2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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(6)集団思考に立ち向かう
アダム・グラント氏:もう1つお伝えしたいことがあります。それは、全員で集団思考に立ち向かわなければいけないということです。多くの上司が不機嫌に部下を黙らせる場面を見てきました。私の仕事のクールな点は、さまざまな業界の組織に赴き、あちこちで部下を黙らせる上司の写真を撮ることです。最近のお気に入りはこれです。
多くの上司が無意識にこうしていますね。お気に入りの例えは、上司が「私に……を持ってくるな」と言うことです。「私に……を持ってくるな」。
あなたの上司を思い浮かべてください。この言葉を言ったことはあるでしょう。みなさん、声を上げてくださいね。
さあ、「私に……を持ってくるな」。もう一度「私に……を持ってくるな」。
ワオ、すばらしいですね! 「空白」をそのまま叫んだ人以外は。
この背景にある理論を説明します。みなさんは、不平を言うだけではなく、建設的であることを他人にも望みます。裸の王様が本当は服を着ていないことを指摘してほしいわけです。同時に、頭を使って、問題を解決するために、仕立屋になる方法を考えてほしいと考えています。
この言葉の問題は、大したことのない問題は議論に上がりますが、本当に大きな問題を知ることはできない点です。そして、誰も解決しないままになります。そして、情報を積極的に取りに行く文化ではなく、守りに徹する組織文化に行きつきます。
人々が解決策について発言する前に、ほかの誰もが声を上げる必要があります。「こういう問題があって、初期のアイディアはこうですが、どうしていいかわからないのです」と言うことができます。こうして初めていい質問をして、周囲の専門家から意見を得ることができます。
問題を歓迎する組織を見てみたいと思います。ワービーパーカーが実施しているもっともすばらしい取り組みは、Googleドキュメントです。投書箱のように見えますが、これは問題を記録する場所です。あらゆる会社の問題を投稿することができます。シニア・マネージャーが毎週確認して、問題の優先順位を決定します。自分が取り組みたい問題があれば、それを自分の業務の一環として取り組むことができます。
人々を巻き込こみ、問題解決を図り、そして新しい挑戦をさせるには、これは非常にいいアイディアです。自分の業務をいかに効率化するかというだけではなく、より大きな組織規模での成功に貢献するにはどうすればいいのか、人々が考えるいいきっかけになります。
自分の職場をそんな方向に持っていきたいと思っている方、私のお気に入りの方法をお教えします。それは、「キル・ザ・カンパニー(会社を殺す)」というエクササイズです。
私は数年前に、ある企業からこれを学びました。当時CEOは非常に頭を悩ませていました。彼は幹部たちを集めてこう言いました。「あなたたちは、わが社の最大の競合相手だと想像してください。今から数時間かけて、どうすれば私たち自身を廃業に追い込めるか考えてほしいのです」。これほど生き生きとした幹部たちの姿を、私の人生で初めて目にしました。
ある科学者は、「私はこの会社を潰すのを27年も待っていました! ようやく発言の機会を与えてくれて感謝します」と言いました。
(会場笑)
しかし、数時間後には、いくつかのアイディアは本当に競争市場での脅威であるとわかりました。そのほかのアイディアも脅威になりうる可能性を含んでいます。どうすればいいのか。
このエクササイズは2つの理由から非常に強力だと言えます。1つ目は、誰もが安心して発言することができるという点です。話すことを躊躇うアイディアでも自由に発言することができます。将来に向けたエクササイズだと考えるからです。「キル・ザ・カンパニー」の本当のゴールは、こうでもしなければ発言しない人に、声を与えることです。
もう1つの利点は、守備よりも攻撃の方が人々は創造性を発揮するからです。もし逆に「セイブ・ザ・カンパニー(会社を救う)」エクササイズをすれば、山ほどつまらない保守的なアイディアが出てくるでしょう。「キル・ザ・カンパニー」では、これまで考えもしなかった可能性を見出すことができます。そしてそれを実現することができます。
すでにこのエクササイズを行った方は、1年に最低2回行うことをお勧めします。なぜなら、常に新しい脅威や可能性に晒されているからです。
これが近年、多大な関心を向けている分野です。近年は、「レジリエント(打たれ強い人)」に対する研究を進めています。どうすれば失敗に直面した組織や個人を救うことができるか。つまり、問題を跳ね返し、困難を克服することができるかということです。
シェリル・サンドバーグ氏と私は共著「オプションB」を書きあげました。このなかで、個人レベルそして組織レベルでの解説を行っています。長期的な成功には、これ以上に必要となるスキルは存在しないでしょう。とくに非常に創造的な人々にとっては。
失敗に直面することもあるでしょう。拒否されることもあるでしょう。どのようにしてモチベーションと強さを維持すればいいのでしょうか。
私はとてもシンプルなゴールを持っています。より多くの「オリジナルな人」が沈黙を守るのではなく、もっと進んで発言をする世界を創造したいのです。ソーシャル・メディア会社を作ろうと考えたなら、上司の上司にアピールし続けることができる世界を作りたいのです。例え、女性トイレに行きついたとしても。
ここにいらっしゃるみなさんが、そんな世界を創造することに協力してくださると期待しています。ありがとうございます。
(会場拍手)
それでは、スライドの質問に答えていきましょう。
質問1:オリジナルな考えや創造的な考えを生み出すために、自ら見直すことができる組織というものは、どのように構築することができるでしょうか。
アダム・グラント氏:この問題を考えるにあたって、私のお勧めは、デビッド・キダー氏です。Bionicという会社を経営しています。デビッド・キダー氏はすばらしい起業家で、第2、第3の企業を設立しました。しかし、スタートアップ企業を大会社に売ることができませんでした。なぜなら、大企業では、彼が始めたイノベーションを維持できないという不満があったからです。そこで、Bitcom、Satcom、GEに行って「会社のイノベーションを維持できていますか?」と聞きました。
現在、Bionicは多くの異なる企業と同じことを行っています。NikeやTaycoなども含まれます。彼らがしたことは、要するに社内ベンチャーキャピタルです。 20個から30個のアイディアに賭けるとします。そのうち実行されるのは1個か2個です。しかし、始めるきっかけとしてはすばらしいです。
アイディア・コンテストもいいと思います。専門家の目から評価して、もっともすばらしい提案を実行に移します。
Dow Chemicalの例をお話ししましょう。エネルギー節約とゴミの削減のアイディアを公募しました。20万ドル以下のどのようなアイディアも採用するとし、予算に応じて給与を支払うとしました。10年で575のアイディアを得て、会社の1億1千万ドルの削減に貢献しました。多くの人々は、創造的な仕事に就いていた訳ではありません。工場の床に座って、壊れるところを見ていました。でも、アイディア・コンテストがあって提出まで3週間あると聞かなければ、自分のアイディアをどこかに出そうとは思わなかったでしょう。
質問2:8歳の自分にアドバイスするとしたら、なにを言ってあげたいですか?
アダム・グラント氏:1つ目は、どうかどうかどうか、アフロヘアは切ってください。2つ目、汗びっしょりのズボンでどこにでも行くのはやめなさい。3つ目は野球カードの情報を全部記憶するのはやめなさい。ほかの人が迷惑しています。将来、あなたが教授になった時、ほかの人があなたの情報を知りたがるからね。
次の質問です。
質問3:1冊だけ絶対に読むべき本を選ぶとしたら、どれですか? そしてその理由を教えてください。
アダム・グラント氏:私は本が好きなので、1冊を選ぶのは難しいですね。つい最近読み終わった本は、ダニエル・コイル氏が書いたカルチャー・コードに関する本です。何年も誰かがこういう内容で本を出版してくれるのを期待していました。こういう本があればと、想像を膨らませていました。すばらしいチームの秘密とはなにか。価値観や規範をどうすれば構築できるのか。
ダニエル・コイル氏は私の期待以上の内容を書いてくれました。だからこの本を高く推奨します。
次の質問です。
質問4:どうすればもっと自信を持って発言できますか? なにか特別な訓練や姿勢が影響しますか?
アダム・グラント氏:そうですね。多くの人が、自信をつけるために膨大な時間を費やします。疑いなく必要不可欠なものです。多くの場合、自信というのは成功自体でもあります。その原因となるだけでなく。わずかな追い風が自信を付けさせることがあります。そして、以前はできなかったようなこともできるようになります。
何人かの方は、いい例だと思いますが、いつも自信満々でいたいわけではないですね。「オプティミスト(楽観主義者)」と「ディフェンシブ・ペシミスト(対処的悲観)」の大きな違いについてご説明します。
あなたが「オプティミスト」の場合。学生時代を思い出してください。1週間後に大きな試験が迫っています。あなたは完璧なパフォーマンスを発揮することを想像します。あらゆる問題は、あなたが想定した通りで、すべて回答でき、100点をとると知っています。このワクワクした未来の予測が、勉強のやる気を起こさせます。
「ディフェンシブ・ペシミスト」の場合は、少々違ってきます。試験の1週間前、真夜中に冷たい汗をかいて飛び起きます。あなたはパニックに陥ります。試験に落第するだけでなく、教師はあなたの過去の試験結果からさえ点数を引きます。これは取り戻すことはできませんね。この不安が、勉強しなければと追いたて、結果として、「オプティミスト」と同じくらい良い結果を手に入れます。
ただし、「ディフェンシブ・ペシミスト」の場合、もし私たちがあなたのパフォーマンスを妨害したいなら、あなたをハッピーにするしかありません。試験の数日前に「ディフェンシブ・ペシミスト」の気分が良ければ、パフォーマンスは落ちます。なぜなら、彼らを準備に駆り立てるパニックがないからです。
時に自信のなさこそが、感情的にあなたを駆り立て、物事に集中させます。つまり、「ディフェンシブ・ペシミスト」の多くは、自信のなさで自分たちを追いたてます。そうすることで、実際にパフォーマンスに移す際には、全力を出し切る準備が整っているのです。
ここで大事なことは、自分のスタイルを理解することです。「オプティミスト」にとっては、物事が順調に進むことを想像する方がいいです。一方で、「ディフェンシブ・ペシミスト」にとっては、最悪のシナリオを想定することが、もっともやる気を起こさせ、自信に繋がる方法です。
質問5:私は今、25歳です。サウス・バイ・サウスウェストに参加する人は、みんな40歳以上に見えます。若くても私のアイディアで信用を得る方法はありますか?
アダム・グラント氏:そうですね、これにも2つあります。
まず1つ目。これは私にとってもとてもやりがいのある問題です。私が初めて教授になったのは、10年前です。私は空軍将校に授業をするように言われました。この時25歳で、博士号を終えたばかりでした。部屋に入ると、大佐の平均年齢は50歳前後でした。4,000時間のフライト実績を持つ人や、何百万ドルもの予算を管理している人もいました。
しかも、彼らは例えば「ストライカー」や「サンダー」などのいかついニックネームを持っているので、部屋に入り、まず信頼を得る必要があると感じました。経歴や専門分野について話しました。4時間の講義の後、彼らからフィードバックをもらいました。まったく壊滅的な評価でした。
彼らが書いたコメントは「講師よりも観客の方がよほど専門家だ」というものでした。何人かは少し優しく「講師は年々若くなるようだ、まぁもしかしたら私たちが年をとっただけかもしれないが。でも、これはお伝えしたい。どうか実際に経験を積んだ人物を講師として招聘してほしい」と書いていました。
これに対して、実は最初の反発心を抱きました。「私は多くの経験を積んでいる。これはデータと呼ばれるもので、データとは、多くの人の経験の集積だ。限られた経験よりもよほど学ぶことがある」と考えました。これはあまり進められる発言ではありませんね。
そこでその代わりに、私は将校たちの注目を集めることにしました。数週間後に、別の空軍将校グループと、もう1度講義を行うことになりました。部屋に入って、信用を得ようとするのではなく、こう言いました。
「みなさんがなにを考えているかわかります。12歳の教授から一体なにを学ぶことがあるのか、とお考えでしょう」。
完全なる沈黙が舞い降りました! 沈黙を破ったのは、将校の1人の声でした。
「なにを言ってるんだ! 少なくとも13歳以上だろう!」
(会場笑)
おもしろいことに、私はまったく同じ内容の講義をしました。しかし、フィードバックはよりポジティブなものでした。彼らのコメントはこういうものでした。「何世紀も年の離れた人間が、世紀とはなにかを話すのを聞くのはとても新鮮な体験だった」と書かれていました。
私はみなさんのような実際の経験はありません。でも今私が行っているのはこういうことです。これがみなさんの助けになるか、ぜひディスカッションしたいと思います。
第2のポイントは、これを伝える方法です。データから言えることは、「アドバイスを求める」ことです。誰も言いませんが「アドバイスを求める」のはもっとも効果的な戦略だと思います。「私にはこんなアイディアがあるのです!」と言う代わりに、組織やその分野における年長者に対して「あなた方のアドバイスをいただきたい。どうすればこのアイディアを固めることができるでしょうか?」と聞きます。まず「アドバイスを求める」ということは、質問相手を喜ばせることになります。
ベンジャミン・フランクリン氏の言葉を引用します。「アドバイスを求める人々の知恵にこそ敬意を表します」。つまりこういうことです。会場のみなさんは私にアドバイスを求めてやって来ました。みなさんすばらしいセンスを持っているということです。なぜなら私に聞けばいいとみなさんご存じなのですから!
もう1つは、「パースペクティブ・テイキング(他者視点取得)」です。アドバイスを求められた相手は、あなたの視点に立って考えなければいけません。そのため、その相手から賛同を得るための、いいきっかけになります。少なくともこう言うことはできます。「あなたは変化を起こすし、アイディアを生み出し、実行することに対して多くの経験をお持ちです。どうすればそれができるのか、アドバイスをいただきだいです」。こう言えば、若者であるかどうかは問題にならないでしょう。
質問6:初めにルールをきちんと理解してから、適切に破るべきだと思いますか? それともルールを理解するのは貴重な時間の浪費だと思いますか?
アダム・グラント氏:はい。次の質問に行きましょう。
実際は、両方でしょう。専門家として経験を積むことと、オリジナルな人になること。もっとも創造力豊かな人々は、その分野において基礎となる知識を持っています。もしなにも知識がない、ルールも一切知らないならば、その分野に貢献することは困難でしょう。想像してください。アインシュタインが生物学の知識しか持たずに、物理学の概念を新たに作り出すことができますか? それはあり得ないでしょう。
しかし、その分野の専門に深く入り込むと、心理学でいうところの「エントレンチメント(保身)」に陥ります。その分野における前提を強く信じすぎて、疑うことすらしなくなります。一方で、単なる深い経験だけではなく、幅広い経験を持つ人は、ほかの人々が当たり前だと思うことにも疑問を持つことができます。
ルールを学ぶのもいいでしょう。しかし、意図的に健全な距離を保つ必要があります。
質問7:幼少期は、引きこもりがちだったようですが。
アダム・グラント氏:はい、いまだにそうです!
質問7:どうやって人前で話すことを克服したのですか?
アダム・グラント氏:そうですね、人前で話す怖さはもうあまりないです。私の場合は、最悪のシナリオを想像することで克服しました。
多くの場合は「オプティミスト(楽観主義者)」ですが、人前で話すことに関しては、「ディフェンシブ・ペシミスト(対処的悲観)」のアプローチでした。こういう悪夢を想像します。話すべき内容をすべて忘れる、または話の流れを見失う。想像のなかでパニック状態になってステージを降りたくなればなるほど、実際に取り乱すことはなくなります。なぜなら、そう頻繁にあることではないからです。
これが起こったとしたら、素早く反応してこう言いますね。「ああ、すいません! 全部忘れました!」。観客が素直に従わないとしても、枝葉を失うようなもので、見た目ほど痛みを伴うことはありません。
2つ実例を上げましょう。中学校の時、マジシャンとしてパフォーマンスを始めました。マジックのネタが完全に失敗することほど最悪なことは存在しません。慌てて戻って、「待ってください!」と言うしかありません。これは冗談ではなく、本当にとんでもない失敗をしたのです!
人々は、はははと笑って「サプライズはどこだ?」と言いますが、サプライズは起こりようがないのです。最悪なマジシャンですね。この経験のおかげで、人前で恥をかくことに対して戸惑いがなくなりました。
もう1つは、私が教え始めた時です。自分のクラスで教え始める前に、ボランティアでゲスト講師として別のクラスに招かれました。ステージの上に立って大勢の観客の前で1時間話をしました。彼らは私の話なんてまったく聞いていないし、関係を築く機会もありませんでした。
クラスの後に毎回匿名のフィードバックを集めます。私は生徒たちにこう質問しました。「なにがよくありませんでしたか? どうすれば改善できますか?」。これに対するコメントは、壊滅的でした。1人の学生のコメントはよく覚えています。「あなたを見ていると操り人形を思い出しました」。これはどう考えても褒め言葉ではありませんね。少なくとも、操り人形がどういう意味か教えてほしかったです。そうすれば私も少しは……。
もう1人の学生のコメントは、私がとても緊張していたので、部屋全体の椅子がガタガタ震えていたと書いていました。
しかし、いくつかアドバイスもありました。どうすれば緊張を克服できるか、プレゼンテーションを改善できるかなどです。1つの提案は、過去の恥ずかしい経験を話すというものでした。過去の恥ずかしい経験を話すことほど、恥ずかしい思いをすることはありません。どのような観客も、過去の出来事ほど恥ずかしい思いをさせることできません。
さてお時間が来ました。
みなさんと意見を交換することができて、とても光栄です。お呼びいただいてありがとうございました。
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