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Fireside Chat「“モノを瞬時に現金化” 注目アプリ「CASH」、連続起業家の新たな挑戦」(全2記事)

16時間で3億6,000円分を現金化、そしてサービス一時停止… 連続起業家がCASHで挑む社会実験

「毎日、社会実験をやっている感覚なんです」ーー。東京・渋谷で開催するテックイベント「TechCrunch Tokyo 2017」に、「CASH」を運営するバンク代表・光本勇介氏が登壇しました。わずか16時間で総額3億6,000万円をキャッシュ化したことで話題になったCASH。連続起業家でもある光本氏が次の挑戦に「2次流通の市場」を選んだ理由はなんだったのでしょうか。CASHの今とこれからの展望などを語りました。

個人間カーシェアリング、STORES.jp、そしてCASHへ

岩本有平氏(以下、岩本):実は光本さんとは、前の企業をちょうど起業されたタイミングで、別のメディアだったんですが、お話を聞かせていただいて。

光本勇介氏(以下、光本):はい。

岩本:8年前?

光本:9年……。

岩本:9年くらい前に、カーシェアリングサービスをやっていたという。

光本:個人間のカーシェアリングサービスですね。

岩本:早すぎた。

光本:(笑)。

岩本:そのあと、先ほどの対談の「STORES.jp」の話があったりするんですけど。改めて今、バンクを立ち上げて、「CASH」のサービスをやられています。この後、詳細を光本さんから話していただきます。

今年ローンチしたプロダクトとして、TechCrunchでご紹介した中では、1番、2番じゃないかな? というくらい支持されています。

光本:光栄ですね。ありがとうございます(笑)。

岩本:賛否ともに(笑)。

光本:あ、賛否(笑)。

(一同笑)

岩本:とりあえず、CASHのご説明とを光本さんの自己紹介のところだけ。そして、改めていろいろ聞いていこうかな、と思います。

光本:はい。よろしくお願いします。

ユーザーへの性善説に基づいた現金化サービス

光本:株式会社バンクの代表をしております、光本勇介と申します。よろしくお願いします。

今、紹介していただたいたんですが、改めて自己紹介をさせていただきます。STORES.jpという誰でも簡単にオンラインストアを作れるサービスをもともと運営をしていたブラケットという会社の創業者です。

おかげさまでSTORES.jpは、今でも順調に推移しておりまして、100万店舗くらい運用させていただいています。これは5年前にリリースしたサービスになります。

これも先ほどご紹介いただきましたが、4年前にこの会社を「ZOZOTOWN」を運営するスタートトゥデイという会社に売却いたしました。

それで、グループ会社の社長として3年ほどずっと経営に携わり、ちょっと変わった経緯になるんですが、その後、1年前に私個人で、またその会社をスタートトゥデイから買い戻したという。売ったり買ったりをやったことがあります。

だから今もブラケットの経営では、肩書きは偉そうなんですけど会長というかたちで携わらせていただいています。今は、社長は一緒に会社を経営していた役員の塚原という女性と交代しています。

これを経て、今年2月に株式会社バンクという会社を立ち上げました。このバンクがどういったサービスを運営しているかというと、CASHというサービスです。本当にまだ2ヶ月くらいしか運営したことのないサービスなんです。

どんなサービスかというと「目の前にある、あらゆるモノを瞬間的に現金化」、キャッシュに変えてしまうアプリです。みなさんの周りにもいろんなアイテムがあると思うんですが、アプリを使ってパシャッと写真を撮ると「いくらですよー」と査定額が出てきて、それで「OK!」と受け入れるとその瞬間に振り込まれちゃう。

6月28日に一度サービスをリリースしたんですけど、私たちのはるかに想像を超えた反響をおかげさまでいただきまして。リリースから16時間で止めざるを得なかったというサービスとなります。

なんでこんなに話題にしていただいたかというと。アプリを通してモノを買い取らせていただいているのですが、通常はモノを受け取ってから現金を渡すことが当たり前です。その中で私たちは「その人はちゃんと取引をしてくれるだろう」とユーザーさんを完全に信じきって、モノをいただく前に先にお金を振り込む。

そういうアプリをリリースしたら、おかげさまでめちゃくちゃ反響をいただいて、使っていただいて。16時間で止めざるを得ない状況に至ってしまったのですが、(スライドを指して)次の朝からはこんな感じで。たった6人の小さいオフィスにトラック単位でモノが届きまくってしまった、という状況を経験いたしました。

そのときに思ったのは、私たちが思っていた以上に、この領域にものすごく需要と可能性があるなと。そう確信をしたので、どうにか体制を整えて、2ヶ月前に再開をしました。

身の回りのものを瞬時に現金化する目的

岩本:ありがとうございます。これ、16時間で3億6,000万円分のキャッシュが出ていった、支払われたということですけど……。

光本:はい(笑)。

岩本:笑って言える金額じゃないと思うんですけど(笑)。なんでこのサービスを、2度目のチャレンジで選ばれたんですか?

光本:前提として、「世の中にないサービスを作りたいな」というのがやっぱりあって。その中で私たちが一番興味があったのが、世の中の少額の資金ニーズなんですね。私たちのいう少額って1万円、2万円、3万円なんですけど。マスの観点で、少額の資金ニーズって潜在的にめちゃくちゃあるんじゃないかなと。

実際に少額を得るプロセスって、世の中にそれを満たすサービスはあるんですけど、けっこう面倒くさいし時間もかかる。その中でみんなは今お金がほしいわけじゃないですか。それを超スピーディにハードル低く、応えてあげるようなサービスを作りたかった。

ただ資金を提供するためには、なにかしらの取り引きが必要です。モノは誰にでもまわりにたくさんありますから、結果的にそれを「瞬間的に現金に換える」と表現したという感じですかね。

岩本:今、これにアプリ用の名称をつけるとしたら、「買い取りアプリ」なんですか?

光本:うーん。「速攻買い取りアプリ」?

岩本:速攻(笑)。

光本:「即金買い取りアプリ」!?

メルカリとフリル、CASHにある「使いわけ」

岩本:それでいうとなにが競合なのかなって考えていて。少額の買い取りのニーズって、リアル店舗の下取りがセカンドマーケットみたいにあると思うんですが。わりとこれはメルカリだったり、フリルだったり、いわゆるフリマ系のアプリなんじゃないかなと。その辺は、どうなんですか?

光本:はい。結果的に多くの方、周りの方にそういうコメントをいただくことはすごくあります。

岩本:別にメルカリさんがどうこうっていうわけではないんですが、「メルカリ疲れ」というキーワードがニュースに出るんです。

どこまで便利になったかというと、先ほどのスマートロックのセッションを見た方はいらっしゃると思うんですが。「Amazon Key」じゃないですけど、スマートロックで鍵を開けて、宅配の方が売るものをきちんと包んでくれるというのでないかぎり、「ちょっと手間だよね」があると思うんですよね。

光本:そうですね、結果的に(笑)。メルカリさんやフリルさん、年々ものすごく成長されていますし市場も作られていて、本当に思います。ですからこそ、なおさらその競合を作ろうとはまったく思わずにリリースをしたのですが、結果的にそのように見ていただいている。

ヤフオクがあったときにメルカリが出たのを見て、私は「ヤフオクがあるのに、なんでみなさん、メルカリを使うのかな?」と思ったんです。そのあと、僕が思った以上に巨大なサービスになられて、市場ができて。メルカリを使う方は、ヤフオクより「簡単だから!」と言っておそらく使われているんですね。

そして多くの方に私たちのサービスを使っていただいて、送っていただいたモノって、「絶対にメルカリで売ったほうが高くなるのに、なんで私たちに売ってくるのかな?」と、自分たちのサービスなんですがすごく他人事みたいにそう思ったんです。

でも結局、メルカリで売るよりも簡単で、かつ即金だから使っていただいているんだなと考えています。ただ、メルカリで売ったほうが、絶対高く売れるんですよ。結果的に、消費者の方々は、それを上手く使いわけていくかたちになっていくのかなと思ったりします。消費者の方がメルカリとヤフオクをスマートに使い分けられているように。

新品の市場に対して、2次流通の市場は小さすぎる

岩本:先ほどのセッションでもあったんですが、コミュニケーションという軸が入ると、また別の価値があるのかなと。ヤフオクとかオークションには、そういうのはありますよね。

光本:そうですね。私たちはどんなに汚い写真であっても、そのモノを撮っていただければ買い取っちゃいますから。フリマアプリの場合は適当に撮れないじゃないですか。ちゃんときれいに撮らないと売れないので。

岩本:競合というふうにも思うんですけど。半分重なってるところはあると思うんですが、ほかのニーズでは、そこまで重ならない部分がある……?

光本:そうですね。「気楽に現金化したい、早く確実に売っちゃいたい」というニーズだと思います。そのぶん私たちのところでは、フリマアプリで売るよりは安いと思うので。

岩本:気になるのは、これはどうやってご商売されるんですか? 

光本:前提として、まだ2次流通の市場は成熟しきっていないと思っていて。あらゆる2次流通の業界の方々の課題として、「買い取りたいけど買い取れない」があると感じています。もっと買い取りたい、買い取りさえすれば、まだ売り先はいっぱいある。市場のポテンシャルはもっとでっかくなる。スペースがいっぱいあって、可能性がいっぱいある。

そういった意味でいうと、世の中的な観点でみるとモノってものすごく価値があるんですよね。私たちはモノをかき集めるアプリですので、いくらかき集めても、それを現金化したり、ビジネスにしたりする方向、可能性はぜんぜんあると思ってます。

岩本:かき集めたものを欲しがる人たちは、なにかしらいるっていうことですね。

光本:ぜんぜんいると思います。新品の市場に対して、2次流通の市場は小さすぎると思うので、まだまだ大きくなるんじゃないかなと思います。

CASH運営は「社会実験の日々」

岩本:サービスを停止する前に、先ほどの3億6,000万円。「これくらい売れました」といったり、モノを送ってくれた方が9割という数字だったり、これはネット上でも出ているんで、改めて見ていただきたいんですけど。わりとそういう数字がいろいろ出ていたんですが、8月に再開してから、なにも出てないですよね?

光本:はい。

岩本:たしか最初は、1日1,000万円までの……。

光本:「キャッシュ化に応じます」っていう。

岩本:インジケーターみたいなものがアプリ上にあったんですが、なくなっちゃった。

光本:はい。

岩本:どんな状況なんですかね?(笑)。

光本:内緒です!(笑)。

(一同笑)

なんか、めちゃくちゃ面白いんですよ。毎日すごく面白くて。毎日、社会実験をやっている感覚なんですけど。16時間しかやっていなかった社会実験の結果と、24時間、あのサービスをまわしていられる数値などの結果、ユーザーの方の動向がぜんぜん違って。それを見ていると、めちゃくちゃ面白いんです。

これって蓄積すればするほど自分たちの資産になっていくと思っていますし、まだ僕たちもそれを処理しきれていないんですよ。

岩本:うん。

光本:ですから、ある程度おもしろい数字がたまったり、自分たちでノウハウがためられたタイミングで、ばっとご紹介できたらいいなと思っています。まだたった2ヶ月なので、絶賛大社会実験中ですね。

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