
2025.02.26
10年前とここまで違う 落とし穴だらけの“ERP to ERP”基幹システム刷新が抱えるリスクと実情
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富田竜介氏(以下、富田):今、クックパッドマートのマーケティングの特徴をお答えいただきましたが、他社との違いについても知りたいです。生鮮食品のECサイトがいろいろある中で、クックパッドマートは後発だと思いますが、他社の生鮮食品のECとの違いをお伺いできますか?
松本尚哉氏(以下、松本):今出ているスライドの右に出てているのは、ちょっと一面的なものですけれども、販売者・生産者から商品を集荷して、配送先、冷蔵庫のあるマートステーションまで届ける流れを簡略化した図です。
我々の事業は、一面的には生鮮食品のコマース事業ですけれども、我々が作る全体像は流通そのものです。我々は「流通のプラットフォームを構築している」と考えていて、その中で実際に消費者の目に触れる部分として「コマースのサービスが動いている」と捉えております。
ここが他の事業者さんとの違いであり、これが結果的に生鮮コマースという領域の部分に関しても、我々と他の違いを生む部分になってくると思っています。この流通のプラットフォームをどう活かして、どのように買い物や食の体験を作り上げていくのかが注力している部分かなと思っています。
松本:具体的にそれがどういうところに現れているかというと、(スライドを指して)例えば一番左側に出しているのは、まぐろの解体ショーです。
スーパーやお寿司屋さんでよく見ると思いますが、我々のネットサービスでもまぐろ専門の卸の販売者さんと共同で仕入れて、朝に解体したまぐろを夕方にマートステーションへお届けする企画を定期的にやらせていただいています。
真ん中はもう一歩踏み込んで、朝に船を出してしらすを獲って、それを夕方にお届けするという8月に実施したサービスです。また、その日にお届けできることを活かして、特に野菜を作っている農家さんには、朝採れたばかりの野菜を出荷して夕方にお届けできる商品を開発していただき、提供しております。
これらも我々のサービスの強みを生かしたほんの一部でしかないと思っていて、プラットフォームの強みを生かした、コマースのいろいろな体験や商品開発ができる特徴の1つです。さらに、商品の価値を活かすために流通自体の仕組みを作っていく部分もあると思っています。
松本:仕組みづくりと体験づくりをセットで考えられるのが我々の強みの1つですが、このプラットフォームを独占的に使うのではなくて、いろんな事業者さんに開放して、一緒に活用していくこともできます。他にもまだまだ取り組みとしていろんなチャレンジができる領域だと考えています。
1つの例としては、4月にリリースしたサービスで、我々の流通の仕組みに飲食店さんのテイクアウトや宅配のサービス商品を乗せてお届けするサービスを開始しています。
富田:Uber Eatsさんなどはなかなか置き配で食材を置くことができないので、(地域の店舗や施設に)冷蔵庫を置くことでパッと寄って家に帰れるところは、仕組みから作っているからこそできると言えます。
松本:しらすの話に戻るんですけど、実際に獲りに行く様子をTwitterで動画配信して、どう獲れるのかを臨場感を持って見ていただけるコンテンツも提供しました。
ここにマーケティングの面白味があると思っていて、プラットフォームを作りながらその上に体験も入れて、その中で販売される商品も考えて、それをどう伝えていくのかまで全体的に作っていく。我々のサービスの非常に醍醐味と言える部分で、今後もおもしろいことをやっていきたいと思っています。
富田:確かにそうですね。僕たちとしては新しいチャネルに積極的にどんどんチャレンジしていて、それこそ投稿自体はPinterestにアクセスさせていただいたりとか。あとは、YouTubeに「マートのちゃぶ台」というのを載せていて、先ほどのしらす漁に弊社の広報が実際に朝3時半とか4時起きして一緒に行って、実際に獲って食べる様子などが見られるので、買う前の体験を作ったり。
買った後に動画をみて「こうやって獲ってきたんだ」とわかるのは、スーパーに並んでいるだけだと伝わりづらい部分でもあるので、僕たちが大事にしている作り手の部分をフォーカスして伝えられるのは、やっていてすごくおもしろいですね。
松本:そうですね。クックパッドもレシピを作る方々をクリエーターとして、非常にリスペクトしながら事業を展開してきたので、クックパッドマートにおいても生産者・販売者の方たちのリアルな現場や活動をしっかりお伝えして、消費者との距離をしっかり詰めていきたいです。
その中でプラットフォームをどう活かしていくのかは、非常にチャレンジングでおもしろい取り組みなので、これからもいろいろできると思います。
特にしらすなどは当日船を出して、実際に獲れるかどうかもわからない中、大量の注文を受け、獲れなかったら全部欠品になる恐怖と戦いながら本当にみんな祈っていましたよね。
富田:祈っていましたね。僕もTwitter実況をしながらヒヤヒヤしていましたね。
松本:でも、そういうのは食の現場のリアルだと思うので、漁に出て魚が獲れないことも普通にあるはずなので、我々が実際に臨場感を持って、どう商品が届くのかを見守る体験を作れることはすごくおもしろいと思っています。
富田:先ほど、クックパッドがレシピサービスでクリエーターの方を大事にしてきたという話がありましたが、次に既存サービスとのシナジーをどう生んでいくのかをお聞きしたいです。
松本:そうですね。先ほど紹介したスライドに立ち返ってお話できるかなと考えています。我々はレシピサービスを提供している中で、例えば買い物や食材といった、レシピとは違った観点で「料理を取り巻く体験」を作り上げていけると思っていて、結果としてレシピサービスのユーザー層を広げていけると考えています。
「今日はカレーにしよう」とか「ハンバーグ作ろう」とか、何の料理を作るか? からスタートして、献立を決めていくことが多いと思います。クックパッドマートのサービスを使っていただくと、思いがけない意外な食材が手に入ったりして、料理を考えるきっかけが生まれることもあります。
例えば、スライドの一番左側に出している人参。今は時期が終わって販売していないんですけど、グッドホームさんという生産者の方の葉付き人参です。実際に届くと、1メートルくらいある巨大な葉の付いた人参が届きます。
そうなると葉がもったいないので、どうやって食べるかをいろいろ試行錯誤するんですよね。社内でも人気の食材だったので、みんなで天ぷらを作ってみたり、お浸しにしてみたりといろいろやって(笑)。そんな食材を「どう使おうか?」と、料理を考えるきっかけがクックパッドマートを中心に生まれるのかなと思います。
あるいは、先ほど紹介したしらすやまぐろのような体験ですね。東京に住んでいる我々だと、生しらすは江ノ島に遊びに行ったときに、1年に1回食べるぐらいだと思うんですけれども。
先ほどの体験の提供とセットで生しらすをお届けすると、ふだん生しらすを食べない方々にも1つ触れ合える機会を作れると思っています。
松本:もう1つは人の部分ですね。やはり生産者さんや販売者さんの人となりであったり、どういった想いで食材を作られているのか。生産者だからこそ知っている知識をしっかりお伝えすることだったり。
食材を購入していく中で、お気に入りの生産者さんを見つけることもあると思っていて「この人が作っている野菜ならきっとおいしい」「この人の人参がおいしかったから、次はピーマン買ってみよう」といった、人から始める料理の体験もあるなと。いろんなポイントから料理を考えるきっかけを、我々クックパッドマートから作れていると思います。
ちなみに、富田くんはお気に入りの生産者さんはいますか?
富田:そうですね。ちょうどスライドの右上に「梅やさん」という鳥のお店があって、ここの焼き鳥を先日頼んで食べましたけど、お肉を1回も冷凍せずに冷蔵のまま送っているそうで。
松本:そうですね。
富田:冷凍していない分、お肉自体もすごく歯ごたえがあって、今まで食べたことない焼き鳥でした。そこには52本の焼き鳥セットもあるので、今度友だちが遊びにくる時にこれを頼もうという話になっています。ここの生産者さんは、1回買ってまた頼もうと思えた生産者さんですね。
松本:私も52本セット買いました。先ほどの冷蔵庫の中にコンテナという食品を入れるボックスがあるんですけど、コンテナはたくさんの食材が入る大きさになっています。何がおもしろいって、梅やさんがサイズをきっちり測られていて、52本という中途半端な数字も箱のサイズに合わせてギリギリまで入れているので、コンテナにピッタリ入っているんですよ。
これは余談ですが、52本の焼き鳥が並んでいる姿はすごく壮観なのでおもしろいですし、パーティーでも盛り上がるかなと。ちなみに、梅やさんは創業100年以上で、おそらく日本で初めての鶏肉専門の肉屋さんです。
(スライド指して)今写真に出ている山下さんは5代目ですけれども、鶏肉の処理に関してはどこのお店よりもたぶん精通している。とにかく感動するほど処理がきれい。レバーとか砂肝を買っていただくと、処理のきれいさがすごくわかります。
食材のことを話していると止まらなくなるので、この辺にしておいたほうがいいかもしれないですね(笑)。
富田:クックパッドのレシピサイトともこういったかたちでの連携は、今後もいろいろ強化していく予定です。ここからが一番の本題で、クックパッドマートのマーケティングの展望として、今後どういったことに注力していくのかをお伺いできればと思います。
松本:はい。冒頭でお話したことと重なりますけど、コンビニやドラッグストア、駅、マンションなど、いろんな場所にステーションを設置させてもらっていて、それぞれで使われ方が違います。それに応じたマーケティングの手法もアレンジしながら提供している中で、どうやって手法やロケーションを類型化してモデル化していくのか。
それが、これからステーションが増えていく過程、あるいは来年・再来年とさらに拡大していく中で、非常に重要になってくると思っています。今ある180ヶ所のステーションの中で、いろんな実験や検証を繰り返して、どうやって勝ち筋を作っていくのか。
特に、マートステーションというリアルな拠点をベースにして、オフラインの施策にウエイトを置いて展開している中で、例えばポスティングのクリエイティブをどう作っていくのか。また、ものを作って手数や運用コストが増えていく中で、いかに効率的に成功率を上げていくのかをモデル化していくのは、非常に重要な部分だと思っています。
これからステーションが増えて事業を拡大していく中で、その拡大に耐えうるマーケティングのモデルを作っていくところと、運用の基盤を整備していくところを今は進めています。足元の成長を作りながら、未来の成長の糧になる算段も考えているという形です。
地道にいろんな検証を繰り返していて、特にオフラインの部分は運用コストやリソースもすごくかかります。ステーションが180ヶ所とまだ多くないこの時期に、いろんな検証を繰り返していくことが将来の成功確率を上げるので、非常に重要だと考えてやっています。
サービスとしては、アプリを介した生鮮のコマースサービスをやっていますけれども、その裏にあるマーケティングだとオフラインのところもありますし、流通のプラットフォームを抱えている部分でも、そことの兼ね合いで事業と並行して、どうフィットさせていくかも大事だと思っています。
考えなければいけない変数が多いのが、我々のマーケティングの特徴だと思います。エリアごとの特性や、ステーションをどう拡大していくか、商品の仕入れや生産者をどのように広げていくのかも、最終的に意識しながら全体の設計をしています。
富田:そうですね。本当に同じような業態でもエリアによってぜんぜん使われ方や利用率が違うので、国勢調査じゃないですけど、そういった動向もしっかり見ながら施策を行う必要はありますね。
松本:あと、いろんな発見がありますね。同じコンビニでもまだ10数店舗の規模(2020年9月18日時点)ですが、場所によって使われ方や、ハマっていくマーケティングの手法にそれぞれ違いがあって、そこは試行錯誤のしがいがあるし、手を打つことで良くも悪くも必ず気づきがある。
「ここでよかった施策が、別のところではうまくいかなかった」というのは常に起きている。それを繰り返しやっていくのは地道でつらい作業かもしれないですけど、トライ・アンド・エラーを楽しめる方にとっては、すごくおもしろい実験というか、いろんなテストができるので楽しめる環境だと思いますね。
富田:そうですね。
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