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2025.02.18
AIが「嘘のデータ」を返してしまう アルペンが生成AI導入で味わった失敗と、その教訓
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司会者:ありがとうございます。ちょっと時間があれですが、せっかくなので質問に答えていただいて大丈夫でしょうか。
「去年夏からこども食堂を立ち上げ、現在拠点を1から建てるため、資金1,500万円集める活動を始めているところです。地域とつながりを作るためには、町内会長や民生委員とつながること、人と会い続けること以外に、どのような行動をしていけたらいいでしょうか」ということですね。湯浅さん、どうでしょう。
湯浅誠(以下、湯浅):すごいですね。いきなり1,500万円ですか。パッと思ったことが2つあります。1つは、動き出しちゃったほうがいいんじゃないかなと思いました。1,500万円集まるまでスタートできないとなると、現場の動きが作れるのがだいぶあとになっちゃう。
人は動いているところに集まるので、小さくても動きが見えることが大事かな。月1回の数人のレベルでもいい。それが動き出すと、1,500万円の資金獲得につながっていくかなということが1点。
あと、町内会長や民生委員に限らずですけど、やはり相手の目線に立つことだと思いますね。「目線を合わせる」というのを1つのキーワードにしてよく使っていますけれども、お互いの目線を合わせるためには、相手からどう見えるのかを踏まえた話をして、一旦、向こう目線に立つ必要がある。
その人たちがこの課題や活動をどう見ているのか、見えているのかを意識して、そこに1回合わせることが大事かなと思っています。
司会者:ありがとうございます。
鎌田華乃子氏(以下、鎌田):私も思ったのでひと言。事情を伺っていないのでわからないんですけれども、やはり湯浅さんの言ったとおり、小さなところから始めるってすごく大事だと思っています。
私たちコミュニティ・オーガナイジング・ジャパンでも、福島の白河でこども食堂を立ち上げた鴻巣(麻里香)さんという方に伴走させていただいたんですけど、彼女も最初は週に1回、月曜日だけでやり始めたんですね。小さくても始めていたら、最初に3人来て、だんだん増えていって。やっていると地域の方が知ってくれるので、それで広まっていったそうです。小さくてもやってみるって、最初はすごくいいんじゃないかなと思います。
湯浅:今、ご質問を読み直して気づきましたが、この方、すでにこども食堂立ち上げてやってらっしゃるんだよね。
鎌田:ああ、すいません。拠点をこれから作るということですね。ああ、なるほど。
湯浅:自前の拠点が欲しいよね。それはよくわかる。特にコロナで公民館とか使えなくなっているので、自前の拠点が欲しい人は増えています。しかし1,500万円かかりますか!
質問者4:せっかくなのでバリアフリーだったり、停電の時に(使えるように)薪ストーブだったりとかも盛り込んだ拠点にしようと、けっこう動き出してしまってはいて。
湯浅:なるほど! それならがんばって集めるしかないですね!(笑)
質問者4:(笑)
鎌田:おそらくみなさんと協力して建てられると思うので、資源を分け合ったら、1,500万円なくてもできちゃうかもしれないですし。がんばってください。
質問者4:ありがとうございます。
司会者:ありがとうございます。最後の質問ですね。
「湯浅さん、鎌田さん、貴重なお話をありがとうございました。お二人が日本でコミュニティ・オーガナイジングの活動を行っている中で、障害に感じたことは何でしょうか。今後の日本の行政機関に向けて、こうしてほしいといったご要望やご提案がありましたら、ぜひご意見お聞かせいただければ幸いです」ということです。
ちょっと(質問文を飛ばし飛ばしで)間をしゃべっていないので答えにくいでしょうが、全部読んだほうがいいでしょうか。
湯浅:いや、大丈夫ですよ。
鎌田:湯浅さんからどうぞ。
湯浅:はい。(マーシャル・)ガンツのワークショップの時にもマニュアルみたいなものが配られて読みましたが、今回の鎌田さんの本は、それよりもずっと親しみやすくなっていて。小学校5年生の例を作って展開するのは苦労したと思いますけど、とても親しみやすいものになっていると思います。
日本的な課題ややり方に沿わせたものになってきていると思うんですけど、やはりさらにそういう面を進めていく必要があるかなと感じています。
例えば『スイミー』の「みんなで仲間になると大きな魚をやっつけられる」という比喩が、コミュニティ・オーガナイジングでは重要で。日本とひと括りにはできないんだけれども、私が見ていて少なくないなと思うのは、敵を作らない活動。例えば、こども食堂が解決したいことは「市長が気に食わない」とかそういう話じゃなくて、地域を元気にしたいとか。相手は人じゃなくて「課題」なんですよね。
「みんなで一緒になろう」という話になっていくのに「じゃあ『スイミー』の黒い大きなお魚って何なんだ?」というのを、もっと議論していくことが大事だなと思っていて。
コミュニティ・オーガナイジングを広める上での障害と言うほどではないですけど、そういうところでブラッシュアップしていって、地域に根付かせていくために必要なプロセスがさらにあるだろうと感じています。
あとは、日本だけじゃないということですけれども、やはり「語る」ことに対する抵抗感を(なくして)、いかに「大丈夫なんだ。話していいんだ」と思えるかが、大きな大きな課題だと思いますね。
自分に価値がないって感じやすいんだと思うんですよ。「自分の話なんかに価値はない。そんなことを人にわざわざ聞かせるのは、聞かされたほうが迷惑だろう。申し訳ない。そんな話に付き合わせるのは悪い」と感じてしまう人がとても多いと思っています。もはや活動の話じゃなくて、自分の家族の話とか自分の悩みを話すこと自体にも、ものすごく抵抗感があるんですよね。そういうところからかなとは思っています。
鎌田:私が課題や障害と感じていることはいろいろあるんですけれども、大きいのは「人々が政治や社会に参加していいと思っていない」ことですね。政治に対して何か意見をするとか、社会に対して何か意見をする、作っていく、参加していくという時に、「(政治や社会を)知っていなきゃいけない」と思っている人がすごく多い。よくわかってて、しっかり意見を持っていなきゃいけないと。
例えば、アメリカの人とかヨーロッパの人は、デモに参加するのに政治に詳しい必要はないと思っていると思うんですよ。おかしいと思うから行くだけなんですよね。
でも、日本の人たちにインタビューしていると「政治に詳しくなかったり意見を持っていないと、そういうところに参加しちゃいけない」と思っているとか「運動自体に参加しちゃいけない」と思っているということが、すごくあるんだなと思ったので。
民主主義なんだから「私たち一人ひとりが少しでも考えて行動することがとても大事なんだよ」とNPO側も訴えていかなきゃいけないですし、この質問で「行政から」と言っていましたけれども、行政や政府のほうも「あなたの声が大事なんだよ」と言ってくださるといいんじゃないかなと思っています。
審議会とか見ていても、当事者が呼ばれることって少ないんですよね。今回、性犯罪の刑法の検討会にやっと被害当事者が入ったんですよ。それまでは被害当事者が0人だったんですよ。刑法学者や医者や弁護士たちで構成されて、被害を受けている当事者は0人だったというのは、けっこうすごいことだなと思います。
日本も政策の作り方を当事者中心主義にしていくべきだと思いますし、日頃の生活で困っている人たちの声が大事なんだということを政府としても出してもらえると、私たち普通の市民も「もっと声出していいんだ」と思います。
NPO側は声を出す受け皿をもっと作るべきだと思います。今はエリート主義で、NPO側も「自分たちでオンラインで署名を始めるから、一般の人は署名してくれたらもうそれでいいわ(笑)」みたいなところもあるので、もっと参加できる枠組みは作っていくべきかなと思っています。
司会者:はい。ありがとうございました。今日はたくさんご質問にお答えいただいてありがとうございます。では、そろそろ終わりに近づいてまいりましたので、お二人からお知らせがあればお願いしたいです。
鎌田:湯浅さん、先にどうぞお願いします。
湯浅:特に「直近でこういう大きなイベントをやります」みたいなのがないのですけれども、こども食堂の関係で私が今、関わっている「むすびえ」というの団体のHPがあります。ほぼ毎日のようにいろいろアップしていますから、ご関心があれば見ていただければと思います。以上です。
司会者:では、鎌田さんからよろしくお願いします。
鎌田:はい。湯浅さんも参加してくださったコミュニティ・オーガナイジングのワークショップなんですけれども、毎回(募集開始から)2週間くらいでいっぱいになってしまうんですね。
本当に実践型で、ストーリーをどんどん語ったり、実際に初めて会った人たちと関係を構築してコミュニティを作っているので、ぜひ参加してみていただければと思います。
コミュニティ・オーガナイジング・ジャパンは、ワークショップの参加費用も大事な収入なんですけど、寄付もすごく大きな収入になっていますので、もしよかったら「こじゃさぽ」になってください。『こじゃさぽレポート』も送っていますので。以上です。
あとは、本をもしまだ読んでいらっしゃらない方いたら、ぜひ読んでください(笑)。
司会者:どうもありがとうございました。今日はお時間をいただきまして本当にありがとうございます。私もみなさんも、お二人のお話で持って帰るお土産がたくさんあったのではないかなと思います。私の中では、特にパブリックナラティブストーリーの大切さ、それを伝えることの大切さが大事だなと改めて思いました。
あともう1つ、湯浅さんのお話であった「通訳者としての能力」。思いは同じなんだけれども、言葉が違うからみんなが一緒になれない、1つになれないことがあるんじゃないかなと思っていて、その共通言語を作っていくことの大事さを感じました。ありがとうございます。
それでは今日のプログラムはこちらで終了となります。湯浅さん、鎌田さん、そしてご参加いただきましたみなさま、ありがとうございました。
湯浅・鎌田:ありがとうございました。
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