2024.12.24
ビジネスが急速に変化する現代は「OODAサイクル」と親和性が高い 流通卸売業界を取り巻く5つの課題と打開策
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仲山進也氏(以下、仲山):7つの項目にそれぞれ進む前提として、僕がいつもチームを考える時に使ってる枠組みを共有してから進めたいと思います。まず、ジャイアントキリングってどういう時に起こるんだろう? と考えてみます。
芋虫、さなぎ、チョウと書いていますが、芋虫がさなぎになると動けなくなる。つまり芋虫は(もともとは)歩けるけど、さなぎになると歩けなくなるので、パフォーマンスが下がったように見えます。この縦軸がパフォーマンスです。
ただ、さなぎからチョウになることができれば、芋虫の時よりも速く動けるし、そもそも飛べるようになる。芋虫の時のベストパフォーマンスを100とするとチョウになると100以上が出るようになる。これがこの矢印の言いたいメッセージです。
中村憲剛氏(以下、中村):なるほど。
仲山:このさなぎのパフォーマンスが底を打つまでの状態を、まだ「グループっぽい状態」と呼んで、パズルのピースがだんだん組み合わさってパフォーマンスが上がっていくところを「チームっぽくなってきた」と呼ぶ。僕はそういう用語法で使っています。
どっちも芋虫状態だと、大きい芋虫のほうが足も長いし速いので、逆転が起こらない。でも、格上のチームが諸事情あって意思疎通がまだ整わない芋虫状態で、格下のほうがチョウになれている時に、ジャイキリ(ジャイアントキリング)が起こるんだろうなと考えています。
仲山:フロンターレを見るにつけ、チョウになってる感がすごく伝わってくるチームだなと思います。これを4つのステージで観察すると、フォーミング(同調期)・ストーミング(混沌期)・ノーミング(調和期)・トランスフォーミング(変態期)になるんです。
さっき話題に出た「すり合わせ」は、第2ステージのストーミングです。パズルで言うと、凸と凹をがちゃがちゃ組み合わせるために試行錯誤をするステージです。ここを超えた状態になれると、チームの利益と個人の利益がイコールになる。そんなイメージで、今の話をうかがっていたのですが。これを見た印象ってどうですか?
中村:いや、もうまさにそのとおりですよね。特に最初は、共通言語がない状態で見始める。やってることはすごく新鮮で積極的にトライする時期で、そこを少しずつ理解をしていくと、今度はお互いがどうしたいかというところが出てくる。
なので、時間が経てば経つほど主張も増えていきます。主張はするんだけど、その共通言語やベースの土台がまだ固まっていないので、いろんなバグじゃないですが、ずれが起きてくる。そこに対してだいたい衝突が起こるというのは、本当にそのとおりだなと思います。
プレーがずれる、ミスが増える。ちょっとずつお互いの共通理解は進んでるんだけど、まだ細かなずれがある状態。そこを過ぎると、「俺はこうしたい。あなたはどうする」とすり合わせていくと、ちょっとずつノーミングの時期に入っていく。
1回うまくいかない状態になることで、試行錯誤が生まれ、それをすり合わせながらイメージを共有していくことで、うまくいく状態になっていく。組織がうまくいく上で、本当に自然の摂理なんだなっていうのはすごく感じます。
中村:その後は、そのチームの中にイメージの共有や共通言語ができて、プレーのずれもどんどん減っていくので、「あの選手がボールを持ったら、こう動けばこうなるよね」と、みんなの予測がつくようになる。
受け手も出し手も共有して、お互いにどんどんやることが読めるようになると、それがあうんの呼吸に変わっていくと。
仲山:この第4ステージのところがあうんの呼吸です。さっき「型にはめるようなやり方だとあんまり伸びしろがない」と言ってたのは、この第1ステージのところです。選手が監督の描くサッカーをして勝ちに行こうとするスタイル。
そうすると試行錯誤に移っていきにくいし、あとはさっき憲剛さんが「最初はパフォーマンスが下がる」と言われてましたけど、フロンターレも強くなるまでにめっちゃ点を取られる時期がありましたよね。
中村:ありましたね。
仲山:それってこの第2ステージ中の印象があるなと思って見てたんですけど。
中村:あの時も監督から「こうやって勝つ」という提示はもらっていました。その指示のもと、共通の認識はあったものの、ボールが止まっていなかったり蹴れなかったり。止まらないから周りも動き出せなくて、ノッキングが起こる。
「こうしたい」というものはあるんだけど、実際にサッカーは1人でやるものではなくて、相手もいることなので、なかなかうまくいきませんでした。
仲山:ちょっと息が合わない、みたいなことですか。
中村:そうです。だから第1ステージでは提示を受けて、少しずつやり始める。第2ステージでは理解はしてるんだけど、なかなかお互いが合わない。第3ステージは理解もしているし、息も合い始める。第4ステージは、みんながすべて理解した状態になると。簡単に言ったらそんな感じなんですね。
仲山:まさに。
中村:だから最初の提示が大事なんだと思います。この第1ステージで何をするかの明確な提示があると、第4ステージまでの道のりは見やすくなるし、見やすくなればその組織の成熟度は早くはなりますよね。
仲山:具体的に言うと、どういうことが「提示」にあたりますか?
中村:当たり前ですけど、サッカーはボールを持ってる側と持ってない側で分かれるので、攻撃と守備になります。そこで、攻撃はどうやって相手のゴールに落とし入れるかを監督が話をする。守備もそうですね。どうやってゴールを守るか、もしくはボールを奪うか。
105メートル×68メートルのフィールドの中で、例えば守備だったら前からどんどん奪いにいくのか、それとも自陣に引いてゴールを守るのか、それこそ監督の考え方1つで本当に変わります。
仲山:監督ごとに「お題」が違う感じですよね。
中村:そうです。当時風間さんが来た時は、とにかく自分たちでずっとボールを保持して、相手のゴールに向かい続けようと、攻撃のところでかなり提示されてました。それができれば守備は……。
仲山:必要ないだろうってことですよね。
中村:それが第1ステージだったんです。もう完全に振り切れてます。
仲山:かなりお題の難易度が高いですよね。
中村:高いです。それまでに僕らの中には攻守の戦術だったりシステムが凝り固まっていたので、「なんぞや」っていう感じになりました。
第1ステージはみんな「なんぞや」となった。だけど、もともと小さい頃からみんなが大好きなのは、ボールをゴールに入れること。だから、ボールを持って攻められるのは、根本的に僕らサッカー少年たちのDNAが……。
仲山:みんな大好き。
中村:そう。もうDNAに取り込まれていて、みんな大好きなことだから。守りたくて守ってるわけじゃないんで、攻めて勝つために守っている。
仲山:きっとみんな小学生の時は無双状態で、自分でずっとボールを持って、点を決めてた体験がありますもんね。
中村:そこの集まりがプロサッカー選手みたいなものなので。
中村:だから、入りは久しぶりの感覚でサッカーをやれましたし、すごくわかりやすくて楽しかったです。そして、「じゃあどうやって攻めて勝つか」という時に、「一人ひとりがボールをしっかりと操れること」がキーファクターになっていた。
そこのレベルはやっぱり個人差があるので、基準を合わせるところは第1ステージではとことんこだわってました。
仲山:今の話って、風間さん用語でいうと、この3番に書いてある「目が揃う」ということですよね。
中村:そうですね。同じものが見えてるかどうかだと思うんです。
仲山:まずトラップを見て、ボールが止まってると思うのか・止まってないと思うのかが人によってバラバラだと、揃ってない状態と言える。
中村:はい。サッカーをやったことがある人はわかるかもしれませんが、ボールがしっかりと止まれば目線が上がります。目線が上がると、受け手も動き出しやすくなる。それが合図になり、共通言語になっていきました。ボールが止まらなければ周りは動き出すこともできないし、動き出せなければ相手はまったく怖くないよねと。
練習中にワンプレー、ワンプレーを「それ止まってるよね」「それ止まってないよね」「止まったから、今いい攻撃できたよね」とスタッフにジャッジしてもらい、自分たちでもジャッジをしながら日々の練習でどんどん積み上げていく感じです。そうすることでどんどん目が合っていく、目が揃っていく感じでした。
仲山:さっきの4つのステージの最初の時点で、きっちり明確なお題が出されること、あとは「止まっているとはこういうことで、こういう状態は止まってないということです」とインプットできるレクチャーがある状態から始まると、この第2ステージのわちゃわちゃした試行錯誤は、質が上がりやすいと言えるのかなと思うんですけど。
さっき始まる前の控え室で憲剛さんが、「今、中央大学の練習から帰ってきた」という話をされていたんです。それで、「今、どんなことを考えながら指導してるんですか?」と聞いたら、「まずは伝えたり教えたりレクチャーする時間が長くかかるなって思いながらやってる」と言われてましたよね。
これ、今の話で言うと、最初に目を揃えるためのレクチャーがあるかないかで、きっとその後がだいぶ違いますよね。
中村:選手としてもそう思いましたし、指導者として今やっていてもすごく感じます。さっき言ったように、サッカーはチームの勝利が大目標なので、指導者が漠然とした提示でスタートしてしまうと、結局選手もスムーズに練習に入っていけないわけですよね。
仲山:「どこに合わせようか」は、選手だけでは決めにくいってことですか。
中村:決めにくいです。明確な目標があってちゃんと提示を受けたトレーニングと、提示が漠然としたものでなんとなくトレーニングをするのとでは、浸透度が早いのは圧倒的に前者だと思います。
今レクチャーに時間がかかってますが、「1+1が2です」を教えないで、掛け算を教えるのは難しい。だから、自分が提示したコンセプトの基礎をちゃんと理解してもらったうえでトレーニングをしないと時間がかかると、指導者として感じます。
仲山:まず第1段階として目を揃える作業をして、その後やってみても、体の動きまで揃うには相当なすり合わせが必要になるという感じですよね。
2番目の質問に「フロンターレの『心理的安全性』はどんな感じ?」とありますが、意見が対立した時やミスした時ってどういうことになるのか。
ちなみにさっきの第1ステージのところで、すり合わせるために、自分の言いたいことをちゃんと言えるようになる前提条件がこの「心理的安全性」だと僕は捉えています。フロンターレでは、すり合わせる時の雰囲気は?
中村:まったく殺伐とはしてなかったです。なぜなら、どうするべきかが提示されていたので、目指すべきものはみんな見えてるわけです。なので、それに逸れた話をすると「いや、それ違くない?」って浮くわけですよ。しかも、提示がはっきりしているとそういう話もしなくなるんです。
行く先が明確だったからこそ、心理的安全性はしっかり確保されてたんじゃないかなと思います。お互いに指摘する時も、そこの目的に向かうために意見をすり合わせる。そこは、目的と提示がはっきりしてたおかげで、心理的安全性が担保されたのかなとやっていてすごく感じましたね。
仲山:お題が明確だと、「お題を解くために必要な話し合いだから大丈夫だろう」と思えるってことですよね。
中村:そうです。もちろんその中身は、それぞれの考え方やセンスも含めて、「ん?」となる時もありますが、それもまた1つの考えだから、みんな聞く耳を持っていて。そういう意見も含めて「じゃあその目的にどうやって進もうか」という話はできていたと思います。
本当に話はしやすかったです。僕自身が上の年齢でもあったので、上の選手が話を聞く耳をちゃんと持つと、若手や中堅の選手たちは自分の思ったことを言えるようになる。僕がああしろこうしろと強制みたいにしてしまうと、やっぱり彼らは心も口も閉ざしてしまいます。なので、彼らの意見を聞く「発問」は大事にしていました。
仲山:憲剛さんが若手だった時はどうでしたか。
中村:僕はけっこうぐいぐいガンガン聞く、話すタイプでもあった。
仲山:じゃあ、『アオアシ』の葦人タイプですね。
中村:そうですね。本当に先輩たちの器の大きさにすごく助けられたところがあって。僕が言ったことに対して、もちろん言い合うこともありましたが、どちらかというとちゃんと話を聞いてくれて、どの先輩も「じゃあこうしようか」と落としどころを作ってくれました。
若手の僕からしたら、それが心理的安全性でしたね。僕が何かを言った時に、「いや、何言ってんだ? お前の話なんか聞いてない」と言われてしまうと、もうディスカッションにもなりませんから。
仲山:もう、言う気もなくなりますよね。
中村:言う気もなくなります。当時の先輩の一人で、現監督の鬼木達さんはそういう方でしたから、僕としてはすごく積極的に行けたなぁと思いますね。
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