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業務効率化が事業を成功に導く! DX・業務改善エクスポ:吉田拳さん(全4記事)

本当は2秒で終わるのに…企業で増える「マクロ禁止」の非効率 「時短」と「ミスなし」を担保するExcelマクロを使うべき作業

創業時に会社が取り組むべき資金調達、営業、経理、総務、オフィス環境、ITツールなどの情報を1冊にわかりやすくまとめた、起業家向け経営ノウハウ誌「創業手帳」が主催した「創業手帳EXPO」に、累計40万部突破の『たった1日で即戦力になるExcelの教科書』の著者で、株式会社すごい改善の代表・吉田拳氏が登壇。「2週間の時短」を実現した事例や、Excel・脱Excelの判断基準などを語りました。

Excelを経営課題と考える社長や管理職の少なさ

吉田拳氏(以下、吉田):遅ればせながら、ここで簡単に自己紹介をさせていただこうと思います。あらためて、私、株式会社すごい改善の吉田拳と申します。

弊社は2010年に創業し、間もなく14期目を迎えます。事業内容は、企業向けにExcelの効率化支援を行っています。本も出していて、『たった1日で即戦力になるExcelの教科書』などの著書が、おかげさまで40万部というベストセラーになりました。

あとはセミナーもやっています。2011年からかれこれ12年間、受講料が4万9,000円(税抜)と高いのですけれども、約500回、約5,000名の方に受講していただいた実績があります。

クライアントは、例えば経済産業省やジェトロ(日本貿易振興機構)さんのような官公庁、名前は伏せますが、大企業から中小企業、個人事業の方まで、幅広くご支援してきました。先ほども言いましたが、Twitterもやっていますので、絡んでいただけたらうれしいです。

ここでちょっとした問題提起をお話ししたいと思います。まず、Excelもしくはスプレッドシートですね。ただの表計算ツールなので、極めて日常的なツールとして使えるもので、これを経営課題とまで考える社長さんや起業家の方は少ないです。大企業でも経営課題とする管理職の方は少ないです。

弊社もクライアントがそんなにいるわけではなく、こういったことに気づかれた企業さまのみを支援しています。しかし現場では、とんでもないボトルネックになっている状況があるわけです。

「2週間の時短」を実現した事例

実際の事例を紹介します。これは、弊社のクライアントである某社の経理部で作られていた、毎月の実績資料ができるタイミングのBefore・Afterのスライドです。

社長さんとしては、前月の資料・数字は一刻も早く見たいわけですね。だけど、経理としては本業も忙しいから、どうしても毎月15日くらいまでかかってしまいます。15日になって、ようやく前月の数字が出てきて、社長が見られる状況になるわけです。

社長さんは経理が大変なのもわかるんだけど、やっぱりもっと早くみたいと思ったわけですね。そこで弊社にヘルプ依頼をいただき、弊社で代行することにした結果、実に毎月初日にその資料を見られるようになった。実に2週間の時短が実現したわけです。

なぜ、2週間かかっていた作業がそこまで短縮できたのか? 手元の操作スピードを急ぐとか大至急やるとかいう問題ではありません。Excelは、根本的にはゆっくり操作するものです。そうしなければ間違います。

たまに、めちゃくちゃ高速で操作する動画がTwitterに流れていますが、とんでもない話です。Excelは、ゆっくりのんびり操作して早く終えるためのものですので、そういったスピードは要らないことをご理解いただければと思います。

では、なぜ一瞬で終わるまでに短縮できたかというと、答えはシンプルです。マクロというものがあって、自動化したわけです。手作業を全部なくします。

手作業でカチャカチャやっている間は、どんなにショートカットを使おうが、スピードを上げようが、タイピング速度を上げようが、絶対に2週間のものが一瞬にはなりません。

2週間かけてやっていた作業を、全部自動でできるように、Excelの中でロボットを作るわけです。そうすると、例えば5時間かかっていた作業も、1クリック2秒で終わってミスもなくなります。

ブラックボックス化を懸念してマクロを禁止する企業

マクロでそれができると知っている方はとても多いのですが、1つ問題があります。これは規模の大きい会社の話ですが、マクロを禁止する会社がけっこうあります。理由は属人化とブラックボックス化です。

マクロを組んでもらって、1クリックで作業を全部終えられるようになったけど、「担当者がいなくなったらそれを使えなくなってしまうんじゃないか」と心配する方が多いです。

担当者がいなくなったあとにデータが変わったとか、業務が変わった時に変更できないとか、今までマクロだとどうやってきたかわからないということで、「マクロを禁止して手作業でやりなさい」という企業さまがけっこう多いです。

その気持ちもわからなくはないのですが、「5時間かかっていた作業が1クリック2秒で済ませることができるとわかってもなお、これからも毎回5時間かけ続けますか?」とお聞きしたいです。

そこはよくご検討いただいたほうがいいと思います。毎回5時間かけているのであれば、それをなんとかしよう。そのために、思考停止で手作業で続けるのは、いいわけがありません。

そういった問題があるわけですが、実際に内製化の罠があります。こういうところを全部自社内でやろうとすると、担当者が退職したらどうするとか、Excelでやらないほうがいいことにも関連しますが、大事なポイントとして、法改正に対応できるかという話が出てきます。

例えば、労基法とか税法など法律には改正があります。ああいったものへの対応は、Excelで社内でやっている場合ではないので、後ほど言いますが、SaaSとかを使ったほうがいいです。

みなさんの場合で言うと、例えばコンサルの方は、クライアントのレポートを作ることがあるかもしれませんし、税理士の方は、経営レポートとかインポートデータを作ることがあるかもしれません。そういった作業は、例えば、従来毎週2時間かけていたとすれば、すべて一瞬で終えられるようになる。まずはこの事実だけをご理解いただきたいと思います。

もう1回この問いです。5時間かかっていた作業を今後も毎回続けることは、貴重な時間を奪い続けます。特に創業直後は時間が命ですので、間違ってもそういった罠に陥らないように気をつけてほしいと思います。

Excel・脱Excelの判断基準

マクロを使えばどんどんいろいろできるのですが、ここからが、実は一番みなさんに気をつけてほしい話です。「何でもかんでもExcelでやろうとしないほうがいいですよ」。

具体的に、どんなものをやってはいけないかをリストアップしました。これ以外にもいっぱいあるんですけど、ざっと見ていくとこんな感じですね。

データベースもしくは勤怠管理、経費精算、仕訳作成、そして営業管理です。あとは給与計算、人事評価、採用管理です。詳しい方は、それ用のSaaS、サービス名が全部思い浮かぶと思います。

ただし、これらは毎月お金がかかります。創業直後は経費を減らしたいと、こういう固定費の増加を避ける考えの方が多いのですが、果たしてそれが本当にコストカットになっているかを長い目で見たほうがいいと思います。

Excelで済まそうとせずに、コストをかけてでもSaaS等を使ったほうがいい理由というか、まずはExcelでやらないほうがいい判断基ををご紹介したいと思います。

(スライドのように)複数名のメンバーがデータを入力したり、データを蓄積したり、もしくは利用、閲覧するものです。これをExcelでやろうとすると、けっこう大変です。スプレッドシートも同様です。

一方で、Excelでは何をするかというと、システムから吐き出したデータを材料にした資料作成やインポートデータの作成です。こういうものはExcelでやったほうがいいです。

まとめると、データの入力と蓄積は脱Excelして、SaaSを使うことを推奨したい。システムから吐き出したデータを材料にした資料作成やデータの作成、ここからはExcelがいいという判断基準ですね。

実は、SaaSにもこういった分析機能があるんですけど、残念ながら多くの現場で賄いきれていません。例えば、人事評価や給与計算のアプリ、システムを使っていて、そこにデータが溜まっているんだけど、そのデータを分析した資料がほしい場合ですね。そういった分析機能をSaaSに求めることは困難です。そこから先はExcelでやったほうがいいです。

マクロ・自動化の最大のポイント

その具体的な例を1つご紹介したいと思います。「マクロはこう使いますよ」という話です。一瞬で作業が終わるのはこんなイメージだということも併せてご紹介したいと思います。

例えば、こういうデータ(日付ごとの商品売上データ)が社内のシステムに溜まっています。

ある会社では、毎週このデータをもとに、こういう表組(酒税区分、小売店地域ごとの表)の集計表に変えてほしいわけですね。

これに毎回2時間かかっていた事例があります。こういう時に、毎回2時間かけていないでマクロを組んでさっさと終わらせましょうというわけです。

これはボタン1クリックで終えられます。ここに実際にボタンが設置してあります。

この作業は集計実行ボタンをクリックするだけで、このデータからすべての数字が集計されて、ここ(表組)に数字が入ります。

ちょっとやってみましょう。これをクリックすると、このように数字が一瞬で入るわけですね。

これがデータを溜めるところまではシステム、そこから吐き出したデータをもとに資料を作るのはExcel、という使い分けです。

一方、この表を初期化したい場合はこちらに用意したクリアというボタンを押せば、一瞬で消えます。

こういうこともできるわけです。もう1回作りたければ、もう1回クリックすれば一瞬でできます。こういったことが瞬時に終わる。2時間かかっていた作業が1秒もかからずに終わるのがマクロの威力です。

こうした資料作成作業が複数ある場合、掛け算でどんどん時間が増えていきますので、そういうのを全部自動化して、人間の工数をかけさせないことが大事です。

現場の作業担当者の声を聞いていると、1クリックで終えられて、時間の短縮自体もうれしいんだけれども、ミスをしなくて済んだことが一番大きいということですね。先ほどの並べ替えでもそうですけれども、確かにそう思います。時短も大事だけど、やはりミスすることが一番のリスクですので、そこの防止がマクロ・自動化の最大のポイントだと思います。

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