
2025.02.26
10年前とここまで違う 落とし穴だらけの“ERP to ERP”基幹システム刷新が抱えるリスクと実情
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藤岡清高氏(以下、藤岡):このあたりからアプリ開発にも関わっていくのですね。当時はまだアプリというのは一般的ではないですし、ここでも最先端をいくわけですね。
新田剛史氏(以下、新田):そうです。当時のソーシャルアプリはけっこう牧歌的で、大資本も入ってこなくて、企画も開発も今ほど複雑じゃなかったんです。
モバイルサイトをプロデュースするくらいのノウハウと知識があればある程度作れたのが当時のソーシャルアプリでした。
最初の企画が当たったので、ミクシィ社内で信頼を得ることができました。当時は他社でもしっかりしたアプリ開発をできる人があまりいない状態でした。
そんななか、僕のチームでは先駆けて多くのアプリ開発を手掛けて、確実にノウハウを蓄積していきました。その経験は今のショーケースギグのノウハウに繋がっています。
さらに、ミクシィの圧倒的なアクティブユーザーをオンラインだけで終わらせるのではなく、リアルの世界に連れていけないものかということも考え、セブンイレブンやローソンなどのコンビニエンスストアと連携した企画も実施しました。
ソーシャルギフトで5日間で2万件くらいのオンライン決済を発生させたり……1ヶ月で50万人近くのユーザーを送客したこともありました。
藤岡:今でいうO2O(Online to Offline)の走りですね。これはITとリアルイベントの知見が両方ある新田さんだからできることですね。
新田:僕はミクシィのメインサービスを作るというよりは、その上にあるアプリケーションを作っていました。ミクシィにはすでにプラットフォームはあったので、そこの上でどういうヒットコンテンツを乗せていくかというところに関わりました。
藤岡:ミクシィという大きな舞台で、大きな仕事に携われたという意味では、起業するよりも良い選択だったのではないでしょうか。
新田:確かに仕事のスケールは大きかったです。例えばNIKEさんと一緒にソーシャルバナーというのを作った際には、USのNIKE本社からも興味を持ってもらえて、ポートランドに行ってプレゼンしたり、Facebook本社に行ってディスカッションした際にはマーク・ザッカーバーグと……打ち合わせはしてないけど、目の前ですれ違いました(笑)。
藤岡:新田さんがソーシャルITビジネスの世界で最先端のところにまで行っていたということですね。
新田:それは当時のミクシィの看板がなかったらできていないですし、ミクシィに入社して1年後くらいが世間的にも本当のソーシャルブームになっていたので、これはおもしろいなと。それで、ミクシィ社ではあらかたやりつくした感もあり、いよいよ独立起業してやってみようということになりました。
藤岡:起業時は資金調達や人材確保で苦労されると思いますが、新田さんの場合はどうでしたか?
新田:資金調達についてはけっこう悩みましたね。いま振り返ると、そんなに硬くとらえる必要もなかったんですが、年齢も30歳を過ぎててそんなに若くもないし、ビジネスやサービス開発で実績を積んできたという変なプライドもあるので、学生スタートアップみたいなノリで、いわゆるシードアクセラレーターとかベンチャーキャピタルを行脚するのには抵抗がありました。そもそも知り合いも少なかったですし。
僕は当時増えてきていた日本版Yコンビネーター的な、シードアクセラレーターが描くような典型的なスタートアップのストーリーにいまいち乗れなかった。日本とアメリカは違うし、ビジネスはそう簡単ではないと考えていたので。
ある程度経験を積んで情報もある大人の起業だからこそ迷ったんだと思います。当時、2012年で、ベンチャーバブルの胎動も感じていました。すごく選択肢が多かっただけに、何を目指すべきかは惑わされそうになりました。
また、多くのベンチャーキャピタルさんは、「堅実なBtoBビジネスよりも一発ホームランの可能性があるBtoCビジネスをやれ」と言ってくるのも辛いところでした。
恵まれていたことに起業前から大企業から大きなBtoBのお仕事をいただいていました。起業前なので会社の箱もサイズもなかったのですが、過去実績を信用してくれているわけですね。
ベンチャー企業からすると立ち上げ時に確実なキャッシュインが見える話はうれしいですが、シード期のベンチャーキャピタルの論理からすると、「BtoB仕事なんかやらずにサービスに専念しろ」となる。
なかなか説明が難しいスタートで、だから知人以外の投資家からはしばらく距離を置いていました。
スタートアップって大企業と組めたらラッキー、売却できたら最高、みたいな志の会社もありますが、そんなストーリーにも違和感があったし、なかなか通常のエクイティストーリーでは受け入れられなかったんですね。
藤岡:大人の事情で資金調達は苦しんだということですが限られた資金の中で人材確保はどのようにされたのですか?
新田:最初に大きな資金があったわけではないので、仕事量とキャッシュの状況に応じて1人ずつ慎重に採用していきました。ミクシィ時代の仲間が中心でした。
藤岡:起業時の事業展開について教えてください
新田:結局、BtoCの自社サービスとBtoBのオムニチャネルサービス開発事業と両方取り組みました。
BtoC事業は、現在も運営している「O:der(オーダー)」というサービスです。これはモバイルウォレットのコンセプトで飲食店に行く前に、事前オーダーすることができるものです。
クレジットカード決済すれば、財布なしで店に行っても大丈夫というサービスです。BtoB事業での最初の大きなパートナーは、今年5月に資本提携も行った共通ポイントサービスのPontaを運営するロイヤリティマーケティング社でした。ここでは“Pontaタイム(ポンタイム)”というサービス企画開発を担当しました。
準備期間が長かったんですが、起業して1年くらいったころに、この2つのサービスをローンチできました。どちらもそれぞれの領域で話題となり、一気に投資家も含めて、さまざまな問い合わせが増えました。
それまで何をやっているかまったくわからない会社だった当社にとって名乗りを上げることができた。ここがまずはフェーズ1でした。一応やりきったな、という手ごたえがありました。そこから先は資金調達もスムーズになりました。
起業前にたまたま話をする機会があったアクセラレーターからは「BtoBをやりたいんだかBtoCをやりたいんだかわからないんだよね、どちからかにしてほしい」とか言われて「そんなん、スケールの大きいビジネスやるんだったら両方必要に決まってるだろ!」とムッとしたこともありましたが、この時期になるとむしろBtoBとBtoCを両方やれるところがこの会社の強みだとか言われるようになりました(笑)。
藤岡:今後はどのような軸で事業を展開されていくのでしょうか?
新田:日常的に使うものや、生活に大きく根ざすものをデジタル化で便利にしたいというのがミッションとしてあります。
具体的な手法としては、今やっているような、お財布をなくすとか、キャッシュをなくすとか、そういうところにイノベーションをもたらせるとおもしろいと思っています。
シリコンバレー自体がこの発想だと思いますが、デジタルやインターネットを使ったら世の中こんなに効率よくなるのに、ということでできていないことがあったら、それは絶対全部やっていくべきですよね。
今後の世の中で車や家電に限らず、商業施設や家、航空機など、すべてが個人のデバイスとデジタルアプリケーションによって連携されていくことになります。
昔だったらリアルの物質100%で構成されていたものが、スマートフォンに代表されるように、「モノ+アプリ」で構成されるようになる。
この発想で考えると、世の中、まだほとんどの領域でデジタル化が進んでいないんです。今は外食・飲食・小売などのデジタル化を支援させてもらっていますが、いずれはこの領域をどんどん広げていきたい。
藤岡:Showcase Gigの経営課題を教えて頂けますか?
新田:やっぱり常に出てくるのは人材の問題です。比較的順調に採用できているほうだとは思うんですけど。やっぱりバランス良く、クオリティを保った状態で人を増やして高い生産体制、開発体制を敷くということが非常に難しいところです。
また、別の課題としては、ありがたいことなのですが企業からの引き合いや提携の提案がとても多いので取捨選択をしていくことが重要です。優先度をどうつけて、どういう順番でやるか。チャンスを逃さないように人材の採用育成は課題ですね。
藤岡:Showcase Gigの求める人材はどのような人でしょうか? 新田:マインド的には、ミーハーでぜんぜんいいので、新しいことに関心があって、何でもすぐに試してみたくて、それでいてやり通す根性のある人がいいですね。
その領域でナンバーワンを目指すようなパッション・気概がある人がいいです。実務経験は該当する職種での経験が2〜3年以上はほしいと考えていますが、経験だけでなく、センスを重視しています。
現在、Showcase Gigではミクシィの出身者が約半数程度在籍していますが、あとの半数はかなりバラバラなところから入ってきています。
エンジニアやプロデューサーなど職種は違っても、BtoCとBtoBの目線をバランスよく持った人材が多いと思います。ユーザー目線を最重視しつつ、ビジネスセンスも持っている、そんな人が活躍できる職場です。
Showcase Gigの事業は日本の消費社会に大きな影響を与えられるような有力なパートナーとのサービス開発が多いので、やりがいがあると思います。また、O2O(Online to Offline)、オムニチャネルの領域はみんな手を出そうとしてもなかなか形にできないケースが多いなかで、Showcase Gigはきっちりと結果を出しているという自負があるため、既存領域とは違ったフィールドにチャレンジしたい人にはおもしろいのではないでしょうか。
藤岡:最後に新田さんの夢を教えてください。
新田:今は自分の興味もあって、オムニチャネルなどの、どちらかというと硬派なサービス開発が多くなっていますが、いずれはエンターテイメントコンテンツ、音楽、ファッション、カルチャーもすごく好きなので、その領域もやってみたいですね。
まずはShowcase Gig(ショーケースギグ)というチームで、世の中に大きなインパクトを与えて、「こんな地平があったんだ」という地点まで到達してみたいと思います
藤岡:新田さん、素敵なお話ありがとうございました!
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