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kintone AWARD 2023⑥<関東・甲信越地区>株式会社モリビ 植田剛士氏(全1記事)

2024.01.26

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業務改善に奔走、しかし現場の反応は“自分が社長のつもり?” IT経験ゼロの担当者が、超アナログな会社を変えるまで

提供:サイボウズ株式会社

サイボウズ株式会社が主催する「Cybozu Days 2023」。同イベントでは、全国のkintoneのユーザーの中から選ばれたファイナリストたちが活用事例を発表する、「kintone hive tokyo vol.18/kintone AWARD」が行われました。本記事では、情シスなし・紙文化でアナログだった株式会社モリビが、ペーパーレス化や働き方改革を実現できた理由を明かします。

IT人材はおろか、情シスもいなかったアナログ企業

植田剛士氏(以下、植田):みなさん、こんにちは。よろしくお願いいたします。今日は私からみなさんに一番お伝えしたい、kintoneと業務改善の魅力についてのお話をさせていただければと思っています。

自己紹介です。植田剛士と申します。経営企画に所属をしておりまして、業務改善そのものを生業にしています。この格好で出てきている僕は、浄土宗の僧侶としても活動をしています。お坊さんになると、名前の読み方が変わる(俗名「つよし」、僧名「ごうし」)のは謎ですよね。

長野県の松本市出身で、今は長野県で一番小さい山形村と呼ばれている所に住んでおりまして、そこにある浄土宗のお寺で副住職を務めています。パラレルワーカーだと思っていただければけっこうです。

会社は長野県長野市にございます、株式会社モリビです。「再生」をテーマに、不動産管理、リフォーム、空き家活用などを生業としています。

さっそく本題に入るんですが、僕たちもご多分に漏れず課題だらけの会社でした。紙、FAX、ハンコにまみれておりまして、なんと情シスがいません(笑)。ITができる人はおろか、使える人もいない状態です。

そして、ミスを恐れてダブルチェック、トリプルチェック、クアドラプルチェックという感じになっていて、本当にやらなくていいことを全力でやって疲れきっている組織でした。

業務改善とは、何かを“やめること”から始まる

植田:そういう課題を解決するために、満を持してkintoneを導入……というお話ではなくて。うちの場合は、新しいもの好きの社長がどこかでkintoneとトヨクモのフォームブリッジを見つけてきて、「お客さんからアンケートをとりたい」という理由をもとに、うっかり導入してしまったことが始まりなんですね。

そこにあるkintoneを使わないのはもったいないから、ちょっとやってみようかなと。(スライドに記載のある)こういった課題を解決しようということで、使い始めることにしました。

私の考える業務改善は、「何かやめる」から始まります。やめてよさそうなことはさっさとやめてしまい、やらなきゃいけないものをkintoneでやろうというかたちにしました。

まず手始めに、紙をやめようかなと着手します。kintoneの基本の機能で、紙でバラバラになっていた機能をkintoneに集約をして、いつでも誰でも見られるようにする。たったこれだけのことでしたが、すごく感動したのを覚えています。

やっているうちにだんだん楽しくなってきちゃって、アプリをいっぱい作っちゃうんですよ。僕はあっちの部署へ行き、こっちの部署へ行き、「業務改善、業務改善!」と、業務改善行脚に回っていました。

業務改善に注力した結果、社内で「独裁者」と呼ばれるように

植田:僕は「すごく変わっていっているな」と思ったんですが、社員から見た僕はそういうふうには見えてはいないようでした。でも、そんなこともつゆ知らずにずっと続けていくと、なんと私は会社の中でこう呼ばれるようになりました。

「独裁者」です。ちょっと怖いスライドですよね。かわいいピーナッツちゃんを出してちょっと中和をしておきますが、このように呼ばれていました。そのほかにも(心に)きゅ〜ってくるようなことをいろいろ言われていたんですね。

「やっちゃったな」と思って(笑)。こんな予定じゃなかったんだけど、このまま進めるわけにはいかないので、反省をしました。仕切り直しをしないといけないなと。じゃあ、どうするか。そうです、お釈迦さまに聞くんですね。

お釈迦さまに「こんなことになってしまいました」と、相談をしました。そうしたらお釈迦さまが「『応病与薬』という言葉を忘れていないか?」と、言ってくれました。これは、病に応じて薬を与えるという仏教の言葉で、その人に合うやり方をするということなんですね。

例えば、今ここにいる私は私ですし、みなさんあなた方一人ひとり、あなたはあなたということです。好きなものも苦手なものもいろいろあると思うんですが、まったく同じということはないんです。100人いれば100通りのやり方があるという話で、すなわち「違いを受け入れる」ことでもあります。

こういったことを理解した上で、どのようにリスタートを切るか。kintoneを使った業務改善が、働く社員のみなさんにどういう効果を与えるか。またkintoneを使った業務改善の未来に、みんなが何を求めるか。そういったことを理解した上で、黄色い雲に全員で乗ってやっていこうとリスタートを切ります。

大量の紙を消費し、SDGsとは真逆の方向に進んでいた

植田:僕の考える業務改善は「やめる」。ということで、紙をやめたのでペーパーレスから始めることにしました。これは富士フイルムさんのDocuWorksという文書管理アプリケーションを使います。何に使うかというと、未だにFAXを使ってるんですよ。信じられないでしょう? FAXをやめたいんです。

「FAXやーめた」と言ってFAXをやめてもいいんですが、取引先がFAXを使ってる以上、僕たちが勝手にやめられないという、ついて回ってくるカルマみたいなものなんですよ。じゃあこのまま紙でやっていくのか? という話です。

「いや、そのままはちょっときついな」ということで、まずはFAXをデータ受信をして、それをkintoneの中に入れることで、本社も営業所も、いつでもどこでも誰もが外から見られるようにしました。

なんとこれによって、1年間にとんでもない量の紙を使っていたことがわかったんです。どれぐらいの量かというと、縦に積むと38メートルにもなるんですよ。スライドも飛び出しちゃっています。

38メートル、どれぐらいの高さかわかる人いますか? いきますよ。なんとアジア最大級の草食恐竜・ルヤンゴサウルスの全長と同じぐらいの高さなんですね。

「ルヤンゴサウルスを知ってるよ」という人はいますか? そんな恐竜は“知らンゴサウルス”ということなので、もうちょっとわかりやすく言います。

ブラジルにあるこういう像やスペースシャトルの本体の部分とか、それぐらいの高さの38メートルの紙を毎年、毎年消費して使っていました。僕たちはSDGsの反対側に全力疾走していたんです。

ペーパーレスによって年間28万円を削減

植田:そんなこんなでやっていたら、いつの間にかごっそり紙自体がなくなりました。本当にありがたいことですね。これだけのことで、紙がほとんどなくなったんですよ。金額にすると28万円とけっこうな金額なんです。

会社全体で考える28万円って、たぶんそんなにでっかい金額じゃないとは思うんですが、紙にこれだけ払ってたんですからね。モノですよ。労務費別ですからね。28万円あれば何ができるかというと、ダブルチーズバーガーのセットを365日食べ続けることができます。これはポテトLセットにしても大丈夫な金額です。

実際にマクドナルドに使うわけにはいかないので、何かをやめたことで浮いた経費を投資に回すと。浮いた経費を投資に回すということは、固定費はそのまま増えず、設備のグレードアップができるってことなんですよ。

何かを始める時には、何かをやめることとセットで考えるのがいいんじゃないかなと思います。これを“ハッピーセット”と呼んでいます。

kintoneの話をします。まずはポータルの話なんですが、左側のトップの画面を下にスクロールしていくと、右側のようなかたちになります。見た目については、パソコンから見た時はまあそれなりにという感じです。

じゃあ何なんだという話なんですが、モバイルから見た時の見た目に全振りしています。先ほどの登壇内容にもあったと思うんですが、営業さんが外から見たり、モバイルから使う人が多いので、アプリをパンと開いた時に「自分たちの使いたいアプリが全部そこに入っているよ、見えるよ」という状態にしておくと良い。

何が良いのかというと、そもそもアプリを探さなきゃ始まらないということでは、たぶん営業さんも「面倒くさいから嫌だな」と思って、触ってくれないと思うんですよ。そのためにこうしました。

取引先からも「便利で楽になった」という声が

植田:アプリの話をします。受発注アプリと言いまして、これはkintoneとトヨクモさんの三種の神器のプラグインを使います。僕たちの仕事は不動産関係なので、アパートの点検をして報告して、それをFAXで送るという業務があるんです。

不動産屋さんが「まぁ、FAXじゃなくてもいいけどね」と言ってくれたので、こういったシステムにしました。取引先がフォームブリッジから案件の発注をしてくれると、それがkintoneに入ってくる。僕たちはそれを見て仕事をして、僕たちの仕事した結果もkintoneに入れておく。

今までは「これ、どうなってますか?」と電話で問い合わせをしていた進捗管理も、先方がkViewerを勝手に見にきてもらえればOK。今までFAXで送っていた報告書も、kViewerを介したプリントクリエイターから、先方が勝手に出せるかたちになったんです。

僕たちもすごく楽になって「これは良かったな」と思ったんですが、一番良かったのは、取引先さまが「すごく便利で楽になった」と言ってくれたことです。改善が会社の枠を飛び出ていった、1つの良い例ができました。

kintoneの基本機能でまかないきれない部分に関しては、プラグインを使ってやっています。これはお気に入りのプラグインの一例ですね。

本当はいろいろ話をしたいんですが、時間も限られています。2日間このへんをうろうろしてるので、捕まえてお話ししましょう(笑)。

メンバーを巻き込んで業務改善をスピードアップ

植田:最後にもう1個だけアプリを紹介します。「ご意見BOXアプリ」と言いまして、何のプラグインを使うかというと、プラグインは使いません。kintoneと、実際に使うユーザーの掛け合わせです。

例えば、kintoneやGaroonをはじめとした会社の中のシステムに対して、「もうちょっとこうしてほしいよ」「これ、なんかおかしい状態になってるよ」ということを、ご意見として上げていただくアプリなんです。

(スライド)黄色で「なにで?」と書いてあるところは、全部kintoneに関わる意見が上がってきているわけです。さっきまでは独裁者って呼ばれていたんですが、今はもう会社の中で、社員のみなさんの業務の当たり前の部分にkintoneがいます。

バグの修正だけじゃなくて、作っているほうが気づきもしない、思いつきもしないようなアイデアやヒントがこの中から出てきたりする。それがめちゃくちゃ良いんですね。

何が言いたいかというと、kintoneは1人より2人でやったほうがいいし、関わる人なんかたくさんいたほうがうれしいんですよ、というお話です。

僕も最初はkintoneのアプリを1人で作っていましたが、今はパートナーとして入ってくれた早川という社員が一緒に取り組んでくれています。一緒にkintoneのアプリを作ってくれるので、業務改善が爆速に上がりました。

Uターン社員に対応すべくフルリモートを導入

植田:今日は早川も(会場に)来ているんですが、実は去年、家庭の事情で長野県から新潟県に引っ越さなくてはいけなくなってしまったんです。その時ばかりはさすがに僕も頭を抱えて、本当に「Oh, Jesus」と心から思いました。引っ越しちゃうわけだから、もう辞めるしかないのかなと思ったんです。

僕たちが進めていた業務改善の効果や、早川という人材の重要性を、社長をはじめとした会社がしっかりと理解してくれていたので、フルリモートを導入するかたちで(退職を)回避することができたんです。

なんと雇用を守れたんですね。この頃になってくると、「できないことなんかないんじゃないか」ぐらいに、僕もちょっと思っていました。

「この格好で?」という話なんですが、業務改善をマンモスの狩りに例えます。社員はチームを組んで、利益を得るためにマンモスの狩りに出ますが、これをいつまでもやっていてはいけません。マンモスをほかのチームも狙いにくるからです。

どうするのかというと、「改善」のテントを作ります。このテントで何を製造するのか。そうです、武器を製造するんですね。物騒なことばかり言っていますが、実際にこれを使うと何が良いかというと、早く倒せてきれいに取れる。効率が上がってミスが減るっていうことですね。

また、効率が上がるのでたくさん倒せる。生産性も上がる。これが、kintoneを使った業務改善のベースかなと思っています。

「すごくない僕たちが、すごくないアプリを1つ作ってみればいい」

植田:このテントをどこから出すかっていう話なんですが、ここに来ている会社のみなさん、業務改善のために新しく何人を雇えますか? 無理ですよね。ここ(今あるリソース)から出すしかないんですよ。結局のところ、ここが痛みを伴うところなんです。

テントに石とかを投げられます。「お前らはマンモスの狩りもしないで、テントにこもって何やってんだよ」と言われるかもしれない。

現場も大変だけど、テントの中だって一生懸命武器を作って、最高の武器ができた時にはそれを現場のみなさんに持たせてあげる。人数が変わらずにパワーアップできたら、これが業務改善なんじゃないかなと僕は考えています。「ええやん」と言ってもらえるとうれしいですね。

ということで、私がお伝えしたかったkintoneと業務改善の魅力についてのお話です。残り40秒ほどで、みなさんに最後に魔法をかけて帰りたいと思います。

まずkintoneの何が良いかって、作りながら考えられることですね。半年、1年考えてからスタートするよりも、5分考えてスタートしてトライアンドエラーを繰り返したほうが、目指すゴールには断然早く着きます。

何がダメかなんてやってみなきゃわからないし、どこに問題があるかわからないんです。すごくない僕たちが、すごくないアプリを1つ作ってみればいいんです。もしかしたら、それがすごい効果を生んだりするかもしれません。

すごくキラキラして見える業務改善の事例も、めっちゃ近くへ行ってよく見てみたら、実は小さい業務改善の積み重ねで出来上がっていたりします。ということで、そんな話ができればと思って、今日は登壇をさせていただいたわけであります。

来年のkintone hiveに登壇される方が、この中から出たらいいなと思います。私の登壇が、誰かのきっかけになっていればと思います。以上です。ありがとうございました。

(会場拍手)

社内だけでなく、取引先にもメリットが生まれる

司会者:植田さん、ありがとうございました。

植田:ありがとうございました。

司会者:もう、kintone売れるんじゃないですか(笑)? すばらしいプレゼンでした。ありがとうございます。

植田:本当ですか(笑)。売っていきます。

司会者:さっそく1点質問なんですが、社内での業務改善をすばらしく進められた印象が非常にありました。あとはポイントとなったのが、取引先さまとの業務改善。

先ほどのお話で、取引先さまから「まぁいいよ」とお話があったということだったんですが、本当にスムーズにいったのかな? と非常に気になっていて。実際にフローが成立するまでに、何かされていたことはありますか?

植田:その取引先さまは、むしろ発注の方法が会社の中でも定まっていなくて、メールで送る人もいれば、FAXで送る人もいると。その会社はその会社で、課題を抱えていたんです。

「kintoneとプラグインを使うとそちらも楽だし、こっちも楽ですよ」と1回見せながら説明した時に、「いいじゃん。じゃあやってみようか」と進んだので、比較的スムーズに進みました。

司会者:なるほど。けっこうためらわれる方はいらっしゃるかなと思うんですが、提案してみると、意外と取引先さまのメリットにもなったりするということですね。

植田:そうですね。

司会者:ありがとうございます、すばらしいご登壇でした。

植田:ありがとうございます。

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