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佐渡島庸平×小泉寛明トークセッション(全2記事)

国際都市・神戸に優秀なクリエイターを集めるには? コルク佐渡島庸平氏×Lusie小泉寛明氏の見解

まちづくりの観点にとどまらず、今後あらゆるビジネスで「コミュニティ」の存在は重要なキーワードとなっています。そこで「地方におけるコミュニティの作り方、育て方〜クリエーターの『居場所』はどうつくっていくべきか〜」をテーマとした「Creators Reunion KOBE」が1月24日に開催されました。本パートでは、株式会社コルク・佐渡島庸平氏とLusie小泉寛明氏が神戸市の課題などを語りました。

何があればクリエイターは神戸に来るのか

山阪佳彦氏(以下、山阪):「コミュニティ」の話について「クリエイターは移住してくるのか?」とか、仕事があるだけでは移住しないなというのは、それはそうだなとは思うんですけれども、もちろん仕事もあったうえで「ほかに何があったら移住するのかな?」ということで。

佐渡島さん、今、東京でご活躍なんですが、働く場所とかやっぱりこだわられます?

佐渡島庸平氏(以下、佐渡島):そうですね。僕の会社はすぐここの会場から歩いて2~3分のところなんですけど、今3軒目なんですね。起業してオフィス変えて。ずっと創業した時から渋谷の周りで探してて、渋谷の周りがあんまりなくて、はじめは原宿のほうへ行ったのですが、今また渋谷のほうに戻ってきてて。

それで、コンテンツと場所は関係してくるなと思ったときに、僕が担当しているのはけっこう漫画でも文学っぽい感じだったりするので、「秋葉原じゃないな」と。「新宿でもない、六本木でもないな」という。「池袋もやっぱり違うな」って。

渋谷は「若者の街」と言いつつも、東急百貨店やBunkamuraがあり、けっこう落ち着いていたりするので、それでここを「文化の街」にする、「大人向けの文化の街」にするというのをやりたいなと。表参道は近いんですけど、表参道はエンタメじゃなくてデザインだなと思って。

それで、ある種コルクが核になるぐらいのつもりで渋谷でやっていきたいなと思っています。渋谷とか恵比寿というのが、僕はけっこうエンタメの街としてはいいかなと思ってるんですけどね。

神戸移転の場合、何がネックになるのか

山阪:そういう意味で場所にこだわられていたということなんですが、今日は神戸に創造産業を集積する話なんですけれども、もしコルクという会社を神戸に移転してくださいって言っても、なかなかすぐ移転する気はないと思うんですが、何がネックだと思いますか? 逆に、何があれば移転しますか? 移転というか、例えば支店を出すという話も含めて。

佐渡島:まず、会社は固定費が大変なんですよね。やっぱりベンチャーでやっていくときに、コンテンツ周りって、受託産業だったら受ける値段で決まるので、その中でやっていけばいいんですけど。

人件費は仕方ないとしても、家賃とかの固定費は下げたいなというのがありますね。

佐渡島:低い家賃と自分の人件費っていうんだけだったら、クリエイターもすごい挑戦が始めやすいじゃないですか。そこに家賃が20万円と自分の人件費などになると、すごいしんどいですよね。

それ僕なんか例えば、もしも僕がああいう企画に関わってたら、あの店舗の全部のECがうまくいくように、あそこらへん一帯を貸す人がECコンサルタントを1人雇っておいてあげて、その人に自由に聞けるようにするなどの仕組みを作るだろうなと思いますよね。

山阪:いいアイデアですね。

小泉寛明氏(以下、小泉):そうですね。

山阪:いろいろご意見というか提案もいただいているんですけど、会場のみなさんも今「#CRKOBE」ってスクリーンに出ていますが、Twitterで今日のゲストのみなさんへの質問でもいいですし、「こういうことやったらどうか?」みたいなことを個人的に思っていらっしゃることがあったら、ぜひつぶやいてください。

ここでお答えできることはお答えしていただきますし、市への提言は持ち帰って市のほうで取りまとめて参考にさせていただきたいなと思っています。

いまだ眠っている使える神戸市の財産

佐渡島:さっきの小泉さんのFARMERS MARKETがすごくいいなと思いました。それで、シェアリング・エコノミーって空いてるところをどう使うかという考え方じゃないですか。それで市が持ってるものとかって、会議室にしたって空いてる施設とかいっぱいあるんですよね。

山阪:空いてますね。

佐渡島:そう。すごく空いてるじゃないですか。それである会社はむちゃくちゃすごい勢いで伸びてるじゃないですか。

それで僕が思うのが、映画産業に貢献していくのはいかがでしょうか。例えば、公民館とかでどんどん自主制作映画でぐるぐる回せるようにするのを、ほぼほぼ無料でやれるようにする。

それで人を呼べるかたちで、映画を見せる場所、「自主制作映画を作ったら神戸で上映しよう」みたいな感じでやって。それで(映画を)観終わったあとにみんなで食事を食べようとか、何かイベントをあしらってコミュニティにしていくとか。

エンターテインメントとかクリエイターを集めるんだったら、その核になる人とか核になるものを何にするのかを決める。「そのために使える、眠ってる神戸の市の財産ってなんなんだろうなぁ?」というのを洗っていくと、さっきのFARMERS MARKETみたいな広場などはいっぱいあるんだと思うんですよね。

山阪:なるほど。今のお話で、小泉さんなんかも実際に、市の資産というか遊休資産みたいなものを開いていこうみたいな活動もけっこうされているんじゃないかと思うんですけれども、具体的に何かありますか? 

小泉:そうですね、僕らは「自分でやったほうがいいかな」という感じになってきてて。1回やったことがあるからかもしれないですけど、例えば神戸とかだったら、それなりにいい人が来てやればそれなりにやれるんですよね。「見つかるかどうか」みたいなところはあるんですけど。

そこは、例えばFARMERS MARKETですと、いろいろ市の方々にも協力いただいてというものあるんですけど、基本はあそこの場代というのは歩合制なんですよね。野菜の売上の10パーセントという売上でやってまして。

要はみんな、ベンチャーもやっぱり全部売上は歩合制で場代を払うとか、人件費も払うとか。実はR不動産、僕ら7年やってますけど、R不動産自体もみんな営業マンは実は歩合制です。うちのスタッフ全員、歩合制なんですよ。だから経営者としてはリスクが低減できる。その分一番、できるだけマックス、透明性も高めるし、給与も歩合。

みんなで一緒に、我々R不動産側は古い建物を流通させていきたい。FARMERS MARKETは地元の野菜をちゃんと食べるマーケットを作りたい目的がありますけど、そういうことを「給料別に低くても、歩合制で自由があればやりたい」みたいな人たちが多いので、そういう組織でやっていってますね。

神戸には今営業マンのようなプロデューサー的な人が足りない

山阪:さきほどちらっと「神戸はまだ全体にクリエイターのレベルが……」というお話が小泉さんからありました。そういう意味で、外からやって来る人も優秀な人じゃないといけないと思うんですけど、どうすればそうやって優秀なクリエイターが呼べると思いますか?

小泉:神戸に今足りないかなというのは、クリエイターの人やクリエイティブの仕事、いろんな業種があると思うんですけど、やっぱり、仕事を取ってくる営業マンみたいなプロデューサー的な人がぜんぜんいない。

たぶん神戸でいうとアシックスさんとかフェリシモさんとか、いろいろな大企業がけっこうあるんですね。その大企業では、いろいろ広告を作らないといけない人たちがいる。

たぶん多くが域外流出してるということなんですけど、じゃあアシックスに行って、営業して「これやろうぜ!」みたいなことを言うパワーのある人がいない感じですよね。そこにすごく大きなマーケット、3,000億円のマーケットが広がっているんですよ。

山阪:3,000億円ね(笑)。

小泉:はい。

山阪:アシックスが3,000億円かどうかわからないですけど、3,000億円の金脈があるということでね。

小泉:「やったらいいのに……」と思います。

山阪:佐渡島さんみたいな方が来られると、3,000億円ぐらいかっさらっていけるということですよね。

佐渡島:だから誰か中心になる人で神戸にいるかどうか。

山阪:そうですね。

佐渡島:例えば、長州藩は、一番はじめに吉田松陰がいたのがすごく大きいと思うんですよね。薩摩の場合は西郷隆盛と大久保利通がいて、それぞれが核となってその周りにいろいろな人が付いてきた。だから1人か2人、圧倒的なパワーを持ってる人がいれば全部変ってきて。

それはすごいしっかりとコンサルみたいなので頼んだら起きるものではないんですよね。それで起きるんだったら全部の地方都市でもうとっくに起きているはずなので。

山阪:そうですね。

佐渡島:でも「神戸の魅力ってなんなの?」と言ったときに、なんかそれがすごく曖昧な感じなんだと思うんですよ。

山阪:はいはい。

小泉:よく「神戸って素敵な街ですね」って外の人から言われるんですけど。

佐渡島:そうですよね。横浜とか神戸というのは「外国とつながっていた」というすごい古いイメージがなんとなく残ってOK、みたいな感じなだけなんだと思うんですよね。実際は別に外国とも近くないし、何もないって感じですよね。

山阪:(笑)。

神戸のポテンシャルは山と海?

小泉:こういう表現がいいのかはわからないですけど、とある人がおっしゃっていたのは、神戸の人はみんな、「山と海があっていい街なんですよ」って。それはそのとおりなんですけど、「誰も山と海に入っていって冒険しようとしないんです」みたいな、そういう表現をされていたんです。けっこうやっぱりポテンシャルは山とか海にあるなと思っていて。

山阪:なるほど。

佐渡島:でも、神戸の人ってみんな山登りとかするんですか?

小泉:シニアの方が行くというのは……。

佐渡島:行ってるんですか?

小泉:若い人で山をガーッと走ってる人がすごいいっぱいいるかというと、あんまりいないですね。

佐渡島:そうですよね。だから何を売りにするかですよね。

小泉:実は地域のほとんどというか、3分の2ぐらいが山とか農地なんですよね。ということもあって、個人的には大自然が神戸の一番の資産かなと。

山阪:ある種都会なのに、そばにそういう山もあるし、自然に触れられる機会が多いということですよね。

小泉:そうですね。はい。そういう意味で、なので、アシックスがそこで生まれたのは自然があったからかどうかはわかりません、靴産業があったからだとは思うんですけど、スポーツ産業もありますし、もともと食品メーカーというか食品を扱っている会社さんもけっこう多いので、そこは1つの可能性のある分野だと思っています。

佐渡島:いろんな世界の、フランスにしたってイタリアにしたって、何か「これぞ」という特徴って実は1個か2個ぐらいしかない感じでした。たぶん一番いいのって「時間がゆったり流れてて、住んだらいい」みたいな感じで、あとはもう特徴は1個エッジーになるしかなかったりすると思うんですけど。

じゃあ「観光客も呼びたいし、住んでる人も満足させたいし」みたいないろんなことを狙っても難しくて。じゃあ「食」でやるんだったら、じゃあ「食」でもうどこまでもエッジーになって、料理人が「もう絶対神戸でやったほうがいいでしょ」みたいな仕組みを作りきることだと思うんですよね。

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