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愛されるブランドの作り方(全3記事)

インパクトのあるCMを作り続ける「スカルプD」ブランド SNSで話題を呼ぶ秘訣は、あえて“空白”を残した広告作り

マーケターはトレンドを意識することが求められますが、コロナ禍により人々の生活スタイルが大きく変化し、従来のマーケティング戦略が通用しない状況が生まれています。そこで、あらゆる販促製品・マーケティングサービスを持つ企業が一堂に会し、サービスを比較・検討できる場として、DMM[SHOWBOOTH]主催の「マーケティング・販促サミット2021 Spring」が開催されました。本記事では「愛されるブランドの作り方」をテーマに、花王の中根志功氏とブレインスリープの池城氏が対談。元アンファーの池城氏が「スカルプD」のプロモーションを事例に、ブランディングのポイントを語っています。

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消費者の行動を把握することが、愛されるブランドの秘訣

中根志功氏(以下、中根):やっぱり(ブランドが)愛されていると、自分から「あのブランド、前にいつ買ったっけ?」と思っていただける。積極的に来てくれるお客さまは、とても愛されてるんじゃないかなと思っています。

池城安雲氏(以下、池城):確かに。生活の中で使っていても、ブランド名を覚えていないものとかありますもんね。

中根:ありますよね。言葉にするとすごくチープで、「選好性」「マインドシェア」とかあるんですが。僕ら自身も、1つのプロダクトやブランドのことを考えながら生活ってしていないじゃないですか(笑)。

池城:(笑)。

中根:なので「やっぱりこのブランドを使っていてよかったな」という、とても素敵な一瞬を僕らも把握したいし、その瞬間を共有してこそ愛されるのかなとは思っていますね。

池城:確かに。直販と、いわゆるオンラインのモールで買うお客さまでも、そこらへんって違いそうですよね。そのブランドのことが好きで買っているのか、「いやいや。(なくなったから)Amazonでシャンプーを買ったんです」みたいな。うちも自社のECも持っていれば、モールさんとかでも出しているので。

ただ、そのブランドに対するお客さまの思いって、やっぱり自社ECで買っているお客さんのほうがエンゲージメントが強いな、とは改めて思います。

中根:そうですよね。たぶん今のお話だと、Amazonというプラットフォームで「買う」という行為だけをされているだけで、前後の関係性が見えないので。(商品が)なくなっちゃって、ただリピートされたのか、スカルプDに解決してほしい特別な安心感や日頃のつながりがあって、それを買ったのか。

1つのコンバージョンを理解するにも、やっぱりある程度のメディアを使って「買う」以外の体験も一緒にマージして、お客さまを理解する必要があるのかなと思いますね。

池城:まさしくですね。

「年に2〜3回」の広告で、インパクトを残すスカルプD

中根:もしよろしければ、池城さんもなにか事例を含めて教えていただけるとうれしいなと思います。

池城:そうですね。中根さんに質問なんですが、スカルプDのイメージってなにかあります?(笑)。

中根:やっぱり一番盛り上がっていたのって、宮迫(博之)さんの時代のテレビの出稿量だとか、Webやメディアを独占してる感じがすごかったなと思います(笑)。なので、まずそのイメージがありますかね。

これは僕もマーケター目線なんですけど、チャネルを選ばないで本当にしっかりブランディングをされているブランドだな、という印象がありますね。

池城:なるほど、ありがとうございます。立ち上げてすぐぐらいの、吉本の芸人さんを使ったプロモーションを思い出される方が多いのかなと思います。直近だと、香取(慎吾)さんと草彅(剛)さんを使ったCMとかも、たぶん印象に残ってる方が多いのかなと思うんですけど。

中根:そうですね。

池城:「めっちゃCM打ってますよね」と言われるんですけど、意外とそんなに打ってなくてですね。

中根:そうなんですね。

池城:それこそスポットCMで、年に2〜3回とか。

中根:じゃあやっぱり、クリエイティブのインパクトが(強い)。

池城:そう。たぶんあのインパクトで、“見た感”が出るのかなって気はするんですけど。中根さんが言ったように、ブランドって今は「イメージ」だと思うんですよね。僕らがすごく大切にしていることが、スカルプDブランドって「悩んでいる方をポジティブに変えたい」というところがあるので。

あとは僕らの会社って、規模的にはまだまだ小さいので。機動力よくスピード感を持って、ちょっとおもしろいことや、いろんな新しいことにチャレンジしようということが、会社の方針としてもありました。

元日には「発毛DAY」と「初詣」をかけたプロモーションを実施

池城:このコロナ禍でやったプロモーションで、事例を共有できればなと思っています。

中根:お願いします。

池城:実はこのあいだ、2021年の1月1日に「発毛DAY」というプロモーションを行いました。みなさんもご存知だと思うんですけど、コロナがかなり蔓延している中で「今年はちょっと初詣を控えよう」「ちょっと自粛しようね」みたいなことが、連日ニュースで流れていたかなと思うんですが。

世の中的にけっこうネガティブなニュースが多い中で、おもしろいことをできないかなということで、「初詣」と(発毛DAYを)かけて、スカルプDのオンライン初詣をプロモーションしたんですね(笑)。実際に、記念日登録を1月1日にさせていただきました。

中根:そこまでちゃんとされたんですね(笑)。

池城:そうなんです、公式にちゃんと(笑)。1月1日に「スカルプDの発毛DAY」をやっていただいたり。「Webサイトを作ってキャンペーンをやるだけだとつまんないよね」「やるならディテールもこだわろう」というところもあったので、髪の毛にまつわる御髪神社に実際に社員が行って、神主さんとミーティングをさせていただいて。

「こんなキャンペーンをやりたいと思ってるんですよ」ということで、御髪神社に売っている「房々(ふさふさ)御守」というものをWebサイトでも展開させていただいたり。

あとはこのコロナ禍の中で、渋谷のスクランブル交差点のど真ん中に「今年はお家で、発毛DAY」という、文字だけの看板広告を出させていただきました。こういったネガティブな(状況下の)中で、「ちょっとクスッと笑える広告を出したいよね」となりました。

同時に、やっぱりおもしろい広告だけをやっても意味がないので。「スカルプDって髪を生やすブランドだよね」「おもしろいことや新しいことをやってるよね」というブランドのイメージを醸成できればなと思って、プロモーションを実施しました。

広告に「空白を残す」ことで、SNSでの拡散力が生まれる

池城:(スライドを指しながら)実際にこちらがTwitterの反応なんですけど、「発毛DAYの広告良すぎる」「いいネーミングですね」とか、けっこうポジティブなコメントをたくさんいただきました。やっぱりニュースも暗い中で、そんな時に「スカルプD、なにやってんだ」ということで、みなさんがツイートしてくれたり。

あと、実際にスクランブル交差点はメディアに抜かれる機会が多くてですね。「コロナが蔓延してます」みたいなニュースの中で「今年はお家で、発毛DAY」という(街頭広告の)フォントが映ったりとか。あとは「満月がキレイなんだけど、今年はお家で発毛DAY」という「何これ?」みたいなものとか。ユーザーが自然発生的に盛り上がるような仕掛けは作れたのかなと思っています。

例年、年末年始にプロモーションをやっているんですけど、検索数は昨年比で130パーセントぐらいに上がりました。ブランドワードの検索数が一番CVR(顧客転換率)が高かったりするので、スカルプDのPRは一定の効果が出たのかなと思っています。

なので単純にメディア出稿だけではなくて、「スカルプDってこういうことするブランドだよね」というところを、クリエイティブもこだわってやることで、「自粛、自粛」(という雰囲気)ではなくやれたのは、非常に良かったのかなと思ってます。

中根:説明しすぎていない感じが、とても好感度が高くていいですね。ツッコミどころがあるから、クリエイティブにお客さまのアクションが生まれるんですよね。

池城:そうです。「空白を残す」というところがすごく大事だなというのは、チームで話して思っていて。やっぱりそこに、みなさんの中での自然発生的な会話やツイート、SNSの拡散が生まれるんだなとは思いますね。

中根:直接「スカルプD」という言葉をお客さまが書くのではなくて、スカルプDのコアバリューの「発毛」というところを、UGC(一般ユーザーが作成したコンテンツ)としてTwitterに書いてくれている。しかも結果、御社のSEOと連動して、しっかりアクセスまで辿り着いてもらえている。だからもう「みんなでSEO対策した」という施策のように感じました。

池城:まさしくそうですね。今、なかなかプッシュ型の広告が届きにくくなっている時代なのかなとは思うので。この時は、そういったところでなにかできないかなという仕掛けでやりましたね。

プロモーションは「自己満」で終わったら意味がない

池城:あとは「愛されるブランド」というテーマなんですが、しっかりお客さまの声を聞くというか。今回でいうと、SNSを中心にプロモーションをやったんですが、改めて、自己満で終わったら一番よくないと思うんですよね。

例えば、出した広告がなにかの賞をいただいたとしても、お客さまに伝わってなければあまり意味がないのかなと思っています。そういった意味では今回、ソーシャルでポジティブに発言していただいたのが、まさしくお客さまからの反応として、ブランドとしての価値が上がったのかなと思いました。

中根:そうですね。先ほども「スカルプDのイメージってどうですか?」と聞かれたんですが、本当にお客さまと対話している感じがすごく伝わりますね。(ターゲットが)誰かって特定してないんですけど、ちゃんとマーケターとして届けたい相手がしっかりイメージできているので。それも、日頃のソーシャルのリスニング力にもよるんだと思うんですけど。

Twitterという、リーチと爆発力が一番しっかりあるところで、お客さまがツイートするという行動まで引き出せている。そこがやっぱりとてもいいなと思います。

御社のブランドで、特にスカルプDとか全般的にもなんですが、定番化がしっかりできている。たぶん今、2本柱になっていると思うんですが、「発毛剤」と「シャンプー」の定番化と「発毛」というコアバリューがしっかりつながっているので、オーディエンスもリアクションしやすいと思うんですよね。つながっている感じも出やすいというか。

マーケティング全体からして、ちゃんと定番品を理解してもらえているから、一時的なUGCでお客さまとの関係性がよくなって、“落ちる商品”がすごく明確になってますよね。なので、すごく参考になります。

ブランドイメージを確立させた「スカルプD」

池城:今は外向けのプロモーションの事例をご紹介したんですが、最初にお話ししたコロナ禍の中でも、ある程度Webで売上が担保できたのって、やっぱり圧倒的に既存のお客さま(の存在)なんですよね。こういった時に既存のお客さまがしっかりリピートしてくれて、いろんな商品をクロスセルしてくれた。売上やブランドのベースを作っているのが、既存のお客さまだというのは大きくて。

外向けのところだと、Twitterとかがリアルな声で聞こえるのでリスニングすることが多いんですが、それ以上に今、CSへの問い合わせをすごく意識して聞いている感じですね。

中根:なるほど、そうですね。でもWeb上で、EC売上と既存顧客の方とのリレーションが取れているので、IDがぜんぜん紐づいていなくても、たぶんTwitterでもお客さまに届いてますね(笑)。

池城:(笑)。

中根:「ちゃんと届いているな」っていう。

池城:でもやっぱり、ブランドのイメージを作るのは大事ですよね。

中根:そうですね。あとは本当にポジショニングですよね、言っても数多あるじゃないですか。(スカルプDは)過去のクリエイティブをしっかり組んで、ブラしていない。たぶんお客さまそれぞれに、始めた時のクリエイティブってあるはずなんですよね。

池城:そうですね、あると思いますね。

中根:なので、そういう体験も積み上げられるようなクリエイティブをオンされている。たぶん、年始の初詣のタイミングで御社のスカルプDを買われた方は、その体験が1個乗ってますよね(笑)。

池城:そうですね(笑)。

中根:だからきっと、「今年はないのかな?」と思うお客さまもいるはずなので。僕はそういう、体験をマネジメントするシナリオを組むので、“強い体験”があるといいなと思いますね。

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