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電車内の性犯罪をなくしたい! 被害をなくすためにできることは?(全6記事)

電車で痴漢にあっている女性を見かけたらどうする?

痴漢行為はなぜ放置されているのでしょうか。そして、痴漢被害をなくすためには、何ができるのでしょうか。漫画家の田房永子氏、ライターの小川たまか氏、フリーランスモデルの前濱瞳氏が、経験を元に深く語り合いました。本パートでは、痴漢にあっている人を見かけたらたらどうしたらよいか、女性を人として見ていない法律や、女性専用車両の功罪について語り合います。

電車で痴漢にあっている人を見かけたらどうする?

田房永子氏(以下、田房):「電車の中で、痴漢にあっている人を見かけたらどうしたらいいか」という話が、質問に書いてあったので、ぱっと答えたいんですけど。私の対策は、女の子のほうに声をかける。知り合いのふりをしたことがあって、急に「久しぶり! 元気?」といって目配せをしたらわかってくれて、向こうも「すみません」といった感じになるから。

「こっち来なよ」と言ったこともあるし、あと、男のほうにカメラを向けて、携帯で撮るぞというポーズをするとやめるのもありました。

男のほうにアクションするのは怖いんですよね。女の子のほうに声をかけて、移動させるのが無難かな。それしかできないというのを、今見て思った。

前濱瞳氏(以下、前濱):私も今アンケートを見ていて、自分の中で気になったのが「外国に住んでいたときは痴漢にあったことがなかった」という方がいて、私もそれはちょっと思っていて。日本は、ロリコン属性の方が多いじゃないですか。小さい子に萌えるというのが原因なのか、ナンパの風習があんまりない。

外人さんは素敵な女性がいたりすると、「君すごい素敵。とても好きだよ」といって気軽に声をかけるんですね。日本人はそういう風習がないから、自分の中で「あの人素敵」と思っても、声をかけられないんです。だから、そういう気持ちがおかしくなって、さわっちゃう。

田房:しかも、痴漢行為を、男の人たちは、「それくらい君に魅力があることだよ」と取るじゃないですか。

小川たまか氏(以下、小川):証明みたいな?

田房:それの変化球として、「ババアはさわられない」というフレーズが出てくるんだけど。男からの女性に対しての評価のようなものも、合わさっちゃっているんだよね。

イタリア人が声をかけたり、ウインクしたりするのと、ごっちゃになっちゃっている。切り離して考えないと。こっちも、元被害者からのアクションだと、そこまで踏み込めないから、男性同士でやらないと無理なんだけど(笑)。

小川:痴漢被害をなくしたいという話をしていると、「女がそういうことを言うから、男は草食系が増えて絶食系になるんだよ」とか。

前濱:どういう思考回路だろう?(笑)。

田房:本当だよね。全然、絶食になってないじゃんね。AVとかさ。

「セクハラ・痴漢」と言われるから女性にアプローチできない?

小川:この前、Twitterで1人の男性から言われたのが、「男だって、女の人にどうやってアプローチしたらいいかわからないんです。こっちはよかれと思って、アプローチしているのに、それをセクハラとか痴漢とか言われて、1回のミスで人生が終わる男だっているんです」って。

(会場笑)

小川:それを、冗談じゃなくて、本気で言っていらっしゃるというのが、やりとりしていてわかって。その人もその人でとても悩んでいるんだろうなと思うんですけど、「アプローチの仕方を学ぼうとしたら、50万円とかする商材を買わなきゃいけなくて」と。冗談ではなく、義務教育とかの間にコミュニケーションについて教えてあげる人が必要だと思いました。

(会場笑)

前濱:で、私もFacebookをやっていると、私の周りの友達でもあるんですけど、なぜか、男性からご自身の生殖器の写真が送られてくるということがあって、よくわからないですけど、「俺どうだ?」って。

田房:その部分だけなの?

前濱:部分だけ。上から横から下からとか、いろんな向きで送ってくるんです。

田房:勃っているの?

前濱:すごく勃っていて、送ってくる。そういう人がいるんです、何人も。これなんなんだろう?

田房:マジでわかんない(笑)。

前濱:評価してもらいたいのかな?

田房:こんなに勃ったよって?

前濱:「君のことを考えていたら、こんなに興奮して」って。

田房:そういうことか。でも、電車の中とかで、勃起してる股間を自分でなでながら上気した顔で見てくる人とかいるでしょ?

前濱:ああ、いる!

田房:露出はしないんだけど、「どうだ!」とか。あれ、意味わかんなくて。Twitterで書いたときに、男性が解説してくれたんだけど、「それはお前を見て、こんなになっているぞというのを、その子に見せている」と書いてあって、それと同じなのかな?

前濱:それで好かれると思っているんですかね?

小川:「あなた、すごく素敵! 抱いて」となると思っているんですかね?

田房:だって、その部分だけじゃん(笑)。

(会場笑)

前濱:あれはわからない。

男は罪にならない姦通罪

田房:さっきの、男の人たちに話してももみ消される話で、それがなんでなのかという話を、性犯罪のことをやっている弁護士の人に聞いたときに、刑法が変わってないというのを言っていたんですよ。

ずっと、明治の前から姦通罪がまずあって、それは結婚している女の人が、夫以外の男の人とヤッたら、もう逮捕なんです。そういうのが、昔はあって。夫は他の女とやってもよくて、なんの罪にならないんだけど、妻はだめ。

その姦通罪になるのは、ヤッた男と奥さんなんだけど、そこで奥さんはどれだけ抵抗したかというのを、裁判で見るわけですよ。

それはどういうことかというと、夫に忠誠を尽くしているか、貞操を守っているかというところが、法律的にとても重要なんです。

それが、妻がどれだけ抵抗したのか、本当に嫌だったのに無理やりだったのか、それとも合意だったのかで、妻の罪の重さが決まっちゃう姦通罪という、むちゃくちゃな法律があって、それが明治の頃に変わってなくなったの。(注:姦通罪は江戸時代からあり、明治13年布告の旧刑法に規定され、昭和22年に廃止された)。

だけど、そこのベースは今も全然あって、強姦罪も今も同じように裁判が行われているという話を聞いて、どれだけ抵抗したか、どのように無理やりだったかを聞くのは、明治と全然変わってないという話を聞いた。

本当にびっくりして、法律って社会の中で基盤となっているところなのにすでに腐っているというか、全く女性を人として見てない感じというか。

そうなっているから、「それは女が悪いんじゃないか」となっちゃうというのがあると思うんだけど。

明治も現代も変わっていない女性を見る目

田房:私、『あさが来た』を見ているんです。NHKの朝ドラをやっているじゃないですか。あれ、明治の話でしょう? 私はとても複雑で、明治の女性ってあんなかなって。

じゃじゃ馬っぽい、あさという主人公が、女なのに銀行に嫁ぐんです。「これからはバンクなんや」とか言って、銀行をつくる、保険会社とかをつくるんだけど。

あさは女なのに、すごいという話なんだけど。それって、今でも全然普通の話なんだよね、明治の話として流れているんだけど。

今でも、女の人はそうやって結婚して、旦那のことは放っておいて、自分が女社長になったりする人は、特別な目で見られるわけじゃないですか。それ、ドラマになるわけじゃないですか。『あさが来た』って、明治の話だけど、めちゃくちゃ新しい話だなと思う。

今の現代の女性としても、変わってないというか。『あさが来た』は、姦通罪のあった頃の話だろうから、姦通罪の話、早く出てこないかな、そこまでやってくれよとか思っちゃう。あまり入り込めない。

(会場笑)

小川:姦通罪とは、結局は、ヤラれる前に舌噛み切って死なないと、女の人は許されないくらいのアレですよね。

田房:あんなに、あさはのびのびとやっているけど、もっと言葉では言い尽くせない苦しみがあったはずなのに、……まあ楽しい朝だからいいんだけど。という感じですね。

女性専用車両を作る時点でおかしい

小川:今の話は、女性専用車両にも近いですよね。女性専用車両に反対している人も中にはいますよね。私はそういう人に、「女性専用車両賛成の女」だと思われているのか、TwitterやFacebookで嫌がらせのメッセージを送られるんです。

でも私は実は、女性専用車両に100パーセントの賛成はしてなくて。もちろん、一定数被害にあっている女性を守っている効果はあると思うし、性被害に遭った女性をトラウマから守ることにもなっていると思います。

でも逆に断絶も招いていると思うからです。以前、子育てと働き方についての活動をしている女子大生にインタビューをしたことがあって。

ちょうど、電車にベビーカーを持ち込む話題になったことがあって、そのときに、その子が、「子育て中の人と、そうじゃない人とのあいだには今断絶がありますよね」ということを言っていて。

「ただ、ベビーカーが迷惑だからといって、ベビーカー専用車両をつくっても断絶を深めるだけだから、専用車両をつくってもしょうがない。断絶を深めてもしょうがない」ということを言っていて。

まさにそれと同じで、今度は「女性専用車両があるなら男性専用車両をつくれ」という話にもなっていると思いますけど、本来、女性専用車両をつくらないと被害が防げない、それは文化がないということで、おかしい状態だと思うんですよね。

女性専用車両がレディーファースト?

田房:最近、外国人に日本のことを聞くテレビ番組がめっちゃあるじゃないですか。それで、日本に来てびっくりしたこと、日本は優れているところを、街角インタビューで聞いていたの。

そしたら、白人の男性が、「日本はすばらしい。女性専用車両があるから」と言っていたんです。「どういうこと?」と思ったら、レディーファーストだと思っているの。

女性を大切にしている国だと言っていて、それをそのまま番組側が訂正しないで、そのまま流していて、マジふざけんなと思って。「なんでそこ、そうですみたいになっているの?」と。むしろ、カットしてくれよと思った。

外国人は、あれおかしすぎて、まさか痴漢から隔離する車両だとは思ってないんだよね。説明しないとおかしくない? 女性専用車両のところに、「痴漢が多いからできました」とは書いてないじゃん? おかしいよね。

小川:男性専用車両と女性専用車両になったら、200年前の話ですか、という感じ。ここからここ白人の席です。ここからここ黒人の席ですというような感じがしてしまって、誰も幸せにならないというか。

女性専用車両をつくった人は、防ぐためによかれと思ってつくったと思うんですけど、あれがあることによって、怒られているし、嫌がられているし、被害者への偏見が助長されている面もあって、ちょっとなあと思います。

結論ありきのずれた批判

小川:でも、そういう話をして、そこまで記事に書いても、前半部分までしか読んでもらえなくて、「お前は結局、女性専用車両支持の男性差別主義者なんだな」と言われて終わっちゃうんです。悲しいな。

田房:そういう人は、そういうふうに思いたくて、読んでいますもんね。確認したくて読んでいる。そういう人を、いかに無視するかという技術を高めるしかない。私も鍛錬していて、去年からカウンセリングとかセラピーに通い、いかに脳内に批判の言葉を入れないかの特訓をしていたんですよ。

なかなか、それの効果があって、最近支障がでなくなってきたんですけど、ネットで見ている人は、私はそういうのを平気でやっていると思うんだよ。そう見せている部分もあるから。

でも、まったくそんなことなくて、本当に「ババア、クソババア」と言われたら、そりゃあボディブローとしてきますよね。「ババア」と言われたくないわけじゃなくて、悪意のある言葉を受けるというのは、脳内にダメージを与えるから。

小川:それこそ見えない被害。

田房:そこからやらないといけない。そこの批判を受けるのを耐えるところから、始めないといけなくて、あまり進まないですね。まあ、進んでいるんだけど。

前濱:だって、小川さんも、最近、痴漢のネタを書いていたら、「痴漢って儲かるんですか?」というメッセージがくる。

小川:「痴漢ネタのつぶやきが多いですけど、痴漢ネタは儲かるんですか?」と言って(笑)。

田房:あるよね。「痴漢の話をすると、ビューが上がるんですか?」的なことですよね。

小川:今までは、書いても見てくれる人、少なかったですよね。最近になって、ようやく反応してくれる人が増えたけど、今まで痴漢の話書いても、無視ですよね。男の人は、やっぱり冤罪のほうが気になるから、本当に反応が少なかったですね。

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