2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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松本尚哉氏(以下、松本):私がクックパッドマートにジョインした去年の7月頃は、まだステーションが30ヶ所もない時期だったので、それぞれピンポイントで施策を打たないといけなくて。検証するにも数が少ないので難しいというか、検証結果もなかなか積み上がっていかないところもあったんですけど。
今ようやく100ヶ所を超えて200に迫る数になってきて、最近はオンラインの施策もある程度テストできる段階になっています。富田くん中心にやってもらっている部分ですけど、実際にこれまでのサービスや事業との違いはありますか?
富田竜介氏(以下、富田):前職のブライダルや結婚式場でエリアはセグメントしていたんですけど、ここまで細かく切ってサービスをやったことはなかったですね。検証する狭さやセグメントがすごく小さいので、どこが良くてどこが悪いかをけっこうな速さで変えていくのはおもしろさでもあり、大変なところでもあります。
オンラインも始めて2〜3ヶ月ぐらいですけど、インストールの単価やその後の注文単価などの指標は、ある程度見えてきました。「いつまでにこれぐらいになっていないと、このエリアはオンライン広告に向いていない」などが、ある程度わかるようになってきて。
オフラインで効かない地域であればオンラインをうまく活用したり、オフラインが効く地域でもオンラインとうまく併せて絡められると、より多くの方に使っていただきながら継続していただけると思います。
あとは、オフラインだとどうしてもピンポイントになるので、(家で)チラシを見てもらってもそれで終わったり、そのまま捨てられたりするとなかなか知ってもらえない。そこに対してオンラインやいろんなチャネルを駆使して、何回もサービスを見てもらうことで「こんなサービスあったな!」と知ってもらえる。
オンラインが起点になって、その後はオフラインでコンバーションしていったり、逆にオフラインが起点になってオンラインでということもあるので、うまく成功のかたちが作れるようになると、よりおもしろくなると思っています。
松本:そうですね。最近はオフラインだとタッチポイントを作れる数や機会が少なくなってしまうので、どうやって増やしていくのか。その中でオフラインとオンラインの施策をどう連携させていくのかは、我々の中でも大きなテーマの一つになりつつありますね。その中で、最近はインスタやSNSの取り組みもようやく本腰を入れられるようになってきたと思っています。
富田:特に、生しらすのキャンペーンがすごく良かったと思っています。その日に獲れなかったら欠品してしまう状況でも、たくさんの方が心待ちにしてくださって、結局、全員の方に届けられました。
東京の人が生しらすを食べる機会って、江ノ島でも行かない限りないですし、ましてやお家で食べる機会はそうそうないので。たくさんの方がTwitterやInstagramに(レビューを)上げてくださって、UGC(ユーザー生成コンテンツ)をたくさん発生させることができた。そういった点は企画のおもしろさや醍醐味だと思います。
松本:「しらすの豊漁と漁の無事を祈ろう」というメッセージで拡散したわけですけど、あれはすごくよかったですね。我々も切実に生しらすが食べたいという想いと(笑)、欠品させたら困るという提供者としての気持ちもあって。本当に祈るような想いで漁の日まで待っていたので、ユーザーの方たちも巻き込んで一緒に祈っていただくメッセージはすごくおもしろいし、ユニークだと思いました。
富田:ここからは事前にいただいていた質問と、他に聞きたいことがあればお伺いできればと思います。事前にいただいていた質問で、僕も聞きたいと思っているのが「事業の成長とともに、マルチチャネルへの対応がどのように変わっていったのか聞いてみたい」という質問です。
最初、松本さんが入った時はステーション数が30弱のところから、今は180ぐらいになっていますけれども、その過程でメンバーも増えていき、マーケティングの手法や幅はどのように変わっていったのでしょうか。
松本:そうですね。最初に入った時はステーション数が20数ヶ所でした。学芸大学にある「カラオケの鉄人」さんが第1号のステーションで、中でも学芸大学に4ヶ所、自由が丘に2ヶ所と、東横線沿線に多かったです。
エリアがすごく偏っていたので、取れる手法も本当にピンポイントで。ポスティング打ったり、店頭でクックパッドマートの商品をサンプリングしたり、オフラインのピンポイントの施策しかやりようがなかったです。
今は数も増えてきて、かつ自宅配送のオプションができたことで、サービスを利用できる範囲もステーションの徒歩圏内からさらにもう一歩進んで、広いエリアで提供できるようになったので取れる手段が増えたところはありますね。
オンライン広告も20数ヶ所の段階ではさすがに非効率で実施が難しかったですが、今は180ヶ所の中でオンライン広告もしっかりやっているので、さらに解像度が上がってきます。
ステーションの数が増えて密度が上がってくると、やれることであったりフォーカスも変わってきます。オンライン広告やレンジを広げて施策を打てたことで、狭いレンジでやらなければいけないことも逆に見えてきます。
例えば、ポスティングの範囲をある程度設定して、あるステーションでは500メートル半径、あるステーションでは1キロ、場合によっては自宅配送を意識してさらに広いレンジで展開したこともあります。
当然近いほうが頻繁に使われたり、より定着されることは想定していたんですけど、レンジによってどれくらい効果が出るのかがはっきり見えてきたのは、すごくおもしろい気づきですね。
我々がマーケティングが設定するエリアとして、どれくらいの距離感が適切なのかも測れるようになって手法も増えたし、その中でトライ・アンド・エラーしながら、より解像度を上げたり精度を上げられるようになってきたと思います。
富田:まさにそこはオンライン広告でも活きていると思っていまして、普通にオンライン広告を運用されている方だと、エリアが関係ないサービスであれば、日本全体に広告配信したり、多くても都道府県単位で東京都と大阪と福岡などで、配信することが多いと思います。ですが、FacebookやInstagramでの広告に関しては、郵便番号単位でセグメントが切れるので、受け取り場所やエリアに応じて郵便番号単位で広告を出したりしています。
どこのエリアより広がったら使われなくなるかといったところを加味すると、それぐらい細かくセグメントしないとオンライン広告がうまくいかないことが見えてきたのは、そういった積み重ねがあったから、今うまく回っているという歴史を感じました。
松本:巡り巡ってレンジを広げて、オンライン広告もやった結果、今はより店頭で何をやらなければいけないのかを議論するヒントが増えてきたところはありますね。
富田:今度は少し大きめな質問に回答しようと思うんですが、「今後、どのようなことに注力すると、この市場を変えていくようなお客様の数を確保できると考えていますか」というご質問が来ています。今だと東京23区と神奈川の横浜エリアに、ポツポツと置かせていただいていると思うんですけれども。
東京のエリア全体であったり、それ以外の県に広げていく中で、どこが事業のセンターピン、マーケティングのセンターピンなのか? だと思うんですけど。
松本:そうですね。基本的には、今は東京、神奈川でやっていますけど、これを一気に全国に広げて事業成長を加速させるかということは、基本的にはないです。
今は我々の提供している東京、神奈川エリアの中での密度を高めていくことがすごく重要だと思っていますし。マーケティングでいうと、密度が高まっていくことで取れる手法や精度が上がっていく部分もあります。
当然、ステーションの密度が上がっていくことで、流通の配送コストが圧縮できる部分もあります。
さらに圧縮した中で、配送の仕組み自体もブラッシュアップしていくと思っていて、その中でしっかりと我々の基盤を強固なものにしていくのが、マーケティングの部分でも流通の部分でも、生産者の開拓の部分でも、すべての面において重要だと思っています。
その中で、スキームとしてしっかり構築していって、その上でエリアの拡大があると思っています。私も関西に住んでいる友人が多いので「大阪にも出してよ」とよく言われるんですけれども、まずは足元の東京、神奈川でしっかり基盤を作っていく。その先に他の都市圏にも進出していくかたちが、いずれはあると思います。
富田:しかも、冷蔵庫の数をどれだけ密度濃く置けるかと、それに伴っていかにお客さんにいい体験を提供できるかに注力していく感じですかね。
松本:そこをしっかりと作り上げていくところですね。とはいえ、まだまだ数百ヶ所の規模でやっている事業なので、これをしっかりと数倍、数十倍に広げていく過程での精度であったり、検証だったり。ちょっと抽象的な表現で恐縮なんですけれども、薄く広げていくのではなく、しっかり密度を保って広げていく、成長させていくことが重要だと思っています。
富田:ちょうどそれに併せて質問が来たんですけど「ステーションを増やすことが事業拡大の肝だと思うんですけど、ステーションを増やすことに投資をしていくフェーズは計画にあるのか」というご質問が来ています。
松本:事業としてはしっかりと計画を持って取り組んでいる部分で、適切に投資も行っています。さらに来年、再来年にもう一段・二段とスケールアップしていく中でも、非常にコストのかかるサービス・事業であると認識しているので、しっかりと投資をしてその中で事業を積み上げていくとは思います。
富田:ありがとうございます。あとは事前にいただいていた質問で、これは正解がないと思うんですけど「事業として何をもって成長としているのかを教えてください」というのが来ています。利用しているお客様の数が増えることが成長なのか、受け取る場所が増えることなのか。
松本:そうですね。それももちろんあると思います。あと意識しているのは、生産者と一緒に作り上げていくプラットフォームという側面が大きいと考えていて、我々クックパッドマートに参画していただいている生産者や販売者の方たちが、しっかりと事業を成長できること。
究極は、その農家さんがクックパッドマートでちゃんと生計を立てられる状態にしていく。あるいは、そういった生産者さんが多く生まれる環境を作っていくことが、非常に大事だと思っています。
富田:そうですね。僕もずっとスタートアップやベンチャーでいろんなサービスをやってきているので、昨日できないことが(明日)できるようになることが成長で、クックパッドマートはもともとがエンジニアとデザイナーの会社と言われるくらいで、実際にやっている中で不具合や付けたい機能などがすごいスピードで(実装)できる。
お客様の悩んでいたことが一瞬で改善されるようなすごい体験もしているので、一つひとつのサービスが良くなっているのも成長かなと感じています。
松本:そうですね。販売のアプリだけじゃなくて、裏側で作っている仕組みは表に出てないので知られていないですけど、実はいろんな仕組みを作っていて、その仕組み全体をまとめたプラットフォームとしてしっかり機能させていく。
また生産者の話に戻ると、プラットフォームを使って生産者・販売者の方たちの活動の幅が広がっていく。あるいは、自分たちの活動の価値を高めていくことが、一緒にできるといいなと思っています。
今日紹介したしらす漁の話も、我々の仕組みがなければ生まれなかった試みですし、生産者さんたちの新しいチャレンジを一緒に作れる場でありたいと思っています。それが結果的に、我々の事業成長の一つの糧になる部分でもあるので、生産者さんといろんなチャレンジをこれからもしていきたいです。
富田:最後に(スライドを指して)「採用しています」というところで、今のチーム体制などについてお話をいただければと思っています。
松本:先ほどマーケティングの部分に関してお話したとおりで、地道な作業も検証も含めて、マーケティングのモデル作りを一緒に作り上げていける方。積み上げだったり、トライ・アンド・エラーが好きな方は、我々と一緒にやっていけると思います。
あと、我々はプラットフォームや仕組みを提供する事業者でもあるので、そういった仕組みづくりが好きな方、プラットフォームに関心がある方は、おもしろいチャレンジができる環境だと思っています。
あとは、冒頭の私のプロフィールも紹介した中でいうと、ずっとメディア・コンテンツの領域で活動してきて、その中で生鮮のコマースだったり、流通のプラットフォームにチャレンジしようと思って来ているわけですけど。やはり背景として、我々クックパッドはUGCの会社ですし、コンテンツやメディア企業でもあるので、その資産やノウハウを活かして流通をどう変えていくか。
あるいは、生鮮の販売や生産者の在り方をどう変えていくのかも、一つ大きなチャレンジとしてできます。今コンテンツやメディアに取り組まれている方で、こういったプラットフォームに参画してみたい方にもいい環境やチャレンジできる場を用意できると思っています。
富田くんから見て、どういう人と働きたいとか、合っているとかありますか。
富田:クックパッドの中でもクックパッドマートは新規事業部で、僕も松本もそうですが、中途入社でクックパッドマートにジョインしたメンバーが多いです。
松本:そうですね。徐々に組織の体制も整ってきて、人も増えています。特に私が1年前に入った段階だと、中途で異業種から来た人もけっこう多かったです。
変わったところだと、水産系の卸に行って、自分で起業してバイヤーやっていた人もいますし。なかなか普通の企業では巡り合わないような、おもしろいキャリアを積んできた方がいるのも、我々の事業部の特色かなと思いますね。
富田:いろんな人がいるので、僕も元スタートアップで社員が10人とか20人くらいの組織で働くことが多かったので、今は50人くらいいるわけなんですけれども。
その中でいろんなアイデアとか、カルチャーを持った人たちが会社に集まってきているので、クックパッドのカルチャーを大事にしながらも、いろんな会社のいいところを持ち寄りながら、プロダクトや事業の中に組み込んでいって、すごいスピードで動いていく。そういったところの変化とか、新しいことが好きな方はいいと思います。
クックパッドは上場企業で会社自体は大きいんですけれども、自分でもっと世の中を変えたいとか、プロダクトを磨き上げたい方は、手を挙げたらいろんなことにチャレンジできる環境はあるので、どんどんチャレンジしたい方は合っていると思います。
というところで、あっという間の1時間ちょっとでした。本日はありがとうございました。
松本:ありがとうございました。
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