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業務効率化が事業を成功に導く! DX・業務改善エクスポ:吉田拳さん(全4記事)

Excelを使っているのに作業時間が長くミスが発生する理由 Excel・スプシを効率活用する人が備える「前向きな怠惰」とは

創業時に会社が取り組むべき資金調達、営業、経理、総務、オフィス環境、ITツールなどの情報を1冊にわかりやすくまとめた、起業家向け経営ノウハウ誌「創業手帳」が主催した「創業手帳EXPO」に、累計40万部突破の『たった1日で即戦力になるExcelの教科書』の著者で、株式会社すごい改善の代表・吉田拳氏が登壇。1秒で終わるExcel作業に数時間〜数日を費やしている事例の多さや、これだけ押さえておけば十分なシンプルなルールなどを語りました。

1秒で終わる作業に数時間〜数日を費やしている事例の多さ

吉田拳氏(以下、吉田):創業手帳さんということで、起業家さん向けのメディアだと思うんですけど、僕も13年前に1人で会社を立ち上げて、いろいろ乗り越えてきました。今日はExcelの話をしますので、そういったお話はあまりしませんが、1回どこかでそんなお話もできたらうれしいと思っています。

Excelもしくはスプレッドシートを使っている方は多いと思いますが、今回はとにかく表計算ですね。このソフトウェアをちゃんと使わないと、とんでもない無駄な時間をどんどん垂れ流しますので、そういったことが絶対にないように、みなさんがラクして仕事ができるようなコツを、いくつかご紹介していこうと思います。

今日はExcelという言葉を多用しますが、スプレッドシートをお使いの方は、僕がExcelと言ったら、頭の中でスプレッドシートに変換してください。

あとはマクロという言葉も出てきますが、スプレッドシートでもマクロに該当するGAS(ガス)があります。要は、自動化が大事ということが今日のテーマになりますので、そんなふうに頭の中で切り替えていただければと思います。

いつもこういった講演やコンサルティングの際に、まずみなさんに問いかけることが、「社内のExcel作業にどのくらいの時間がかかっていますか?」です。これ、考えたことはありますでしょうか?

過去13年間いろいろな企業さまを見てきましたが、1秒で終わる作業に、3時間とか5時間、下手をすれば2週間かけているケースがザラにあります。当然それがいいわけはない。「たかだかExcel」という方は多いのですが、「本来かけなくてよい時間をどんどんExcelに奪われていませんか?」ということです。今一度、確認することをおすすめしたいと、この問いで申し上げています。

Excelの基礎力の不足によって起きる絶望的な非効率とミス

いくつか事例をご紹介します。これはわりと大手の組織や病院で、「マスコミでけっこう叩かれた」くらいの事例なので、注意力を持って聞いていただけたらと思います。

Excelの基礎力の不足によって起きる問題がいくつもあります。ちょっと強い言葉を使いますが、そこで起きている問題が、「絶望的な非効率」や「絶望的な不正確」です。時間がかかっているばかりではなく、ミスが多いといった事例が多発しています。

1つ目が、並べ替えの失敗事例です。みなさんはExcelやスプレッドシートで、当然並べ替えをやったことがあると思います。数字が大きい順・小さい順に並べ替える、非常にシンプルな機能ですよね。誰でも使えるはずですが、この使い方をちゃんとわかっていないと、こんなことが起きてしまいます。

けっこう前の事件なので、具体名は伏せますが、某病院で起きたことです。とあるガン検査の結果を郵送したところ、内容がまったくでたらめの状態で送ってしまった。要は、被験者名と検査結果がバラバラの状態で送ってしまったわけです。それで大変な問題になって、記者会見が全国中継のニュースで放送されるくらいの事態になりました。

どうしてこんなことが起きたのか。検査結果のデータを並べ替えたらズレてしまって、例えば「要検査」の人に、「あなたは大丈夫ですよ」という結果が行ってしまったり、もしくは大丈夫な方に、「あなたは要検査ですよ」という結果が行ってしまったりしました。非常に不安を煽るような結果になり、謝罪会見がテレビで放映されるかたちになりました。

もう1つが、某自治体におけるマイナンバーの流出問題です。これも同じです。納税者名とマイナンバーのリストを、その市役所ではExcelで管理していたのですが、並べ替えたらズレてしまって、他人のマイナンバーが行ってしまったんです。

これだけ押さえておけば十分なシンプルなルール

こういうことが起きるから、実はExcelってものすごく難しくて、慎重に使わないといけないのではないかと思われがちですが、そうではないんです。これだけ押さえておけば十分という非常にシンプルなルールを、今からわずか1分くらいで簡潔に説明します。

今日の50分間を通してお伝えしたいことは、「Excelはとても簡単です。難しくありません」ということです。あとは、簡単であることを理解して、「無駄な時間を使わないように」といったことが今日のメッセージになりますので、お付き合いいただければと思います。

今、(共有画面に)Excelシートを映しました。こういったデータ(商品名、商品コード、売上金額などが並んだ表)があります。

例えば、売上の金額を大きい順に「ソート=並べ替え」する作業をご紹介したいと思います。

やり方は、シンプルに並べ替えたいデータの列のセルを一つ選んで、データタブから並べ替えの「ZA」というアイコンをクリックすれば、それだけで簡単に、まったく問題なくできるはずです。ところが、弊社のクライアントでも何回かズレたという原因を実際に見てきました。

何らかの原因で、データの途中に空白の列が入ってしまっているわけです。簡単に言うと、こういうデータは、どこか1ヶ所をクリックした状態でショートカットCtrl+Aによりデータ全体を選ぶ操作をしてみた際に、どこまでの範囲が選択されるかという確認が必要です。

並べ替え後の「ズレ」の防ぎ方

今日はショートカットを全部Windowsのバージョンで言いますので、Macの方は申し訳ありませんが、ご了承ください。やり方は、例えばこの状態でコントロールキーとAを押すと全体選択ができ、こうすると、「これが並べ替えの対象範囲ですよ」という確認ができるわけです。これを覚えておいてください。

これと比べて、例えば途中(3列目)に空白の列が入っていると、先ほどの「Ctrl+A」を押しても、ここ(2列目)までしか選ばれないんです。

こっち(空白列より右側)は対象外です。並べ替えがちゃんと動く条件を知らずに並べ替えると......もうイメージがつきますよね。例えば、こっち(空白列より左側)だけ並べ替えられて、こっち(空白列より右側)は動いていません。ということで、当然ズレますね。こういった、すごくシンプルな原因があるわけです。

わかりやすく、2行目に色をつけましょうか。

売上が大きい順に並べ替えようと、この(空白列を入れた)状態でソートをやってしまうと、このようにズレてしまうことがわかります。

色をつけているから、ズレてしまったことがわかりますが、色をつけていなかったら気づかないわけですね。気づかないままデータがどんどん使われていく。

これを防ぐ手立ては、「Ctrl+A」を押して、空白の列がない状態か確認すること。対象範囲のセルがすべてちゃんと選ばれている状態になっていれば、問題なく使えるわけです。

たったこれだけのシンプルなルールを、何かの機会にまとめて勉強していただくことをおすすめしたいです。

Excel・スプシを効率活用する人が備える「前向きな怠惰」

次の事例が、3秒で終わる作業に3日かけていた事例です。これも結構あります。3秒で終わることがわかったら、今後も毎回3日かけていいわけがない。マクロやプログラミングのような難しいことではなくて、これもすごくシンプルな解決策でできる事例をご紹介したいと思います。

「こういう時自分ならどうするかな?」と、イメージしながら聞いていただけるとうれしいです。

また、Excelの画面を共有しました。この例では、A列に何らかの数字が全角文字で入力されています。数字は適当にJANコードか何かだと思ってください。この全角のデータを全部半角にしなければいけないという課題が、ある企業さまで発生しました。さて、どうしましょうか?

関数を知っている方であれば、アスキー(ASC)関数といって、こういったものを一括で半角に変換する関数がありますので、それでやってしまうんです。

けれど、弊社がある企業さまから相談を受けた時には、これをなんと手打ちで打ち換えていらっしゃいました。このデータ、1個の桁数が10桁のものが数万行あるわけですよ。これを全部手打ちで半角に打ち換えろと言われたら、みなさんだったらどうするか、イメージしてほしいんですね。

そういう時に僕がよく言うのは、「前向きな怠惰」です。「たくさんやらないといけないことがある。じゃあ、1個1個がんばってやり遂げよう」なんて、こんなすばらしい根性をここで発揮したらダメです。「こんなことは絶対にやっていられない。何か一瞬で済ませる技があるはず」と探して実践して、一瞬で終わらせることが大事ですよね。

知らなくてもいいんです。知らない時はGoogleで、「Excel・全角・半角」と検索すれば、今からやって見せる「ASC関数」といった関数が出てきますので、そういうのを使いましょう。とにかく、「面倒くさい作業は何かラクをするやり方を探そう」という意識が大事だと言いたかったわけですね。

ちょっとやって見せます。全部半角に直すには、「=」と打って、「ASC」という「コレを半角にしてね」という関数を使うと、一瞬で半角にできます。

これをコピーすれば、何万行であろうと一瞬で終わります。

関数を使った自動化

もう1つが、本来そもそも必要ないはずの作業に、毎日2時間かけている事例です。年齢計算の話題があったのですが、例えば年齢の一覧表があった時に、ある企業さまでは、これが何歳かをいちいち年齢早見表を見て手打ちでチェックしていました。この作業は大変です。こういうのを全部関数で自動化できます。

例えばこういう時は、「=DATEDIF(デートディフ)」という、2つの期間の経過期間を出す関数があります。考え方としては、「この誕生日から今日まで何年過ぎたかな?」と出す関数が、ちゃんとあるわけですね。

これが年齢に一致する数字になります。Enterを押せば「13歳」と、数字が自動で出ます。コピーすれば、全部の行の数字が出るわけです。

これのいいところは、1回打っておけば、誕生日が来れば自動で数字が変わってくれるところです。

「今この人何歳かな?」と、いちいち自分で考えなくてもいい。全部自動化できるわけです。こういったことができるにもかかわらず、作業に毎日時間をかけている事例があるわけですね。それを放置しておいて、いいことはないと言いたいんです。

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