2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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山岸園子氏(以下、山岸):今、自分らしさをどれくらい理解しているか、自分の理解がどれぐらいあるかという話でした。ここからは恒田さんに聞いてみたいなと……そんなにイヤそうな顔しないでください(笑)、聞いてみたいなと思います。
さっき「当事者意識が大事」とおっしゃって、ただ当事者意識は恒田さんとしてはもちろん「会社が努力してそれを醸成すべきだ」という話がありました。私は恒田さんと実は大学院同期で、もうかれこれ10年近い知り合いですけれども、めちゃくちゃ当事者意識が強いんですよね。謎なぐらい強いんですね。なのでそういった意味では、他責とかの感覚はまったくない。
とはいえ恒田さん自身は、自分に矢印を向けて当事者意識を高める力をどうやって培ってきたのか。がんばって言語化をしていただけますでしょうか(笑)。
恒田有希子氏(以下、恒田):「誰も助けてくれません」、それに尽きるのではないかと思います(笑)。私もずっと人のせいにしたり「もっと会社がこうしてくれたら」とか「なんで上司はこうやって導いてくれないんだろう」とか文句ばっかり言っていたし、会社の飲み会でも「どうしてできないのか」ということばっかり話していたんですけど。
結局「誰も助けてくれない」と気づくべきだと思います。助けてくれないんですよ、家族も恋人も、上司も会社も。だって「あなたの人生の10年後、20年後、30年後の責任とります」と言ってくれますか? 絶対にとってくれないからねっていう。そうしたら「自分でなんとかするしかない」とまで考えがいって……最初からそうだったわけではないです。
ちょっと特殊ですけど、私はこの「あすか会議」の9年前、2013年の「あすか会議@京都」に参加して、たぶん田久保さんの「志」の話を聞いて、「志」を持たないといけないんだって思ったんですよ。「やることに何の意味があるのか。目的がないと、仕事は続けられないんですよ」という話を聞いて「やばい私、志を持ってないわ」と思って、帰りの新幹線で退職届を書いて。
(会場笑)
山岸:これ本当です。
恒田:本当に辞めたんですね(笑)、そこから始まるんです。
みなさんは今、自分の年収は会社が決めていると思っているかもしれないんですけど、本来は会社ではなくて、転職市場に出た時に自分で「いくらです」と言えないといけないと思っています。
それが定量的に測る「自分は何者なの?」とか「自分には価値があるの?」ではないかなと。お金の話をしないでやりがいだけに持っていくのは、相当継続性がないことだと思っているので。自分の価値はいくらと、まず考えてみたらいいのではないかなと思います。
山岸:ありがとうございます。特に後半はかなり刺激的な話をしていただいたなと思います。
(会場笑)
このあたりの話は、またあとでいろいろおうかがいしていきたいんですが、ちょっと前半の話に戻りたくて。「自分のことはもう誰も助けてくれません、守ってくれません」というお話があったと思います。そこが恒田さんにとっての原動力だったと思うんですけれども、一方で今度は企業サイドの視点に移っていきたいと思います。
とはいえ恒田さん自身は、今はフォースタートアップスでそれなりの立場があるポジションに就いて、日々話をしていると「組織を守りたい」とか「メンバーを守りたい」とか「メンバーに良い人生を歩んでほしい」と、ものすごく思っている。
ある種「助けてくれない」と思っているけれども、恒田さん本人はものすごく守ろう、助けようとしてくださっているのかなと思います。
新しい問いですが、そういった求められる人材要件がある中で、その方々に会社として選んでもらうために我々はどういうことを意識して、どういうことに取り組んでいかなければいけないのか。企業・組織側の話をおうかがいしていきたいと思うので、まずは引き続き恒田さんから。
優秀という言葉が良いかはわからないですけれども、優秀な方に会社を選んでいただくためにどんなことを……特に恒田さんの場合は多くのスタートアップの企業を見ていらっしゃるので、みなさんが意識されているところをぜひ教えてほしいなと思います。
恒田:まずは給料をあげられる会社ではないかなと(笑)。
山岸:そういう意味では成長産業は本当に大事ですよね。
恒田:そうです。成長産業ってざっくりどういう感じかって言うと、私が転職した2016年は資金調達市場は3,500億円ぐらいでした。1社あたりの資金調達で10億円を超えると「すげぇわ、あの会社」となるぐらいの規模でした。
ちょっと今はマーケットが不安定なのでアレですけど、2021年は8,500億円ぐらい。なので5年で2倍の市場になっています。スタートアップがお金を払えるようになっているんですよ。だからメルカリはGoogleから人を引き抜けるんですね。
恒田:私は今、人の支援をしているので気づくんですけど、年間1,000人弱ぐらいの方に「スタートアップでチャレンジしてください」とお願いしてスタートアップに行っていただいているんです。そのうち、ITエンジニアの3分の1が次のキャリアでITコンサルタントに行ってしまいます。なぜかと言うと、給料を2倍出すからです。
なので結局、原資の問題だと思っています。給与制度がどうとか、こういう人を評価しようとか、そういう話ではなくて。めちゃくちゃ儲かるビジネスをやっている会社は、めちゃくちゃ給料出して、めちゃくちゃ良い人材を集められるんだと思います。中国でAIの博士が多いのが当たり前だなと思うのは、AIの博士号を取れば年収が確定で3,000万円です。
例えばビジョンが必要だ、ミッションが必要だとすごく言われていますが、私は採用に社長が出てくるかどうかが絶対に大事だと思います。ファーストリテイリングも、本当に重要な採用の時は、採用にCFOが出てきますから。なのでHRに対して本気かどうかは、役員が出てくるかどうかでわかると思います。
優秀な人材を集め続けるためにはすばらしいキャッシュフローを作らないといけないので、やはり事業が伸びているかはめちゃくちゃ重要です。だから経営者はそこにコミットしないといけないと思います。
山岸:続けて、原さんにおうかがいしたいと思います。スタートアップとはある種、対極にいると言ってはアレかもしれませんが、先ほどもおうかがいしたとおり、超巨大企業のHRのトップを担当されて、今1年半ぐらい経っていらっしゃる。
そういった巨大企業の中ですばらしい方を採用したり、その中で高いパフォーマンスを出し続けていただくために、大企業の中ではどういったことを意識するのが重要なのか。教えていただければと思います。
原雄介氏(以下、原):選び・選ばれる関係にならないといけないと言われています。まずは会社として、いろいろな魅力的な仕事や選択肢があって、みんなが輝ける舞台であるというマインドセットにすることが大事だと思いますが、それに共感してジョインいただいたあと、言っていたこととやっていることが違うじゃないか、となることも往々にしてあるんですよね。
そうなると一人ひとりのマネジメントというか、意識も変えないといけない。一人ひとりがイキイキ働けるようなマネジメントや職場作りができないマネージャーは、部下からも選ばれない。そういうマインドセットに変えないと、「入ってきたあと実態が違う」ことが起きるので、そこを意識してやっています。
山岸:ありがとうございます。一人ひとりがイキイキ働くことにコミットできる、マネジメントの意識改革のお話をしていただきました。「いやいや、そんな簡単にはいかないでしょう」も事実かなと思っています。原さんは、デンソーの中では、マインドを変えていくためにまずは何から着手するんでしょうか。
原:いろいろありますけど、その1個がさっき言ったキャリアですね。一人ひとりに向き合うことは、イコール一人ひとりのキャリアを考えること。さっき恒田さんがおっしゃったように、最後に考えるのは自分に決まっているんですよ。
起点は自分だけど、自分では視界不良なこともあるし、全部が見えているわけではないので、ちゃんとマネジメントが寄り添って、向き合って対話ができるかどうか。これはめちゃくちゃ大きい話なので、お勉強だけではなかなか難しい。一人ひとりとの対話の機会を、仕事にちゃんとビルドインして組み込んでいく。
そういうのを愚直にやるしかなくて、秘策はないと僕は思っています。何かの制度がぴょっと変わったら、右から左に変わるようなことは絶対にない。それを真面目にやった会社とやらない会社の差が、5年後、10年後にむちゃくちゃ出てくるイメージで取り組んでいます。
山岸:ありがとうございます。もうちょっとしつこく聞いていきたいんですけれども(笑)。
原:やめてくださいよ(笑)。
(会場笑)
山岸:これは私の勝手なイメージもあるんですけど、とはいえやはりデンソーという会社は、ある種これまでは、入社したら一生そこに勤め上げる。トヨタと並ぶかたちで、終身雇用の象徴みたいなイメージを持っているんですね。
そういう所に勤めていらっしゃる、特に若手ではない中堅以上の方のマインドを変えていくのは、言うほど簡単でもないのではと思っています。愚直に向き合うのはわかりつつも、そういった難しさを越えるために意識していることや工夫は何かおありですか。
原:どんなに過去があった企業でも、これだけ大きな環境変化が、産業構造でも、世界の中の潮流でも起きている。ゆえに絶対に事業が変わるんですよね。事業が変わると仕事が変わる、職場が変わるんですよ。
要は同じ会社に入ったからずっと同じ職場、ずっと同じ仕事、ずっと同じ人間関係で最後までいくのでは、もう前提が違うというマインドセットが大事ですし、状況がそうなっているので。目に見えて変わってこないと自分に引き寄せられないので、そういうことと愚直な取り組みの両輪かなと思っています。
山岸:特に自動車産業は、本当に業界としての転換期にあるとは、もうここ数年言われていることです。やはり当たり前っぽく語られてはいますが、社内でもそういったことは常々、トップからのメッセージとして発信されていたりはするんでしょうか。
原:そうですね。弊社は「環境と安心で社会に貢献する」と言っているので、そこに向かってやっていくんだと。さっき言ったように、そうなったら必然的に事業が変わっていくのでそういうメッセージは繰り返し発していますね。
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