2024.12.24
ビジネスが急速に変化する現代は「OODAサイクル」と親和性が高い 流通卸売業界を取り巻く5つの課題と打開策
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尾原和啓氏(以下、尾原):僕は今、こういうリモートで暮らす状態をしているのですが。
5年ぐらい前って、みんな覚えてないかもしれないんですけど「ペーパレス、ペーパレス」って世の中まだ言ってたんですよ。
井上皓史氏(以下、井上):はい。
尾原:でも今、言わなくなったじゃないですか。それはなぜかというと、各会議室に、プロジェクターとかディスプレイがあるのが当たり前になったからです。今はもう、お客さんのところに行くときに紙で印刷して行くケースって、よっぽど古い業界の方々のところまで行くときぐらいです。
井上:なるほど。
尾原:「ここは紙でないと落とせない」というとき以外は、もう、お客さんのところにディスプレイを繋いでやるようになっているんですよね。
井上:そうですね。ディスプレイが会議室にないっていうのは、もうほぼなくなりましたよね。
尾原:はい。少なくとも僕らの業界ではないじゃないですか。
井上:はい。
尾原:そうすると、紙を印刷する必然性がなくなるんですよね。だから「ペーパレス」って言う必要性がないんですよね。
井上:なるほど。
尾原:それと同じで、今はお客さんのところにWi-Fi環境があるかとか、ゲストWi-Fiがあるかとか。アメリカのシリコンバレーの会社だと、もうゲストWi-Fiがない会社なんてほとんどないわけですよ、少なくとも西海岸に関しては。
そうすると、こうやって僕みたいにリモートで入る人間が、会議の半分ぐらいいてもまったく問題ない。となると、「そもそもなんで30分かけてお客さんのところに行くんだっけ?」と。それに「1時間ミーティングするっていうのも意味なくない?」となる。
井上:そうですね。最初の5分とか後ろの10分ぐらいは他愛もない話になってしまうことが多いですもんね。
尾原:そうなんですよ。それだったら、そもそもお客さんとチャットとかSlackで繋がっているから、世間話は世間話でSlackとかチャットでやって。
本当に「ちょっとこの10分さ、困ってるから助けてよ」と、テキストで書くよりも音声とビデオで話したほうが早いときには、すぐ10分だけ繋いでパパッとface to faceで解決する。そうしたほうが効率的だったりするんですよね。
井上:そうですね。営業で移動時間が3、4時間みたいなことって当たり前になっている。移動コストを減らし、本来の仕事に集中することがリモートのよさだと思います。
井上:次にいきたいと思います。今回、本のなかで印象的な図があったと思うんですけども。5つの幸福の図ですね。
尾原:はい。セリグマンのウェル・ビーイング(well-being)ですね。
井上:はい。マーティン・セリグマンさんが言われているものなんですけれども。尾原さんの本のなかでも「達成」「快楽」よりも「人間関係」「意味合い」「没頭」という3つにフォーカスをしている人が非常に多くなっている、という話がありました。
尾原さんは最初、マッキンゼーやリクルートに行くときは、「達成」とか「快楽」を幸福の軸にされていた時期もあったんですか?
尾原:あ~! それでいうとですね、僕自身はめっちゃ達成型の人ですね。
井上:そうなんですね。今もですか?
尾原:というか、プロフェッショナルとして生きるということを、マッキンゼーのときに叩き込まれたんです。
井上:プロフェッショナル。
尾原:そもそも、僕自身は高校生のときから自分でプログラマーをやって、学生なので月に10万とか15万ぐらいの収入ですけど。大学のときも自分で商売とかをやっていたので。やっぱり、お客さんに対して、クオリティを保ってきちんと納期を守って提供するということが、最低限の義務なので。
井上:もう当たり前だったんですね。
尾原:だから「快楽」というよりは、「矜持」ですね。それをやらなければ自分ではないという。
井上:なるほど。
尾原:マッキンゼーに入社する初日にですね、「プロフェッショナルってなんだ?」ていう話をされたんです。
井上:なるほど、おもしろいですね。
尾原:プロフェッショナル……今日、こんな話だらだらしてて大丈夫ですか?
井上:大丈夫ですよ(笑)。
尾原:つまんないと思ったら手あげてもらって。手あげる人が1割ぐらいになったら、話ポンポン切り替えますので。
井上:わかりました。
尾原:とにかく、なんでもネタしゃべれるから。もっと本の話が聞きてえよってなったら本の話をします。
井上:わかりました。じゃあ手あげていただきます(笑)。大丈夫です。すごいですね、バリと日本で。
尾原:で、プロフェッショナルの話をすると、プロフェッショナルの原義って、プロフェスなんですね。
井上:プロフェス。
尾原:プロフェスって英語では「告白する」という意味じゃないですか。もともとは、「神に告白する」という意味なんです。
井上:なるほど、ここで神というワードが出てくるとは思いませんでした。
尾原:つまり、もともとプロフェッショナルというのは、ギリシャ時代にたった2つの職業にだけ認められていた称号なんです。それは何かというと、お医者さんと裁判官。この2つは、人間なのに人間の命を扱うわけですよ。
井上:はい。
尾原:だから本来的に言えば、神の教えに反する行為をするんですね。
井上:なるほど。
尾原:だけど、人間の生活、人間の生命、社会という生命を守るときに、どうしても踏み越えなきゃいけない。人の死を扱うということに。
それを扱うからには、神の教え、ようは、人を軽んじて殺めてはいけないとか社会の自律性に対して、「私たちはぜったい犯さない」ということを神様に告白する。そうすることで、神様から、お医者さんや弁護士という職業を許される。それがプロフェッショナルと言うんですよ。
尾原:そうなったときに、マッキンゼーはコンサルと名乗るプロフェッショナルなわけです。正直、コンサルなんて、世の中に吐いて捨てるほどいて。人間のクズもいっぱいいるわけですよ。
井上:(笑)。コンサルのなかにですか?
尾原:だって、自分で言えばなれるから。だけど僕たちは会社の命をお預かりして、大事な従業員の方々に対して生活を左右するようなご提案を申し上げる職業なので。
やっぱり神様に言う必要性があるわけですよ。「われわれはきちんと、クオリティ高いアウトプットをお客様に提供し、それがお客様にとって理解でき、実行できるかたちにして、お客様に喜んでお金を出していただく存在になる」っていうことを。
ただ、コンサルの神様なんていないわけですね。お医者様には、ちゃんとヒポクラテスというお医者様の神様がいるんですよ。で、今でもそこに誓いをたてるんですね。
井上:そうなんですね。
尾原:看護婦の方とか、さすがに今日は来ていらっしゃらないかな? 看護師の人って戴冠式をやるんですね。帽子をかぶる儀式。あれは、未だに神に誓うんですよ。
井上:コンサルの場合は儀式はない、と。
尾原:そう、コンサルにはないから。結局自分にプロフェスするしかないんですよ。自分で自分を縛るしかないんですね。自分のなかで「クオリティ高くて、誰もが理解できて、誰もが実行できるものをアウトプットして必ず届ける」という、達成ですよね。それを自分のなかで、楔として縛る。
井上:なるほど。仕事も、人から言われたことをやるだけではなく、自分で決めて自分で誓ってやるという行為がものすごく大事だなって、僕は今感じました。
尾原:そうですね。おっしゃる通りですね。だからそういう意味でいうと、「達成」と「没頭」ってけっこう裏返しなところがあって。
井上:はい。(スライドを指して)これですね。
尾原:「達成」と「没頭」と「意味合い」って、トレードオフの関係になりやすいんですけど。最初は達成でやってる人も、だんだん没頭とか意味合いというものにスライドしていく人が多いんですね。
井上:なるほど。
尾原:だから、僕で言うと……世の中の人がけっこう気付きはじめてるんだけど、まだ言葉にできないから自分事にできないという出来事を、わかりやすい言葉で説明することで、みんなが「あ、私のことをこういうふうに世の中は言ってくれてるんだ」と理解するというところに、「意味合い」を感じてるんです。
井上:なるほど。今回も「乾けない世代」ということで。僕は、ゆとりとか悟りという言葉で言われている世代なんですけど。そういうことを言われるのに、すごくネガティブというか、嫌な気持ちはあったんですけど。
でも、今回この本を読んで、「乾けない世代」という言葉で「こういうことだよ!」ってすごく実感したんですね。そういう言葉であったりとか、名義、大義みたいなところを提言するのが尾原さんはすごくうまいな、と思っていました。
尾原:ありがとうございます。
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