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愛されるブランドの作り方(全3記事)

なんでもAmazonで揃う時代に、商品の差別化をどう図る? 花王の事例から学ぶ「愛されるブランド」の作り方

マーケターはトレンドを意識することが求められますが、コロナ禍により人々の生活スタイルが大きく変化し、従来のマーケティング戦略が通用しない状況が生まれています。そこで、あらゆる販促製品・マーケティングサービスを持つ企業が一堂に会し、サービスを比較・検討できる場として、DMM[SHOWBOOTH]主催の「マーケティング・販促サミット2021 Spring」が開催されました。本記事では「愛されるブランドの作り方」をテーマに、花王の中根志功氏とブレインスリープの池城氏が対談。顧客のエンゲージメントを高めるためのファンマーケティングの重要性などを語りました。

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花王とアンファーの事例から学ぶ「愛されるブランドの作り方」

中根志功氏(以下、中根):マーケティング・販促サミット2021 Springに来場のみなさま、こんにちは。本日は「愛されるブランドの作り方」というテーマでお話ししたいと思います。よろしくお願いします。本日は中根と池城の2人のメンバーでご案内していきますが、まずは池城さんから自己紹介をお願いします。

池城安雲氏(以下、池城):池城と申します、よろしくお願いします。株式会社ブレインスリープという会社で、マーケティングやプロモーションの責任者をやらせていただいてます。

もともとは、アンファー株式会社という「スカルプD」ブランドなどを扱う会社で、メンズブランドのプロモーションや、マーケティングの責任者をやっていました。なので今日は、アンファーの時の事例なども交えながら、いろいろとお話しできたらなと思っています。よろしくお願いします。

中根:よろしくお願いします。私、中根志功と申します。花王株式会社・DX戦略推進センターという部署で、カスタマーサクセス部に属して、日頃は主に化粧品ブランドのCXM(顧客体験マネジメント)やCRM(顧客関係管理)に従事しております。

もう一方で、2018年からOriginals&CoというDXコンサルティングの会社も経営しております。こちらでは、花王以外のブランドや企業のお客さまに、DX戦略の策定をサポートさせていただいております。

コロナ禍でも売上を伸ばしたWebと、痛手を受けた実店舗

中根:さっそく本日は、「愛されるブランドの作り方」というテーマでディスカッションできたらなと思います。今日は池城さんから、アンファーの事例を共有いただけるとお聞きしてるんですが、コロナ禍でけっこう大きく変わられましたか?

池城:やっぱり、環境的なものは大きく変わったなと思っています。ただ弊社の場合、もともとWebのほうが売上比率が高かったこともあって、売上的にはそこまで大きなダメージはなくて。わりとWebが順調に伸びました。

中根:すごい。うらやましい話ですね。

池城:(笑)。やっぱり、けっこう(コロナの影響が)痛かったですかね?

中根:店舗に寄ったビジネスをされている方は、やっぱり一番(ダメージを受けたの)は集客数ですかね。緊急事態宣言も今なお続いていますが、昨年1年間ずっと「密」になるような(集客を避けて)、特に人気のある店舗はとても慎重に集客を進めているのを見ておりました。

池城:改めて今、デジタルに力を入れているところもあったりするんですかね。

中根:そうですね。今日は花王グループとして、化粧品の事例をお持ちしております。実は私自身も、2015年ぐらいから準備をしていて。2016年の「スマイルコネクト」というCRMアプリ、今はOMO会員と言うんですかね。僕らの場合は、店頭に化粧品販売のスタッフがおりますので、その方にアプリを紹介いただくようなものです。

コロナ直前ぐらいから、とてもたくさんの企業が取り組まれてると思うんですが。このコロナ禍で、店頭でもオンライン上でも一人ひとりに合ったサービスを提供するところが、とても強くなったかなと思っていますね。

池城:やっぱりそこら辺って、実際に店舗を持っているメーカーさんや企業さんの強みですよね。

中根:そうですね。今まではそれ(店頭販売)を強みにしていたんですが、そこに依存しすぎると、今まで想定していなかった状況に早く対応することがなかなか難しい。大きい組織だと、やっぱりそこの対応に苦戦している感じですかね。

池城:そしたら、けっこう早めに準備を始められてたんですか?

中根:そうですね。

ブランドが愛されているかどうかは、ファンの数に表れる

中根:今日も一部ご説明したいなと思ってるんですが、よろしいですかね?

池城:ぜひぜひ。いろいろお聞かせください。

中根:今日は「愛されるブランド」ということなんですが、世の中で一般的に言われるのは、やっぱり「ファンを増やしていこう」という、ファンマーケティング(注:積極的にブランドの情報を取りに行ったり、能動的に購入するファンを増やしていく、マーケティング活動の総称)。

基本、ブランドが愛されるということは、ファンの数だと思っております。僕が提案しているロジックや、戦略マップという策定方法があるんですけど、まずはそこを池城さんにも「そんなことをやっているんだ」と聞いていただければなと思います。

池城:よろしくお願いします。

中根:どこの企業やブランドであっても、ブランドマネージャーや事業長の方は「店頭でいくら売り上げるぞ」「ECでもいくら売り上げるぞ」と、最終的なゴールが財務的なところに落ちていくと思います。

それに対して「営業利益を何パーセント出していこう」「広告コスト・今年のマーケ費はいくらだ」「リターンをしっかり設定して改善していこう」と、この大きな3つぐらいが、財務的に落ちるゴールかなと思っております。

僕らが花王グループで設計しているところでは、そこに伴う直販のECや専業のEC、実際のリテールで販売している店舗などを、なるべく1人の人(OMO会員)としてカウントできるようにしています。

化粧の体験ができるアプリ「ユーカムメイク」の活用事例

中根:1ブランドでイメージしていただいたほうがわかりやすいと思うんですが、仮に「Kanebo」というブランドで年間購入される方が、今年は何人いらっしゃったのか。そして、来年何人にしていくのかというところを、人数ベースでしっかり追いかけていこうと考えています。お客さま一人ひとり、購入される方もいらっしゃれば、口コミを書いてくれるお客さまもいらっしゃいます。

もしくは今、ARで試着だとか。「ユーカムメイク」のメイクアップのシミュレーターを使って、買う直前に試着されるお客さまが今年は何人いらしたのか。そういった、一人ひとりの体験を人数ベースでカウントしていきながら、その会員さんがまた買っていただきたくなるような体験を少しでも増やしていこうと、取り組んでいます。

僕らは2016年の8月に、先ほど言ったオーガニックのアプリ(「ユーカムメイク」)を提供しています。店頭とオンラインの一人として、名寄せの意味で提供していたんですが、実は今まで「カネボウ化粧品のお客さま・会員」というかたちでくくっていたんです。だけど「もっと自分たちのブランドに直接つながりを持っていきたい」というところで、意識が大きく変わってきました。

「est」「Kanebo」「LUNASOL」「SENSAI」と書いてあるブランドは、LINEを活用した「LINEミニアプリ」というのを提供し始めました。こちらによって、店頭のお客さまもECのお客さまもパーソナライズして、体験を届けていくシステムや、データウェアハウス的な統合を推し進めてきたというのが、最近の僕が従事してきた取り組みです。

ブランドごとの価値観は活かしつつ、データは一元管理

中根:池城さん、ここまでのところで「似たようなことをやってます」というものはありますか?

池城:化粧品メーカーでいうと、大きな枠組みは似ているかなとは思っています。1つお伺いしたかったんですが、先ほどご紹介にあったように、いろんなブランドがあるじゃないですか。もちろん一元管理したいところはありつつ、それぞれのブランドを大事にしたいところも、両輪あるのかなと思って。

うちは「スカルプD」というブランドが強く、まだ男性のイメージが強いんですが、その中で女性用やまつ毛美容液があったりと、いろいろなブランドがあるんですよね。

中根:ありますよね。

池城:そうすると、世界観やターゲットだったり、ブランドとしての価値観はけっこう変わってきます。マーケティングとしては、やっぱり企業のデータを一元管理して蓄積したいところはあるんですが。ブランドごとの世界観ってどうやられてるのかと、課題感があるのかをお伺いできればと思います。

中根:ありがとうございます。企業全体としてもブランドとしても、個別に競争力を上げていきたいですよね。顧客体験をもっと強化して「このブランドでなければダメだ」と、選好性を上げたりとか。特にそういったものをブランドに推奨して、一緒に体験を作り出す取り組みをしています。

もう一方で、これは“vs Amazon”みたいな感じで、「Amazonよりも便利な機能って何か」「自分たちのグループで作れないのか」というところですよね。こういったものを、パラレルに走らせているんですけども。

顧客のエンゲージメントを高める、“ブランドパスポート”とは?

中根:簡単に言うと、池城さんが言われたみたいに、まずはブランド別に、スカルプDのお客さまに便利になってもらう。伏線というか、やっぱり最後にグループとしてはわからない時には一元管理されていて、Aブランドの悩みもBブランドの悩みも、しっかりいっぺんに解決してあげたい。そういうところは提供したいなと思ってるんです。

中根:やはり今回、僕らがLINEミニアプリを提供したのは、それぞれのブランドの個性を引き立てるためですね。公式アカウントって、だいたいブランド別にお持ちだと思うんですが、LINE社が去年の6月くらいから、それと直接紐付くミニアプリを提供されました。1個のオーガニックアプリをブランド別に作ると、それぞれOSの対応とか、とても大変なことが起きるんですが(笑)。

池城:そうですよね(笑)。

中根:LINEの中で動かせるアプリというかたちで、必要なブランド、特にプレステージブランドに関しては、中身のコンテンツはそれぞれ違うかたちで提供し始めているというのが、当社が今やっているような取り組みなのかなと思います。

中根:池城さんが言われるみたいに「ブランドを大事にしよう」「ブランドのお客さまである」ということは、愛されるブランドとして絶対に必要なのかなと思っております。

池城:ありがとうございます。じゃあ、けっこうミニアプリを活用されて、お客さまとのエンゲージメントを行っている感じなんですか?

中根:ざっくりお話しすると、本当に「ブランドパスポート」みたいな感じですかね。ちょっとこれ、コロナからすると皮肉っぽいんですけど。

池城:そうですね(笑)。

中根:やっぱりコロナ禍では、旅行とかできないじゃないですか(笑)。

池城:パスポート、なかなか使わなくなりましたね。

中根:使えないですよね。「パスポート、どこいっちゃったのかな」という感じだと思うんですけど。でもやっぱり、ブランドを楽しむとか、ブランドと一緒に生活することは、一つのパスポートのように体験をマネジメントできることかなと考えています。

お客さまに2年前に購入いただいた商品を、ブランド側もちゃんと「あなたのことを忘れてないよ」と把握しているし、お客さまも自分のLINEミニアプリでご確認できる。定期的に買っているお客さまは特にですが、そうするとやっぱり計画購入できたりといったメリットがあります。自らメディアに足を運んでもらう、という感じですかね。

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