2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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倉貫義人氏(以下、倉貫):倉貫です。
仲山進也氏(以下、仲山):仲山です。
倉貫:『ザッソウラジオ』は、倉貫と「がくちょ」こと仲山さんで、僕たちの知り合いをゲストにお呼びして、雑談と相談の「ザッソウ」をしながら、ゆるくおしゃべりしていくPodcastです。エール株式会社の篠田真貴子さんをお招きした回の、第2回になります。
僕はわりと、ドライブする時とか散歩する時に『コテンラジオ』を聴いていて、しのまきさんがゲストで出られた回も、車に乗っている時なんかに聴いていますよ。
篠田真貴子氏(以下、篠田):お、ありがとうございます。
倉貫:いや、めっちゃおもしろいなと思って。「これ、車を降りたら、しのまきさんにメッセージしよう」と思って。でもそのまま聴いていると、降りた後、「いや、メッセージするほどでもないかな」と思って。
篠田:(笑)。
倉貫:(笑)。聴いた瞬間だったら、「おもしろかった」という一言が書けたけど、時間が経つと遠慮しちゃうなと思って。
篠田:(笑)。
倉貫:と言ったけど、今会ったからちょっと言おうと思って。あれ、めっちゃおもしろかったです(笑)。
篠田:ありがとうございます。もう、自分が何をしゃべったかをけっこう忘れていて。時々そうやって言っていただけるので、自分で聴き返そうとするんだけど、恥ずかしくなって(笑)。
倉貫:わかる(笑)。
篠田:「私、しゃべりすぎ!」とかすごく思って。でも、『コテンラジオ』の御三方、特に樋口(聖典)さんが「聞く達人」すぎですよね。
倉貫:聞き上手なんです。
篠田:本当にすごいと感心していました。本当に楽しかったし。
倉貫:「アウトプットしていないと」という話で、ちょっと思い出したので言いました(笑)。
篠田:今のアウトプットも超大事ですよね。Podcastを聴いたり、記事を読んだりして、「おもしろーい」と思ったら、その瞬間、その方に一言感想をお伝えできたりすると、別に何になるということじゃなくて、お互いちょっとうれしいですよね。
倉貫:そうそう。でも久しぶりの方に、なかなか出しにくいというのもやはりある(笑)。
仲山:確かに。
篠田:確かに出しにくい。よっぽどこっちが……。
倉貫:めっちゃテンションを上げていくしかない。
篠田:そうそう。
仲山:読み終わった直後の、一番熱量が上がっている時のテンションで。
倉貫:そうそう。
仲山:1行でもいいから、ビックリマークが2つ、3つ付いているぐらいのメッセージを送るとかがいいですね。
倉貫:本を読んだ時にFacebookでシェアとかもね、「しっかり感想を書こう」と思うと書けなくなっちゃうから。
篠田:本当だ。私も、とりあえず「良かった」と言って、あとで本のことを投稿しよう。
倉貫:(笑)。
篠田:でも「そんなに『おもしろかった』と言う人は少ないと思うんだよな」とか、余計なことをいろいろ考えちゃって、駄目な私(笑)。
倉貫:そう。なんかね、ついいろいろ考えちゃいますよね。
篠田:この間、自分としてはわりとちゃんと考えが整理できたという満足感があったから、久しぶりに日経COMEMOに出したんですけど。
AERAさんから、「価値観を変える人を5人挙げてくれ」というアンケートっぽい依頼が来たんです。例によって締切の2日前の週末に、「はっ」と思って書き始めて。5人中2~3人はなんとなく思い浮かべていたから、その方のお名前と、なぜそうかを書き始めた時に、書きながら、「待てよ。5人選ぶというから、この5人の選定基準に何らかの一貫性が欲しいな」と思って。
そうすると、「なんで私は『この人とこの人はぜひ入れたい』と思ったんだっけ?」という抽象思考が動き始めて、まず1個基準が出るんですよね。で、1個基準を書いた。「そうか。そうするとこの人も要るな」と書き始めると、「あれ? 理由が書けない」みたいになって。
この往復をするうちに、私は「そもそも『価値観を変える』とはどういうことか?」という定義を決めないと書けなくなるので、いつもどんどんわからなくなっちゃうんだけど、とにかく「具体から抽象を考えなきゃ」と自分が追い込まれていって。
というのは、編集部の人にわかってもらわないと、意図をくまずに記事を作られると困るから。編集の担当の方に、「この人に、『私はこの意図で、この5人でした』ということを理解してもらいたいな」というのがあって。そこで初めて、「これぐらいの抽象度で、これぐらいのことを書かないと伝わらないな」と思って、そうするとけっこう書ける。
倉貫:へえ。
篠田:ということだったなって、今思い出しながら言ってみました。
仲山:なるほど。
篠田:だから締切と想定読者があると書きやすいですね。
倉貫:普通に5人さっと書けばいいのに、ちゃんと抽象化して、言語化して、筋を通してから(笑)。
篠田:頼まれてないのに。
仲山:頼まれてないのに。
篠田:アンケートのフォームとは別に、その文章を3,000字ぐらい書いて送っちゃったんです(笑)。
倉貫:その考え方のほうがおもしろい記事になるんじゃないの? という気がする。
篠田:え?(笑)。そうか、そこがおもしろいのか。
仲山:「5人挙げてください」というお題の具体感がいいですよね。
篠田:そうなんですよね。適度に具体なんだけど、1人とかだったら、そこまで考えなかったと思うんですよ。
仲山:5人だと、抽象度を取るのがけっこう大変ですよね。
篠田:そう、それなりにね。それに、「『聴く』とかいうこととも絡めたいじゃん?」という自分の欲も混じったりするから(笑)。
倉貫:(笑)。
篠田:欲が混じるとも言えるし、どうせ私が考えることは絶対そこにつながるに決まっているので、「それは何だろう?」というのは、自分で興味を持っちゃったからかも。
倉貫:自分の考えだけど、自分で自分の考えを整理していくのが楽しいみたいなところもあると。
篠田:うん、そうですね。整理すると、整理して人に言えるのが楽しいのかも。
倉貫:それ、ちょっとわかる気がする。
篠田:なんか「通じた」って思える打率が増える。
倉貫:具体のことを具体だけ伝えるより、抽象もセットで伝えたくなる。
篠田:そうそう。そうなんですよね。
倉貫:それ、すごくわかる。僕もブログを書く時、いつもそんな感じですね。
篠田:私、倉貫さんのブログはとても読みやすいというか、なんて言うの、肌に馴染むと言うか。
倉貫:近い思考回路だから(笑)。
篠田:そう、そういうことだと。
仲山:具体と抽象の感じが良い。
篠田:ちょうど良いんだと思います。
倉貫:抽象から入って具体を出すとか、具体を出してから抽象を出すみたいなことをしないと、ブログで具体だけ書くと、小学校の作文みたいになっちゃって(笑)。
篠田:(笑)。
倉貫:「~がありました」「~をしました」みたいになっちゃって、「いや、ちょっとなんか物足りないな」みたいになって、つい屁理屈というか抽象化を考えて、理屈を考えちゃいますね。
篠田:あとはあれだな。それでいくと、倉貫さんもがくちょも、2人とも書く時の抽象化したフレームワークというか構造に、自分も入っているでしょう? 「自分は違うんですけどね。世の中はこうですよね」みたいな評論家っぽさというよりも。
仲山:自分で使えるもの(笑)。
篠田:自分もその課題の1つであるみたいな。というか、「これがわかると自分も助かるんだよな」みたいなスタンスで書いていらっしゃるのも、私がお二人の書くものをすごく受け取りやすく感じるのは、たぶんそれがあるんですよね。
仲山:自分の頭の中を言語化できたら気持ちいいってことですよね。
篠田:「組織のネコ」の話とかは、だってがくちょ、自分だよねみたいな(笑)。
仲山:(笑)。全員どこかに当てはまるんですけどね。
篠田:あるけどね。だから、「自分はその課題から独立した存在だ」という、暗黙の前提で抽象化された議論には、私は内心めちゃくちゃ反発心を覚えながら(笑)。
倉貫:(笑)。評論家みたいになっちゃうから。
篠田:そうなんですよね。
倉貫:逆に「自分の関わらないことをしゃべってください」と言われることがすごく難しくて。たまにないですか? 取材とかで、僕だとIT業界で、「これからのDXはどうなると思われますか?」とかって言われて、「いやー、そんな広い話、僕はわかりませんね」みたいな感じになっちゃって。
篠田:そう、わかんない(笑)。
倉貫:自分に起きたことを聞かれたら答えられるけど、業界のこととか聞かれても、「どうなるんでしょうね」って感じになっちゃう。
篠田:わかります。私、最近それで困る質問の筆頭は、「『LISTEN』はなんで売れているんでしょうか?」って。「知らないよ!」みたいな。
倉貫:知らないよ(笑)。
仲山:(笑)。
篠田:私が店頭で売っていれば、お客さんと話すから何らかは言えるけど。これまでも直接知っている人じゃない限り、ほとんど買った人に会っていませんからね。知らないですよね。
倉貫:「それがわかっていたら、次に書く本も売れるよ」ってなりますものね(笑)。
篠田:本当ですよ。「なんで私に聞くんだろう?」と思って(笑)。
仲山:実は売れているものが売れる理由は「売れているから」というのは、後半の理由としては大きいですよね。
篠田:いや、絶対そう思います。
倉貫:これね、あるらしいですね。
篠田:いや、本当にそう。どう考えてもおかしいもの。
仲山:それこそ糸井(重里)さんが「もうコピーはいいかな」と思ったのは、「売れてます」というコピー以上に売れるものがないから退いたという。
篠田:「1位!」とかね。それでもう売れちゃうんだったら意味ないよね。
倉貫:おもしろいなぁ。
倉貫:ちょっと別の話をしていいですか?
篠田:もちろんです。お願いします。
倉貫:この間、しのまきさんの自衛隊の人とのインタビューを見て、すごくおもしろかったんです。
篠田:おもしろいですよね。最高ですよね。
倉貫:あれで出てくる図が、「全部がくちょが書いたのかな?」っていうぐらいの(笑)。
仲山:(笑)。
篠田:(笑)。
倉貫:4象限というか表みたいになっているものとか。あの中で、統御(とうぎょ)って結局、「この人に付いていこう」みたいなものだっていうのがおもしろくて。そういうウェットなやつは、本来は方法論というか形式の中に入らないんじゃないのかなと思ったんだけど、ちゃんと入れてくるんだと思って。
篠田:そうそう。ふわふわしたお花畑のような理想論の中であれを入れているわけじゃなくて、本当に命が懸かっているんです。それこそ戦闘機だって10億円とかして、「壊したら、それだけ金がかかるんだぞ、お前」というものを、命懸けで飛ばしている人らの中で、あれが仕組みというかフレームワークに入っていることの重さをしみじみと感じましたね。
倉貫:人間性とか人格みたいなのが、要はすでにフレームワークの中に組み込まれて、それがある意味で評価されて、ちゃんと上の人になっているということですよね。
篠田:そうそう、そうなんですよ。そのへんの理解が弱い集団だと、「そんな人格を評価対象にするなんて選り好みじゃないか」みたいに考えるかもしれない。あと、「統御」という概念がそこにあるということは、つまり訓練もしているわけですよね。
倉貫:そうか。そういうことか。
篠田:その訓練ができるということを知らないと、人事の研修に関して、「ROIはどうなんですか?」と聞いちゃうようなことになって。そういう人に理解されないのが残念だなみたいな。
倉貫:いやー、統御を身に付けられるようになりたいですね(笑)。
篠田:私も細かいところまでは知らないですけど、入隊当初とかって、本当に肉体的にも精神的にも追い込まれるような訓練を集団でやるじゃないですか。100時間徹夜でずっと行進とかもやる。ああいう組織における必要な統御の教育って、例えばそういうところから始まっているんだと思うんですね。
倉貫:うえー。
篠田:(笑)。すごいんですよね。
仲山:他の人を励ませる人間かどうかみたいなところが見られる。
篠田:そうです。そういう時にキレたりしない。みんなの雰囲気がチームの統制にものすごく大事だから。そういう時ってリーダー1人ががんばってもたぶん駄目で、メンバー一人ひとりが自分を保ち、仲間が崩れそうになるのをお互いに支え合うみたいなことを、まずできないと駄目みたいなところからスタートしているんじゃないかと思うんですよね。
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