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つくりたい社会は僕らの手で(全1記事)

日本人の“政治離れ”は止められるか わかりやすく公平な政治情報を届ける『JAPAN CHOICE』のビジョン

2017年から定期的に開催されている、飲めば飲むだけ寄付になるスタンディングバー「KIFUBAR」。みんなで一緒に飲みながら「より良い社会、より良い未来」を語りあうイベントです。今回はそのスペシャルバージョンとして、さまざまな社会課題の解決に取り組む5名の登壇者によるトークイベントが開催されました。本パートでは、NPO法人Mielka代表の徐東輝氏が登壇。選挙や政治に関するさまざまなデータを見やすく伝え、ユーザーの意思決定を助けるメディア「JAPAN CHOICE」について紹介しました。

ミッションは「幸せな民主主義」の実現

徐東輝氏(以下、徐氏):こんばんは。徐東輝(そぉとんふぃ)と申します。よろしくお願いします。

(会場拍手)

おそらく先ほどの雰囲気を見た限り、ほとんど岸田(奈美)さんに会いに来たんじゃないかっていう……最後のプレゼンをすることがすごく嫌なのですが。大丈夫ですか?

参加者1:大丈夫! 大丈夫!

参加者2:徐東輝ちゃん!

:すみません。それではお決まりということで、乾杯だけやらせていただこうと思います。みなさん、グラスを持っていただけますか。じゃあ乾杯!

会場:乾杯!

:お願いします。せっかくなので、自己紹介をさせてください。いつもやらせていただいているスライドに変えます。今日はせっかくの寄付ですから、寄付を募っている自己紹介といえばどんなものかと思いついたものが、ウィキペディアでした。この超鬱陶しいあれ、あるじゃないですか。「ウィキペディアに寄付してください!」というようなものです。

あれを真似しようと思いましたので、ウィキペディア風の自己紹介をしてみます。僕は弁護士をしておりまして、今はスマートニュースという会社の社長室で戦略を練っています。それと同時に、法律事務所もやっており、普通に弁護士もやっています。さらにプラス、今日はNPO法人の代表理事としてやってまいりました。

実はこのスマートニュースと、法律事務所と、NPOにおける僕のミッションは、全部一緒です。良質な情報空間を醸成するアーキテクチャを作りたいと思っています。それによって、幸せな民主主義を実現したいということ。それが僕のミッションです。ただ、ほぼ何を言っているのかわからないと言われますので、今日はそれについて、紙に書いて説明したいと思っています。

良質な政治情報を届けるWebサービス「JAPAN CHOICE」

このミッションはなにかといえば、この情報空間において、どれだけみなさんは幸せでしょうか。スマホやネットを見ていて、本当に幸せな情報空間を作れていますか? その問いかけに対して僕は、情報法というプライバシーや、サイバースキルが専門ですから、その専門家として社会に価値のある情報空間を設計したいと思っているんです。

スマートニュースのことは、みなさんはご存知でしょうか。2,000万人が使っているニュースアプリなのです。このスマートニュースを使って、もっと人々に良質な情報を届けたいと思っています。「JAPAN CHOICE」という、今日紹介するWebサービスを使って良質な政治情報空間を作りたいと思っています。それが、僕の簡単な自己紹介になります。

民主主義というワードを聞いて、みなさんはなにを思い浮かべますか? なにかについて反対しているデモといったようなようなものをいろいろと思い浮かべると思います。ギリシャで最初にあったと思いますが、ギリシャで最初にこの民主主義が起きたというようなイメージを思い浮かべていくと、これはアメリカの合衆国が独立するときのことを民主主義だと思い浮かべてもいいかもしれませんし、(議員が殴り合いをしている日本の国会のスライドを映して)これが民主主義だと(笑)。

(会場笑)

思い浮かべる人も。殴り合いをしている国会ですが。そう、おそらくそれぞれ、みなさんは民主主義という言葉を聞いて、思い浮かべるワードがあると思います。それをある程度抽象化して、みなさんの最大公約数を考えてみることで、おそらくこうなると思うんです。自分のことは自分で決めよう。だけど、他の人もいるから、そこは調整しましょう。

僕としては、これぐらいのものだと思っています。すごく簡単なことですね。やっぱり民主主義というものは、4文字熟語になった瞬間に、ものすごく「安保法制反対!」というようなことをやる人もいれば、「桜を見る会は別にいいんじゃないか」という人もいて、なにかこうした感じでいろいろとあるのですが(笑)。民主主義ってこんなものでしょって。

民主主義の強みは、自由であり平等であること

どうして僕が情報空間において、幸せな民主主義をやりたいと言っているのかというと、その理由は、みなさんが1で、僕は0だったからです。これは何かといいますと。

おそらくこの中にも0の人がいるかもしれません。ですがみなさんはおそらく、ほとんど1です。それは、コンピューター上で政治的存在として認識されているかどうかです。みなさんは1で、僕は0。

僕は名前のとおり、在日韓国人なのですね。ですから、日本生まれの日本育ちですが、日本に投票権はありません。日本で政治を考えてても投票権がないのだけど、別にそれが欲しいと言っているわけではありません。もっとすごいのは、長年韓国にも投票する機会がなかったのです。

ですから、韓国の政治にも関わってはいけないし、日本の政治にも関わってはいけないんです。僕の祖父母の代から、実に60年間くらいはそういう政治的空白という存在があったんですよ。他方で、みなさんは、必ず自治体や国に、選挙などいろんな意味で、あなたの意見を届けてくださいと求められますよね。

4年に1回か、3年に1回。選挙のハガキが来て、国に認められる存在なのだという確認ができる。そうした存在であることが、僕はものすごくうらやましいんですね。なぜなら、この国に関わっていいと思ってもらっているから。だから僕は、この「0」だからこそ伝える価値があるんじゃないかと思い、民主主義というものに、これは国の問題ですが、僕のライフミッションは民主主義だ、情報空間だと思って決めました。

それでは、みなさんにとってさらに問いかけたいのは、民主主義の強みは何でしょうかと。民主主義の強みというものは、これもなにかすごく理念的なのですが、自由であり、平等であることだと思うんです。みなさんは、一人ひとりが平等だから、1人1票が与えられていると思っているのかも知りませんが、僕にとっては1人1票だからこそみなさんがギリギリ平等なんだと思っています。だからこそ平等であると言えるし、みなさんは1票を持っているから自由なんだと感じます。

FacebookやTwitterのタイムラインの過半数はフェイクニュース

僕は今、民主主義は岐路に立っていると思っています。おそらく、いろんなところでそういった情報は出ています。2016年に起きたケンブリッジ・アナリティカ事件についてご存知かもしれませんが、Facebookから大量に個人情報があるコンサルティング会社に流出し、そのコンサルティング会社が情報を解析をして、有権者たちにターゲティング広告を出したんですね。トランプが勝つように誘導するような広告を出したとか。

ひどいところでいえば、黒人に間違った投票日を教える広告を出していました。黒人はみんなヒラリーが好きなので、黒人が投票日に投票に行けないよう、間違った広告を出していた。そういったことをしました。この辺から情報空間が歪み始め、すごく泥沼のようになっている。

ついに去年、Facebook上でフェイクニュースの掲載、みなさんに与えた影響・インプレッションが主流のニュースのそれを回りました。つまり、みなさんが見ているタイムラインは過半数がフェイクニュースです。そうしたことが、もうリサーチで明らかになりました。Twitterはもっとひどくて、一昨年の段階で膨大な数のフェイクニュースが出ています。

そういうくらい、もう情報空間というのは、基本的にコントローラーが少ない。もっと言えば、みなさんは日々さまざまなアプリを使っていますよね。スマートフォンで、アプリやWebサービスでいろんなものを使っていると思いますが、あの行動履歴なども何をしているのかと言えば、その会社しか知らないと思いきや、そんなことはありません。

もっと裏側で全部統一されていて、あなたたちは何をしている人だということや、名前はわからないけれどもあなたはこういう人ですと、ほとんどが特定できます。

これがさらにいくと、中国なんて11億人くらいは何をしているのかがだいたいわかります。監視社会ですから。国に入ってから出るまで、何をして、どこで何を買ったかまでが全部わかる状況にある。こうした情報空間ができあがっている中で、データの悪用であったり、フィルターバブル、もう好きな情報しか見なくなっているから、あなたのタイムラインには自分の好きな情報しか入っていません。

フェイクニュースがはびこっている、それによるターゲット広告が続く。そうした空間において、民主主義は本当に岐路に立っていると思うんですよ。

民主主義ならではの「自由」は最大の脆弱性でもある

最初に戻って民主主義の強みはなんだったのかといえば、自由な空間、自由や平等と言ったんですが、TED Talksなどではメインテーマが「民主主義の信頼」になり、民主主義が一番強かったのは、自由な情報空間だったはずなのに、今ではそれが最大の脆弱性になっています。

今、一番情報空間として弱いのが民主主義国家で、めちゃくちゃ簡単にハックできます。選挙結果なんて簡単にコントロールできます。自由な情報空間はコントロールしやすいので、それをしてしまえば民主主義が脆弱になるんだよということは、もう世界中で言われています。

だからこそ僕は、良質な情報空間を作りたい。信頼できる情報空間を作っていくアーキテクチャを作りたい。アーキテクチャというのは、みなさんの行動を無意識のうちに良い方向に変えていくものですね。

ですから、僕は無意識のうちに、みなさんがなんとなく幸せな民主主義の世界になってほしいと思っているのです。意識的にがんばって投票に行きましょうというのでは、しんどいじゃないですか。環境問題を考えましょうとなると、しんどいじゃないですか。考えるのもしんどいし、僕はすごく怠惰な人間ですから。とにかく、無意識のうちにみなさんが、なんとなくデジタルの世界で幸せな状態でいられる状況を作り出したいということです。

その結果、幸せな民主主義を実現すると言っているんですが、簡単に言えば、民主主義を操る勢力が現れ始めているので、それに抗いたいと思っています。そこで僕は、NPO法人として「JAPAN CHOICE」というサービスを作っています。「JAPAN CHOICE」というサービスを聞いたことがある人は、どれぐらいいらっしゃいますか。すごくたくさん! ありがとうございます。

参加者3:知っているよ!

誠実で公平、かつデータとファクトに基づいたメディアが求められている

:ありがとうございます! これは何をしているのかといえば、まずユーザーにたくさんインタビューをしたんですね。政治的意思決定のハードルを下げたいんだけどどうすればいいかと。

「みなさんが『しんどい』『政治なんかいやだ』『鬱陶しい』と思わないためには、どういったサービスが欲しいですか?」と聞いたときに、原因がこんなにいっぱいあります。

「情報が多すぎるし、メディアもネットも信用できない」、「何を見たらいいかもよくわからない」、「本当に政策が実行されるかどうかもわからない」、「そもそも政策がどこに書いてあるのかすらわからん!」、「テレビは誰々が辞任したということばかりだ」というようなことを言われました。

よし、これ全部解決します。僕らがこのユーザー志向でバーッと考えていった結果わかったのが、みんな誠実で公平なメディアを求めていますということ、あとはこの時代だからこそ、データとファクトにも基づいてほしい。

文字を読みたくない人も多い。もう文字なんか読まないと思っているので、直感的に可能なデザインを作りたい。あとはテクノロジーを使って、もっと人間の脳では追いつかない範囲のものまで厳選してあげようと思ったんですよ。みなさんのスマートフォンで、「JAPAN CHOICE」と触っていただければ良い政治情報が出てくるんです。

今日は時間がないので、(あとで)みなさんもぜひ触ってみてください。ここにくれば、すごく簡単に各政党が何を言っているのかもわかります。

あなたの選挙区の政治家さんが誰なのか、どういったことを言っているのかも見ることができます。あとは質問に答えていけば、あなたの思想にマッチする政党はここですというものも出ます。政治家が何に、どのお金を使っているのかも、ビジュアライズされています。このようにUX的に、平均的に5分から6分あれば、どこの誰に投票をしようかが決められるようになりました。

そうしたものを作っています。これは社会人15人ぐらいと、学生10人ぐらい、あわせて25人ぐらいで作っていたんですが、実際に前回の衆院選、今回参院選で合わせて50万人ぐらいに使っていただきました。やっぱり使う人は投開票日が一番多いんですよ。

僕らのライバルというか、一緒にやっているのが「Yahoo! みんなの政治」というところなんです。

ところが、なんと「Yahoo! みんなの政治」は、来年サービスが終了します。僕は先週聞いたので、「Yahoo! みんなの政治」さんからニュースが飛んできて、「すいません、力つきました」というような(笑)。

お金にならないんです。まったくお金にならないです。なぜなら、誰もお金を払って政治のデータなんて見たくありませんし、選挙投票日くらいしか使わないので、広告業者が儲けているんですよ。そういうわけで、いよいよやばいと思っています。

「桜を見る会」は何が問題なのか

日本の政治の情報空間は、誰が維持すんねんというようなことを思っていて、かなり使命感に駆られています。実はこのサービス(のユーザー)は30代前後がほとんどです。18歳から44歳までのユーザーの方で、だいたい80パーセントくらいになっています。あえて、若い人向けのデザインにしてるんですよね。

90ヶ国ぐらいからアクセスしてもらえました。ほとんどがスマートフォンからのアクセスになっているので、パソコン版のデザインはもうリソースがないのでやっていません(笑)。

パソコンでやると見にくいです。スマホで見てください。いろんな取材もしてもらったんですが、実は「READYFOR」さん、今日KIFUBARの企画運営のメンバーに「READYFOR」さんがいらっしゃるんですが、徳永(健人)さんにサポートしていただいて、実はこの参院選で400万円の応援をしていただきました。

次に僕らは、来年あると言われている衆議院選に向けて、もう少しメンバーを拡大して、日本の論点を可視化しようとしています。構造分析をもっと直感的にできるんじゃないかと思っています。

例えば「桜を見る会」の何が問題なのかということは、もうわからないですよね。文字を読みたくないじゃないですか。文字を読みたくないから文字を読まないでいいように、直感的に構造分析できるんじゃないかということは実際に挑戦しています。

あとは、どの政治家はどの法案に賛成して、どの法案にどういった発言をしているのかというようなデータ分析をして、可視化させようとしていました。あとはフェイクニュースが現れたら、それをアラートできるようにしているというものもやろうとしています。いろいろとやろうとしているんですよ。

選挙に関する有権者の情報は、政治家にとって生死を分かつほど重要

最後に、なぜ僕らが寄付をするのかという話をしたいです。実は、最初に言ったターゲティング広告系をしようと思えば、実はこれ、億単位でお金が動くんですね。アメリカはこのデータを2,000億円くらいで売買しまくっています。

実は僕らは、もちろんみなさんの同意を取ったうえで、Webの行動履歴を見ています。あなたがどの選挙区にいる人でどういう政策に興味があるかを匿名化して取ってるんですが、そのデータは政治家にとっては、もう生死を分かつレベルのものなんです。

東京都第2選挙区の若者はこの政策に興味があるのか、ということが見える。でも、僕らは決めました。データは絶対に売りません。ですから、僕らは研究目的で分析はしますが、まったく第三者には売りません。

これは、何千万、何億円単位のマーケットでありますが、もうやりませんと決めた。かつ、有料課金してしまうと、平等ではなくなってしまうんですね。スマホを持っている人でも、とにかく全員に届けたいから有料課金は絶対しないと決めた。

さらに、政治的な広告も絶対に入れないと決めました。みなさんにとっては、政治的なターゲティング広告は無意味、あるいは場合によっては悪だと思ったから入れません。組織的寄付もやりませんと決めた。

実は何社か、組織的に寄付してくれるというものもあったんですが、それをしてしまうと、どう考えても何らかの形で政治とつながっているんですよね、ということがあって。そうするとどうなるかと言うと、このサービスに価値があると信じてくれる人のサポートができないんだということがわかった。なので、今はなんとか寄付だけで賄っています。

実は社会人の方も本業があって、こっちはほとんどボランティアのような感じでやっている人が多い。「本業はSNSで書かないでください」(と言いつつも)、本業で疑問を感じている人たちが、公共益のためにアーキテクチャを一緒に作ってくれています。

最後に、実は寄付以上に、この情報空間やこのサービスを作ってくれる人をすごく探しています。データ分析チームもそうだし、フェイクニュースかどうかを判断するチームもそう。デザイナーでもそうだし、エンジニアでもそうだし、すごくこの情報空間を良くしていこうとしているチームにぜひ入ってほしいと願っています。

「Yahoo! みんなの政治」もいよいよ終わってしまうので、もう僕らしかいないんじゃないかと思っています(笑)。ですから、最後に戦ってくれる仲間をとくに募集しています。ということで、プレゼンは終了したいと思います。ありがとうございました。

(会場拍手)

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