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電車内の性犯罪をなくしたい! 被害をなくすためにできることは?(全6記事)

「痴漢は被害者が責められる犯罪」 冤罪ばかりが注目される日本の性暴力

「電車内の性犯罪をなくしたい! 被害をなくすためにできることは?」と題して、トークセッションが行われました。雑誌『AERA』で痴漢の記事を執筆した漫画家の田房永子氏、性暴力問題について取材を行っているライターの小川たまか氏、フリーランスモデル、MC司会業、ライターとマルチに活躍する前濱瞳氏が登壇。性犯罪問題に注目するようになったきっかけを話の入り口として、痴漢の被害は、親に話すことができず、むしろ被害者が責められるというおかしな扱いをされていて、決して軽視してはいけない犯罪だと指摘しました。

オシャレな場所で痴漢の犯罪について語る

小川たまか氏(以下、小川):こんにちは。3連休の初日にお越しいただいて、ありがとうございます。こんな堅苦しい話題なんですけど(笑)。楽しくお話をしたいなと思っています。

(会場笑)

田房永子氏(以下、田房):嬉しいですよね、今日は。

小川:嬉しいです。

田房:オシャレな場所で痴漢の犯罪について語るというイベントを、ずっとやりたかったんです、2011年頃から(笑)。

(会場笑)

小川:4年越しの悲願で、下北沢の「本屋B&B」という、こんなオシャレな場所でやることができました。

田房:本当にありがとうございます。

小川:ありがとうございます。本日のメニューですけれども、簡単にごあいさつと登壇者の自己紹介をしまして、前半で、ごにょごにょっとテーマにもとづいた話をします。

お配りしたアンケートがあると思うんですけども、前半の間にご記入いただいて、休憩中に回収をしますので、アンケートに質問とか書いていただければ、それについても、後半でお話したいなと思っています。

田房:ガンガン話したい感じですよね。私のイメージでは、来ていただいた方の想いとか怒りであるとか、そんな疑問とか、私とかに対しての質問とかでもいいし、後半は、みなさんのお話聞きたいなと思っているので、よろしくお願いします。

小川:よろしくお願いします。イベントのテーマは痴漢被害なんですが、それの周知と対策検討というイベントができた時点で、もう私たちは嬉しいんですけど(笑)。

今日、何件か取材が入っていまして、ウートピさんとログミーさんで、この会の様子を後日伝えていただけるとのことなので、それも嬉しく思っています。

田房:でも、多分、後半のみなさんのお話は記事の中に書かない?

小川:そうですね、そのあたりは調整しつつ。

田房:3人の話が記事になるだけなので、どうぞ、ぜひ後半は、みなさん思う存分お話しください。

小川:イベントができて、とても嬉しいという気持ちでいっぱいです。田房さんは新連載が始まるんですよね?

田房:はい。ぜひ覚えて帰ってください(笑)。チラシが入っていると思うので、見てください。

小川:痴漢に関するものなんですよね?

田房:今までネット上のいろんなところに書いていた痴漢犯罪についてのコラムやなんかを漫画化するという感じです。また改めて、絵で残すという作業になります。内容的には知っていることだと思うんですけど、それよりさらに、具体的に絵で描きます。よろしくお願いします。

小川:媒体はなんなんですか?

田房幻冬舎plusという幻冬舎のWeb上で連載するので、無料で手軽に読めるんで、拡散してください。リツイートしてください。お願いします。

小川:無料で読めるなんて、すごいですよね。

田房: 痴漢の漫画は、無料じゃないと意味ないなと思って。この仕事だけは採算度外視で。赤字覚悟で。赤字になるのかわかんないですけど。その心づもりで取り組んでいくんで、血の漫画になると思うんで。よろしくお願いします。まだ描いてないんですけど。でも、頭の中ではできている。

きっかけは駅の痴漢防止ポスター

小川:簡単に登壇者の自己紹介をします。田房さん。みなさん、ご存じだと思うんですけど。

田房:よろしくお願いします。

小川:もともと、『母がしんどい』とか、親御さん関係のお話を書いていらして、そこでとても人気になって、ファンも多かったと思うんですけど、田房さんのことは、もちろん漫画家さんとしては知っていたんです。

母がしんどい

私も痴漢のことを調べ出したときに、田房さんは去年の12月ぐらいにAERAで漫画家としてではなく、ライターとして記事を書いていらして。(注:『AERA』2014年12月22日号)。それで、「田房さん、これについて、調べていらっしゃるんだ」と思って、取材をお願いしたんですよね。

電話したときに聞いてみたら、田房さんは、もう2011年頃から、ずっと痴漢について調べている。

田房:はい。2011年まで、痴漢について、まったく何も考えたことなかったんですよ。それで、2011年の2月に渋谷の井の頭線の構内で、「痴漢は犯罪です」というポスターを、偶然見たんですよ。

偶然と言っても、いつも通っているから、多分いつも見ているはずなのに、そのときに、はっと気づいて。貼ってあるということは未だにあるということだと思ったんですよ。未だに痴漢ってあるんだと思って。

なんでそう思ったかというと、私、中学生、高校生のときに、毎日のように痴漢とか性的嫌がらせを受けていて、友達と討論していたんですよね。なんでこんな目にあうんだって。

でも、その答えが出ないまま高校卒業して、制服を脱いだら、途端に痴漢被害が激減して、20歳過ぎたら、もう本当あわなくなったんですよね。それで、そのまま忘れちゃっていたんですよ。

そのまま、12年ぐらい経って、そのポスターで、「はっ!」と思い出して。「そういえば、私が中高生のときと同じように、自分が乗っている電車の中で、今も中高生たちが被害にあっているんだ」ということに気づいて、なんか許せなかったんですよね、自分が。忘れていたことが許せなくって、どういうことなんだって調べ始めたという感じですね。

痴漢被害の本がないのでブログを立ち上げた

田房:だから、2011年から、自分のブログとかには書いていたんです。「冤罪のほうが大変だ」派と戦ったりとかはしていたんですけど(笑)。

(会場笑)

田房:炎上もせず、そういうやりとりだけするという日々を過ごしていて……。すいません。前濱さんの自己紹介の前に、こんなしゃべっちゃって申し訳ないです。でも、ちょっとしゃべっちゃうんですけど(笑)。

本とか、全然ないんですよね。痴漢の被害者が、「なんで私たちが被害にあうのか?」と考える本がまったく見つからなかったんですよ、そのとき。それが読みたかったんですよ。

あと、撲滅団体などを探していたんですよ。とにかく、腹が立ってしょうがないから、その行き場をおさめたくて、撲滅団体とかに1万円ぐらい寄付しようと思って、探すんですけど、その窓口がないんですよね。

団体もあるんだけども、カンパを集めてなくて、その憤りの行き場がなくなって、やっぱ自分で書くしかないなと。本もないし。

どう自分も考えているかも、知りたかったんですよね。自分がなんで痴漢にあっていたのかとか、痴漢の人たちはどうしてあんなことをするのかというのが、まったく納得いかない状態で放り出されていたから。

本とかで知りたいのに、本もないし、Amazonで検索すると、痴漢冤罪の予防の仕方の本とかしか出てこないんですよ。あと、「俺の痴漢体験」みたいな感じのポルノ小説か、「冤罪をどう免れるか」という本とか。「冤罪をどう免れるか」という本だと30冊ぐらいあるんだけど、被害者がどのように立ち向かうかという本が、全く1冊もなくて。

痴漢に対する風潮が変わってきた

田房:私は1万円の寄付もできないし、する先もないから、「これはもう自分で書くしかない」と思って。いろいろ調べ始めて書こうと思っても、まず書かせてもらえる先がないんですよ。

小川:痴漢のことなんて、それはPVを取れませんもんね。

田房:そう、誰も知りたくないんですよ。「初版、出せません」という感じで。まず「痴漢以外の話も入れてください」とかなっちゃうんですよね。

「1個の項目として痴漢の話を書いてください、1冊は書けません」といった感じのオファーが多くて。だから、またそのまま自分のブログで、「冤罪大変派」たちとやりあうしかない日々を過ごし(笑)。

(会場笑)

田房:多分、2013年頃から変わってきたんですよね。風潮というか。私が発信したからとか関係ないかもしれないけど、なんとなく変わってきて、2014年で、やっとその『AERA』で書かせてもらったんですよ。

『AERA』にずっと言っていたわけじゃないけど、タイミングが合って書かせてもらうことになって。そこから、ネット上でも痴漢の話題が増えた。

話題の小川氏の記事がきっかけ

小川:私は単なるしがないライターです。今年に入って、1月に、noteというブログのところで、自分も女子高生のときにあっていた痴漢の被害の話を書いたんです。そしたら、それが割とバズったというか、PVをたくさんもらって、いろんな人に見てもらって。それを前濱さんが見てくれて、私にFacebookでメッセージをくれたんですよね。それで出会いがあったと。

前濱瞳氏(以下、前濱):私のこと、みなさん初めましてだと思うんですけど、普段はモデルとして、広告媒体とかに出演しております。今、小川さんから話があったように、小川さんが書いた痴漢の記事を、私の周りのモデル仲間でシェアしている子がとても多かったんです。

それを読んで、「そうだな。こういうことってあるんだけど、誰も書かないな」と思ったときに、小川さんに私からメッセージを送ったのが始まりだったんです。

小川:普段、前濱さんはフリーランスのモデルとして活動されていて、ポージングの講座の授業とか、モデルの活動以外に、ナレーターとか司会業とかもやってらっしゃる。89年生まれ?

前濱:そうです、平成元年です。今日、みなさんと近いので、ちょっと緊張してきました(笑)。

小川:やっぱり、性犯罪被害の話はちょっと重たい話なので、若い女性からの話があまりもらえてなくて、若い前濱さんから連絡をもらえて嬉しくて。前濱さんが、ご自分のブログのURLをくれたんですよね。そこに、その「自分もこういう被害にあいました」ということが書いてあって。

親にも話せなかった子供のころの痴漢体験

小川:私は自分のブログで、「女子高生のときに、こんな被害にあいました」ということを書いたら、ひどすぎて、「こんな人おかしい」といったコメントとかもあったんですよ。「こんなに被害にあう、この人がおかしい」とか。はてなユーザーとか、ひどいこと書くので。

(会場笑)

小川:「こういうふうに言われるんだ」と、私自身も思ったんですけど。

私が前濱さんと会って、前濱さんの話を聞いたときに「こんなに被害にあう人いるんだ」と、私が思ったぐらい、本当に衝撃的な話だったんですよね。小学校のときですよね?

前濱:そうです。私が自分の中であれがそういうものだったんだなって思ったのが。小学生のときに習い事をしていて、隣の駅まで電車で毎回通っていたんです。毎週何曜日かの固定の日に、習い事に通っていたんですけど、毎回、痴漢にあうんですよ。

でも、小学生だから、なんかよくわからない大人の人にさわられているなぐらいの感覚だったんですね。で、だんだん嫌だって感覚が出てきて。

でも、親に説明するのにも自分でなんて説明したらいいかよくわからずに、ただ嫌だという気持ちだけが、どんどん自分の中でできてきて、最終的に私、その習い事をやめたんですね。なんだかよくわかんないけど、嫌だからやめるという選択を取ったんです。

それが、私の初めての痴漢の体験というか。そこから、学年が上がっていっても、普通に道端とかでもそういう変な人に遭遇するんです。それが26歳になった今でも、自分の人生の中でずーっとあるんです。

クラスの友達とかに、例えばストーカーにあったとか痴漢にあってとても嫌な目にあったって言うと、まず初めに言われるのが、「可愛いからだよ」と言われるんですよ。「モテるからいいよね」と言われるんですよ。みんな、心配してくれるとかじゃなくて、「あなたはそういう人だから」と言われるんです。

それが自分の中ですごく違和感があって、誰にも話せない。さっき、田房さんが言っていたように、本としても売る場所がない発信する場所がないというのと同じように、私たちも、誰に言ったらいいのか、全然わからなくて……。そういう思いで、今まで生きてきました。

小川:親にも、ずーっと話せなかった?

前濱:そうなんですよね。親に話すことが、はたして正解なのかというのがあって。逆にそれは恥ずかしいことなんじゃないかと。親に言ったときに、「あなたがそういう服装をしているからよ」とか、「あなたが悪い」と言われたらどうしようという子ども心があったんですね。

痴漢は被害者が責められる犯罪

前濱:だから、親に話すこともできず、学校で友達に話すのもなんか逆に責められるから、どうしたらいいんだろうと……。

田房:逆に被害者が責められる犯罪は、他にないよね。

前濱:ないですよね、これだけですよね。

田房:オレオレ詐欺にあった老人がさぁ、みんなに怒られる? 怒られるかもしれないけど、怒られ方が違うんですよね、なんか。

私の学校、女子高だったんだけど、みんな痴漢にあっていたんですけど、中には、全然あわない人がいるんですよ。でも、それのどう差が違うかなんて、どうでもいいじゃないですか?

でも、その彼女は、自分以外の人たちが痴漢にあっているのに、自分はあっていないということに悩み始めるんですよ。「女として魅力ないのかな」とか言って。「そんなことないよ」というような話になって、どんどんずれていくんですよ、痴漢の話は。

それは多分、大筋がないからなんですよ。大筋でみんなが共有しているモラルのようなものが、痴漢に関しては全くないから、どこに着地していいかまったくわからなくて、結局、テレビとかで言われている「男性ってそういうもんだよ」といった方向にみんな流されちゃうということがあって……。

性犯罪についての教育が必要

田房:モラルを子どものころから教えなきゃいけないよね。「嫌なことは嫌だ」、「そういうことはおかしいんだ」と。

30代の女の人たちと何人かで「痴漢にあった」という話をしている中に、大体1人ぐらいは「私、全然あったことないんですよ」という人がいるんですよ。

そういう人でも話しているうちに、他の人の話を聞いて、「それだったら私もあっていた」とか、「それも痴漢って呼ぶんだ」とかいう話で。自分があっていたことを、30代で気づくとか。そういうのは小学校、中学校でなんの教育もされてないからだと思うんですよね。

前濱:私の中学とか小学校で、私の代だったからか、麻薬の講習が頻繁にあったんですよ。先輩から麻薬を勧められたときの断り方の講習があって(笑)。人生で26年間生きてきて、私、麻薬に勧誘されたこと、1回もないんですよ(笑)。

(会場笑)

前濱:そのくらいの感じで、痴漢とか性犯罪についての講習をちょっとでもやってくれていたら、またみんなの考えも違ったんじゃないかなって思います。

小川:「ダメ、絶対」というの、みんな知ってますよね。

田房:でも、「ダメ、絶対」感ないですよね、痴漢に関しては。

小川:あったら、しかたない、とか。

田房:「まぁ、あるよね。春だし」とかさぁ(笑)。

(会場笑)

田房:訳わかんない枕詞言葉がついていたりして、もみ消されているんですよね、自動的に。

痴漢は軽視してはいけない犯罪

田房:性暴力の中でもいろんな種類があって、法律的に名前が付けられているじゃないですか。挿入したら強姦で、パンツの中に手を入れたら強制わいせつで、あと服の上からさわるだけだったら、迷惑防止条例の適用でって。

警察のルールとして分かれているんだけど、そうすると、被害側も「ここまでは、いってないから軽い」と思っちゃうんですよね。「パンツに手入れられてないから」とか、「脅されたわけじゃない」「殺されたわけじゃない」とか、そういうふうに考えたら違うんだけど、でも、全部同じだと思うんですよ。

加害者が勝手に自分で目を付けた知らない女の子から、男の人が多いから男と言うけど、男がその女の子から自分の必要な部分だけを盗むという犯罪。軽視しちゃいけないと思うんですよね。痴漢という行動を。

「それぐらい、いいや」ということがどうしてもあるから、私はシビアに考えなきゃいけないと思うんですよね。軽く考えたらいけないじゃないですか?

小川:盗られたものが目に見えないから、非常に訴えづらいんですよね。訴えづらいし、法律でもわかりづらいというか。

前濱:難しいですね、そこらへんのことは。数字的なデータに起こしにくいということがありますよね。

小川:訴えない人も多いし、通報しない人も多いし。田房さんの『女子校育ちはなおらない』でしたっけ? 女子校出身の女性漫画家の方たち6、7人ぐらいが短編を書いていて、みんな「女子校でこんなことありました」という話を漫画家さんが書いている中で、田房さんだけ、痴漢の話を書いているんです(笑)。

ものすごい怒りに満ちた、なんか「おかしいだろ!」という(笑)。全員の方の漫画おもしろいんですけど、田房さんの漫画はすごく異色な感じで、すごくおもしろいんで、ぜひ読んでください。

女子校育ちはなおらない (メディアファクトリーのコミックエッセイ)

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