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マネジメントの過干渉と放任を防ぐ:部下との「適度」な関わりを実現するために(全3記事)

部下へのフィードバックで最初に伝える一言 何度も指摘せずに済むマネジメントの秘訣

「マネジメントの過干渉と放任を防ぐ」と題して開催された本イベント。マネージャーが部下一人ひとりに適した効果的なマネジメントを実現するヒントをお伝えします。本記事では、部下に的確にフィードバックをするためのポイントを解説します。

部下の「管理」の回数を減らすポイント

黒住嶺氏:管理の質を高めていって、管理を何度もしないことで生じるリスクを下げることが、管理の頻度を減らすためのポイントとなります。このポイントについて、さらに3つの方針に分けて、それぞれ紹介していければと思います。

まず1つ目の方針が、「的確にフィードバックをする」ということです。どういうことかと言いますと、「改善が起きないリスク」を減らすという目的とも言い換えられます。つまり、フィードバックをして、修正点を伝えたんだけれども、それが次の確認時までに改善されていないということが起きないようにします。

もし上司の方から見て、部下の方のパフォーマンス、あるいはタスクに関して「改善が少ないな」「前に言ったことが直っていないな」と感じると「何度も指摘しないと」と思ってしまいますし、実際に関わる頻度も増えてしまうでしょう。

ですので、1回言ったこと、あるいはスタートのタイミングできちんと伝えることができて、部下からの進捗や改善がきちんと起きれば、何度も確認することを減らせるだろうと。ということで、「的確にフィードバックをする」がまず1つ目の方針になってきます。

的確なフィードバックをするための3つの視点

的確なフィードバックといっても、工夫できるポイントはたくさんあります。この中から、取り組みやすいポイントを1つご紹介しますと、フィードバックの「具体性」を高めるという方法が挙げられます。

もしもフィードバックの内容が抽象的だったり曖昧だったりすると、逆に改善につながりにくくなってしまうことが研究としてわかっています。ですので、より具体的に伝えてあげることがフィードバックのポイントになってくるわけです。

では、「どうするのが具体的なのか」という点がもちろん気になってくるかと思いますので、その点についてより深掘りして紹介できればと思います。まず1つ紹介するのが、「3つの視点」というものです。

3つの視点はどういうものなのかというと、まず1つ目が「目標を再確認すること」ですね。上司の方が部下の方と接する時に、「何について頼んでいたのか」あるいは「何について取り組んできたのか」という目標を再確認するということです。「どうなりたいのか」あるいは「どうするべきだったのか」という目標について、まずは確認すること。

2つ目のポイントが、「やってきたことを振り返る」ということですね。目標に関して「どのように進めてきたのか」「どのようなことをしたのか」ということで、振り返りをするという点。こちらはまさにフィードバックということになります。

さらに、次に何をするべきなのかという「次にやるべきことを整理する」という点が3つ目の視点になります。

「どのようなことに取り組んでいったのか」「それについてどのような進め方をしてきたのか」、さらに「その次にどのようなことを進めればいいのか」というより具体的なステップ、今後の取り組みを伝えてあげる。

この3つの視点に気をつけながら伝えると、より具体的になっていくだろうということが、具体的にフィードバックをすることのポイントの1つ目でした。「ポイントの1つ目」と言いつつ、3つの視点を伝えているんですけれども、気をつけると良い視点を3つ紹介しました。

4つの要素を意識する

フィードバックの具体性に関しては、この3つの視点を踏まえた上で、さらに4つの要素を踏まえることができると、研究によって指摘されています。こちらは「何について話しているのか」だったり、「どの点について(意識して話すのか)」ということなので、(3つの視点と)組み合わせて使っていただくのが良いでしょう。

主に伝える内容は4つの要素に分けられます。まずは、「タスク」です。業務とのつながりが強いかと思うのですが、目標達成に関わる出来だったり、このタスクに関しては「どのくらいの質・量をするといいのか」というタスクのポイントを伝えるということです。

続いては、タスクをどう進めるのか、つまり「進め方」です。例えば、「この資料については、こういうまとめ方がいいんじゃないか」とか、1人で進めるのか、あるいは誰かにアドバイスを受けながら進めるのかなど、タスクをどのように進めるのか、というポイントについても言及できるということです。

3つ目が、進め方やプロセスに関する「確認方法」です。どのように進めるのかを考えた上で、さらにそれがきちんと進んでいるのかという点。それの管理についてもアドバイスができるということです。

例えば、「Todoリストを使っている」とか「その使い方はどうだったのか」が挙げられます。あるいは、「こう進めるように考えたんだけど、実際にやってみると良くなかった」などの仮説検証のかたちで進めてるといった確認方法。

最後は、性格あるいはその人の嗜好性という点で、「個人」です。仕事の場面でいうと、相手の意見や考え方についてどう思ったのかというフィードバックを与えるかどうかを検討できます。

こうしたかたちで、仕事に関するフィードバックについて、だいたい4つ(の要素)に関して整理できます。先ほどお示しした3つの視点と、この4つの要素のそれぞれを組み合わせて、具体的にフィードバックしていくことができるといいのかなと思います。

つまり3(3つの視点)×4(4つの要素)の組み合わせが可能で、かなり個別性の高い話になります。そこで、1個だけ例を出せればと思いますけれども、今回の例はタスクに関してちょっと紹介しています。

4つの要素の1つである、タスクに関して、何をお願いしていて、それについてどこまで進めてきたのか。そして最後に、この後どうすればいいのかを紹介するということですね。

役割と達成水準を明確にする

続いて、確認頻度を減らすための方針の2つ目「認識を丁寧にすり合わせる」について紹介します。こちらはまさに、先延ばしになってしまうリスクを減らすことにつながります。

上司としては、お願いした仕事がなかなか進んでいないという懸念が出てくると、何度も確認したくなってしまいます。そこで、先延ばしのリスクを減らす。つまり、部下の方に着実に進めてもらえるのであれば、何度も確認しなくてもいいだろうという狙いです。そのために、情報をきちんと丁寧に伝達し、お互いの認識をすり合わせることが、方針として有効だといえます。

なかでも特に、「役割と達成水準を明確にする」というのが、情報伝達として有効になってくるポイントです。これは先ほど放任に起因する先延ばしの原因としてご紹介した内容に相当します。

つまり、部下にとって「自分がチームの中でやっているんだ」「自分がチームの役割の1つなんだ」と意識できたり、あるいは「具体的にどうやって進めていければいいのか」をより明確にイメージできれば、上司が何度も確認をせずとも、きちんと進められることになっていきます。なので、丁寧に認識をすり合わせるためには、役割あるいは達成水準を明確に伝えることが方針としてあります。

また、情報のすり合わせ、具体化、明確化に関するもう1つのポイントが、「キックオフの時点で丁寧に説明・相談しよう」ということです。前半で「過干渉」について紹介したように、タスクが始動したあとで、ある程度進んでから何度もすり合わせてしまっては、まさに本末転倒だろうと言えます。

ですので、プロジェクト全体だったり、あるいは細かい1個のタスクかもしれないですが、それぞれ最初に依頼する段階で、「あなたには何を進めてほしいのか」という役割だったり、「どうやって進めればいいのか」という進め方、さらには、このタスクに関して「どのくらいまで高めてほしいのか」という達成水準などをきちんと整理しておいて、最初の段階で伝えるのがよいでしょう。

そして、このタイミングであらかじめ、「じゃあ次に、いつ、どのタイミングで確認しようか」を整理しておくのも良いでしょう。例えば時間と達成水準を併せて、「このくらいのタイミングになったら伝えて共有してください」と、次の機会も併せてすり合わせるといった具合です。

こうしたことができれば、途中で何度も確認することをせずとも、タスクに関しての適切なタイミングでの管理ができます。こうしたポイントも2つ、大事かなと思います。

部下から「自発的に確認」してもらうには

最後ですね。何度も確認することを減らす方針の3つ目が、「部下からの自発的な確認を促そう」ということになります。これは、部下の方が求める以上の管理をしてしまうと、過干渉になってしまうので、部下のニーズを超えて管理してしまうリスクを減らそうということです。

上司から見ると、部下のパフォーマンスが低いことに関して、良かれと思って関わったとしても、それが部下にとって求めているレベルを超えていると、過干渉と受け取られてしまいます。

逆に、部下から上司の方に、適切なタイミング、求めるタイミングで確認をしてきてくれるのであれば、過剰に管理することを防げます。ですので、部下の方のニーズを超えて管理してしまうのを防ぐために、部下から自発的に確認をしてもらうことを目指そう、ということです。

では、「どうすれば部下から確認を促せるのか」についてです。まず1点目は、「確認しやすい環境を整えよう」ということです。

例えば、フィードバックを受けるために、「部下の方が払う時間」です。「どうすれば上司の方から適切な意見を求められるか」と考える時間だったり、そのために資料を用意する時間などそうしたフィードバックを受けるためのコストが高くなりすぎてしまうと、確認しに行きづらくなってしまいます。

ですので、具体的な対策の一例が、例えば「オンライン/オフライン、どちらでも対応できるようにして、確認しますよ」と、選択肢を広く設けてあげることが挙げられます。

あるいは、「何曜日のこの時間は、部下からの質問や相談を受けるように枠として取っておくから、そのタイミングはいつでも来ていいよ」というアクセスのしやすさを作る。

また、最近は社内SNSも非常に発達しておりますので、社内SNSで「こういったことを相談したいんです」という報告だけはいつでも受け取る。例えば、必要に応じてアラームを切っておけば、その時間は上司の方は管理せず、余裕ができてから確認するように設定できます。

そういった方法で、「どのタイミングで送ってもいいよ」と門戸を開いておけば、部下はタイミングをそこまで気にせずとも上司へ報告できます。なので、(確認するための)機会についてもコストが下げられるということですね。

部下にとっての「報酬」を提供する

部下からの自発的な相談を増やすためのもう1つの方針は、「部下にとっての『報酬』を提供する」ということです。上司から部下に対するフィードバックで、部下にとって「価値がある」「非常に有意義だな」と思える部分があれば、その後、自ら積極的に上司の方にフィードバックを求めるようになると言われています。

例えば、「このタスクに関してどうやって進めればいいのか」ということの端的なアドバイスだったり、進捗につながる情報をきちんと提供する。こういったことが、部下にとって有意義なフィードバックの例と言えます。

あるいは、確認しに来てくれることやタスクを担当してもらっていること自体に対して、「ありがとうございます」と褒めたり、感謝を提供することも有効だと言われています。

タスクが完成するまでの期間、タスクを進めている過程では、進めていることに対する上司からの「ありがとう」という感謝の言葉が報酬になります。そのため、実際に終わるまでの過程でその報酬を受け取ろうというかたちで、フィードバックに対する価値が高まっていき、確認も自発的に起きていきます。

補足として、「褒める」ことに関しては、実は別の機会でセミナーを開いております。例えば「どうやって褒めるのがよりよいのか」だったり、「褒める時に実は割合が大事なんです」という点など、褒め方に関してもしご興味のある方がいらっしゃいましたら、こちらも併せてご確認いただければと思います。

では、最後にまとめに移っていければと思います。本日はミクロの実態として、「過干渉」あるいは「放任」について紹介してきました。

経営全体でみると細かい部分でしたけれども、上司の方と部下の方の関係性という点について注目してご紹介し、さらにその点を踏まえた上での適度な管理、どうすれば実現できるのかという点についてご紹介してきました。ありがとうございました。

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