2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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川田十夢氏(以下、川田):また話が変わるかもしれないけど、ピロティっていう言葉がずっと気になっていて、ピロティっていうのを建築用語で調べると基礎が露呈化したみたいな、学校で踊り場とかあったじゃないですか。
「これは何に使うんだ」っていう余地が昔は建築を設計するときにあったのに今は効率化で余白がないんですよね。余計な、あらぬ想像をする余白がなくて、それが悲しいなというのと、シムシティっていうゲームをやったことあります?
ビル・ライトさんの設計した、普通の都市シミュレーションゲームでありながら、あの人は1個だけメッセージを入れていたんですよね。都市をいっぱいつくっていってゲームとしては都市が繁栄すればプレーヤーとしては上がりなんだけど、でもそれだけだと住民たちがストレスになって、それこそ子なしになっちゃうみたいなことがあって。
何をしたらいいのかっていうとゲームの中で公園をつくるんですよ。公園をつくると住民たちの気持ちが和らいで、さらに都市が繁栄していくんですよ。それはゲームの中のメッセージの入れ方ですけれど、そういう場所とかアート作品とか、サービスとかに込められるメッセージがあるはずで、今、浮かれた雰囲気を助長してくれるようなものがないんじゃないかなと思いますけどね。
加治慶光氏(以下、加治):夏野さん、この視点はありますか? 浮かれた場所の必要性。
夏野剛氏(以下、夏野):もう今のこの少子化の問題は、主には経済問題なんですよね。特に皆さんの世代かな、ここに来ている人は恵まれている。むしろ世界の中でも恵まれている人たちだと思うんですけれど、やっぱり未だに20代の失業率のほうが50代より高いし、僕は、この国はフローの格差よりも資産格差が大きすぎると思っていて。
つまり20代後半から30代前半の皆さんっていうのは、そんな資産を持っていないよね。でも皆さんの親の世代というのは、すごく資産を持っている人が結構いて、もうすぐ経つとわかるんですけど、これから皆さんは能力があって仕事でバンバン稼いでいる人よりも、親が資産を持っている人のほうが金持ちな生活を送っているということを間近に見ます。そういういう国なんですよね。
もっと平均化すると、やはり子を産む世代にお金が回っていないので。でも子どもをほしいっていう人はいっぱいいる。なんですけど、やっぱり経済的な問題が自分の自由度を奪う。時間的にも経済的にも自由度を奪うというのであれば「やっぱり仕事を選択しようかな」と思っていくわけで。ちゃんとお金を回せばそんなことはないと思うんです。
夏野:ちなみにいうとフランスでは3人子どもを産んだら、全員違う旦那でもいいですけど、結婚もしていなくてもいいんですけど、3人子どもを持っている女性だったら、その子どもたちが18歳か、19歳かになるまでは悠々と暮らしていけるほど補助が出ます。
加治:確か3人目だと3000万円位ですね。
夏野:3000万円ももらえるの。その上、キャリアビルディングできるんだもんね。そりゃあ、みんな女になりたくなっちゃうよね。
加治:ただ、我が国における結婚の概念とか、家族の概念とか、そういうものはずいぶんフランスとずいぶん違うんですね。
川田:今の若い子って人口的にマイノリティなんだよね。そういうことが都市化しているんですよね。だから、老人たちとあまり考え方は変わらないですよ。
夏野:制度をきちんとつくれば、ガラッと変わりますよ。だって、やっぱり経済で人は動くから。エコノミックモデルがちゃんとあれば動くんですよ。
生産的にはエコノミクスってものすごく大事なんですけど、日本の政治の中ではエコノミクスとかビジネスモデルとか、こういうことが軽視され過ぎている。単に雰囲気で流されるという傾向が強いから、今こんなことになっていると思うんだけど、スタティスティクスとエコノミクスで政策の8割は解決できるはずなんです。それを感情論に持っていくほうが、票が取れるっていうのがやっぱり最近の問題で。
加治:なるほど。あとは若い人の投票率が低いとかそういうところも関係あるしね。
夏野:関係あるんだけど、憂いている僕らジェネレーションも多いと思うので、少なくとも選択オプションを提示できていないよね。だから今だったら、あと5年間は浮かれているんです。そういう意味では。この間にやっちゃうのがいい。
加治:この間に盛り上げちゃおうっていうのが。大分お時間が迫ってきましたので、皆さまには最後に一言ずついただくとして。質問の時間に移りたいと思います。
加治:それでは時間のほうが来ましたので、ご質問していただける方、いらっしゃいますか。
質問者:本日はありがとうございます。私は営業として10年くらい製造業のほうでキャリアを築いてきたので、あまりデジタルって詳しくないんですが、今後の製造業が、デジタルのあとはインターネットに代表されるITと融合して、今後どういうふうに変わっていくと思われますか?
夏野:Appleが初めてiPodを出したとき、日本のメーカーはあれをハードだと思っちゃった。違うんですよ、あれは。僕は2001年にiPodが出たとき、ほとんどすべてのメーカーさんとお付き合いがあったので、みんなに「これどう思う?」って言ったら、みんな「ハードディスク付きウォークマンです」みたいなことを言っていて。
「ハードディスクは落とすと壊れるし、こんなの駄目です、電池も持たないし」って言っていたから。ぜんぜん本質が違うのね。あれはインターネット経由で音楽をダウンロードすることを前提としたデバイスなので、ハードディスクは重要じゃなかったのに、みんなそう思っちゃったでしょ。
ウォークマンはその当時、SDだかMDだかでやっているわけですよ。だからもうすでに融合は終局に近づいています。全ての家電製品、全てのものが、今はネットに繋がることを前提に海外は設計していて、国内は取り残された。
ちなみに今日もテスラに行ってきましたけど、自動車はやばいですよ。テスラは電気自動車がすごいITをメインに打ち出した車で、ユーザーインターフェイスが全く新しいです。これを今、日本のメーカーの人たちは「電気はなぁ」って言っています。
加治:ありがとうございました。じゃああと2問くらい質問をとって、まとめてお答えいただきましょうか。
質問者:日本の製造業がデジタルと融合していない理由として、経営層の年次の高い方が、昔は日本ってものづくり大国なんて言われていましたけど、そのプライドもちょっとあるせいで融合していないんじゃないかと思うんですが、今後何年かたっていくと、そういった層の方が退職されていくと思うので、今後融合する可能性っていうのは十分あり得ますでしょうか。
加治:次の質問をどうぞ。
質問者:今日はお話をありがとうございました。働き方の部分で1つご質問なんですけど、僕は今25歳で、きょう参加されている方で20代は結構多いのかなと思っているんですけど、もし3名の方が25歳に戻った時に2020年を迎えるに当たって、5年間でどういう働き方をして、2020年にどういったものを社会に残していきたいかということがあれば、お聞かせいただければと思います。
加治:じゃあ最後に1問質問をどうでしょう。
質問者:先ほどからグローバル化っていう言葉をうかがってはいますが、具体的にどういう政策を立てれば、将来の日本の製造業がうまくいくかという質問をさせていただきます。
加治:3つ質問をいただいたんですけど、最後の「自分がもし25歳だったら、5年後に向けてどんなふうに生きるか」これは最後の一言に加えてお話しいただいて、日本の製造業がデジタル化に遅れてしまった。これはそれらの経営者が消え去ったときにもう一度チャンスはあるのか。じゃあ、夏野さんいきますか。
夏野:その頃には、遅いです。もう勝負はついちゃっているから。誰のために経営しているのかっていうことがわかってないということですよね、自分たちが最後までいるために経営している。
加治:ありがとうございます。じゃあ、このグローバル化が具体的にどういうことなのか。これはお二方に一言ずついただいて、最後の締めにいきましょうか。じゃあ猪子さん。グローバル化とは具体的にどういうことなのかというご質問でした。
猪子:製造業に関してね。製造業でもいいんじゃない? わかんない。
加治:自動車が駄目だとやっぱりキツいよね。
川田:僕はメーカーに10年いたんですよ。ミシンメーカーにいたんですね。
加治:ミシンメーカー!
川田:ミシンの縫う技術をアップデートして、遠くの技術者の経験をアップロードしてダウンロードするミシンっていうのを、僕は発明したんですよ。特許発案をして特許も取ったんですね。
メーカーで、ミシンがネットと融合してというアイディアを僕は持っていました。皆さんと同じ20代の頃です。開発部として10年働いて35歳。33歳くらいで僕、AR三兄弟をやって、気づいたらカンチとリカの入れ歯ラブルにもいっていたんですけど。僕は失望していないんです。
ようやくマイクが向いてきたなっていう感じがしていて、ただしマイクが向いてきたからといって、誰かがやってきたことをやっても駄目だと思うんですよ。プログラム、アップデータブルになって未来とか、社会とか、都市に使ってもらえるものはなんなのかということを考えなきゃいけないと思うんですよ。
何をセーシングして、何を人は考えて、何を道具としてアップデートしていくのがいいのかということを考えなきゃいけない。あと、ずっと老人のことばかり考えていたので入れ歯ラブルのことを考えていたんですけど、フランスの話を聞いていたら、オシメラブルもあると思いましたね。途中までいいことを言っていたのにね。
加治:いやいや、やっぱりすごいなって。
川田:でも本当に老若男女問わずテクノロジーと接する機会を増やしたほうが良くて、そういうものが世の中に足りていないかなと僕は思っています。
加治:じゃあ一言、これから5年間の生き方に関して、何かアドバイスがあれば。
川田:「メーカーと何かが融合していくんですか」っていうご質問がありましたけど、それは自分の熱い思いを持っていけばいいと思う。もしイメージがあるんであれば、実現させればいい話かなと思いますけどね。それはもう勝手に誰かがやってくれるというものではないですからね。自分で考えたことは自分で形にするっていうことだと思いますけどね。
加治:じゃあ次は猪子さん、これから5年間生きていくとすると、自分が25歳でどういうふうに生きるかというアドバイス。
猪子:う~ん、ちょっとわかんないな。目の前のことを頑張るかな。
(会場笑)
加治:職業人としては、目の前のことを頑張るっていうのがすごく重要ですよね。
加治:じゃあ夏野さん最後に。
夏野:25歳だったら、どういうキャリアか。
加治:どう生きるか。
夏野:僕は、キャリアビルディングとか、キャリア形成とか、キャリアプランを皆さんが考えるときに、今つとめている会社だって再来年には潰れるかもしれないし、そんな今ある生活の安定なんていうのは、いつ崩れるかわかんないっていうことに、25歳から30歳の間に気づいて、世の中は9割の維持したい人と、1割の新しいことをやって変えたいっていう人がいて、ここに来ている人たちは1割の問題意識をもって変えたいって思っている人だと思うんですけど。
もし僕が25歳に戻れるんだったら、9割に入りたい。もう疲れるんだもん。すぐに炎上するしさ、リスクも高いしさ、会社は潰しちゃうさ。9割の「これでいいんだよ。日本は」っていう全て肯定して、全て守って、その守るほうの頂点にいて、守り倒して「俺が死ぬときは、まだ大丈夫」みたいな、逃げ切りの人生を生きたい。
加治:ありがとうございました。最後を飾るにふさわしい、強烈なメッセージありがとうございました。でも25歳に戻っても、きっと今みたいに……。
夏野:本当にそう思っているんだって。苦手なことをやっても駄目なんだけどね。だけど、俺はそうなりたい。そうありたい。
猪子:ありたくないでしょう!
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