2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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山岸園子氏(以下、山岸):みなさん、おはようございます。「あすか会議」2日目、朝一番の分科会のテーマは「働き方や価値観の変化に伴うこれから必要となる人材要件やキャリアの考え方」です。この3人の登壇者の方と一緒に進めていきたいと思います。
昨日の全体会では、マクロな観点で世の中の変化を学んでこられたと思います。そこからもう少し自分にひもづけて変化を考えた時に、例えば人生100年時代みたいな言葉はもう何年も前から見聞きされていると思います。
これは言い換えると、今30歳の方はあと50年くらい働くかもしれないし、今40歳の方は40年生きてきたんですけれども、同じぐらいの時間を働くみたいな世界観が、我々を取り巻く環境なのかなと思います。加えて、例えばテクノロジーの進化も本当に著しいですが、テクノロジーが進化することによって自分のスキルが陳腐化するスピードも同時に早まっています。
そしてここ数年は、コロナに取り囲まれる中で、我々が働く環境や取り囲まれるすべてのものがガラッと変わっている。そういった変化の中で私たちは生きています。そういった外部環境の変化に伴い、マーケットや企業から求められる人材要件も今、大きく変わっていますし、これからも大きく変わっていくと思います。
今日は、本当にすばらしい3名の卒業生に登壇いただきました。この3名の方にこれから求められる人材要件とは何かなど、いろいろとお話をうかがっていきたいと思います。
進め方としては、まずパネリストの方々にど真ん中のテーマである「これから求められる人材要件とは何か」について、それぞれの立場から見える世界のお話をいただきたいと思います。
そして、企業サイドとしてそういう人材を獲得するために、もしくは選んでいただくために、どういった取り組みが必要になるのか。さらに、一個人としてそういう人材になって、豊かなキャリアを築いていくためにどんなことを意識していけばいいのかを、お話ししていきたいと思います。
山岸:まずはご登壇者のみなさんに、ご自身が今どんな立場でどんな仕事をしているのかを簡単にお話しいただいた上で、これからマーケットに求められる人材要件とは何かについて、ご意見をいただきたいと思います。まずは高木さんから、よろしくお願いいたします。
髙木元義氏(以下、高木):みなさん、おはようございます。高木でございます。私は今パソナグループという会社の広報、あとはメタバース本部長としてCBOの役割を担っています。これは「Chief Breakthrough Officer」です。
2万人ぐらい社員がいる会社の中で、100社ぐらいグループ会社があるんですけど、私は広報の視点、PR・マーケティングの視点、そしてメタバースを通じて、グループ会社に横串をさして、いろんな会社の事業を生かしています。
もう1つ、パソナJOB HUBという社員が200人ぐらいの会社の代表をやっています。そういった経営者の視点、そしてホールディングスの横串をさす視点からお話しできればと思っています。よろしくお願いします。
求められる要件は非常に大事な視点で、「デザイン思考からの脱却」が言えるのではないかと思っています。「マーケットから求められる人材って何?」と、それに合わせて自分をチューニングする思考ではなく、アートですね。
アート型の思考で、真っ白なキャンバスにバン! と絵を描く。その絵を描くトレーニングを我々は受けていなかったと思うんです。でもこれからはそこが求められる。グレートリセットではないですけど、時代は思いっきり変わっています。その中で一番大事なことは、学び続けられるかどうか。
私たちは、健康であればたぶん、先ほど山岸さんがおっしゃったように60歳、70歳、80歳まで働くかもしれない。そうした時には自分自身が健康であることと同時に、自分が何をやりたいのかという志、パーパスがより一層重要になってくる。
その根本を見つけるのはたぶん学び続けたり、いろんな仲間からいろんな話を受けたりしながら「私にはこういうのが向いているんだ」と。自分が考える狭い範囲から、もっと幅を広げることが必要ではないかと思います。
だから私は「ハイブリッドに働けよ」とよく言っています。自分が今やっているところだけではなく、例えばNPOに参加したり自治体に参加したり、他の企業に参加してみたり。それが難しいのであれば隣の部署のお手伝いをしてみたり、何でもいいと思うんですよね。
ハイブリッドに働くことで、感謝されたり、機会があったり。そうやって見えてくるものがたくさんあると思います。ただ大前提で言えるのは、絶対に学び続けられる人材であること。これが重要かなと思っています。
山岸:ありがとうございます。
山岸:それでは恒田さん、お願いできますでしょうか。
恒田有希子氏(以下、恒田):よろしくお願いします。お二人がすごくまともというか、ちゃんとした経営をされている方なので……(笑)。
(会場笑)
私はフォースタートアップスという会社で、スタートアップの支援を人とお金でやっていく会社をやっています。自分の中で決めていることは、とにかく成長産業かどうか。「この会社、伸びるのか」を、自分が身を置く判断基準としてやっています。事業としてはスタートアップの支援をしている会社だと思っていただければ。
求める人材像の話ですけれども、答えになっていないんですけど、私は企業が「求める」とか言っている場合ではないというのが答えだと思っていて。一番欲しい人材は、当事者意識を持っている人だと思います。自責で当事者意識を持っていたらなんとかなるんですよ。
じゃあ入社していない人に「うちの事業に当事者意識を持ってください」ってできるんだろうか。それを持ってもらうのが会社側の責任じゃないかと私は思っています。求める人材というよりは、求められる会社。会社側がその人に「人生かけてこの会社にコミットしたい」と思ってもらう努力をすべきじゃないかなと思ってます。
山岸:ありがとうございます、当事者意識が重要という話でした。
山岸:じゃあ続いて原さん、お願いいたします。
原雄介氏(以下、原):株式会社デンソーの原と申します、よろしくお願いします。自動車部品の会社で、グローバルで17万人、35の国と地域で事業をさせていただいています。自分はそこで今、人事領域の責任者をやっています。
お二人がもう良いことを言ったので、あんまり言うことがないんですけれども。求められる人材要件はいろいろあると思いますが、あえて言うとざっくり3つ。1つ目が「自立/自律した人材」。「自ら立つ」と「自ら律する」ですけど、要は自分の頭でオーナーシップを持って行動できることだと思っています。
当然キャリアを自律的に考えるのも大事ですけど、仕事を自律的にできない人はキャリアも自律できないと思うので。仕事自律があってキャリア自律があると、まず思っています。
2つ目は「プロフェッショナルな人材」。プロフェッショナルの定義は昨日もいろいろありました。「社内外で通用する力」とかいろいろ言い方がありますけど、「ここでしか通用しないよ」みたいな話ではなく、要は再現性のある力。
あとプロは倫理観がすごく大事だと思うんですね。何のためにやるか、誰のためにやるか。社会をより良くするとか、何が正しいのかとか、そういう独りよがりではないプロフェッショナリズムを持っていることがすごく大事です。昨日から全体会も含めてすごい人ばかりだから、プロって言っても「自分らしいプロって何かな」としっかり言語化することが大事かなと思います。
3つ目は高木さんもおっしゃっていましたけど、「学び続けて変わり続けられる人材」。失敗とか多様性から学ぶのもそうですし、基本的にそれを習慣化できること。動静も変わりまくるので、それが習慣化できることが大事かなと思います。
山岸:ありがとうございます。
山岸:今お三方から、高木さんは絵を描く力が大事だという話、恒田さんからは当事者意識、そして原さんからは自律・プロフェッショナル、それから学び続ける・変わり続ける姿勢が大事だという話がありました。このキーワードについて、もう少しだけ掘り下げていきたいと思います。
まず高木さんの、「絵を描く力が大事だ」とおっしゃいましたが、この「絵を描く」は具体的に何の絵を描くことを示していますか?
高木:さっき原さんにおっしゃっていただいた内容と近しいんですが、どうなるかではなく、「どうするか、どうありたいか」の絵を描けるかどうかが勝負だと思っています。
つまりさっきおっしゃっていただいた「自責で動けるか」と同じです。絵を描くのは小さくても大きくても良く、とにかく自分で自分の描いたところにいけるかどうか。つまりゴールを会社から設定されて動くのではなくて、自分の中でゴール設定ができるかどうかがけっこう大事だと思っています。
山岸:ありがとうございます。「どうあるか」は一個人としてのキャリアみたいな話ですか? それとも組織の戦略とか、そういった話をされているのでしょうか。
高木:これは一個人としてもそうですし、会社組織としてもそうです。もっと言うと経済的な合理性だけではありません。分野はいろいろあると思うんですね。その分野においてのプロフェッショナルとか、その分野の領域において良いものが、自分の物差しになりがちです。
でも社会はそうではなくて、いろんなものが複合的にあるので、その中で自分自身が何を得意としながらも「他の領域にはこういうのもあるよね」と理解しておくことが大事かなと思っています。
山岸:なるほど。ただそれは理解をすると言っても、けっこう難易度が高いというか、難しいと思うんです。やや個人の力のほうに話は寄ってしまうんですけれども、高木さんはご経験的に、そもそもどうやってそういう力を高めていくことができると思われますか。
高木:まさにそこがこれからすごく重要なポイントだと思っています。どうせ変わり続けるんですよね。いつの時代もそうだと思うんですけど、変わり続ける中で、私たちが生きている環境は、1社だったらその1社のルールの中、もしくはその文化の中で生きていて、それが正みたいな状態になっている部分があると思うんです。
ハイブリッドでいろんなところに多少でも関わることによって、「こんな視点があったんだ」とか「こんな大変さがあるんだ」「こんな苦労があるんだ」「こんな思いがあるんだ」と、体験するしかないと思うんです。体験するとそこに対する思いやりが生まれるので、そうすると人としての深みが増すと考えています。
山岸:最後の高木さんのお話はすごく共感いたしますね。他のことを経験することによって思いやりが生まれる。そういう思いやりがあることによって、良い仕事・良いチームを作るところにもつながっていくのかなと思いました。ありがとうございます。
山岸:今の話の続きで、原さんにもおうかがいしたいと思います。「どうありたいか」が一個人としても、組織のビジョンとしても大事だという話が今、高木さんからあったんですけれども。
これを原さんがいらっしゃるような超巨大企業、先ほど35地域・社員数17万人とうかがったんですけれども、巨大組織の中でそういったマインドを作り上げていくのは、並大抵のことではないと思うんです。原さん自身は、まずは一個人としてどういうことを意識していらっしゃいますか。
原:ここにいらっしゃるお二人みたいに、自分で考えられる人ばかりではないという前提で考えると、みなさん「Will-Can-Must」のフレームワークは聞いたことがあると思います。Willは夢とか志とか本当に自分がやりたいこと。Canは自分の強みだったり持ち味だったり。そして、Mustが今やっている仕事の役割だとか、目標だと思うんです。
なかなかそれを考えてくださいと言っても難しい。やはりたくさん組織があると、個人にもキャリアがあるのと同時に、組織にもキャリアがあると思うんですね。組織にもWillとCanとMustがある。組織のWillがいわゆる大義だったりパーパスだったりしますし、Canがそれを成し遂げるための組織能力や人材ポートフォリオだったりする。
いきなりパーパスというとすごく遠くて、個人はなかなかひもづかない人も多いので、Mustで、その部門のマネージャーとかが「自分の組織で言うとね」と自分で語れるビジョンみたいなことをやるといい。
個人のWill-Can-Mustと組織のWill-Can-Must。個人のやりたいことと組織がやりたいことをうまく重ね合わせる努力みたいな。何にも努力をしないで重なることはないので。この努力をして重なるところにどう意味をつけるか。意味づけるマネジメントが、むちゃくちゃ大事になると思ってます。
山岸:ちなみに原さんご自身は、どうやって「意味づけるマネジメント」の力を高めて、日々どんなことを意識してそれを実現しているのでしょうか。
原:それを考える時は、ふだんもありますけど、変化があった時です。例えば海外に赴任していて、急に日本に戻ってこいと言われた時とか。この間まで経営戦略をやっていたけど、いきなり人事に変わってくれと言われた時とか。
変化する時に、さっき言った自分のWillとCanとMustと、組織のWillとCanとMustをもう1回再接続して意味づけをし直すことを、自分で内省する。やはり変化をチャンスとして、ちゃんと言語化して考える、そこが大事かなと思っています。
山岸:ありがとうございます。原さんは、この質問をしても答えづらいというか、あんまり自分には共感できないと思われるかもしれないんですけれども。今「自分で変化があった時に内省するんです」と、「自分にどういう意味があるのかを、まさに自分で意味づけるんです」みたいなお話をされました。
一方で、それがなかなかできない方もいらっしゃると思っていて。要は「外部環境のせいです」とか「こうなってしまったからこうです」みたいなことって言えなくはないし、そう思ってしまう瞬間は、なくはないかなと思うので。
「外部環境のせいだ」と言ってしまう人と内省できる人の境目は、どんなものがあるのか。もしくはどうすれば後者にいけるのでしょうか。
原:いろいろあると思いますけど、あえて1つ言うと、自分を知っているかどうか。「自分らしさって何ですか」、それをどれだけふだんから考えられているか。自分は何が好きで何が嫌いで、何をやりたくて何をやりたくないか。
そこがあると変化にアジャストする時に、こっちは固定であっちは可変なので、そこから足りないギャップを自分に見出したり。そういうのが大事かなと思っています。
山岸:ありがとうございます。
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