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哲也の部屋 ゲスト:佐々木紀彦氏(全1記事)

「無料メディアの時代が終わりつつある」NewsPicks佐々木氏が読む、2017年メディアトレンド

“戦略PR”を標榜するブルーカレント・ジャパン。2006年8月、世界最大規模のPR会社フライシュマン・ヒラードからスピンオフするかたちで設立された同社が創立10週年を迎え、11月17日に記念パーティが開催されました。パーティ会場に設けられたのは人気長寿トーク番組になぞらえた「哲也の部屋」。同社代表の本田哲也氏をホストに、さまざまな業界から豪華ゲストを迎え、10年間の歩みとこれからを語り合います。3人目のゲストは、NewsPicks編集長・佐々木紀彦氏です。メディアの未来はどうなるのか? 世界のトレンドをもとにこれからの潮流を探ります。

メディアの未来はどうなる?

本田哲也氏(以下、本田):3人目のゲストにまいりたいと思います。PR業界、クライアントさんと登壇いただきまして、最後はやはりメディアからどなたかということで、「NewsPicks」の佐々木編集長に来ていただいています。佐々木さん、どうぞ。みなさん、あたたかい拍手でお迎えください。

(会場拍手)

どうも、ご無沙汰しております。ありがとうございます。

佐々木紀彦氏(以下、佐々木):よろしくおねがいします。なんか場違いな感じですみません(笑)。

本田:いえいえ。PRというと、業界も大事ですし、クライアントさんとの関係も大事なんですけれど、やはりメディアの話が欠かせないです。メディアも今、多様化しているわけですけれど、メディア界を代表して、今日は佐々木さんにお越しいただきました。

佐々木:いやいや、代表したら怒られます。「なんで、お前なんだ!?」と(笑)。

本田:(パーティの)冒頭挨拶で、この10年のPRや、もうすこし広く言うと、コミュニケーションの進化みたいな話に触れていたんですけれど。佐々木さんも、この10年、いろいろと経験されたと思います。メディア側の視点で振り返ると、どんな感じですか?

佐々木:やはりテクノロジーのところで、PCとスマホというものが大きいですよね。私も10年前は、紙でコツコツとやってましたから。

本田:10年前はそうですよね。たかが10年前ですけど。

佐々木:そうなんですよ。ですので、やはりPCとスマホ。それにつきますね。

あとは、ソーシャルですね。テクノロジーのところの変化が1番大きくて、ほかのコンテンツ作りや、そういった本質のところは10年経ってもほとんど変わってないかなという気がします。

「有料メディア」が次のトレンドになる

本田:佐々木さんが「東洋経済オンライン」にいらっしゃったのは、もう3年前くらいになるんですか?

佐々木:今、「NewsPicks」に移って2年強ですね。

本田:そうすると、(東洋経済オンラインの)PVをワーッと伸ばされていたあのころから、基本的に環境は変わっていないですか?

佐々木:いや、かなり変わったと思います。今年もそうですけど、とくに来年来るトレンドとしては、やはり有料メディアになっていくだろうなということがすごくあります。

本田:有料メディア。

佐々木:無料メディアの時代がWebメディアで、かなり終わりつつある節目かなという気はします。

本田:佐々木さんがずっとおっしゃっている、マネタイズ、メディアがどう稼ぐかというところ。これは数年間、ずっと議論が続いています。今日は会場にメディアの方、テレビの方とかもいらっしゃっているんですけれど、やはり一次情報にあたって取材することって必要なわけで。これはメディア企業としてオペレーションコストがけっこうかかるわけですよね。

佐々木:相当かかりますね。

本田:こういう時代になっても絶対にかかる人件費とか、実際に出向かなきゃいけないとかってことがあるじゃないですか。そこのコストの部分が楽になっているわけじゃないですよね。

佐々木:そうですね。やはり有料メディアという流れも1つありますけれど、今回の(ドナルド・)トランプの勝利とかを見ていても、Webメディアはけっこう影響力があったわけです。しかし、その一方で「Webメディアは信用ならない」というイメージが、日本だけでなく。

本田:ここ2〜3年で変わっていませんか? 僕がそう思うだけなのかな。

佐々木:たぶん中身自体はそんなに変わっていないと思うんですけど、Webメディアの影響力がすごく上がってきただけに、今までは見過ごされていたところがちゃんと目に付くようになった。

本田:はい。

佐々木:今までは、「Webメディアはアウトサイダーだから、これくらいはいいよね」みたいに甘く見てもらっていたところが、やはりメインになってきたので、厳しく見られるようになってきたということだと思うんですよ。

本田:そういう意味では、「出る杭は打たれる」じゃないですけれど、どの世界でも存在感が増してくると、今までは見逃していた、相手にしていなかった人たちとかも注目するようになる。それは成長しているということですよね、Webメディアとしては。

佐々木:そうですね。影響力は上がっていくということですね。だけど、そこがまさしくマネタイズのところで、ちゃんとお金を稼げていないと、影響力は上がっても人に投資できないので、一次情報を取ったりできなくなってしまう。

本田:お金、やはりそうですよね。

佐々木:そうなんですよ。

アメリカ大統領選をどう見たのか?

本田:先ほどトランプの話が出ましたけど、今回は、みなさんもいろいろと驚かれたと思うんですが、あの選挙戦における、従来メディアとネットメディアの報道の影響力はどうご覧になりました?

佐々木:今回、トランプの右腕に付いた(スティーブン・)バノン。あの人は、日本でいうと“ネット右翼”みたいな人ですよね。ネット右翼編集長みたいな人が(笑)。

本田:そういった言葉がいいのかは、あれですけれど……まあ、彼はそんな感じですかね。

佐々木:“ネトウヨ”編集長が大統領の右腕になる時代がきたというのは、これはマイナスの意味ですごい時代だと思います。

本田:確かにそうですね。オバマさんの時はソーシャルメディアの専門家とかがブレーンで入っていて、SNS選挙と言われていました。さらに進んで、メディアの活用という意味とは別に、なにかが進化した感じがしますね。

佐々木:そうですね。やはりソーシャルの影響力が上がったということが大きいんだと思うんですね。だけど、バノンさんが編集長をやっているメディアは激しいですけど、ファクトじゃないことも書いているわけです。ファクトが大事という概念もなくなってきていて、「とにかくおもしろければいい」となってきているので、これが世界的なトレンドなんでしょうね。

本田:そのあたりはNewsPicksさん的にはどうですか?

佐々木:そういうメディアもありつつ。

本田:それはやはり共存……、いろんな方向性のメディアが林立していればいいという考えですか?

佐々木:そうですね。ファクトにこだわるというものは残ったほうがいいと思いますし。いい情報はちゃんと有料メディアにお金を払わないと読めないと。そういった紙の時代に当たり前だったことをWeb空間でも、コスト構造や仕組みをうまく作ったうえで再現できるかどうかということが、すごく勝負だと思います。

本田:なるほど。そういう意味じゃ、一巡じゃないですけれど、情報の価値という意味ではまた戻ってきた。紙からネットにデバイスは変わったけれど、もう1回、1周したのか、螺旋状に上がってきたのかわからないですけれど、最近そういう雰囲気はありますよね。

佐々木:そうですね。回帰してくるというか、食べものと同じだと思ってます。食べものでも安いものはよくないものが多いじゃないですか。添加物がいっぱい入っていたり。

本田:そうですね。安かろう悪かろうみたいな。

佐々木:でも、オーガニックフードは高いじゃないですか。それと同じように、体に入れて頭に入れていい情報というのは、ちゃんとお金がかかる、と。

本田:頭に入れていい情報(笑)。昨今は頭に入れないほうがいい情報も……。でも、選ぶのは読者、消費者ですからね。

メディアの新潮流は“政治”にあり

最後に、我々はPRの領域でずっとやってきているんですけれど、メディアとPRの関係は、今後どうなっていくんでしょうか? 去年は佐々木さん、「PRアワードグランプリ」の審査員もされていましたけれど、どうですか? メディアにいらっしゃる方、それからPRに従事している人との関係みたいなものは変化していくんでしょうか?

佐々木:本質は変わらないと思うんですけど、PRの重要性はますます上がっていますよね。今回、トランプは(ヒラリー・)クリントンより半分くらいしかお金をかけていないんですよね。

本田:かけていないですね。

佐々木:彼ほど、悪い意味も含めてPRをわかっている人はいないですよね(笑)。

本田:ある種、PRの天才だと思いますよ(笑)。大手PR会社にアドバイスを受けたというよりも、本能的に、なにが話題になって、どういうメッセージが伝わって、人々がどう動くのかということが、案外計算されていたような気がします。

佐々木:なので、やはりトランプがよくも悪くもこうやって新しい流れを作ったり。あと、『The Huffington Post』も政治的なところから出てきましたよね。

本田:はいはい。

佐々木:メディアの歴史を見ても、だいたい政治のところから新しいメディア流れは出てきているので、次、日本でもなにか新しい流れが出てくるとしたら、政治である可能性はありますよね。

本田:なるほど。そういった意味だと、アメリカのPRというものも大統領選や政治の世界でもまれてきた歴史はあるので、そういう転換地点にメディアもPRもいるのかなという気はしますね。

佐々木:そうですね。小池(百合子)さんもうまく使ってますし。

本田:そうそう! 小池さんも。

佐々木:もし、次に安倍(晋三)さんを倒せる人が出てくるとしたら、メディアの使い方がめちゃくちゃうまい人なんじゃないですか。

本田:NewsPicksさんのピッカーから出るかもしれませんね。

佐々木:そうなれるようにがんばります(笑)。

本田:本当にお忙しい中、来ていただいてありがとうございました!

佐々木:こちらこそ、ありがとうございました。

本田:これからも本当よろしくお願いします。

佐々木:今後の10年もがんばってください。

本田:ぜひぜひ、楽しみにしてます。

佐々木:どうもありがとうございます。

本田:ありがとうございます! みなさん、佐々木さんにあたたかい拍手をよろしくお願いします。佐々木さん、ありがとうございました。

(会場拍手)

司会者:ありがとうございました。「哲也の部屋」、3名のゲストをお迎えしてお話いただきました。本田さん、いかがでしたでしょうか?

本田:こういった豪華なお三方と入れ替わり立ち替わりでお話できるということは、嶋さんのリア充発言から始まり、メディアの未来で終わるという。ぜいたくな体験をさせていただいて、本当にありがとうございました。楽しかったです。

司会者:ありがとうございました! 「哲也の部屋」をお届けいたしました。本田さん、ありがとうございました。

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