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Accenture Link Lounge Vol.5(全4記事)

「あと5年、冒険できるかで日本が決まる」 夏野剛氏が指摘する2020年以降の懸念事項

2015年4月に行われたアクセンチュア主催のAccenture Link Lounge Vol.5にて、チームラボ・猪子寿之氏、夏野剛氏、AR三兄弟・川田十夢氏が対談。「今までの遊園地は20世紀型産業社会の象徴である」と語る猪子氏を中心に、都市の未来について意見が交わされました。

今までの遊園地は20世紀型産業社会の象徴

加治慶光氏(以下、加治):あまりにも衝撃的なスタートだったんですけど、この2020年がどんな世界になっていくのかというのを少し皆さんのご意見を伺いたいなあと思っていまして。今度は猪子さんあたりから、2020年ってどんな世の中になっていくのか。

猪子寿之氏(以下、猪子):どういう領域の話ですか?

加治:どんなでも構わないですけど、これから5年後の2020年はどんな世界になっているのか。デジタルで、例えば猪子さんの次の作品はどんなことに配慮されてつくられるんでしょうかね?

猪子:僕はアートをつくったりしているんですけど、それを応用してアトラクションみたいなのをつくっていて、でもデジタルでつくっているアトラクションなので、今までのイメージと違って床面積が全くいらないんですね。

例えばジェットコースターとかだとすごい床面積がいるんですけど、僕らがやっているものというのは床面積がほとんどいらないので、例えば1万平米とか2万平米あれば、いわゆるディズニーランドに匹敵するような体感を得て帰ってもらえるものがつくれるんじゃないかと思っています。

郊外型ではなくて都市型の遊園地みたいなものをできたら2020年までに世界のどこかの都市につくれたら。都市の、しかも屋内型ですね。郊外型ではなく都市型の、しかも遊園地ってすごいある意味、産業革命後の産業社会の象徴であって、基本的に産業革命後って蒸気機関ができて、車に象徴されるように高速で移動できるようになったわけですよね。

遊園地にあるものって、全部が高速移動型なんですよね。ジェットコースターだったり、コーヒーカップが回転したり、上に上がったり下に下がったり。つまり、高速移動型の産業社会の象徴で、それをマスメディアの象徴であるアニメを元にしたものだったり、ハリウッドを元にしたものだったりですよね。楽しいけれど、なんらかの意味は全くないみたいな。

ある種、何だろう。コーラのようなもの。おいしいけれど、意味はないみたいな。だから産業社会の象徴的なものだと思っていて。それよりは普通に、例えば食べ物を考えてみると、今だと食べることで意味がある。肝臓にいいとか、生産者の顔が見えるとか、料理そのものがクリエイティブで、すごいアーティスティックであるとか、そういうものに興味が移っているわけで。

僕も遊園地っていうのは遊園地に行くことによって教養が広がるとか、教育になるだとか、クリエイティビティが上がるだとか、創造性が上がるだとか。だから、ある種、アート的な体感と遊園地がくっついていくような、もっと21世紀型の、しかも都市型のものを世界中の都市につくっていけたらいいなと思っていますよね。

先にネット上のコミュニティができて、物理空間はその後

加治:じゃあテーマとしては遊園地。それも21世紀型のものをどうつくるかっていうもの。

猪子:そうですね。遊園地で出会いがあるみたいな。できれば具体的な1万平米とか2万平米とかでつくりたいですけど、それはありとあらゆることが、実はそうなっていくと思っていて。例えば、それをもうちょっと拡張すると都市っていうのも、いわゆる産業社会の象徴である種、遊園地の拡大されたものが都市で、建築家に代表されるような、物理的な物質が基に都市が設計されているんだけれども、現実問題として今の人々っていうのは全員インターネットが繋がりっぱなしのものを肌身離さず持っている。

つまりネットワーク前提で生活しているわけで、都市空間にいるわけですよね。でも、都市は本当にさっきの遊園地と変わらない産業社会そのもののままで設計されていて、本来は今、個人としたネットワーク前提で生きているわけで、この間も不動産屋の変なところに呼ばれたんですけど「マンションでコミュニティを」みたいな、わけわかんない議題で話しているわけですよ。

「物理的な近さみたいなものがコミュニティをつくる唯一の要素だ」みたいな、すごい昔からの話を前提で話しているんだけど、夏野さんが横にいらっしゃるんで言うのもあれなんですけど、ニコニコ超会議ってあって、ネットワーク上に先にコミュニティが形成。物理空間関係なくコミュニティが形成されて、そのアウトプットとして物理空間があるわけで、都市も今までは原宿だからこういう文化が生まれるとか。

加治:ものをつくってそこに人が集まるみたいな発想は、もう違うみたいな。

猪子:そうですね。先にコミュニティがあるかもしれないし、もうちょっと言うと、さっきの遊園地の話じゃないけれど、都市が都市の機能を持ったまま遊園地にもなりえるし。

2020年の都市はアートやエンタメを内包するようになる

猪子:この映像はハウステンボスなんですけど、これは運河なんですね。運河沿いの木なんですけど、ここには普通に元々、運河があるんですよ。当たり前なんですけど、運河があって木が生えているんですね。

それにライトアップして、人が近づくと色が変わって色が他の木の色を変えていくんですね。1個変わると、そして、全部にスピーカーが付いていて、音と色が呼応していくんですね。

だから、向こうのほうに人がいると音と光の色が向こうから迫って来るし、自分が近づくと音が向こうのほうにずっと響いていくというようなもので、ハウステンボスに来られている方は別にアートファンでもなければ、普通の人だと思うんですけれど、一応、アトラクションの1個として、企業改革のアンケートを取られるんですけど、5点満点中は4.8点という、他に例を見ないぐらい高得点なアンケートが出たんです。

ハウステンボスに来てくださっている人が普通に気に入ってくださっているということですけれど、なんでこれができたかっていうと、昼間は今まで通り運河だし、今まで通り運河沿いにある木なんですよね。だから都市として運河の機能とか、木がある。それが夜になると、その機能のまま、一種のエンターテイメントでもあるし、ある種の巨大なアートでもある。今まで都市とアートって分断されていたんだけど、例えば都市の中に彫刻があるみたいな話。都市の中にスペースをつくって彫刻を置くスペースをつくりましょうみたいな話だったんだけど、都市が都市の機能を持ったまま巨大なアートにもなれるし、巨大な遊園地にもなりえるみたいな。

そういう都市の設計をもっとすると東京はおもしろくなるかなと思っている。これは都市の例なんですけど、大阪にオープニングセレモニーっていうニューヨークのセレクトショップのお店をつくったんです。そこは服のセレクトショップなんですけど、1個の遊園地みたいにしたんですね。

いろいろなものがいたるところにあって。そうすると、やっぱり滞在時間が伸びて売り上げもすごく上がるんですね。だからさっきのことって、いろいろなことに拡張していけるんじゃないかと思っていますというお話でした。

加治:2020年は少し雑な言い方ですけれども、都市機能にエンターテイメントだったりアートだったりが内在するようなものになっていくっていう。

猪子:そういうチャンスが潜在的に、もうすでにあって、そこのポジションに東京がいけるか、もしくは、またそこのポジションを東京が失って世界のどこかがそこのポジションをいち早くとるかっていう。それは潜在的にどこの都市でも可能性があるわけですね。

加治:確かにロンドンなんか。2012年が終わって少しそういうふうになっていた時代もありますものね。ありがとうございました。

使い方もわからない高齢者がお金を持ちすぎている

加治:夏野さんはさっきもう少しマネージメントスタイルとかリーダーシップスタイルのところから、これからの時代を語っておられましたけれど、どんな世の中になると思われますか?

夏野剛氏(以下、夏野):2020年を境に、次の100年に「まだ日本は行ける!」っていう。「うまく繋いだ!」っていう感じになるか。「ああ、もうこれでダメ」になるか。その境目になると思っています。2020年に海外からワーッとお客さんが来るでしょう。こういうときって気分が高揚するので、来る者拒まずになりますね。過去に勢いに任せてつくった首都高とか、新幹線とか、こういったものが日本の高度成長の象徴であり、そのあとの成長を支えてきたんですよ。

今の日本の現状を見るとめちゃめちゃ金が余っているんですよ。1670兆円の個人金融資産があるでしょう。国の債務が1100兆円あるから、それを差し引いても600兆円は余っているでしょう。

その他に上場企業の内部留保が330兆円もあるんですよ。金は余っているんだけど、どうやって使っていいかわからない。もっと言うと、どうやって使っていいかわからない個人の高齢層。60歳以上が65パーセント以上を持っています。

もう一生懸命お金を使って楽しむという方向性にはいかない。「俺の人生良かったな」くらいの感じですから。貯金に精をだし、株主総会にも必ず出席して「株価は、どうやったら上がるんですか」みたいな質問をする高齢者が多いんです。

2020年までにどれだけ冒険できるかで日本の未来は決まる

夏野:それから企業の55~65歳くらいの人はデジタルノンネイティブというか、もうITには明るくないわけです。僕なんかもちょっとオッサンなんですけど、僕が学生のときに表計算ソフトが出てきて衝撃だったのは「俺は何のためにフォートランを学んだのか」っていうのが、全く無意味になる瞬間。もうなんか、何カ月もかけてフォートランを学んでいて。

加治:会場の皆さんはフォートランを知らないかもしれない。

夏野:フォートランなんか知る必要ないんだけど。

加治:付記的コンピュータ言語ですよね。

夏野:付記的なんです。最初は情報計算できないと、トレンド線出せないんですね。手書きじゃ出せないんです。だからプログラムを組んでいたんだけど、マルチプランっていうのが出てきて、これはExcelの前ね。ワンセルでできちゃう。「俺のこの何カ月間は、何だったんだ」みたいな経験を一応している層なんですよ。

ところが55~65歳は、もうパワポつくったことはない。表計算ソフトなんかいじったこともないみたいな。プログラミング、コーディングまでできなくてもいいけれど、マクロぐらい使えるスキルは欲しいですよ。

それまでやったことがないから、使い道がわからないんですよ、金はもうウンウンうなっているけど。それでその人たちがこの5年間は投資する可能性があるんですよ。とにかく、この5年間でいかに思い切ったことができるかで、2020年以降が変わるんですよ。

2020年を過ぎたらどうなるかっていうと、そのときには今から300万人が減っているでしょう。ここからまたグッと減りますからね、人口は1億2000万を切るでしょう。そうすると2020年代以降はどうなるかっていうと、既得権益を持っている人が絶対に手放さなくなります。

それから、お金を持っている人たちは、もう少しでも生き永らえるために、もう持っちゃっている社員とかをとりあえず食わしていくために、益々投資しなくなります。急に縮小がきます。

だからこの5年間で、どれだけ冒険できるか。どれだけリスクマネーを使えるか。どれだけおもしろいものをつくれるか。それで、このあとの30年、40年の日本が決まります。教育制度改革も、この5年間でやらないといけない。また守旧派が盛り返してきますから、今このノリのいい5年間で、どこまでできるかで決まっちゃうんですよ。2020年で全てがわかります。

おもしろいものが勝つ時代がやってくる

加治:ありがとうございます。まさにその通りだと思います。では会場の方同士で2020年がどんな世界になるのか、少し話し合っていただきたいと思います。どなたかご発表いただける方は、いらっしゃいますか? 

来場者:今話していたのは、デジタルIT系のことがすごく進んで、スマートフォンとかで家の全ての管理やそういったものができたりすることが、もっと当たり前になって普及するんじゃないかということ。

あとはスマートシティということで、もっとシェアハウスみたいなものや外国人の方がいっぱい来られると思うので、コミュニティが小さくなって、デジタルで繋がっていくのではないかなというふうに話していました。

加治:ありがとうございました。非常にリアルな想像だったと思います。どなたかもうひと方いらっしゃいませんか。

来場者:私が話していたことは、今の仕事の何割かはなくなっていて、自分個人ができる仕事の領域は格段に広がる、世界が広がっていると思います。

今の仕事の何割かはなくなっているということは、全てがデジタル上で意思決定される場ができるとすれば、かなり社会構造が変わって人間は何を求めるかのか。おもしろさを絶対求めるから、おもしろいものが勝つ時代が絶対そのうち来ると。これは近い未来、必ず起きる、そんな確信をしています。そんな話をしました。

加治:ありがとうございました。

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