「組織生産性」は可視化でき、向上させる方法がある

渡部数満氏:本日お話しさせていただきます、コンサルティング部マネージャーの渡部数満と申します。「生産性向上のその先へ! 今求められる組織生産性の可視化とは?」ということでお話をしていきたいと思います。よろしくお願いいたします。

まず会社概要から簡単にお伝えしていきたいと思います。会社名はスタディストです。ミッションは「伝えることを、もっと簡単に」。ビジョンは「知的活力みなぎる社会をつくる」と掲げて活動しております。

会社設立は2010年3月で、13期目になります。事業内容は、BtoBのクラウドサービスを展開しています。主力製品は「Teachme Biz」と言いまして、他にもHansoku Cloudおよび生産性向上に資するようなコンサルティングサービスを提供しています。

自己紹介も簡単にさせていただきたいと思います。スタディストのコンサルティング部事業推進グループで、マネージャーをさせていただいております。これまでのキャリアとしては、基本的には人材開発や組織開発といった領域をメインに企画職を務めてまいりました。

前職はリクルートマネジメントソリューションズという会社で、人材開発や組織開発の領域における商品開発・事業開発・サービスプロデュースをやっておりました。スタディストが3社目になります。

スタディストでは、自社の新規事業であるコンサルティング事業の立ち上げに参画し、事業開発・推進、サービスメニューの企画、設計、開発。それから各種コンサルティングを行っています。

では徐々に中身に入ってまいりますが、まずは今日お伝えしたいことと得られることをお話したいと思います。お伝えしたいことは、これまでみなさまが「なんとなく」で感じていたような「組織生産性」と言われるものは、実は可視化できるということ。

得られることは、組織の生産性向上の考え方や、生産性向上というミッションに対して、どんなアクションがあるのかといったことです。こうしたことをご理解いただいて、持ち帰っていただけると大変うれしいなと思っております。

アジェンダとして、大きく4つお話したいことがございます。1つ目が「生産性を取り巻く環境」がどのようになっているか。次が「そもそも『生産性』ってなんだろうか」ということ。

3つ目が「生産性向上の施策」としてどんなことがあるのか。4つ目に、実際にこんなことを行っていただくとよいですよという弊社のサービスをご紹介して、終了といたします。

日本の労働生産性は、OECD38ヶ国中28位

Chapter 01ということで、「生産性を取り巻く環境」についてのお話になります。突然ですが、日本の労働生産性(就業者1人当たり国内総生産、就業1時間当たり国内総生産)は世界で何位かご存知ですか?

みなさまもこの話はなんとなくよく耳に入っているかと思いますので、次のページで答え合わせしていきたいと思います。

28位ですね。先進国が加盟しているOECD(経済協力開発機構)の中で38ヶ国中28位ということで、かなり下のほうに位置しています。みなさまご存知のとおりだと思いますが、日本の労働生産性は低迷していると言われています。

主要7ヶ国、G7でも最下位と言われていますし、日本の労働生産性は78,655ドル、日本円で言うと800万円強だと思うんですけど、ポーランドと同水準ということです。実はGDP(国内総生産)で言うと(ポーランドは日本の)5分の1なんですね。

生産性については決して高くない水準だと、みなさまもお感じかと思います。ですので、グローバル化が進んでいるにも関わらず、世界での競争力は低迷している状態は事実かなと思っております。

次に「労働力不足」という観点です。これもご承知おきのところかと思いますが、日本は人口がどんどん減っている状態です。世界的にも先進国は少子高齢化が進んでいる国がほとんどなんですけど、その中でも人口減少が最先端を行ってしまっている。そんな状況になっております。

なので労働力の減少、あるいは労働力を確保する課題は非常に大きいと言われていますし、実際人口の推移はこのように予測されております。予測と申し上げましたが、ほぼ確定した未来かなと思います。

いきなり出生率が上がったり、人が増えることはなかなか考えづらいので、急激に減少していく未来は間違いないかなと思います。毎年10万人程度の労働力人口の減少が進んでいる状況が事実になります。

出生率も働き手も急には増えない中での打ち手

これを国としてどのように改善しようとしているのかが、いわゆる「働き方改革」です。労働力不足に備えて、働き方改革をしていこうという考え方が一般化していますし、実際に国としていろいろな法整備や支援をしながら取り組んでいる課題かと思います。

まず労働力不足を解消していくためにということで、だいぶ抽象度が高い観点にはなりますが、働き手を増やさないといけない。出生率を上げていかなければいけない。あるいは生産性を向上していかなければいけない。これらすべてが正解というか、中長期的に必ずやっていかなければいけないことです。

先ほど申し上げたように、いきなり出生率も働き手も増やせないですが、生産性だけはもしかしたら何らかの手立てでグッと上げることもできるかもしれない。そんなテーマになるかなと思います。

国として掲げている、3つの柱の「長時間労働の解消」「格差の是正」「高齢者や外国人の登用」によって、労働力不足を解消していこうと取り組んでいます。

これは全部正しい道だと思うんですけど、具体的にどうするのか。各社、各組織が取り組みながら、いろいろ試行錯誤しているのが現実かなと思われます。

そもそも「生産性」とは何なのか?

Chapter 02では「そもそも『生産性』とは?」という話をしてまいります。

「『生産性』の定義」はとても重要な話ですし、今日も何回かこの図式は出てくると思います。まず「生産性とは?」ということで、この図式が普遍的かつよく使われている一般的な図式かと思います。

生産性とは「生産活動を行う際に投入したリソース量(労働力や資本)に対して得られた生産物の産出量の比」と言われております。

分母は「投下する資源」であるヒト、モノ、カネですね。経営資源と言われるものに対して、分子が「生み出す価値」。提供量、安定品質、付加価値といったところで、この割り算の比が大きければ大きいほど、生産性が高い状態だと言われております。

一方、「生産性」について、とかく言われがちなのが、どちらかというと分母の話に終始しがちなのかなと思っております。要はどうやって業務効率化していくか。どうやって投下する資源を減らしていくかということが、イコール生産性向上と考えられるケースが多いかと思います。

一方で、分子である付加価値をどうやって高めていくか。仕事や商品、サービスの質をいかに高めていくか、さらに言えばイノベーションを起こしていくか。あるいは組織としてどうやって付加価値創出力を高めていくか。

そういったところは、非常に重要なテーマであるものの、ここ(分母と分子)がわりとごちゃまぜになって語られる。あるいは分母ばかり語られることが多いのかなと思っております。

ですので、まずはこの分母と分子で生産性だよということが、今日お伝えしたいことの1つです。

「生産性向上=業務効率化」ではない

これをもう少しひもといたスライドがこちらです。先ほどと同じ話ですが、「生産性と業務効率化はイコールではない」と考えております。右側の「業務効率化」の定義としては、無駄な作業時間を省くなどして、より効率的に活動を行っていくこと。あるいはそういう状態を作っていくことを「業務効率化」と定義できるかなと思います。

一方で「生産性」は、分母と分子の両方の比の大きさなので、より少ないリソースで生産量の増加や高品質化、付加価値の創出、付加価値の提供を行う一連の取り組みになります。

一番下の青字で書いてあるところが定義ですが、「新たな価値を生み出すための取り組み」と認識いただくと、少し視野が広がるかなと思っております。ここはすごく重要なポイントです。

今、世の中の組織、企業、国も含めていろいろな取り組みをされているかと思います。働き方改革の取り組みによって違法残業や過重労働を減らしていった結果、生産性が高まる。

分子と分母の両方に作用すると思いますし、今けっこう「ウェルビーイング」という言葉が世の中に出てきております。みなさまご存知でしょうかね。

「ウェルビーイング」の定義は、絶対的な善や究極的な幸福、個人にとっての幸福といった、とにかく絶対的に良いこと、幸せなことを意味する言葉です。

先ほどの図式で言うと、どちらかというと付加価値創出に作用すると言われているんですが、やはり個人個人がウェルビーイングで絶対的な幸せを感じている状態のほうが、当然生産性が高まりますよね。付加価値創出力が高まりますよねという話です。

また、政府ではIT導入の支援を行っています。今はどこでも言われているようなDXを進めていくと、先ほどの図式ではどちらかと言うと分母の部分で、投下する資源を減らせる。ヒト、モノ、カネを効率化できるというのが、基本的な考え方かなと思います。

ですので、この図式の中でこの活動はどこにいったい位置するのか。どこの生産性を高めるのかを頭の中で整理いただくと、どんな活動をしていくのかというところで、すごくいい観点になるかと思いますので、ご紹介させていただきました。

生産性向上のための主な6つの施策

では、Chapter 03に入るわけですが、いったい組織としてどのような施策に落とし込んでいけばいいのか、もう少しひもといてお話していければなと思っております。つまり「生産性向上のための施策」に、組織としてどう取り組んでいくかという話です。

こちらは「『生産性向上』のための施策」ということで、主要な施策を6つ挙げております。まだちょっと抽象度が高いんですが、いったん読み上げつつ、こんな活動がありますよねということを、ご案内していきたいと思います。

左上から行きます。1つ目が「業務の見直し」ですね。どちらかというと分母の部分に作用するかと思うんですけど、時間や手間が取られている業務がないか、フローやプロセスを確認して見直していくこと。業務プロセスの見直しですね。

2つ目がいわゆるDXですね。「テクノロジーの活用」。新技術を取り入れて機械や新素材、イノベーションみたいなものだと思いますが、ITツールの導入によって改善していこうという話。

3つ目は、どちらかというと組織開発の話、あるいは組織のマネジメントの話になるかなと思うんですが、属人に合わせた適切な人材配置をすることによって、業務がスムーズに進んでいくと生産性が高まるという話になるかと思います。

なかなか実感しづらい、生産性の向上の度合い

4つ目は組織のコミュニケーションの話ですね。「社内コミュニケーションの活性化」ということで、タスクや進捗の管理がしやすくなって、無駄も減って業務の見える化につながる。あるいは双方の認識齟齬が減ることによって、手戻りが減ることも確実にあるかなと思います。

5つ目は「社員のモチベーションの向上」ですね。こちらも組織開発の領域になるかなと思いますが、やはりモチベーションが高い状態で仕事をしていただけると、付加価値創出力も高まりますし、ひいては生産性が高まる。

従業員が自ら意思を持って業務にあたっていただいていると、自発的な行動が増加して労働の生産性も高まっていくという話になるかと思います。

6つ目のポイントとしては「社員のスキルアップ」ですね。こちらは人材開発ですね。個の力を開発・増幅することによって、組織の付加価値創出力を高めて、生産性を高めるという活動になってくるかと思います。

どのようなスキルアップが必要かを考えて、勉強会や研修、あるいはさまざまな施策を展開していくことが重要かなと思っております。こちらが6つの主要な施策になります。

こういった施策は、DXだと最近の話も含まれますが、そんなに目新しい話ではないですし、みなさまもずっとやっていることかと思います。

一方で、実際に「生産性が向上しているなぁ」と実感されている方って、どのくらいいらっしゃいますかね。イメージしてみると、「そうだよな。どのくらい向上しているのか、ちょっと答えづらいな」と思われる方もいるんじゃないかなと思います。