2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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田中和子(以下、田中):本日は、NPO 法人マタニティハラスメント対策ネットワーク(マタハラNet)代表理事で、日本人で初めて米国務省「世界の勇気ある女性賞」を受賞された小酒部さやかさんと、『赤ちゃんにきびしい国で、赤ちゃんが増えるはずがない。』の著者であり、育児について書いたブログが17万いいね!を得るなどご活躍の作家の境治さんをお迎えしました。
博報堂リーママプロジェクトリーダー田中の3名で「妊婦にも、子どもにも、育休中パパにも厳しい社会に未来はあるのか?」と題して「妊婦にも、子どもにも、育休中パパにも厳しい日本社会」の問題点と、その打開策について語り尽くしたいと思います。
ゲストのお二人をご紹介したところで、リーママプロジェクトの話もちょっとだけ。なんで博報堂みたいな会社で、あえてこんなことをやっているのかという話をさせていただきたいと思います。
小酒部さやか(以下、小酒部):「博報堂みたいなところで」っていうのは、長時間労働の巣窟みたいなところでってことですよね。
田中:そうですね。長時間労働の巣窟でもありますし、そういう巣窟に正直就職活動の時あこがれもあって入ったってことも否めません。
そういうバリバリ働いている養成所みたいなところで、ガンガン働いて、おいしいワイン飲んで、カラオケ歌って、芸能人に会って、みたいな(笑)。実際には、全然そんなことないんですけど。私、今まで仕事で芸能人に会ったの2人くらいしかいないです(笑)。
今子供が3人いまして、小5と小3と保育園の年中組。下の子が年中さんになってくれたので、うちの旦那も、「夜行ってもいいよ」と言ってくれるようになったので、こうしてB&Bに来れています。
就労人数のグラフを今日は持ってないんですが、そもそも正社員の女性が少ないんですよね。博報堂みたいな大きな会社で働いているっていうのは、恵まれているとは思っています。
そういうところで、このプロジェクトをやっているのはなぜなのかな、とどんなことをやってるのか。やっていることは2つでして、リアルの場ではランチケーション。
リーママっていうのは、サラリーマンとママをつなげているので、基本的に正社員ママです。
ランチケーションでは、「飲みにケーション」に行けないお母さんたちをランチタイムでつなげています。それを始めた理由ですが、私は自分の周りに働くママが本当に少なかったので、自分自身の働き方、そして子供の育て方がこれで本当にいいのだろうかというのがすごく不安でした。
ちょっと何か言われると「やっぱりダメなんだ」と思ったり、「やっぱり私って評価されてないんだ」とか「このままだとうちの子供たちグレちゃうのかな」とか、いろんな迷いや不安に苛まれて。
そんな時、社内でママたちと集まって話していると、とても心穏やかになる。周りに気を使うことなく、ママトークを前面に出せる。「これが私の求めていた環境なんだ!」と気付いたんですね。
こういう環境がもっといっぱいあれば……。自分が気持ちよくなるためにやってるだけなんですけど(笑)。「いろんなお母さんたちと会いたいな」という気持ちでランチケーションをつなげてきました。
田中:というのと同時に、これだけだと少人数なので、「働くママの声を届けよう」というFacebookページを、3年ぐらい前に所属している子会社で立ち上げて運営しています。そこでもいろんなママたちとのディスカッションを繰り広げています。
本当に熱い回答がいっぱい来ていて。多くのコメントの最後に「18:00。携帯から」とか書いてあるんですね。恐らく帰りの電車の中でダーっと(笑)。ママたちは親指両方操作とかできないんで、一生懸命、指1本で操作をやってるんだと思うんだけども(笑)。すごい熱量で解答してきてくれる。
みんな「言いたい」「聞いてほしい」「つながりたい」っていう気持ちがとてもあるんだな、と思っています。
それで、なぜそういう気持ちが生れるのかというと、「育児と仕事、両方とも完璧にしないと」というプレッシャーもあるし、自分自身もちゃんとやらなきゃって。
日本の女性ってとても真面目だと思うんですよ。私、小学校の6年間アメリカで育ってるので「いーじゃん、それが私のやり方だから」って平気で言ってしまうこともあるんですけど、多くのママたちは一生懸命仕事も育児も家事もやろうとして、回らなくなっているなじゃないかな、って。
そんなプレッシャーの中、「大変なの!」って誰かに聞いてもらいたい。だから「働くママの声を届けよう」Facebookに声を届けに来るんですね。
というのと、やっぱり働くママはマイノリティだから、声が届いていない。境(治)さんが「赤ちゃんに厳しい国で」での出版で登場したときに、私「頑張ってください!」って気持ちがすごくあって。あの本はママの叫びを言い当てて代弁してくれてたんですよ!
境治(以下、境):おおー。
田中:しかも、その代弁者が育児をする女性じゃなくて、おじさん。
(会場笑)
小酒部:そうよね、今まで一番敵だと思っていたところに「あ、味方がいた!」って。
田中:そうなんです。マタハラ(マタニティハラスメント)なんかもそうですけど、例えば、男性上司にマタハラされる。そこの層が味方してくれるってことがどれだけ大きいか。そして、そのことによって、私たちが言っていることが主流になっていける予感がする。
マイノリティと見られてるんですよ、声を拾ってもらえなくて。境さんの登場で主流に連れて行ってもらえる気がしました。
境:やった!(笑)
田中:でも、先ほどのお話聞いていると、実はそれメディア論の中で考えてらっしゃる。
境:ああー。
田中:それもまた冷静な判断をしていただけているということなのかな、と。
小酒部:そうですね。
田中:勝手に2対1で境さんを褒め殺しに攻めて申し訳ないですが。
境:照れるじゃないですか。どうしたらいいのか……。
田中・小酒部:(笑)。
田中:働く現場でもっと女性が働きやすく、女性のやる気をもっと認めようということを小酒部さんはなさってるところだと思うんですけど、私は活動の中では更に、もっと女性自身の生活の中も見ています。
このデータは共働き世帯と専業主婦世帯の夫と妻の生活時間ですが、タイトルに「何でも背負っちゃう女性たち」などとつけてみました。
境:もう、ごめんなさいって感じですよね、男性。
田中:すみません、あえて赤丸とかつけてしまったんですが(笑)。これね、青いのが家事育児介護時間。それが、専業主婦世帯であれ、有職主婦世帯であれ、男性の家事育児介護時間はあんまり変わらない。
世代によって本当はもっとバラつきあると思いますが、働いてるお母さんっていうのは、寝る暇を惜しんでどうにか全部こなしているっていうことになるんですね。
家事も仕事。働くママは育休とれていいよねー、なんて言われますが、育休を休みって言わないでよ、と言いたくなりますね。
小酒部:そうですよね。
境:育休を休みって言わないでよ?
田中:休んでないんですよね。
境:あーそういうことか。
小酒部:そう。
田中:だって、今日だってここに子ども連れてきたら休みじゃないですよね(笑)。皆さんに迷惑かけないか、ハラハラし通しで。
小酒部:認定NPO法人フローレンスの(代表理事)駒崎弘樹さんなんか、育児休業制度っていう名前を変えたほうがいいんじゃないか、っていう意見をおっしゃってて。確かに、休業ってついてしまうと、とくに育児経験がない上司の方々は「はい、1年間お休みするのね」という風に思われてしまいますよね。
田中・境:うーん。
小酒部:先ほど言った、2つのはしごがかかってるんだってことも知らない人が多かったり、本当に男性の上司で保育園と幼稚園の違いも知らなかったりという方もいらっしゃる。
今のデータもそうなんですけど、男性が家事にどれだけ関わってくれるか、育児にどれだけ関わってくれるか第二子、第三子の出生につながっていくっていうデータもあるんです。
田中:ありますね。
境:へー。
小酒部:日本はここがものすごく欠落しているので、1人産むのも大変ですけど、2人目、3人目っていかない。田中さんがよく3人産んでくれたなって思うんですけど、マタハラされるパターンでも、2人以上お子さんがいる人はマタハラされやすくなるんですよ。
というのは、1人産休制度を取るのは、まだ国の制度だから許してやる、と。ところが、「また休むの?」「また休むの?」と。それならいっそ辞めて、子育て終わってから戻ってきてくれよというのが、会社の本音なんですね。だから、数多く産むとマタハラされるっていうことが言われたりします。
田中:うんうん、なるほどね。その辺、私のガラッパチが働いて、休むけどその後これだけ働きますっていうのを、人事にも上司にも言ってたの。
小酒部:強い(笑)。
田中・境:(笑)
「3人は産みたい」って宣言していて。でも、産むだけでなく、働く意欲もアピールしてました。「3人を35歳までに産みます。その後5年間くらいは子供にすごく時間がかかるから、少しゆるゆるするかもしれないけど、40~60歳までその分働いたら十分ですよね?」って私人事に言っていたの。
昇進したいとかいう気持ちはなかったかもしれないですね。この点は、女性の活躍推進としては、私の欠けている部分だったかもしれない。
小酒部:うーん。
田中:女性の昇進欲は男性より少ないじゃないですか。
小酒部:そうですね。
田中:それは、少ないのか、それとも諦めてるのかっていうのは、私はわからないんだけども。
小酒部:今女性の活躍とか、また一億総活躍とか気持ち悪いスローガンがついていて(笑)。女性たちの本音は活躍ということの前に、「普通に働かせてくれ」だと思うんですよ。
そうすれば、勝手に活躍するし、輝きたい人は勝手に輝くからっていうところが本音で、輝かせてもらうものじゃないし、輝きたいと思っているかというとそうじゃないっていう。
田中:私、最初から十分輝いてると思ってるんだけど。
境:(笑)。
小酒部:うん、そう思っている方もいらっしゃると思いますし。
田中:確かにね、普通に働かせてもらいたい。
小酒部:そう、普通に働けないっていう。
田中:どうですかね、境さん。普通に働くってキーワードだと思うんですけどね。普通って概念的じゃないですか。主観的でもあるし。
田中:境さんが思う、普通に働くってどういうことですか?
境:あのね、普通に働くが何かっていう前にね、普通以上に働かないといけない暗黙の何かがあるっていうのが、僕一番変だなと思うんだよね。それが、時間で計られちゃうことがすごく多くて。
会社に長い時間いるのは褒められやすい、とかね。そういうのがすごいいびつだなと思うんですよね。
あと、男性と仕事でいうとね、これ僕50歳を過ぎて最近思うんだけど、けっこう同世代のサラリーマンは悩んでるんですよ。日本って、50歳くらいになると出世するか、いらなくなるか。
大きな会社だと辞めさせはしないから、けっこう窓際なわけですよ。それでも昔は55歳定年とかだったから、4~5年ぷらぷらしてれば定年だ、みたなところはあったけど、今は60歳、下手すると65歳みたいなところだってある。
田中:きついね、10年間。
境:相当50代はきついと思うよね。
田中:私、50歳以上のおじさんたちに、よく飲みに誘われるんですよ。話を聞いてもらいたいのかな? 私、絶対競合関係にいないですよね、おじさんたちと。
境:(笑)。話しやすいんじゃないかな。
だからね、今、ライフスタイルと就業形態と人と会社の関係で、けっこういろんなところがうまくいかなくなってるんだよね。そういうのがあるんで、普通に働くっていうのが、「働かなきゃいけない?」「働かないと出世できない?」みたいなのが、今すごくあるんじゃないかなって思いますよね。
田中:それでは変わるのは難しそうですね。
小酒部:マタハラの2つの根っこは、長時間労働と性別役割分業の意識って、私は本で書かせてもらってるんですけど。
日本の長時間労働って経済先進国の中でも類を見ないくらいずば抜けて長時間労働。その割に生産性が低いと言われているんですね。
それから性別役割分業の意識っていうのは、男性が外で働いて、女性が家事、育児を担って。これって、高度経済成長のときにできたモデルケースで、日本の長ーい歴史の中から見たら一部分だったにも関わらず、まるでこれで日本がずーっとやってきたかのように根付いてしまった。
境:そうそう、それがさっきのね、赤ちゃんに厳しいうんぬんの前に書いた「日本の普通は、昭和の普通に過ぎない」という。
小酒部:そうですよね。
境:まさに会社のルールっていうのが昭和なわけですよね。
小酒部:何でおじさんたちは、疑問を呈して変えようとしてくれなかったのですか?
境:ごめん…。
田中:泣いてる泣いてる(笑)。
境:僕、会社辞めちゃったからね。
田中:逆にいうと、革命を起こそうとしてくださった方ですよね、境さん。
境:革命を起こすというより、こんな気持ちの悪い社会早く出よう、と。
田中:あー。
小酒部:だって、皆辛いわけじゃないですか、長時間労働。
境:うーん、あのね。
田中:評価されたいんじゃないの? 長時間労働で。
境:そうなの。長く会社にいるとか、会社のためだみたなことを言うと、評価されてたわけですよ。短いスパンでは、それのほうが俺にとって有利に働くと思うからやってたんで。
前は、経済がもうちょっと豊かだったりすると、50歳を過ぎたおっさんでも行き先がいっぱいあったわけですよ。子会社がいっぱいあったりとかね。
田中:けっこう子会社がありましたね。
境:そうそう、行くでしょ。プライドも傷つけずに、給料はちょっと下がったりするんだけど、みたいな。
小酒部:次長に補佐とかいっぱいいましたもんね。
境:そうそう、役職が増えるでしょ。何とか担当局長とかね。そうやって済ませてたんだけど、今はそれさえちょっと厳しいから、役職もつけれないし、子会社も畳むしみたいなところで実は相当つらくなってるわけですよね。だから、今になってようやく「これ、良くないのかな」みたいなことになってるわけです。
だから、50代の上司が田中さんに愚痴を言うと。
田中:直属の上司じゃなくて、斜め上くらいの方ね。ずっと昔一緒だったとか、たまたま昔一緒に仕事をしたことがあるとか。
境:さっきの女性が輝くじゃないけど、割と40歳のころ輝いてた男性が、今50歳過ぎて輝けないし、燃え尽きちゃいそうだし、みたいなね。
小酒部:やっと悲しんでる50代の男性と、次世代の私たちが手を取り合って、働き方改革を起こしていけるかなっていうことですね。
境:そういう可能性はあると思うし、僕ちょっと50代をテーマにメッセージしたいと思ってるんですが、「50代のおっさんが立ち上がれ!」と。育休上司とか育メンになれば変わるんじゃないかなと。
田中:私応援してもらえたら、自分の子供たちをちゃんと年金のために納税できる大人に育てますよ。「ちゃんと支えなさい、上の世代の方々を」って。
境:(笑)。
田中:そう言うけど、今裏切られたら、「いいわよ、海外行っちゃいなさい」って日本から出しちゃうかも。
小酒部:今優秀な人たちはどんどん海外に流れてるって聞きますしね。
田中:でも帰国子女の私からしてみると、「海外のほうが厳しいからやめときな」ってすごく思いますけどね。本当に実力社会ですからね。
なんでしょう、言い方悪いけど日本は平和ボケ。この国は、ちゃんと1人1人を見ててくれたというよりも、包んでくれてたと思うんですよ。ただ、そのシステムが崩れてきた。
人口のバランスが崩れてきたりとか、そもそも経済成長がどん底から上がってきて、飽和状態になってるときにシステムを変えてなかったからだと思うけど。
境:システムを変えなかったんだよね。
【登壇者のプロフィール】
■小酒部さやか氏NPO 法人マタニティハラスメント対策ネットワーク(マタハラNet)代表理事。日本人で初めて女性の地位向上などへの貢献をたたえる米国務省「世界の勇気ある女性賞」を受賞。自身の受けたマタニティハラスメント被害の経験をもとに、マタハラNet を設立。女性をはじめ、高齢者、介護をしているなど、さまざまな状況の人たちが、働き続けることのできる思いやりのある社会を目指し、多様な働き方を実現できるようさまざまな活動を行っている。その活動は、日本の社会に働き方の改革を認識させるきっかけとなった。2016年1月8日に『マタハラ問題』を出版した。
■境治氏(コピーライター/メディアコンサルタント)1962年福岡市生まれ。東京大学卒業後、広告会社I&Sに入社しコピーライターになり、93年からフリーランスとして活動。その後、映像制作会社ロボット、ビデオプロモーションに勤務したのち、2013年から再びフリーランスとなり、メディアコンサルタントとして活躍中。有料マガジンMediaBorder発行。たまたま育児について書いたブログが17万いいね!を得て取材をはじめ、書籍にまとめた『赤ちゃんにきびしい国で、赤ちゃんが増えるはずがない』(三輪舎刊)を2014年12月に出版した。
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