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「みんなで社会を変える方法」を学ぼう――こども食堂の事例から考えるコミュニティ・オーガナイジング(全7記事)

相手が自治会長や教頭先生なら、左脳的な発想が必要? 地域に「こども食堂」を広める、キーパーソンの条件

人々のパワーを集めて政治・地域・組織を変える手法が「コミュニティ・オーガナイジング」。貧困、孤立、ジェンダー平等など、さまざまな社会課題に直面している現在、ごく普通の人たちがつながり合って変化を起こすこのアプローチが、注目されています。そんな「みんなで社会を変える方法」について、実践者のお話を通して学ぶオンラインイベント「『みんなで社会を変える方法』を学ぼう――こども食堂の事例から考えるコミュニティ・オーガナイジング」が開催されました。「地域交流拠点」と「子どもの貧困対策」という2つの役割をもち、全国的に広がっている「こども食堂」の事例を紹介しながら、みんなで世の中をより良いものに変えていく方法について考えます。

「私たち支援者も実はすごく困ってる」

鎌田華乃子氏(以下、鎌田):本当ですね。今の岩手の事例を聞いていると、コミュニティ・オーガナイジングでは「価値観」でつながっていくことをすごく大事にしているんですよね。

「課題」だとぜんぜん合致はできないんだけど「根っこの思いは一緒だよね」ってなると、全然違う立場のように見える人たちの繋がりができますし。それぞれの現場で「がんばっていこう、支えあっていこう」となるので。それをやってこられたんだなって思いました。

あともう一つ、すでにみなさんがつながって、具体的な活動をしてなかったら、首長さんもたぶん振り向いてくれなかったと思うんです。ちゃんと共同しているところを見せられたのも説得材料として強かったんだなって思って。

全国キャラバンの言いだしっぺは栗林知絵子さんですかね?

湯浅誠(以下、湯浅):はい、栗林さんですね。

鎌田:ですよね。栗林さんは池袋でこども食堂をやっていらっしゃって、こども食堂の象徴的な存在の1人だと思うんですけれども。2016年かな、彼女がコミュニティ・オーガナイジングのワークショップに来てくださって。

その時、最後に「私、わかったんです!」って宣言されて(笑)。「支援者がつながることが大事だって気づきました」と。「今までは当事者の貧困で困っている人たちを救うことを考えていたけど、私たち支援者も実はすごく困ってる」って言って(笑)。

「支援者が同志で、支援者がつながることによって強くなれるんです。私はこれをやります! 支援者をつなげます! キャラバンします!」って言って帰っていって、本当にした。すごい人だなって思いました(笑)。

湯浅:あの人は、わかりやすくスイッチが入る人ですから。

鎌田:(笑)。すごいなと思う。

「右脳的・左脳的」の両方を持つ人がキーパーソンとなる

鎌田:もう1つ聞きたいなと思ったのは、こども食堂は各地に担い手の方がいるじゃないですか。湯浅さんから見ていて、その人たちがコミュニティ・オーガナイザーだなぁって思う側面とか、こういう人がうまくいっているなと思うことって何かありますか? 

例えば、栗林さんはすごく頼み上手だなと思って。「これお願い、あれお願い」で、全部自分で抱え込まないで、ちゃんとお願いしていく力があるなと思って。それでも優しいというか、ちゃんとケアをしてくれる。

湯浅:栗林さんみたいな人は、こども食堂の中でもかなり特殊で、抜きん出てると言っていいと思うんですけれども。ただ最近では、お寺さんとか自治会長さんとか企業さんも含めて、相当担い手が多様化してきています。

一番多いのは地域の女性たちなんですよ。共感的なコミュニケーションが上手で、思いを語られますよね。課題を左脳的に語るって、私なんかはどうしてもそういう感じになっちゃうんだけれども。

どっちかと言うと、地域の女性たちは右脳的に共感のコミュニケーションをとられることが多いので、広がりが生まれやすく、思いを共有しやすいと思いますね。

ただ、乗り越えられない相手だと乗り越えられないんですよ。共感を得られる相手はいいんだけれども、世の中には共感べースで話しても共感してくれない人がいるじゃないですか。

例えば、地域の自治会長さんとか、学校の教頭先生、市役所の市議会議員さんの中にそういう共感で動かない人がいる時に、やっぱり左脳的な理屈も必要で。

その両方がある人が、地域の中で広めるキーパーソンにはなっていってますよね。

鎌田:そうですね。確かに。

「通話者としての能力」がチームにあるのが理想

湯浅:ある程度、相手に合わせて話せることを「通訳者としての能力」って言ってるんですけど。通訳者としての能力は、生まれ持ってのものじゃなくて、やっていく中で培われるものですけどね。それが大事かなと思います。

鎌田:両方兼ね揃えている人も大事だと思うんですけれども、「チーム」のところでも少し話した、多様性があるチーム。心を動かすのが得意な人もいれば、左脳的な話し方の人もいれば、ネットワーキングが得意な人もいればというので、解決していけますよね。

湯浅:まさに通話者としての能力がチームにあるのが理想ですよね。その時にお互いに役割分担を尊重し合えるといいんだけど、「あんたは理屈ばっかりしゃべってて、あんたは思いばっかりしゃべってて、それじゃあ人に伝わらないんだよ」とか言い合いだすと、チームがバラバラになっちゃうので。

チームをどう守るか、作るかは、とっても大事だと思いますね。

鎌田:そうですね。お互いのことをよく知り合って、必要だって思える関係性ができると強いかなと思うんですけれども。

コーチングは、まだオンラインではやりにくい

鎌田:残り時間が少なくなったので、ここで1回、質問を受け付けられればと思うんですが、どうしましょうか(笑)。

司会者:ありがとうございました。一旦、みなさんから(質問を)受け付けたいと思います。どなたか質問をされたい方いらっしゃいましたら、手を挙げて発言していただけたらと思いますが、いかがでしょうか。

鎌田:チャットに質問をいただいていますね。

司会者:そうですね。「いいお話ありがとうございます。コロナはコミュニティ・オーガナイジングに影響しましたか? 変わったこと、変わらなかったことなどはありますか?」というご質問をいただいています。

鎌田:湯浅さん、どうですか?

湯浅:私? まずは鎌田さんじゃない? 俺?

鎌田:私ですか? まずどうぞ!(笑)。

湯浅:影響があったと思いますね。コミュニティ・オーガナイジングって射程が広いので、私よりも鎌田さんのほうが(回答者として)いいと思いますけど。少なくとも1対1で話すとか、コミュニケーションで広げていくのは、明らかにやりづらくなった面があると思います。

他方、オンラインが発達してきて、今日もオンラインで(このイベントを)やってて、鎌田さんがアメリカにいるのにこうやって話せているワケだから、メリットももちろんある。

ただ、コーチングって、まだオンラインではやりにくいんですよね。内面的な話をするのに、もっともっと(オンラインが)浸透していけばできるようになるのかもしれないんだけれども。自分の団体でも100パーセントオンラインで(コーチングを)やっていても、まだちょっと難しいなと感じているところで、そういう意味では影響があるんじゃないかなと感じています。

日米ともにコロナで増加した「ボランティアをしたい人」

鎌田:ありがとうございます。(湯浅さんに話を)先に振っちゃいましたけど。私も考えると、確かに影響はあって。コミュニティ・オーガナイジング・ジャパンでも今まで対面でワークショップをしていたんですけど、全部オンラインになって、湯浅さんがおっしゃるとおり、ちょっと難しさはありますね。

ただやってみて、オンラインでもいけるんだなって。そういう場と設定しているのもあるんですけれども、2日間のワークショップをしていて、みんな土日の9時から6時までよく張り付くなというくらい、すごく楽しそうにやっている。

終わったあと、画面の前から離れたくないと思うようなコミュニティができ上がっちゃうらしいんですよね。私はアメリカにいるので時差があってちゃんと参加できないんですけれども(笑)、すごいなと思っています。

アメリカでいうと、ボランティアをしたい人がコロナの中でウワーってすごく増えたそうです。Black Lives Matterという黒人の差別を解消するような運動が盛り上がっているのもあるんですけど、日本ではどうなのかなと思ったら、やはり何かしたいし時間はある人たちが増えたので、ボランティアをしたい人がすごく増えているそうです。

湯浅:支援が増えたというのは、こども食堂も同じですね。私たち「むすびえ」に対してもそうだし、個々のこども食堂の方たちも口を揃えて「ご支援はこのコロナ禍で増えた」とおっしゃっていますね。

鎌田:希望ですね。

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