2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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アダム・グラント氏:みなさんを2003年にお連れします。
ハーバードの学生新聞『ザ・ハーバード・クリムゾン』に天地がひっくり返るような記事が掲載されました。これまで会ったことのない学生同士を繋ぐ、まったく新しいオンライン・ソーシャル・ネットワークができたというのです。現在の学生だけではなく、まだ大学に入学もしていない高校生さえも対象だと言います。入学前から集まり、アイディアを共有することで、入学時には30人の友人と、50人の彼らを嫌う学生に出会うことができます。
(会場笑)
もちろん、このネットワークについては、多くのみなさんはすでにご存じでしょう。少なくとも、聞いたことがある、とお考えのはずです。しかし、実はこれはみなさんが思っている話とは異なります。なぜなら、このオンライン・ソーシャル・ネットワークは、私が共同設立したものだからです。
そして、完全に行き詰まりました。
(会場笑)
そして、約1年後に、お隣のマーク・ザッカーバーグ氏がFacebookを開発しました。つまり、ある人がオリジナルな事業を世界で展開している一方、私は「オリジナルな人」を研究するはめになりました。
最近、2003年のこの記事を読み直して、思わず引き込まれました。記事中のフレーズをワード・クラウドしてみましょう(注:ワード・クラウドとは、出現頻度が高い単語を複数選び出し、その頻度に応じて図示する手法)。
現在のソーシャル・メディアで使われるフレーズとほぼ同じです。
なぜこうなったのか解き明かすために、1999年に時を戻しましょう。私は高校を卒業し、アメリカ合衆国の半分を横断して大学に入学しようとしていました。知り合いなど1人もいません。この当時は、誰もが、最先端技術であるAmerica Onlineサービス(注:アメリカの初期のインターネット接続サービス)を利用していました。そこで、友達を見つけるためにプロフィール検索を始めました。
間違いなく言えることは、ハーバード大学入学予定とプロフィールにある人はまったく関わり合いたいと思えないような人ばかりでした。ともかく検索して、何人かハーバード大学に入学しようとしている人を見つけ、メールのやりとりを始めました。それぞれがまた何人かに出会いました。
4月にはオンライン・コミュニティ上のクラスメートは200人を超えました。
恋に落ちる人もいれば、親友になる人もいました。私はここでルームメイトを2人見つけました。実に人生を変えるような経験でした。ただ、これでなにかしようと思い付きもしなかったのです。
おそらく、私のような経験はみなさんお持ちでしょう。
私は「オリジナルな人」ではありません。社会の常識を打ち破り、創造力を思う存分発揮して世界を変えるような人間でもありません。このような人々は、学校を喜んで中退してすべてを賭けるのです。こういう人たちは、私たちとはまったく違う人種であり、違うDNAを持っています。彼らはそうなるべくして生まれ、進んでリスクを冒し、そこからさらに次を積み重ねていきます。
私はこのタイプの人間ではありません。なので、ソーシャル・ネットワークを立ち上げる代わりに、広告会社でマネージャーの職を得ました。とても安全な選択ですね。
きっとスーパースターとなるだろうと私が見込んだ人物は、完全に独学で6ヶ国語を学び、自由に操りました。いつも締切りを先延ばしにする人でした。
ある日、組織のシニアリーダーが彼の机に近づいて来て、大声で怒鳴りました。「もっとしっかりしろ! できないならクビにするぞ!」と言いました。私はこの一部始終を見ていて、2つの選択肢がありました。自分の意見を言うか、黙るか。私の全人生において、私は沈黙を選ぶタイプの人間だと自分で理解していました。
小学校の時、私は校長室に呼び出されました。校長室に着いた時、なにも問題はないと言われたにも関わらず、泣きました。
(会場笑)
この経験から、すべてのルールのみでなく、まだ存在しないルールにまで従うようになりました。ある日誰かがルールを作った時に備えるためです。
(会場笑)
この出来事が起こった時、私はなにか行動を起こさなければと考えました。組織を見渡し、私の肩を持ってくれそうな人物を見つけました。それは、上司の上司でした。彼女は前年の優秀賞に私を指名してくれ、宗教問題が発生するたびに私の机に来て、生存者について語っていました。
これはきっと安全だと考え、オフィスを突き進み、こう言いました。「これはとてもひどい不正義だと思います。誰もこのように扱われるべきではありません。上司が彼をクビにすると言うのです。締切りに間に合わないのであれば、組織の在り方を見直すべきです」。
なにも悪いことは起きませんでした。
ただし、上司の上司は聞く耳をまったく持たず、暗い部屋に入るように指示しました。その後起こったことは、本当に最悪でした! 人生で1度も入ったことのない場所のど真ん中に立たされたのです。
女性トイレです。
なぜなら、唯一窓のない部屋だったからです。そして、上司の上司は、「もう一度意見したらクビにする」と私に言いました。
この経験を通して、いくつか心に決めました。1つ目は、2度と誰かにクビされるような仕事には就かないということ。だから大学職員を10年しています!
2つ目は、誰もが意見を言うことができる、また意見を言うように推奨される組織を作るのはどうすればいいのか、研究することにしました。以前の私のように黙っているべきだとされていたからです。学ぶことはとても多く、それ以来、組織心理学者となりました。
3つ目は、2度と女性トイレには入らないと決めました。ありがたいことにこれは破っていません。
それ以来、「オリジナルな人(独創的な人)」の研究を始めました。1つわかったことは、彼らは私たちとそう変わりはないということです。すばらしいアイディアを思いつくために、大学を中退する必要はないのです。事実、創造性の歴史の中で、もっとも成功したケースというのは、はじめはまったく意味のないアイディアから発生しています。
オリジナルとはなにかと考えた時、過去10年で学んだことをトップ10にしてわかりやすくお伝えしたいと考えました。しかし、6個しか思いつかなったので、トップ6をお伝えします。準備はよろしいですか? いいですね?
返事がなくても始めますが、みなさんからの熱い反応を期待しています。
(会場笑)
(1)リスクを冒すことを嫌う
まずはじめに私が学んだことは、「オリジナルの人」はリスクを冒すことを嫌がるということです。
おそらく、そうは見えないでしょう。危ない橋を喜んで渡るように見えます。しかし、すばらしく創造的なことをする人々は、失敗することを好みません。確実に成功を収め、影響を与えようとします。
近年でもっともオリジナルなアイディアを検証してみましょう。
スクリーン上の人物を見ると、ある共通点があります。彼らが始めたアイディアはすべて、昼間仕事をしながら、または学業をしながら、サイドプロジェクトとして行われたということです。フルタイムの仕事をしながらこれをやり続けました。最終的に手放すまで数ヶ月、時には何年も。
サラ・ブレイクリーは、SPANXを創業しながら、2年半にわたりファックス機の訪問販売をしていました。NIKEの創業者であるフィル・ナイトは7年間、会計士として働き続けていました。仕事を辞めても安全だと思うまでそれほどの時間が必要でした。とても独創的な考えをする人々、起業家、投資家たち、アーティストやパフォーマーたちは、私たちまったく同様で、リスクを冒すということを好みません。
では、例えば株式ポートフォリオなどのリスクはどのように管理するでしょう。もし、リスクのある株式に賭けるとすれば、つまらないニュートラル・ファンドを買ってリスクの軽減を考えるでしょう。彼らは人生のあらゆる面において同様に考えます。
もし私がうまくいくかわからないアイディアを実行するとします。しかし、生活基礎をカバーできるくらいの収入は確保する必要があります。仮に失敗しても、ひどい大惨事になって破産したりしないように。
このデータをご覧ください。国が行った起業家に関する調査によると、本業を維持したまま副業として起業する人は、本業を辞めて起業に飛び込む人よりも、33パーセント失敗する確率が低いそうです。つまり、「オリジナルな人」になるためにこのような危険なリスクを冒す人間になる必要はありません。正直に言うとこの事実を聞いて、私は非常に腹が立ちました!
(会場笑)
ソーシャル・メディアのアイディアを思いつきながら、なにも行動に移さなかった言い訳をどうすればいいのか!
もちろん、マーク・ザッカーバーグ氏のようなビジョンも持っていませんでしたし、テクニカル・スキルも持っていません。なので、どうせうまくいきようはありませんでした。
ここで私が繰り返し言いたいのは、私たち誰もが周囲をよりよくするためのアイディアを持っています。私たちが行き詰まるのは、アイディアを生み出すことではありません。アイディアを持った後、なのです。この世界に創造力がない人はいません。ただ、オリジナルなアイディアを使ってチャンピオンになる方法を知っている人間がいないのです。
これこそが、今日私がお話ししたいことです。
この事実を見抜いたら、みなさんはどうしますか? どうのように意見を言いますか? アイディアがどんどん溢れてくることが受け入れられる組織文化をどのように作りますか?
アイディアというものは、時にはよいものではなく、うまくいかないことがあります。
(「自分のアイディアを説明するのを躊躇うようなら、サメ竜巻の映画を作ろうと会議で発言した人物がいることを思い返してみなさい」)
(2)誤った判断を回避する
私たちがぶつかる最初の問題は、アイディアの選定です。どのアイディアに賭けるべきか判断することです。このスキルは非常に重要です。「オリジナルな人」を見ると彼らは誤った判断を回避します。
つまり、本当は可能性のあるアイディアを潰してしまうことです。どのようにアイディア選定スキルを磨きますか?
卒業生のジャスティン・バークは、最近残念なことにIQが数ポイント低下してしまいました。なぜならスタンフォード・ファカルティ(スタンフォード大学教員)の一員になってしまったからです。
(会場笑)
幸運にもこの研究はその前に行われました。ジャスティンが行ったのはサーカスの研究です。シルク・ドゥ・ソレイユです。
彼らは人々が見たこともないまったく新しいアクションの数々を生み出しています。彼の研究は、「そのうちどのアクションが観客の心を掴むのか予測できるのか」というものでした。
彼はいくつかのグループに100を超えるビデオを鑑賞してもらいました。そして、どの創造的なアクションが商業的に成功をしているのか予測してもらいました。
最初のグループはサーカスの団員自身です。彼らに自身が出演するビデオを評価してもらいました。その評価はひどいものでした。もしみなさんが自分のビデオを見て、10段階評価をするとしたら、2ポイントも平均より高く評価しがちです。この会場にいるみなさんは経験がないでしょう。しかし、彼らは自分のアイディアを深く愛しているため、彼らのジャンプやその他のバージョンが「頭がおかしい」と評価され、世界を変える影響力がないのか、理解することはできません。世界とは、つまり観客です。
サーカス団員は、正直かつ正確に評価するには、アイディアに近すぎるのです。
次に、ジャスティンは、リーダーやマネージャーのところに行きました。彼らは門番です。彼らは評価することで給料を得ています。これが彼らの仕事なのです。
彼らはパフォーマーたちと同じくらいひどかったです。しかし、まったく逆の理由でした。パフォーマーがポジティブ過ぎる一方で、リーダーやマネージャーはネガティブ過ぎました。とくに以前のアイディアとは、徹底的に異なるアイディアに対して。
リーダーやマネージャーたちは、直感に従っていると考えていました。「私は何年も経験を積んできたので、なにが成功するのかはわかっています」と言います。この直感というものの問題は、潜在意識でのパターン認識にすぎません。独創的なことをしようとするときに、過去数年に渡って認識したパターン、つまり過去になにがうまくいったのかを根拠に、将来なにがうまくいくかを判断しますか?
彼らは、成功するアイディアとはこうあるべきというひな形、テンプレートにはまってしまっていました。
NBCによってなんの意味もないとして却下されたTV番組をご存じですか?
『となりのサインフェルド』の歴史を追って、数ヶ月研究しました。
NBCの幹部は、何度も何度も「この番組はあらゆるシチュエーション・コメディのあらゆるルールを破っている」と廃止させようとしました。「私はキャラクターを描くことになっているが、すべてのキャラクターを嫌悪している」と言うのです。どのキャラクターにも感情移入できず、脚本はどこにもいかず、なぜみんながこれを見るのか理解できませんでした。
しかし、シチュエーション・コメディに関わりのなかった幹部レック・ライドウェンがパラシュートのようにやってきて、救ってくれました。レックが言うには、「ええ、あなたは正しいです。この番組は確かにシチュエーション・コメディの既存ルールを破っています。しかし、私をおおいに笑わせてくれます。これこそが、1日の終わりにシチュエーション・コメディを見るべき理由です」。
これは、オリジナルなアイディアをうまく判断することに、1つの見解を与えてくれます。それは、その分野にどっぷりではない人間を連れてくることです。彼らは新鮮な目で物事を見ることができます。
そして、『となりのサインフェルド』の肩を持たせてください。彼は数年後に別の脚本を目にします。
「ああ、これがほかと違うということはわかっています。私にとってもは非常に居心地が悪いです。しかし、『ザ・オフィス』はすばらしい可能性を秘めています」。そうして、彼はこの脚本も救いました。
つまり、あなたの経験からわずかに外れた場所にいる人々からアイディアを取ることできます。ただし、信頼して任せることができる人たちを見つける必要があります。アイディアに対してすばらしい評価が下せる第3グループを見つけました。それは同業者です。
サーカス団に互いのアクションを評価させます。パフォーマー自身とは違って、少し距離があります。このように言うことができるでしょう。
「ピエロのように着飾って演じるアクションがありますよね? 止めたほうがいいですよ! 誰もピエロなんて好きではありませんから!」。
これは実はデータに基づいた堂々たる事実なのです。ピエロは一般的に嫌われています。リーダーやマネージャーと異なる点は、彼らは新しいアイディアが実行されるのを好むということです。まったく新しいアクションに関して、「ノー」というあらゆる理由を見るのではく、彼らは「イエス」または「たぶん」という理由を探します。
リーダーやマネージャーは門番の役割から排除するべきです!
創造性に富んだ同業者に互いのアイディアを判定し合わせるべきだと思います。彼らこそ、ワイルドで普通でなくちょっとおかしな、でももしかしたら見るべき価値があるアイディアの可能性を知りたいと考えています。
おそらくみなさんは、自分のアイディアの判断力を磨くにはどうすればいいのかと思っていることでしょう。自分のアイディアを評価することができれば、すばらしいと思いませんか?
まずすべてのアイディアを机に広げます。そして、自分がワクワクする順に1番目から最後まで格付けします。平均からいうと、もっともすばらしいアイディアというのは、1番目のアイディアではありません。実は2番目のお気に入りなのです。1番目のアイディアというのは、ものすごく熱中して考え出したものでしょう。まったく客観的に見ることはできません。
一方で、2番目のお気に入りは、もう少し中立に考えることができるので、欠点を見つけることができます。同時にそのアイディアに情熱を持っているので、喜んで欠点を改善しようとするでしょう。
ある方は、このシステムをうまく利用してやろうとこう思うかもしれません。「待てよ、自分の1番好きなアイディアを2番目におけばいいじゃないか!」
(会場笑)
これは、うまくないですね。思った通りにはいかないでしょう。
さて、よりよいアイディアを選択するには、こう言えます。過去にうまくいったアイディアに似ているアイディアを選ぶ、という罠には陥ってはいけません。多くのリーダーやマネージャーが考えるほどリスク回避にはなりません。
「あなたはわかっているのですか? もし私が出来の悪いアイディアに賭けたりしたら、恥をかいて、キャリアに傷がつきます! 一方で、出来のいいアイディアを却下したとしたら、すばらしいことに、誰もそんなことには気が付きません! 安全にふるまうことができます。この選択でいきましょう」。
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