
2025.03.04
「見送り失注」の7割は、2年以に再検討の可能性あり 継続的な接点作りとアポ獲得につながるメールの極意
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出口治明氏(以下、出口氏):もう1つ、政府が言っているのは、女性が輝く社会ですよね。どうも今の内閣の顔ぶれを見ていると、本気で女性を尊重する人がたくさんいるとはどうも見えないのですが(笑)。
女性の活躍も経済を活性化するためです。全世界共通で、サービス産業のユーザーは7割が女性です。
お正月のバーゲンでベルトを買おうと思って、銀座のデパートで「メンズ売り場どこですか?」と聞いたら、確か、4階か5階のデパートの死角で、一番悪い場所にメンズ売り場がちょっとだけある(笑)。1階か2階のいい場所はだいたいレディースですよね。これは世界共通です。
だから、高齢化が先に進んだヨーロッパではクオーター制を採用していますよね。女性の役員が4割いないと、ノルウェーでは上場を取り消すとか。
この話を聞いた日本の財界の偉い人は、「ヨーロッパの政治家はみんな女性に弱いんですね」とアホなことを言って失笑を買ったという笑い話がありますが。これは、需給のマッチングの観点からすれば当たり前の話ですよね。無理をしても女性にがんばってもらわなければ、経済が伸びないでしょう?
ある出版社での話ですが、子育て中の30代の女性がお母さんに来てもらって、締め切りがあるので無理して残業をしていた。そうしたら、その出版社の50〜60歳の大幹部がほぼ全員集まって、大会議をやっているのが聞こえてきた。
なにを議論しているかといえば、うちの雑誌の読者は、8割が男性だと。もう頭打ちで、これ以上増えない。30代、40代の女性に読んでもらうしか、活路はない。どうやったら、30代、40代の女性が読んでくれるかということを、50代60代のおじさんたちが大声で議論していた。
(会場笑)
彼女はユーモアがあるので、このおじさんたちの時間給をちょっと計算して、1時間働いたらいくらになるかを考えたら、この会議だけでゆうに数十万円になると。彼女曰く、馬鹿馬鹿しいと。この1割の2〜3万円を私にくれたら、日曜日に友人4〜5人集めてランチをご馳走して、知恵をもらって、このおじさんたちの数十万円の会議よりはるかにいい結論を出すのに、なんでうちの経営者はこんなにアホなんやろう、という話です。
だからクオーター制というのは、もちろん男女平等もあるのですが。それ以前に、サービス産業は女性が引っ張るので、彼女たちにがんばってもらわない限り、経済が伸びない。そこに基本があるんですよね。
でも、日本の正社員の労働時間はこの四半世紀、2,000数十時間と、まったく変わっていません。
(男性たちが)2,000時間働いているということは、当然昔と同じように、「飯・風呂・寝る」の面倒は女性が見てくれるだろうと思い込んでいるわけですね。そこに、労働力が足りないといって女性を投入したらどうなるかと言えば、「飯・風呂・寝る」の面倒を見た上で、自分も2,000時間働かないと競争ができない。だから、男女雇用機会均等法ができてから女性の正社員の実数が減ったというのは、当たり前の話なんですよね。
残業上限規制とかインターバル規制を入れて長時間労働をやめようと言っているのは、2つの意味で経済に効果があるわけです。早く帰れば「人・本・旅」ができる。もう1つは、早く帰れば、男性も、育児・家事・介護のシェアができますから、女性が輝けるんですよね。
これも、あまりきちんと考えることができない人は、「18時に会社を追い出しても飲みに行くだけや」。あるいは「家に仕事を持って帰るだけやで」と。ありえないと思いますよね。まず、飲み屋はお金がかかる。毎日行っていると、すぐに小遣いなくなりますよね(笑)。
次に「育児・家事・介護を、日本の男性が早く帰ってやるか?」。やります。
これにはおもしろいアンケートがあって。日本の女性にアンケートをとって、「日本の男性は、育児・家事・介護をやりますか?」。7〜8割が、まったくやらへんと答えています。まぁ長時間労働をやっているから、仕方ないですよね。おもしろいのは、この人々にもう1つ質問するんです。「あなたは、パートナーをなんとかごまかして転がせますか?」と。
(会場笑)
そうすると、ちょっとウェイトは減るのですが、6割、7割の女性が、なんとか転がせると思うと答えているのです。
(会場笑)
この2つを読み解いた学者は、最初のうちは早く帰っても、なにもしないかもしれないけれど、そのうち上手に転がされてするようになる、と(笑)。正しいと思いますよ。
それから「仕事、家に持って帰るだけや」。これは、世界中でいろんなデータがありますけれど、最初の数ヶ月は持って帰る人もいるようです。そのうちいなくなります。なぜかと言えば、パートナーや子どもに転がされるからです(笑)。「なに家に仕事持ち帰って、アホなことしてんの」と、圧力を受けたら、だんだんやれなくなるのです。
だから、早く職場を追い出すというのは、実は有効なんですよね。そう考えたら、これからの働き方というのは「飯・風呂・寝る」はやめて「人・本・旅」をやらなければ、生産性は伸びない。みんなで貧しくなるしかないということがわかりますよね。
加えて、女性が輝けなければ生産性は伸びない。これが1つです。
今日は3つお話をしようと思っているのですが、1つは今述べた働き方です。その次は、働くことの意味ですね。
僕は、人間はなにが幸せなんやというところから、話をせなあかんと思っています。今、本屋に並んでいる本ですが、歴史の特集の文藝春秋の『SPECIAL』に「人間の幸せとはなにか」ということを書きました。
ご飯が食べられて、あったかい寝床があって、産みたい時に赤ちゃんを産めて。それから、労働条件の100パーセントは上司ですから、上司の悪口が目一杯言えて、移動の自由がある。これは、置かれた場所で咲く必要はなくて、咲けなかったら咲ける場所を探せばいいということです。これくらいあれば人間の幸せは十分です。
上司の悪口が目一杯言えるということは、かっこよく言えば「言論の自由」ですよね。人間の自由を求める戦いは、言論の自由を求める戦いでしたからね。言いたいことを言えないことほど、人間にとって嫌なものはないですね。
こういうことが幸せだと考えたら、この中に仕事はあまり入っていないんですね(笑)。そうですよねぇ。食べて、寝て、遊んで、子どもを育てて、まぁ上司の悪口にはちょっと入ってるかもしれませんが。
1年を数字に直せば、24(時間)×365(日)で、8,760時間ですよね。2,000時間労働。この前会った人は「いや、私は2,400時間です」なんて言っていましたが(笑)。まぁそれにしても、8,760から2,000を引いて、比率をとってみると、6,760:2,000ですから、だいたい8:2とか、7:3ですよね。
7割、8割という数字は何事でも、大勝です。そうすると、2〜3割しかない仕事って、どうでもいいものだということがすぐにわかります。仕事はどうでもいいことだというライフワークバランスの認識ができれば、怖いもの知らずでしょう?
どうでもいいことだったら、なんで上司にゴマするんだとか、空気を読むなんて馬鹿馬鹿しいやないかと(笑)。自分で考えて正しいと思うことを言えばいい。それで文句を言うような上司なり、職場だったら、「ここでは咲けへんな」と思って、咲ける場所を探せばええやん。そう考えれば、めっちゃ簡単ですよね。
ライフワークバランスをきちんと考えて、7:3の構えがわかれば、思い切って仕事ができますよね。そう思いませんか? でも、仕事が人生のすべてとかいう、ありえない妄想を抱いていたら、上司にどつかれたから、もう芽が出ないのかなとか。あるいは失敗をしたから左遷されるかなとか。余計なこと考えて、心が病んでいきますよね。
僕は、ライフワークバランスを7:3でやっていますが、別に5:5でもいいですよね。自分は仕事が好きやから5:5とか、あるいは入社1年目だから、今年は9:1で仕事でもいいと思います。
一生を考えたら、7:3くらいがちょうどいいと思っていますが、それは、みなさんがそれぞれ今の置かれた状況で、ライフワークバランスをきちんと考えて、このバランスさえしっかりしていれば、仕事が思い切ってできますよね。
だから、仕事で悩んでいる人は、実は悩みを聞いてみると、ほとんどがライフワークバランスを決めていないんです。漠然と仕事がすべてやとか、1回入った会社は逃げ出したらかっこ悪いとかそんなことを思っているのです。でも、会社に比べれば、パートナーのほうがはるかに大事ですよね。長い人生を共にするわけですから。
パートナーの候補者である恋人と、一緒に住み始めたとします。でも、付き合っているときはぜんぜんわからなかった、DVが始まった。我慢する人はいないでしょう? 逃げ出すでしょう? 人生で一番大事なパートナーでも、ここでは咲けへんなと思ったらチェンジしているのに、なんで職場はチェンジできないのですか(笑)。というように考えたら、別に気にすることはないんですよね。
うちに、27歳で入ってきた社員がいました。面談してみると、大学を出て「これからはインドや」と、インドで働いていた。でも、1年くらい経ったときに、ふと我にかえって、このまま毎日カレーを食べ続けるんだろうかと悩んで、東京に帰ってきたのだと(笑)。
(会場笑)
それで投資銀行に入ったんですが、インドで働いてたので、やっぱりグローバルだと。それで、香港のプライベート・エクイティに入った。でも、馴染めなくて、27歳でライフネット生命に4社目で入ってきました。
すごくいい仕事をして、今度はライフネット生命よりさらに小さいベンチャーに5社目に行っています。まだ34〜35歳だと思いますが。そういうことを考えれば、仕事のチェンジはぜんぜん大丈夫ですよね。
置かれた場所で咲ければそれはそれでいいと思います。せっかく置かれたのですから、がんばればいいんですよ。でも、「どう考えても、ここは合わない」と思ったら、飛び出したほうがいいですよね。それが、やっぱり楽しい人生だと思います。
3つ目です。今、会社を飛び出してもええでと言いました。3つ目に言いたいことは、みなさんは、めちゃめちゃラッキーだということです。
僕は歴史オタクですが、人間の社会で一番しんどいのは、ユースバルジですね。ユースバルジのバルジとは“膨らみ”なのですが、10代、20代、30代の人口がめちゃ多い社会のことです。すぐわかりますよね。仕事がない。そうでしょう?
経済成長していればいいのですが、中東のように内乱をやっていると仕事がない。10代とか20代とか、ものすごく元気があって、めちゃデートしたいときにお金がなかったら、めちゃしんどいですよ。
お金を稼ぐためには働くしかないでしょう? 若い人に仕事がない状態が続けば、やけになってテロに走るので、実は中東のテロの問題は、イスラム教のウェイトってたぶん数パーセントしかないんじゃないですか。ほとんどの原因はユースバルジだと思います。働きたいのに仕事がない。社会が安定していない。
日本は、実はめずらしく、ユースバルジの逆の社会なんですよ。団塊世代の僕は、まだ同期が200数十万人もいます。どんどん消えていきます。それに引き換え、新社会人は100万人ちょっとですから。圧倒的に少ないわけです。普通に考えたら、2030年には、約1,000万人近くも労働力が足りなくなります。
ということは、いくら飛び出しても、例えば、新卒で絶対メガバンクなどという考えでない限り、仕事があるということですよ。
(会場笑)
絶対、飢え死にしない。
それから、仕事の工夫の余地も山ほどあります。生産性の話をしましたが、日本生産性本部のホームページを見ると、日本の労働生産性は、ものすごい世界新記録を更新中です。
G7という先進国がグループありますよね。「G7で24年連続最下位」という、すごい記録を更新中なんです(笑)。
(会場笑)
イタリア人の親戚の方がいたら申し訳ないのですが。仕事中でも、新しい女性が入ったら、仕事を止めて、まず口説きに行くイタリア人よりも、はるかに生産性が低いんですよ(笑)。
悔しくないですか? (デービッド・)アトキンソンというおじさんはですね。「みなさん、悔しくないですか?」と言って、『新・所得倍増論』という本を書いています。「私は外国人だけれど、悔しいです」と。
でも、G7で24年連続最下位ということは、改善余地は山ほどあるということですよね。工夫したらいくらでもいい仕事ができる。とくに、今日は女性のみなさんが多いですけれど。
女性の社会的地位は、世界144ヶ国の中で111位ですよ。35ある先進国、OECDと呼ばれているのですが。50位以下の国は1つもないんですよ。当たり前ですよね、先進国は35しかないんだから、女性の地位も、だいたいそこに入りますよね。
日本は111位ですよ。カーストが残っているインドより低いんです。ということは、日本の女性のみなさんにとっては、天国ですよね。いくらでも上に登れると。
今日は、働き方について、3つ話をしました。
1つは、働き方の改革ってなんやということ。それは、世界で一番高齢化が進んでいる日本では、みんなで貧しくなるか、今の豊かさをキープするために、生産性を上げるという、2択しかないのだと。生産性をあげるためには、働き方を変えるしかない。「飯・風呂・寝る」から、「人・本・旅」に変えるんだと。
それから、まともに働くためには、ライフワークバランスをみなさんで決めないとあかんと。なにが人生で大事かをちゃんと考えれば、思い切って仕事ができるで、という話ですよね。
あとは、日本の労働者は世界で一番恵まれているのだということ。だって、需要と供給ですから、労働力が足らないということは、なにをやってもご飯が食べられるということでしょ? 量の面でめちゃめちゃ恵まれていて、質の面でも、世界新記録最下位を更新中なので、いくらでも改善余地がある。
ということは、素直に考えたら、明日から、「よっしゃ、いっちょやったるで!」という気持ちになりますよね。未来は明るいと、うれしくなりますよね。
ということで、とりあえず僕のプレゼンは終わって、このあとは質疑に入りたいと思います。
ご清聴ありがとうございました。
(会場拍手)
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