ソフトバンクとOpenAIにとって「歴史的な日」になった　孫正義氏が語る、AI革命の全ぼう

ソフトバンクが法人限定の特別イベント開催

宮川潤一氏（以下、宮川）：いつもたくさんのお取引をちょうだいしておりまして、大変お世話になっております。ソフトバンクの宮川でございます。



本日は、日本を代表する企業のトップのみなさんと、ご覧のようにたくさんのメディアの方々にお集まりいただいております。誠にありがとうございます。

本日は、なんと日本の時価総額の半分を超える企業のトップの方々にお集まりをいただいております。

我々企業がAIによってどのように進化していくのか。いつ、どのように取り組むべきなのか。ChatGPTを皮切りにDALL･E、Sora、o1、o3のように世界中で一気に生成AIを浸透させてきたOpenAIさんとともに、ソフトバンクグループ代表の孫さんとArmのCEOであるレネ・ハースさんを交えたプレゼンテーションやトークセッションをご用意させていただいております。

今まさにAGI（汎用人工知能）と呼ばれる人知を超える存在へと進化しつつあるAIでありますが、業務の助手としての範囲を超えて、業務を自律的に代行するAIエージェントへと進化しようとしております。

私たち経営者は、この先を見据えて、AIによる変革の時代に対して、柔軟に、そして積極的に対応していく必要があると思っております。

本日のイベントではOpenAIさんによるAIエージェントのデモンストレーションもご準備させていただきました。進化を続ける生成AIとAIエージェントがみなさまのこれからの企業経営にどのような革新をもたらすのか。

どうか本日のセッションがみなさまにおきまして、今後の経営戦略のヒントとなり、また新たな可能性を見出すきっかけの一助となることができれば、うれしい限りでございます。それでは孫さんにバトンを渡して、私からのオープニングのご挨拶とさせていただきます。

本日はどうぞよろしくお願いいたします。

（会場拍手）

孫正義氏が夢見る、AGIからASIのAI革命

司会者：ソフトバンクグループ株式会社　代表取締役 会長兼社長執行役員、孫正義でございます。

孫正義氏（以下、孫）：みなさん、こんにちは。孫でございます。よろしくお願いいたします。



今日は、先ほどOpenAIのサムと正式に合弁会社について調印をしましたので、覚書の報告も含めて発表させていただきたいと思います。

まず最初に、その前におもしろいものを見せたいと思います。こちらです。今日はこのことについて話をします。クリスタルです。



みなさん、水晶玉と聞いて何を想像されますでしょうか。人類の英知を超えた、何でも聞けば、未来のことがわかると。今、何を解決すべきか。どうやって解決すればいいのか。これは何を意味するのか。そういうような知りたいこと、問い合わせたいこと。これを聞けばなんでもわかると。

そんな魔法のような話が、今までいろんな物語でありましたが、そのSFや物語のような世界が、ついにやってこようとしています。

これを我々はAGIの世界、そしてアーティフィシャルスーパーインテリジェンス（ASI、人工超知能）の世界へとこれから一気に開発を進めていきたい。このように考えています。

人類の未来に影響を与えるようなプロジェクト

孫：今日はそのことをいろいろと話をさせていただきます。クリスタルです。みなさん、このクリスタル、水晶玉を覚えていただきたいと思います。

サム（・アルトマン）とOracleのラリー・エリソンと3人でトランプ大統領と一緒に、Stargateの発表をしてまいりました。

大統領就任して仕事始めの第1日目ですから、大変な多忙なスケジュールの中ですね。政治的ないろんな行事が立て込んでいる中で、あえて、トランプ大統領が我々のためにじっくりと時間を割いて、自ら発表をしていただきました。

もはやこれは、アメリカにとっても、一私企業のイベントではなくて、国家を挙げた戦略的な、大変重要なプロジェクトへと格上げされてきたんではないかと。このように思っています。

これからですけども、ぜひ楽しみにしていてください。必ず大きな、これからの100年、200年、300年の人類の未来に影響を与えるようなプロジェクトだと思っています。

それを、サムと我々とOracle。資本の提供者としては、UAEのMGXも含めてこれに参加するということになったと。大変わくわくしております。

まず、そのStargateは本当に近い将来、AGIは達成されるんじゃないかと思ってます。ちょうど1年前は「AGIは10年以内にやってくる」と我々のイベントでも申し上げてまいりました。

ほんの数ヶ月前、「AGIは、2～3年以内にやってくる」と私は訂正して申し上げました。今ここに、「AGIは本当にもっとそれよりも早くやってくる」と実感してると、あらためてコメントさせていただきたいと思います。

AGIの壮大なプロジェクトは大企業から始まる

孫：このAGIですけども、今日の発表に関係あります。これが、私は個人の世界よりも先に企業。とりわけ大企業から始まると考えています。



なぜかというと、個人の世界の中には千差万別、ありとあらゆる現象があって、しかもさまざまな、理屈で言えないような感情の世界や、個別のいろんな例外的なものばかりがたくさんあります。

それを世界中の人々の中で、万能の知恵を持つのはなかなか大変なんですけれども。企業、とりわけ大企業、1つの企業、あるいはそのグループに絞って限定して考えると、圧倒的大量なデータがあるわけですね。

このAGIを達成するためにはそのふんだんで良質な、しかもある程度限られた世界のデータがあるということが大変重要な材料になるわけですね。知恵を出すための材料として、深くて広くてリアルタイムで、しかもその企業特有の一般のインターネットに流れていないような、その企業に特有の個別のデータがふんだんにあるわけですね。

そうすると、そのデータを基にいろんなトレーニングをし、推論をしていくことが可能になるわけです。

ですから僕はまず最初にこのAGIが実現されるのは、大企業の中で最初に起きると。しかもこれ、お金もかかるわけですね。大変大きなお金がかかりますし、努力も必要ですから、それを払えるだけの財力があるのは大企業であると。このように思っています。

ですからAGIは企業から始まると。とりわけ大企業から始まると考えています。

先ほど我々の宮川くんから説明ありましたように、今日は日本のGDPの50パーセントぐらいの企業のトップが集まっていただいております。

まさにコーポレート・ジャパン、日本の株式会社の社長、会長さんたちが500社集まっていただいております。このような日本を代表する大企業からAGIが最初に展開されるということを今日は発表させていただきたいと思います。

数十億のAIエージェントが24時間365日、働き続ける

孫：この企業向け、特に大企業向けの最先端のこのAI。これを世界で初めて、日本から始めると。世界で初めて、日本から我々が始めるということを先ほどサムと正式に合意しましたので大変うれしく思っております。後ほど詳しく申し上げます。

このAGIは企業だけにもちろんとどまるのではなくて、医療や教育、政府など、ありとあらゆるところに、もちろん個人の家庭にまで広がっていくと考えています。

これからサムがデモをしますが、企業向けのエージェントが我々に代わって24時間365日、次々と仕事をこなしていくと。

今までのインターネットは、検索をしたりあるいはメールをしたり、人間が能動的に動いていかなきゃいけませんでしたね。初めて今度はAIが自らエージェントになって、自ら能動的に365日24時間ずっと働き続けてくれると。我々が寝てる間も仕事をしてくれる。



そしてエージェントがエージェントに、このAIエージェントがAIエージェントに、お互いに仕事のやり取り、バトンタッチをしながらこなしていくと。このようなかたちになります。後ほどのデモ、楽しみに見てください。

冒頭にクリスタルを見せましたけども、なぜこれを握ってるかというと、その企業向けの最先端のAIを我々は「Cristal」というネーミングをしました。

クリスタルの、正式な英語のスペルでいくとcr“y”stalなんですけども、あえて我々はCristalにしました。もちろん商標とかいろいろありますから、普通の単語よりは1文字ぐらいもじってるほうがいいなということなんですが。

実はこのCristalのiは、同じクリスタルの意味です。水晶の結晶という意味です。これはフランス語やスペイン語では正しいスペルですから、決してミススペルではないということを覚えておいていただきたいと思います。

正式名称は「クリスタル・インテリジェンス」ということで我々はネーミングをしました。このCristalをこれから我々は広げてまいります。このパートナーシップとして、ソフトバンクとOpenAI、この2社が戦略的パートナーとして、このCristalを企業向けに始めていくと。

ソフトバンクとOpenAIにとって「歴史的な日」

孫：一日も早くこのAGI、そしてASIの世界に行けるように我々ソフトバンクとOpenAIが開発をし、また世界で初めて日本からその開発したものを販売し始めると。

最近、日本初はなかなか……世界の中で日本が最初だというテーマが減ってきましたけども、めでたいことに今世界中の人類が最も注目しているこのAI、ましてはこのAGI獲得競争という中で、日本から始まると。このチャンスをぜひ今日会場に来ていただいてる大企業のみなさんには生かしてほしいと思います。

そういう意味では今日は歴史的な日になると思います。

これをやる上でソフトバンクとOpenAIで50パーセント・50パーセントの合弁会社を設立するということで、正式に先ほど覚書に調印しました。会社名はSB OpenAI Japanということです。

ソフトバンクグループと宮川くんが社長をしているソフトバンク株式会社とこの両方で作りました。そこの中間持ち株会社がOpenAIと50・50でジョイントベンチャーということであります。

今日の朝調印した、ほやほやでございます。Stargateの発表の時は、トランプ大統領との発表の前の日に正式に調印しました。これも出来立てほやほやということでございます。

さて、このCristalが何をどのようにやるかということですけども、企業の中核のデータ、すべてのシステム。例えば我々ソフトバンクグループ、LINEヤフー、携帯のソフトバンク株式会社、Armなどの会社を足すと、2,500社ほど基幹システムが走っております。コンピューターのシステムが2,500ほど走っています。

それぞれに個別に専用のデータベースがあって、個別のシステムになっています。もう30年ぐらい前から、ずーっと作り込んだシステムのソースコードがあるわけですけども。このCristalがこのソースコードを全部読みます。

銀行さんや自動車メーカーさんも、10年前、20年前、30年前に誰かが作った基幹システムのソースコードなんて、人が書いたソースコードを、プログラムを読むのは難解で退屈でめんどくさくて、もうわけがわかんないですよね。

書いた人はもうとっくに引退してしまっている。聞きたくてもどういう意図で書いたのかよくわかんない。もちろん中にはいろんなバグが潜んでる状況ですが、このCristalが全読みします。すべてを読みます。

これから先は「長期記憶」がカギになる

孫：そしてそのソースコード、プログラミングが何を意味しているのか。どういう意図で書いたのか。どういう機能を持ってるのか。どこをバージョンアップしたらいいのかというようなことを、最新の言語に置き換えていくと。最新の言語でバージョンアップまで請け負ってくれると。

もはや人間のプログラマーがプログラムして1日バージョンアップすると。そんな時代は終わったということであります。すべての、すべての我々のグループの中、我々社内のグループ内のソースコード、プログラミングを全読み、一気読みするということですね。

それからすべての会議、我々は毎日さまざまな会議室で同時進行で行われていますが、すべての会議にこのCristalが参加をすると。参加をして一緒にディベートで意見を言ったり、ものを尋ねたら答えてくれたり、その英知を、社員と会議で共有する。

それからお客さんとのネゴシエーションの時に、交渉、営業や契約の交渉の時、このCristalが一緒に参加をすると。

我々も、携帯のコールセンターには24時間365日いろんな電話がかかってきます。これを、5分も10分も待たせたり、聞かれても適切に答えられないようなことがたびたび起こってますけれども。これに全部このCristalが代行してお客さまと直接コールセンターで会話をし、問題を解決してくれると。

さらに、すべての資料、すべての社員の業務用のEメールなど、エンジニアリング部門であればすべての仕様書や設計図などを全部読み取ると。Cristalがそこに参加をします。

会議とかネゴになると、今の会議の内容だけではなくて、前回の会議、3年前の会議、交渉の経緯、そういう長期記憶が大変大切になるわけですね。

今、プロンプトエンジニアリングという、プロンプトしていろんなことを尋ねて、上手に上手に「てにをは」を入れて質問したり、上手に聞いたら初めて答えてくれる技術がありますが、もうそんな必要はありません。

今何を聞きたいかということをいちいち詳細に言わなくても「あの件どうだっけ？」というハイコンテクストで聞けば、「いや、前回の時の流れからこうです。しかも今日起きたばかりのニュースによって影響を受けて、このように正しい確率論としては変わってます」というようなことをリアルタイムで刻々とバージョンアップし、また過去の長期記憶も全部踏まえた上で正しい判断をしてくれると。これ、すごいですよね。

我々は部下が出張したり、替わってしまったり、辞めてしまったりすると、この長期記憶がパサッとなくなってしまうわけですね。自分の中だけでも、自分の部署、違う部署との長期記憶があります。これからはこのエージェントに加えて長期記憶が大切になります。

ここで大きな勝負になるんですが、このCristalは、まさにその企業における長期記憶もすべて踏まえた上で正しいアドバイス、正しいネゴをやってくれるということであります。長期記憶を覚えていてください。