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【手放すTALK LIVE#45】人と組織のポテンシャルが継承されるソース原理 ~人と組織のポテンシャルが花開く「ソース原理」とは~(全6記事)

嘉村賢州氏が語る、ソース原理でありがちな5つの誤解 「自分にはできない」という人が持つ思い込み

『ソース原理[入門+探求ガイド]――「エネルギーの源流」から自然な協力関係をつむぎ出す』の出版を記念して開催された本イベントでは、ソース原理・ティール組織専門家の嘉村賢州氏が登壇。新しいリーダーシップのあり方や、組織づくりについて語ります。本記事では、ソース原理でありがちな5つの誤解について解説します。

ソース原理でよくある誤解

嘉村賢州氏(以下、嘉村):実はソース原理を学ぶとけっこう誤解も多くて。今回のキャンペーンで見えてきた「5大ソース原理誤解」をちょっと整理してきたので、これは初めに押さえておくといいと思います。

1つ目は「ソース役はアイデアマン」という誤解。「私はソース役にはなれない」と言う人が多いんですよね。「(ソース役は)コールが聞ける人なんでしょ?」と言われるんですが、大きな誤解です。

先ほども言った、焼きそばを食べに一歩を踏み出した瞬間がソース役なので、別にアイデアマンである必要はなくて、「本当にやりたいと思って始めたら、それがソース役ですよ」というのが1つ目です。

2つ目は、サブソースのことを「右腕人材」と言われたり、「優秀な人がサブソースになって、それ以外がエンプロイーでしょ?」と言われがちなんですが、それもまったく誤解です。例えば今日の「手放すTALK LIVE」は45回目でしたっけ? #45の私はサブソースですね。

坂東放レ氏(以下、坂東):そうです。

嘉村:そのイベントで「トークの冒頭部分は賢州さんにお任せします」と言われたから、その時間はサブソースなわけです。こんな感じですごく気楽に話しているので、「サブソースは優秀」というのはちょっと違うかなと思います。

坂東:なるほど。

嘉村:3つ目はサブソースも含めてさっきの話に近いんですが、「ソース役になる能力が……」「私はそんなんじゃない」とか言われます。というのも「リスクを取る」「リスクを取り続ける」という話が出てくるからなんですけど。

これはステファン(・メンケルバッハ)がすごくわかりやすい表現をしています。「みなさん、父親大学とか母親大学を卒業された方は、どれだけおられますか?」と彼は言うんですね。そうすると、誰も手を挙げないわけです。

だけど見事に母親、父親をやっているじゃないですか。要はやるか・やらないかを決めるだけですよね。やると決めたら試行錯誤をして、子どものためにすごくリスクも取ってやっている。それがサブソースなので、能力がある人がサブソースをやる、能力がない人がサブソースをやれないという話ではないんです。つまり、みんながサブソースになれるということです。

上に忖度しながら仕事をするのが「サブソース」ではない

嘉村:4つ目が「サブソースはグローバルソースの言うことを聞いて仕事をする」と。どうしてもこれを聞くと、オレンジ好きな人は「ちゃんとグローバルソースの話を聞けよ」となってくるんですけど、そういう意味ではなくて。

誰かがグローバルソースで作ったフィールドに入ってサブソースになったら、サブソースは自分の内側を向いて仕事をするんです。例えば今日の「手放すTALK」は、誰がグローバルソースなんですか?

坂東:今回は僕ですかね〜。

嘉村:坂東さんがグローバルソースで僕が冒頭の30分くらい話をする時に、ちょっとは打ち合わせをしますけど、内容は知らないじゃないですか。

坂東:まったく知らないです。

嘉村:これがサブソースの振る舞いです。これがエンプロイーだったら、「30分どうやったらいいですか? これをチェックしてもらえますか? これは30分で問題ないですか?」みたいになる。これはエンプロイー的な仕事ですよね。

サブソースである僕は、(「手放すTALK」を)45回も続けてこられた思いを感じながら、「今日はどうすれば、みなさんがハッピーで豊かに過ごせるんだろう?」と考えて、自分とつながって仕事をする。

ピーター・カーニックがソース原理を提唱して、サブソースにステファン・メルケルバッハやトム・ニクソンがいますが、当然いっぱいコミュニケーションはしても独自に発展させているわけです。これがずっとピーターのほうを向いていたら伝言ゲームになり、サブソースの質は代々下がっていきます。

坂東:なるほど。

嘉村:ステファンが自分とつながって探求したものを、ピーターに見せる時には「さすがにそれはソース原理と違うぞ」とたぶん「ノー」が来るんです。でも基本は創造的に仕事をするから発展していく。だから緊張しながら、上に忖度しながら仕事をすることがサブソースであるというのは誤解です。

坂東:それはエンプロイーということですか? そういうわけでもない?

嘉村:エンプロイーに近いですね。

坂東:なるほど。

「社長=グローバルソース」という誤解

嘉村:5番目は「社長=グローバルソース」というものです。確かに「社長=グローバルソース」なんですけど、よくある誤解は「これはグローバルソース。あとはみんながサブソース。がんばってね」というパターンが多い。それも大きな誤解です。

例えばホームページを作るサブソースがいた時に、そのホームページを作っている人が「社長コラムを作りたい」と言って、「社長、ちょっとコラムで月1回くらいで執筆してくださいよ」と言ったら、社長はこのコラム執筆に関してはホームページ担当のサブソースなんです。

坂東:確かに。

嘉村:だからグローバルソース風を吹かせて「月1回じゃなくて、毎週1回書くことに決めた」というのは、だめなんです。ちゃんと相談しながら、はみ出していないかと確認しなくてはいけない。要は権力は入れ子構造なんです。ある時はある人が引っ張っていくし、ある時は違う人が引っ張るという。

だから社長でさえも、ある時はエンプロイーとして指示を聞く時もある。そのくらい対等なフィールドの話をしているのであって、「グローバルソースだから、常に俺のことを忖度しろよ」では、一気にオレンジになっちゃう。これもけっこう多いです。

1つの組織の中で無数に「この部分はサブソース、この部分はエンプロイー、この部分はサブソース」とたくさん持っている状態が、ナチュラルヒエラルキー的な姿です。「社長=グローバルソース」という話ではないということです。まだ(本を)読んでいない方にとっては、かなり深入りしているかもしれませんが、ちょっと紹介させていただきました。

坂東:ありがとうございます。今日は、あまり知らない人向けじゃなく、ご案内どおり本は買って読んでいる前提なので、みなさんも好きなように質問してもらったらいいと思います。「ぜんぜんわからないよ」ということで聞きたいことがあったら、質問してもらってもOKです。たけちゃん、ここまででお返しします。

武井浩三氏(以下、武井):いや、久しぶりに賢州さんの話を聞けておもしろかった。賢州さんの話は、わかりやすいじゃないですか。聞きながら、わかった気になっちゃう。ソース原理は科学的なエビデンスで証明しにくい領域でもあると思うんだけど、読んでいて「あ、確かに」というのをものすごく感じる本だと思っています。

特に会社の中で話し合いをすると、うやむやになりがちなものが、ソース原理に当てはめると落ち着きやすいのはすごくあると思って。DXOの中でも「意見」と「意思」を分けることをやっているのは、まさにこれなんです。

坂東:確かに〜。

武井:俺、このへんからパクったのかな?どっちがソースかみたいな(笑)。

会社経営で「グリーン組織の罠に陥ることが頻繁にあった」

嘉村:ピーターも「自分が作った」というより、万有引力のように「メカニズムが働いている要素をちょっと記述してみました」という。議論ってやはり意見が分かれると思うんですけど、ソース原理は法則に近くて、かつ言葉を学ぶようなものだと思っています。

今まで現象を語り合うにも、どう表現すればよかったのかわからなかったところが、「あ、この人がソース役で、こういうことが起こっているよね」と同じ現象を言葉で記述できるようになると意見交換ができて、解決策も一緒に考えられるようになる感じです。

いわゆるコントロール型の世界観を手放して、本当の自然なコラボレーションを観察すれば、おのずと発見されるものだから。別にピーターがすごいわけでもまったくなくて。

その時今までのコントロールパラダイムにはまっていると見つけられない。だから武井さんが見つけたのも自然なことだなと思います。

武井:これは本当に証明しづらいかもしれないけど、「わかる、わかる」となるものだなと。実は俺がダイヤモンドメディアという会社を譲る時にも、けっこうこれを意識をしていて。

坂東:あ、そうだったんですね。

武井:ティール組織の研究があまり進んでいないというか、実践例も少ないし、俺なんかは2007年からこういうのをやっていたので、会社を回していく中でいわゆるグリーン組織の罠に陥ることが一時期頻繁にあったりして。

まさにティール組織の本に出ていることをひととおり経験してきた中で、意見と意思は違うなと。平等といえば平等なんだけど、平等じゃないというか。

これは権利構造として説明しにくいんですけど、ダイヤモンドメディアという会社を渡す時に次に誰が外に向けての顔役になるというか、この会社についてなにか聞きたい時に、誰に言ったらいいのかという。

当時の会社の中だと、俺は中よりも外との関係のほうが必要だと感じて、セレモニーの情報発信をSNSで投稿したり、けっこうちゃんと話し合ってやりましたね。賢州さんからセレモニーの話を聞いていて「確かに」と思っていて。そうしないと、本人たちよりも周りが迷っちゃう。

嘉村:確かにね。外の世界も含めて知らないですからね。そうすると、外の世界も武井さんに向いちゃうかもしれない。

山田裕嗣氏が始めた令三社

坂東:そういえば今回、2冊目のソース原理の本ですが、1冊目は令三社から出していたのに2冊目は違いますね。「あれ? 山田(裕嗣)さんとなにかあったの?」と……。そこらへん、実際どういうことがあったんですか?

嘉村:まさにソース原理的に進んでいったところがありました。ちゃんと説明しないと、けんか別れした感じがするので……。実際はまったくそういうプロセスじゃないんですけど。もともと令三社は山田裕嗣さんという方が令和3年に立ち上げたんです。

進化型組織も含めて、新しい時代を作っている人がもっと場で語り合いながら、勉強し合いながら、切磋琢磨しながら未来を作っていく組織を作っていきたいということで始めて。

あと彼の問題意識として、日本の英知がぜんぜん英語化されていないから、海外に届かないということがあったんです。当然海外の名著を日本で紹介するのもそうだし、それを探求し合うコミュニティを作ったら海外に出せる英知もどんどん生まれてくるだろうと。漠然と「アウトとインみたいなことをやろう」と直感で始めたんですね。

坂東:そういう意味では(山田さんが)ソースとして……。

嘉村:そう、ソースだった時期があって、一番初めに青野(英明)さんがフィールドに引き寄せられて、2人で始まりかけていたんですね。その時に「ちょっと相談がある」ぐらいの感じで僕はいたのかな。

ちょうど3年前の3月15日に、トム・ニクソンの英語版のソース原理の本が発売されたのを僕が読んで。

坂東:さっきの話ですね。あの中に入っているんですね。

嘉村:そうそう。初めは「フレデリックが言っているし、ちょっとは勉強しておかないといけないな」と。

坂東:あ、フレデリック・ラルーが言っていたんですか。

嘉村:そう、「ソース原理はけっこう大事な概念だ」と言っていたんです。とはいえ、フレデリックはいろいろなことを紹介しているので、あまたある1つぐらいの感じで「僕もちょっとは勉強しておきたいな」とさーっと読んでみたら、けっこうおもしろくて。

嘉村氏が令三社の事業に加わった経緯

嘉村:さらに運命的に山田さんはLinkedIn経由でその著者とつながっていたんですよ。彼が作っているもので、ソース原理の組織を見える化するツールに「Maptio(マプティオ)」というのがあるんです。その時GCストーリーにいた社員の方がMaptioに問い合わせをしていた。

日本にも興味がある人がいるんだけども、言語の問題もあって(なかなかむずかしい)。ある時にLinkedInで山田さんが見つけて交流が始まって、「Maptioを日本に持っていくのに、なにか手伝ってもらえないか?」というコミュニケーションが始まっていました。

青野さんはお金の専門家で、トム(・ニクソン)の本の第3章にお金の章があったので、僕の中では「この3人は翻訳するために集まっているようだな」と。

坂東:そうですね。

嘉村:それで山田さんに「翻訳プロジェクトはどうでしょう?」と投げて、僕はそれで翻訳プロジェクトでグローバルソースに……。そこで3人で新しい組織を作るのかと言う話になったんです。

「山田さんが作ろうとしている令三社に入りそうなコンセプトだよね。これからもどんどん海外からも入れていきたいし」という中で、僕も「じゃあ、今後自分が関わる出版系は、令三社からやるのもありかもしれない」と令三社フィールドの1イニシアチブとして、翻訳プロジェクトを始めていったんです。

坂東:なるほどー。おもしろい。

嘉村:今でこそできるんだけど、その時は僕は「ソースの怠け者」で。ティール組織も自分がグローバルソースだし、ソース原理もグローバルソースを取っちゃうと、「はやり物に飛びつく、やりたがりなんじゃないか」と(自分自身で)感じて(笑)。

「今回は、僕はソース役じゃない気がします」と言ったら、山田さんが「じゃあ青野さん、どうですか」という感じで。「ソース役を誰にする?」という時点で間違っているんですけど。

坂東:(本で)読んでいたのにね(笑)。

嘉村:そうそう。そんな感じでフィールドが濁りながらやっていたので、やはりトラブルも多かったですね。

坂東:へぇ、おもしろい。

ソース原理を深めるうえで大事にしたこと

嘉村:それでやり切った。そうした時に山田さんの中で「令三社としてやりたいことがいくつか出てきている」と。「このソースイニシアチブはどうしますか」という話になって。

山田さんは、いろんなものをやりたい中の1つであって、僕と青野さんにとってはソース原理を深めたいし、どんどん海外から人を呼んできたい。例えば印税も、いろいろなイニシアチブに分配していくのかという話も出て。山田さんにとってはここは別に最重要じゃなく、どちらかというと「いろいろと使いたい」と。

そんな感じでちょっとだけ気持ち良く意見交換できないエネルギーの流れになって。

そもそも令三社イニシアチブに、僕がグローバルソースなものを入れた感じがしていて、それがややこしい理由にもなっているのかなと思ったんです。それがテンションの理由にもなっていることがわかってきたので、山田さんは取締役には残るけれど「やりたいことを、よりやりやすいかたちにしたほうがいい」ということになりました。

そのためにもソース系のムーブメントは令三社のイニシアチブにせず、別にするよう整理したんですね。

坂東:おもしろい!

嘉村:当時はソース原理をわかっていなかったので。わかっていれば、あんなことはなかったんですけど。とはいえ、3日前も令三社から出向していたので。ストーリーを説明すると、ただ整理しただけという話なんですけど。ちょうど合宿にいたもう1人から言われたのが「なにかあったのかと思っていました」と(笑)。

坂東:(笑)。

嘉村:「令三社という冠でソース原理を発信しているのに、ある時期から令三社という冠で発信していないから、けんかしたのか、ぎくしゃくしているのか、なにかあったのかなと思って。それを言うのも言いづらかったんですよね」と。

「そりゃそうだよね」という感じです。ソースの継承も儀式じゃないけど、ちゃんとオープンにフィールドの整理をすれば、周りもわかりやすいですよね。

坂東:すごくわかりやすい。

武井:でもフィールドは本人たちもどこに行くかがわからない中でやるから。俺もずっとグニャグニャやってきているので、俺は「そういうものだ」と考えたりしますけどね。

坂東:そうかそうか。

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