資しづらい

成田:自分の場合は、チームがない、かつプランもない状態で相談にきた人がいたら、次にサービスを作れる体制になったらまた会おう、っていう感じでやってますね。

一応、最低限チームがないとけっこう苦しいかな、とは思ってるんで。2人、3人集められないってことは、やっぱりその人の能力不足だとも思ってます。まずはそれが第1関門にあって、じゃあその体制を作れたらもう1回会って、次はサービス作ってみようっていうのが第2関門にある。という感じで、ラインをつくって会ってます。

よほどすごい人、話してて「こいつはすげえな」みたいな人が突然現れたら、それはぜんぜんベットしちゃうかもしれないですけど。今のところはそんなルールでやっちゃってます。

:好きなビジネスモデルとか、あるんですか?

佐藤:とくにこだわりはないですが、シンプルな方がいいですよね。

成田:僕だと投資しにくい領域っていうか、相当な規模にならないと化けないtoCプラットフォームとかだとあまり投資できないかもです。ちょっとその、これはたぶん自分の要素かもしれないですね。ビジネスモデルがちょっとわかんないものは、自分としてはやっぱり出しにくい。

今の限られたお金のなかで言うと、もうちょっと違うところに出したいと思っちゃうタイプかな。かたいビジネスになっちゃうんで、そうするとそのぶんトップラインが読めちゃって爆発力はないのかなっていうのもあるので、今後はあえてバランスを外すやり方も考えつつ、今のところ、ほぼビジネスモデルがしっかりわかるやつに張ってます。

続きを読むには会員登録
(無料)が必要です。

会員登録していただくと、すべての記事が制限なく閲覧でき、
著者フォローや記事の保存機能など、便利な機能がご利用いただけます。

無料会員登録

会員の方はこちら

関連タグ:

この記事のスピーカー

同じログの記事

コミュニティ情報

Brand Topics

Brand Topics

  • なぜ大企業の優秀な人材が新規事業で成功できないのか? 守屋実氏が指摘する、新規事業が頓挫する組織構造

人気の記事

新着イベント

ログミーBusinessに
記事掲載しませんか?

イベント・インタビュー・対談 etc.

“編集しない編集”で、
スピーカーの「意図をそのまま」お届け!