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ビジネスパーソン必見!教育と探求社創業20周年記念!春の連続対談3回シリーズ(全3記事)

どぶ板営業の証券マンから始まった、ブレインパッドCHROの人生遍歴 キャリアの転換点に常にあった、人との「邂逅」

株式会社教育と探求社の創業20周年を記念して開催された本イベント。代表の宮地勘司氏と、株式会社ブレインパッド常務執行役員、CHROの西田政之氏との対談の模様をお届けします。本記事では、技術が進んで客観的なものの見方が強化されていくことによる、若者の主観力の衰えについて語られました。

ブレインパッドCHROの西田政之氏が登壇

宮地勘司氏(以下、宮地):西田さん、自己紹介をよろしくお願いします。

西田政之氏(以下、西田):宮地さん、ありがとうございます。みなさま、はじめまして。ブレインパッドでCHROをしております、西田と申します。

私は北海道十勝の大樹町の出身でございます。大樹町って、堀江(貴文)さんがロケットを製作して今急に名をはせているんですけども。もともとは人口よりも牛の数のほうが圧倒的に多い、そんな田舎町で生まれ育ちました。

私のキャリアを振り返ってみますと、前半が金融ですね。ちょうど40歳の時に、人事にキャリアを180度転換いたしまして、今に至っております。今ブレインパッドという、AIや機械学習を活用してデジタル化促進を図る、データ分析の専門会社で人事の責任者をしております。

今ブレインパッドの紹介が出ておりますけども、データ・アナリティクスのプロフェッショナル・ファームです。今をときめくデータサイエンティストを200名有しているのが、ブレインパッドの最大の特徴でございます。

BtoBの仕事なので、どんな仕事をしてるのかがなかなか見えづらいんですけども。おもしろいところで言うと、ブレインパッドが全日本の女子バレーのデータ分析支援をしておりました。

あるいは、みなさまが行くエンターテインメント施設のマーケティングアプリ等を我々がご支援していたりとか。みなさまの生活の中で目に見えないところ、裏のインフラを支えている会社でございます。

それで私の人生というか、キャリアをちょっと振り返ってみます。まずはどぶ板営業の証券マンから始まって、成績が良かったもので海外留学させていただいて、帰ったあとはファンドマネージャーになりました。

そのファンドマネージャー経験が認められて、外資系の金融機関に移ります。5歳年下のカナダ人が最初の上司になるんですけども、彼から欧米流のリーダーシップを学びました。

でもマネジメントの勉強が足りないなと思って、山城経営研究所というビジネススクールに飛び込んで、10歳ぐらい年上の諸先輩方と一緒に1年間勉強をさせていただきました。

その勉強の一環でいろんな企業にインタビューしていく中で、マーサーという世界最大の人事コンサルの日本支社の柴田(励司)社長に出会いました。そこで「西田さん、マーサーに来ないか」と言われ、マーサーに入ります。

どぶ板営業の証券マンから始まった、西田氏のキャリア遍歴

西田:マーサーに入って人事の基礎を11年間学ぶんですけども、まだまだ学びが足りてないと思いました。そこで自分で塾を主催することを発案して、10人の塾長を社外から招へいして塾を開いたんですね。

そこで塾生として来ていただいた方々、延べ1,000名ぐらいが私の人脈のベースになっている感じですね。そこの塾長の1人で、当時ライフネット生命の会長だった出口(治明)さんから「ライフネットの経営を手伝ってくれ」とお誘いいただいて、ライフネットの副社長として転職します。その後、ホームセンターのカインズを経て、今に至るというのが私の簡単なキャリアでございます。

振り返ってみると、どぶ板営業、留学、ファンドマネージャーで営業と経済の基礎を学び。山城でマネジメントの基礎を学び、マーサーで専門性を蓄積し、塾をやることによって知の探索をして。50歳までに蓄積した理論が実際に通用するのかをライフネットで試し、カインズでモデル化するという流れになるかなと。

カインズでのモデル化が認められて、2022年にHRアワードで最優秀賞をいただきました。振り返ってみると、私のキャリアの転換点にはいつも人と人との素敵な出会いがあったんですね。これが私のキャリアを切り拓いてくれたし、新たな世界を見出していくきっかけ、原動力になったんじゃないかなと思っています。

なので私が一番大切にしているのは、実はこの「邂逅」という言葉ですね。簡単ですが、自己紹介でございました。

キャリアの入り口ではデザインなんてできない

宮地:ありがとうございました。「そんな華々しいキャリアじゃないんですよ」と打ち合わせの時もおっしゃってたんですけど、ある種華麗なキャリアだと感じました。いわゆるめちゃくちゃ有名企業ばっかりの遍歴ってことではないのかもしれませんが、すべてに本質があるし、計画されたような(キャリアだと思いました)。

キャリアデザインなんて言葉がありますけど、入口の時点ではデザインなんてできなくて。「アンカー(最初に提示する条件)を持って、流されていくことでたどり着くんだよ。人との出会いだよ」ってことかもしれませんが。今の時代に必要なことを着実に身につけてこられたんだなと、あらためて感じました。

西田:いや、年を取るとプレゼンがだんだんうまくなっていきまして(笑)。今振り返って、辻褄の合うようにストーリーを構築しているだけですので。その時その時は本当にもがき苦しみ、どう選択したらいいのかわからないところの積み重ねで、今があるんだと思います。決して予定調和できているキャリアじゃないんですね。

2023年の世界デジタル競争力ランキングで、日本は32位に下落

宮地:ありがとうございます。最初は大きな質問からいきたいと思いますけど、私はどうしても、「失われた30年」という言葉が気になって仕方ないんですね。「本当は失ってないよ」とか「20年も経てばみんな日本みたいになるんだから、ある種先行してるんだ」っていう考え方もあるんですけれども(笑)。

やはり元気や発言力がなくなったり、あるいは私たち自身のウェルビーイングが上がってるのかと言うと、そうでもないなと。日本はやはり混迷期にいると思うんですけど、なんでこんなことになっちゃってたのか。あるいは何があったら日本が元気になるのか、そこの大きなど真ん中のところをどんなふうにお考えか、お聞かせいただけますか。

西田:なるほど。実は今のブレインパッドに入ったきっかけの1つが、まさに宮地さんがおっしゃった課題意識の1つでした。今のこの日本の体たらくを、例えばIT投資という側面から見てみます。

IMDの世界デジタル競争力ランキングで、日本は2022年が29位で2023年が32位、部門別で「ビッグデータ分析・活用」は最下位なんですね。では、なぜそれが起こったか。アメリカでは、IT投資ってイノベーションを起こすためにやるべきもので、そのために、システムに働き方を合わせることをやったんですね。

システムに働き方を合わせる米国、働き手にシステムを合わせる日本

西田:日本ってどっちかと言うと、コスト削減や効率化が先に立って、働き手にシステムを合わせることをやってしまったわけですね。そうするとどんどんカスタマイズが必要になってしまって、カスタマイズにカスタマイズを重ねることで複雑なシステムになって、伏魔殿のようになってしまった。

今度はアップデートしようにもできないという、いわゆる技術負債を生じさせてしまいました。「システムに合わせるよ」って言うと、働く側から相当な反発がありますからなかなかできないんですけども。ITリテラシーの高い意思決定ができる経営者が、日本は圧倒的に少ないゆえに、今の惨状があるんじゃないかなと思っています。

だからITリテラシーの高い理系思考の経営人材を、世の中にもっと輩出していかなきゃいけない。データサイエンティストが200人もいるブレインパッドで、それができるんじゃないかと思って入ったという理由があります。

そういったのが今、宮地さんがおっしゃる「失われた30年」を引き起こしてしまった要因の1つにあるんじゃないかなと思ってます。

宮地:「人がシステムに合わせるのではなくて、システムに人が合わせるんだ」っていうのは、私も(経営者)失格かなとか思っちゃうんですけど(笑)。「人が心地よく働くためにシステムがあるんじゃないの?」「システムに使われてしまったら人間が歯車になるんじゃないの?」といった思いが湧き上がってきていて。

日本の多くの経営者がダメなのは、その気持ちの中に取り込まれてしまうからだと思うんですけど。そこに対して速やかに論破していただきたいなと思います(笑)。

西田:いやいや、でも人間って基本的に怠け者じゃないですか、易きに流れるので、変わりたくないっていう本質があるわけですよね。だから理想を追うなら、強制的に自分の行動や気持ちを変えていかなきゃいけない。そのきっかけがシステムであって、システムに支配されるとかって意味ではないんですね。

“主観力”が衰えている若者たち

宮地:私はずっと、主観と客観の相克にすごく関心があります。私が大事にしている「野生味のある学び」は、主観を失わないってことなんですよね。

どんどんデータや技術が進んで客観性が伸びていくと、「やりたいことがわかりません」とか「みんなの言うとおりでいい」と、主観が根絶やしにされる。特に若い子たちがそういう状況に陥りやすいので、「もっと主観、元気になれよ」って思ってるんですよ。

それで、今おっしゃったのは、ある種の怠惰に伸び切った主観を、客観の力で磨き直すってことで合ってますかね。

西田:おっしゃるとおりだと思います。やはり今の人たちは主観力が衰えているなって感じは、すごくするんですね。それは五感が衰えてるんじゃないかなと思っています。圧倒的に自然や自然とのつながりを意識する機会が減っているので。五感が鈍ってるっていうところが、余計に宮地さんが懸念されているような現象を起こしてるんじゃないかなと思います。

宮地:そうですよね。(ルドルフ・)シュタイナーいわく、0歳から7歳までは生命エネルギーを培ってるから、勉強なんかせずに野山を駆け巡り太陽光を浴びて、自分の内側にオーラというか、生命エネルギーを育てる。それで7歳から14歳までは、芸術体験に親しんで感情エネルギーを育てる。そのあと15歳から21歳までに知識や学力を入れるといいよ、と言っています。

でも恐ろしいことに、シュタイナーは「一度間違えたら取り返しがつかない」みたいなことも言ってるんですよね(笑)。彼は科学者じゃないので事実かどうかは検証してないけど、でも感覚的にはすごくよくわかります。

最初の段階の生命エネルギーや、あるいは情緒がない状態だと、塾ばっかり行ってて勉強はできるけど、「別にそれを2年早く覚えたからなんなの?」みたいなところにとどまってしまう。成長不全というか、大人になって何かが欠損してるというのは、そんなところにあるんだなって話を思い出しました。

西田:まったくおっしゃるとおりだと思います。

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