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日本のコンテンツビジネスとその未来(全3記事)

「BTSはすごいのに、日本は...」という論争がなぜ起こるのか 数字で見る、日本のコンテンツビジネスの世界的な強み

日本とシリコンバレーを繋ぐコンサルティング会社TOMORROW ACCESSでは、シリコンバレー発の業界エキスパートが最新情報を解説する「01 Expert Pitch」を開催しています。今回は「世界に広がる日本のコンテンツビジネスとその未来」をテーマに、MajiConnection岩崎貴帆氏が登壇したピッチの模様を公開します。本記事では、BTSから見る韓国のコンテンツビジネスの今、数字でわかる日本のコンテンツビジネスの特徴について語られました。

グローバルな視点で考える、日本のコンテンツビジネス

小川りかこ氏(以下、小川):みなさまこんにちは。お待たせいたしました。本日はご視聴いただきまして、誠にありがとうございます。

それでは12時になりましたので、「01 Expert Pitch」第12回を始めてまいります。シリコンバレー発、世界のエキスパートが最新情報を日本語で解説ということで、本日は「世界に広がる日本のコンテンツビジネスとその未来」と題しまして、日本が誇るコンテンツビジネスの最新状況と日本の未来についてお送りしてまいります。

さて今回は、MajiConnection Founder & CEO 岩崎貴帆さんをエキスパートとしてお迎えしております。岩崎さん、ハワイからのご参加ですよね。よろしくお願いいたします。

岩崎貴帆氏(以下、岩崎):よろしくお願いします。

小川:どうですか? そちらはやはり暑いですか。

岩崎:そうですね。最近暑くなってきましたけど、たぶん日本より暑くないんじゃないかなって思います。

小川:日本はあっという間に梅雨明けして、かなり暑い日が続いております。どうぞよろしくお願いいたします。

岩崎:よろしくお願いします。

小川:そして本イベントの主催者であります、Tomorrow Access Founder & CEO 傍島さん。本日もどうぞよろしくお願いいたします。

傍島健友氏(以下、傍島):よろしくお願いいたします。

小川:そして前回から本イベントのナビゲーターを務めております、フリーアナウンサーの小川りかこと申します。どうぞよろしくお願いいたします。

シリコンバレー発の情報を発信する3つの狙い

小川:それではさっそくなんですが、傍島さん。この「01 Expert Pitch」の狙いを少し教えていただけますでしょうか。

傍島:あらためまして、Tomorrow Accessの傍島と申します。よろしくお願いします。Tomorrow Accessという会社は、シリコンバレーにあるコンサルティング会社で、主にアメリカの会社と日本の会社のクロスボーダーのビジネスのご支援をさせていただいております。

この「01 Expert Pitch」は2021年から始まってるんですけれども、狙いとしては3つあります。1つ目の狙いは、日本とアメリカの情報格差の解消をしたいということです。いろんな日本の企業さんとお話をしてる中で、シリコンバレーや世界の状況を知りたいという声をたくさんいただくんですね。こういった情報を迅速にお届けしたいというのが1点目。

2つ目は正しい情報をお届けしたいということ。いろんなニュースが日本に届いていると思うんですけれども、若干現地で感じている温度感と違うなと感じる時があるんですよね。

そういった時に、今回ご登壇いただく岩崎さんのようなエキスパートの方にきちんと解説をしていただいて、正しい情報、正確な受け伝えをしたいというのが狙いです。

3つ目は日本語での解説。英語の情報はたくさんあるんですけれども、(日本人がそれを読み解くのは)なかなか大変なんです。今回のように日本語できちんと解説をしていただいて、正しく理解していただこうという狙いがあります。

今回も日本のコンテンツビジネスが世界でどう戦っていくのかという話をしていただけることになっていますので、非常に楽しみにしてまいりました。本日もよろしくお願いいたします。

小川:ありがとうございます。よろしくお願いいたします。本日のイベントでは、みなさまからのご質問を随時受け付けております。それでは早速ですが岩崎さん。簡単に自己紹介からお願いしてもよろしいでしょうか。

幼少期からのアメリカへの強烈な憧れ

岩崎:はい、よろしくお願いします。スピーカーを務めさせていただきます、MajiConnectionの岩崎貴帆と申します。よろしくお願いします。

テーマは「世界に広がる日本のコンテンツビジネスとその未来」ということなんですけど、まずはちょっとだけ私の話をさせてください。1983年生まれ、今年(2022年)39歳。アラフォーでございます。

小川:同じくでございます(笑)。

岩崎:よかった。わざわざ言わなくてもいいかなと思ったんですが、マイブームなのでお伝えさせていただきます。生まれはニューヨークなんですが、父親の都合で生後半年で帰国しましたので、無念にも帰国子女ライフは叶わず。0歳から18歳まで鹿児島ですくすくと育ちました。

ただ人間不思議なもので、生まれたのがニューヨークというだけで、小さい頃からアメリカに強烈な憧れがありました。特にハリウッド映画が大好きで、周りの同級生がSMAPにキャーキャー言ってる時に、1人だけトム・クルーズのポスターを貼って、「将来はアメリカ人と結婚する」みたいな、変わり者でした。

高校まで鹿児島にいました。アメリカの大学に入学したかったんですけど、家族に反対されまして。当時一番アメリカっぽい大学が……国際基督教大学(ICU)ってご存知ですか?

小川:はい。もちろんです。

岩崎:最近は皇室の(関係でニュースに)名前が出てきてるんですけど、そこに入りました。そこで初めて英語をかじったりして、その後何度か渡米の機会を試みたんですけど、いろんな事情で(なかなか行けませんでした)。

フジテレビに入社も、渡米の夢が諦めきれず

岩崎:大学卒業の時に、当時エンターテインメント界ではトップだったフジテレビに入社しました。いわゆるイケイケだったメディア業界で酸いも甘いも経験して、でもどうしてもアメリカに行く夢が諦めきれず、2013年にMBA取得のためにハワイに留学しました。

フジテレビで営業をやっていて、マーケティングのエキスパートだったので、それを活かしてMBA卒業後はメインランド(本土)でエンタメ系の職につけたらと思ったんです。

ただハワイっておもしろくて、アメリカなんだけど、独特のエコシステムがあるんです。在学中もハワイにある中小企業さんのコンサルをしたり、スタートアップの支援みたいなのをやるうちに、「大企業で会社の歯車になるよりも、自分で何かしたい」という気持ちが生まれまして。

なんやかんやあって、2019年にMajiConnectionという会社を立ち上げて、スタートアップなどの支援をしております。コンテンツという意味でいうと、見た目的にはフジテレビのキャリアしかないんですけど、個人的にコンテンツが好きなので、いろんなプロジェクトに関わっていたりします。

私はアニメが大好きで、アメリカのそういうコミュニティに属しています。今日は私の経験からの話というよりは、今あるデータやケーススタディ、記事ベースのリソースを使って、日本のコンテンツにおける未来的なことをお話しできればと思います。

小川:ありがとうございます。ちょっとワクワクしてきました。

岩崎:できるだけ情報をいっぱいお届けできるように話していきたいと思います。

韓国発のスーパーアイドル・BTSの影響力

岩崎:このBTSのニュース、ご存知ですか?

小川:すごい人気ですよね。

岩崎:そうなんです。知らない方もいらっしゃるかな。BTSは韓国のアイドルなんですけど、実はアメリカでもスーパーアイドルで、めちゃくちゃヒットしています。

このニュースは、彼らがバイデン大統領からホワイトハウスに招かれたということです。アメリカでは去年一昨年ぐらい、コロナ禍でアジア人差別がひどい時がありました。その撲滅のためにBTSがホワイトハウスに呼ばれて、バイデン大統領と話をするというのが、ものすごく話題になりました。

傍島:びっくりしましたよね。

岩崎:アイドルが政治に、ポリティカルゲームに入る。逆に言うと、アメリカ大統領も認めるくらいの認知度や影響力だという意味でいうと、韓国のアイドルが、アメリカのポリティカルゲームに影響力を与えるってすごいなと思って。

彼らはこの前にも国連でスピーチとパフォーマンスをしたり、グラミー賞にノミネートされたり。この前休止宣言的な話が出たんですけど。

小川:ざわつきました(笑)。

岩崎:かなりざわついて、アメリカのトップニュースに出てきたり。実際に所属事務所の株が暴落したりして、かなり影響力を見せつけているアイドルなんです。

「BTSがやばい」ということで、数字でどれだけやばいか今日はお伝えできればと思います。

小川:いい意味で「やばい」ってことですよね?

岩崎:もちろん。

4日間のコンサートで165億円を生む、驚異的な経済効果

岩崎:これは私が調べたものなんですけど、まずはポストコロナで韓国が観光を再開した時に、BTS絡みでいらっしゃる観光客がもたらす経済効果が、およそ100億ドル。約1兆円ですね。

小川:すごい。

岩崎:韓国全体のGDPの貢献率が、大韓航空会社より上です。わかりますか? 韓国で一番大きい航空会社よりも、アイドルのグループのほうがGDPの貢献率が上なんです。私が聞いたところによると、韓国の4パーセントぐらいのGDPをBTSが……。

傍島:4パーセント。

小川:本当、やばいですね。

岩崎:そうですね。ふつうの企業だったらIPOしていいぐらい、スタートアップだったらもうエグジット(株式売却)が終わってる感じですね。この前ラスベガスでコンサートをしたんですけど、その経済効果がたった4日間で165億円でした。

岩崎:あと、「ARMY」(BTSのファンの通称)ってご存知ですか。

小川:ちょっと初めて聞きました。

岩崎:私の周りもARMYがすごい多くて。ジャニーズのファンクラブのようなイメージなんで、正確な統計ではないんですが、世界で4,080万人って言われてるんです。

傍島:すごい。

岩崎:もちろんファンクラブなので、年会費があります。

小川:あ、なるほど。

岩崎:国によって違ったりするんですけど、日本は6,200円。アメリカではレベルがあるみたいで、25ドルから30ドルぐらい。4,080万人かけるこの数字なので……。

傍島:5,000円としても、年間2,000億円ぐらいってことですか? すごいな。

岩崎:そうですね。アイドルなのにスタートアップのようなサブスクリプション的ビジネスモデルをしています。

「エンタメ文化の国際化」への投資が成功している韓国

岩崎:BTSが日本のメディアで語られる時によく「BTSはすごいのに日本は何をやってるんだ」という論争が起きるんですね。

というのも、アイドルの歴史としては日本のほうが長いんです。例えばジャニーズだったり、安室奈美恵さんが全盛期の時は台湾とか韓国でも超有名だったり。例えばBoAさんのような韓国のアイドルが日本で売れるために日本語を勉強したり。そういう感じで、日本が圧倒的に勝ってたのに、いつの間にか追い抜かれたと。

それからBTSに追随してBLACKPINKとか、最近女性グループも世界的な人気になっています。彼女たちもこの前LAとカリフォルニアでコンサートをして、チケットが爆速で売れました。

その背景には、1997年に韓国で通貨危機があって、経済的に困難な時にいろいろ財政を変えていって、国として「エンタメ文化の国際化」に投資して盛り上げてきたことがあります。

長い歴史を費やしてきた意味はあるんですが、それでも日本の人がBTSのすごさを見ると、どうしても「なんで日本はこういうコンテンツがないんだ」って嘆かれることがあるんですね。

ただ、実はそうでもなくて。コンテンツの輸出量としては、日本のほうが圧倒的なんですよ。

傍島:縦軸の金額が同じですもんね。

岩崎:そうですね。ちょっとこれコロナ前なんで、多少数字に変化はあると思いますが。

傍島:でもぜんぜん違いますもんね。絵で見てぜんぜん違うのがわかりますよね。左が3分の1とか、4分の1ぐらいですもんね。数字的には。

岩崎:そうなんです。

日本のコンテンツビジネスを支える「ゲーム」と「アニメ」

岩崎:これは『推しエコノミー』という本を書かれてるエンタメ社会学者の中山淳雄さんが、YouTubeの番組に出られた時に出していた表です。

BTSが数字的にすごいと言っても、トータルでは日本のほうがかなり勝っていて。かつ見ていただくとわかると思うんですけど、これを支えているのはほぼアニメとゲームなんですね。

ゲームはなんとなく想像がつくじゃないですか。任天堂とかプレステ5のソニーとか、コンソールゲーム機の会社もありますからちょっとわかるんですけど、みなさんアニメがいかに流行っているかは、ピンと来ないと思うんです。

(世界的に見た日本の)アニメのすごさっていうのは、日本の方はあまり感じていないというか......。

傍島:どうですかね、小川さん。(日本の)アニメがこんなに世界に広がっているんだという印象はありますか?

小川:そうですね。私はあまりアニメに詳しくないんですけれども、やはり『鬼滅の刃』とか、コロナ禍ですごく流行りましたし。そういったイベントが幕張メッセなどであったりすると、すごい人が集まりますし、そういうのを拝見してると、やっぱりお好きな方はすごい盛り上がってるなと。

傍島:そうですよね。その日本のアニメがアメリカやヨーロッパ、アフリカなどのいろんなとこで見られてるというイメージはありますか?

小川:私が子どもの頃に見てた『ドラゴンボール』とかは翻訳されて、世界中の本屋さんにあるって何かで見たりしました。すごいなっていう印象はありますけど、ふだんそんなに触れていないのでわからないです。岩崎さん、いかがでしょうか。

岩崎:はい。今日はいい機会なので、私が大好きな日本のアニメが、世界にどれぐらい影響力を持っているか、数字と記事で紹介させていただきたいと思います。

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