スタートアップの人事が語る、採用のあれこれ

渡辺浩史氏(以下、渡辺):First sessionのモデレーターを担当させていただきます、株式会社リフカムの渡辺です。よろしくお願いします。

First sessionのテーマは「スタートアップの人事・採用あれこれ」です。ここでは採用のところも深掘りしつつ、人事のなかの1つの機能として採用があるということで、組織面とかも含めて、松尾さん、吉成さんからお話をうかがっていければなと思います。

まず自己紹介をさせていただきますが、せっかくの機会なので松尾さん、吉成さんにこういう話を聞きたいとか、具体的にこういうところを教えてほしいとかがあればチャットに書き込んでいただければと思います。よろしくお願いします。

では簡単に自己紹介を、松尾さんからお願いします。

松尾彰大氏(以下、松尾):金曜日の夜、みなさん仕事上がりかな。ご参加いただきありがとうございます。10Xの松尾です。今はHR本部の採用のマネージャーを務めております。

経歴としては、エン・ジャパンにまず新卒で入って、「CAREER HACK」というメディアの立ち上げに参加させていただいて、4年くらい編集者をやりました。それからメルカリに入社して、HR Mgrだったりインハウスエディターとして、「メルカン」というメディアの立ち上げ、そのあとメルペイ事業の立ち上げにも携わらせていただきました。

その後現在のSTORES、当時のheyという会社に1年くらいいて、1年半くらい前に10Xに入社しました。本日はよろしくお願いいたします。

渡辺:松尾さんありがとうございます。では続けて、吉成さんお願いします。

吉成大祐氏(以下、吉成):よろしくお願いします。Chatworkでピープル&ブランド本部の副本部長として、人事の全体の統括をしています吉成です。よろしくお願いします。

簡単に自己紹介だけさせていただきますと、私は最初Yahoo!JAPANという会社に入りまして、そこでもともとは人事ではなく、事業部にいたんですけど、キャリアが変わるタイミングがあって、人事部門に異動しました。新卒・中途の両領域を担当し、マネージャーを経て、最後はPayPayの立ち上げとかに絡んでいました。

PayPayで立ち上げから100億円キャンペーンとか、ちょっと世の中を賑わしたときの人事とかをやっていて、一通りやり切ったあと、ファーストリテイリングに転職しました。そこのIT領域の採用をやったあと、Chatworkに入社し、人事責任者としてやっています。今日はいろいろお話しできればと思っています。ぜひよろしくお願いします。

HRのプロフェッショナルに聞く3つのテーマ

渡辺:はい、吉成さんありがとうございます。それでは、最後に私も簡単に。改めまして、株式会社リフカムの渡辺です。前職はスローガンというHR系のベンチャーで、「Goodfind」というサービスの営業責任者や、「FastGrow」というメディアの営業責任者を務めていました。

この9月1日から、株式会社リフカムのVP of Salesとしてジョインしていまして、加えてRecursion,Incというコンピュータサイエンス教育をオンラインで提供しているスタートアップに営業顧問として入っています。

前職のスローガンの時代に、松尾さんと吉成さんとお仕事をご一緒させていただくことがあり、そのご縁もありまして今日はモデレーターを務めさせていただきますので、よろしくお願いします。

先ほどお伝えしたとおり、オーディエンスのみなさまからちょっと簡単に、松尾さん、吉成さんにお話を聞きたいことがある方はコメントをいただければと思います。それを盛り込みながら、各アジェンダを進めていければと思っています。

松尾:ぜひお気軽にポストください。例えば、「今どれくらいの組織規模の企業でやられていますか」とか、人事採用の話をさせていただくと思うので、今は何人くらいだけど、これくらいの組織規模をめざしているみたいなお話、コメントいただけたら、何かそれに合ったお話とかも、もしかしたらできるかなと思いますので。

ぜひポストいただけたらと思います。今飲んでいるお酒の種類でも全然構いませんが。

渡辺:(笑)。実際に進めながら、随時ある方がいらっしゃれば。あ、ありがとうございます。「人事チームのニーズと役割分担」。ありがとうございます。ちょっとここも触れながら行きましょうか。

それでは40分という時間はあっという間なので、さっそく本題に入っていきます。

まずこのセッションは3部構成になっています。1つ目のアジェンダとして、10X、Chatworkの事業と組織拡大の変遷についてをそれぞれ簡単に説明していただきます。

2つ目のアジェンダとして、まさに今いただいたご質問なんですけども、おふたりが属するHRが両社の組織の中でどのような立ち位置、組織構造になっているのかというところ。最後に、おふたりはHRのプロフェッショナルなので、おふたりの考え方のようなパーソナルな部分に触れて、締めていければなと思っています。

ではさっそく、1つ目のアジェンダに入っていきます。

ビジネスチャットの普及率は、1年で10パーセント増加

渡辺:まずは1つ目、各社の事業と組織拡大の変遷ということで、簡単にご紹介いただければと思います。じゃあ、吉成さん、松尾さんの順番で、簡単によろしいですか?

吉成:はい、わかりました。じゃあChatworkの話を少しさせていただければと思います。事業がどんなフェーズで何をやっているのかという話を含めないと、この組織の話がたぶんうまく理解ができないと思いますので、そのへんの話もちょっとしながら、サササッとお話しさせていただきたいと思っています。

まず、「Chatworkは何をやっている会社ですか?」という話ですが、端的にいうとビジネスチャットを提供している会社になります。

もともとChatworkは2004年に創業した会社で、ITの会社としてはけっこう古いです。上場したのは2019年で、この2020年、2021年、2022年と(従業員数が)すごい勢いで増えていて、ちょうど今激動の中でやっています。

なんで今激動なのかって話なんですけど、この話がけっこう大事なポイントで、今日来ているみなさんって、たぶんチャットを当たり前のように仕事で使うと思うんです。実は日本のビジネスチャットの普及率ってまだ25パーセントくらいなんですよね(※注 Chatwork依頼による第三者機関調べ、2022年3月調査、n=30,000)。

去年は15パーセントくらいだったので、1年で10パーセントくらい上がっているというのが今の状況です。ちょうどこのキャズムを超えたというのが、僕らの今のフェーズなんです。

このマジョリティゾーンに今ちょうど進出してるフェーズのなかで、どこが主導権を取るか。僕も「Chatwork」を今は使っていますけど、それより(以前は)Slackを使っていたり、なんかいろんなツールを使ってました。どこが取るかという世界なので、結構実はスピード勝負になっているというのが今の状況です。

2024年に中小企業向けのビジネスチャットで圧倒的No.1になること、CAGR40パーセントで成長させることを決算資料でコミットしているので、アグレッシブに成長させていかなきゃいけない。この時間軸でやらなきゃいけないというのが、僕らが目指していることです。

それを実現するために組織がどうあるべきか、どれくらい成長させていかなきゃいけないのかというのから逆算することが組織づくりと事業の関連性みたいなところになります。

半期ごとに人員が倍になっていくようなステージに突入

渡辺:ありがとうございます。じゃあ続けて10Xについて。松尾さん、お願いします。

松尾:はい、10Xは今の人員数でいうと、役職員入れてだいたい85名。ProductとBusiness、Corporateがだいたい3分の1ずつくらい。Productは4割くらいかな。というバランスのいいかたちになってきているかなと思っております。

10Xは創業したのが2017年6月なので、今5、6期目を迎えています。事業としては「Stailer」という、主にエンタープライズ向けの生鮮EC事業を立ち上げられるというものをやっているんですけど、それ以前は「タベリー」という、がっつりtoC向けの献立推薦アプリをやっておりました。

Stailer」が生まれたのは2020年の5月なので、実はまだ2年ちょっとしか経っていないんですね。

ただ、ここで資金調達みたいなものだったり、パートナーごとのPMFが見え始めたことで、1人あたりのGMV最大化とか、1人あたりの時価総額最大化をテーマに組織を運営していたところから、「Stailer」を伸ばすためにはどういった組織が必要なのかというところのこれまでとは違う逆算、めざすべき姿が少しずつ見えてきました。

それで人員拡大に一気に舵を切って、半期ごとに人員が倍になっていくようなステージに突入したというのが、現在かなと思っております。

まさに吉成さんがお話しされたとおり、事業ともちろん連動したかたちで組織像が定義づけられて、それに向けたHowとして採用活動を行っているというところも、今日は簡単にお話しできたらいいなと思っています。よろしくお願いします。

渡辺:ありがとうございます。「Stailer」ってまだ2年なんですね。もっと昔からやっているイメージがすごく強かったので、びっくりしました。

急拡大する組織に、どのような役割でジョインしたのか

渡辺:今のところで聞きたいんですが、吉成さんと松尾さんは、先ほどの組織の拡大が右肩上がりのなかで、どのタイミングで、何名規模のときにジョインしているのか。吉成さんは、Chatworkは何名規模のときだったんですか?

吉成:僕は2021年の2月からジョインしているので、このグラフで言うと162人に近いところですかね。今は300人近くになっていますが。

渡辺:どういう役割でジョインされたんですか?

吉成:役割としては、人事のマネージャーとして入っていました。ただ、そのときの人事ってほぼみんな採用をやっていたので、採用マネージャーに近いような感じでした。当時はそういう役割だったところから、今はちょっと拡張して、人事全体をやっている感じですかね。

渡辺:じゃあちょうど吉成さんが入ってから、組織は倍近くになっている感じですかね。

吉成:人事の人数でいうと当時は4人くらいしかいなかったんですけど、今は15人強くらいです。

渡辺:人事の人数でいうと3倍くらいになっているということですね?

吉成:はい。

渡辺:なるほど。ありがとうございます。松尾さんはいかがですか。

松尾:私が2021年3月くらいなので、まさに資金調達手前で背番号が25番くらいでしたね。

まさに調達を控えているみたいなところと、組織をそもそも大きくするのかどうかもまだ決まっていなかったタイミングだったので、採用だったり評価だったりの部分をどう固めていこうか、エンプロイーエクスペリエンスをどう定義していこうかというところの立ち上げから入ったかたちになります。

渡辺:なるほど。ありがとうございます。じゃあ松尾さんが入ってからは4倍くらいの組織規模になっている感じですね?

松尾:そうですね。そうなろうとしていますね。

採用チャネルの活用は「エージェントの整理」から始まった

渡辺:なるほど。せっかくのテーマなので、Howのところもちょっと聞ければと思うんですけど。吉成さんの場合は、140人とか150人採用されていますし、松尾さんは4倍近くだから60名ぐらい採用されていると思うんですけど。具体的にどういう採用チャネルを活用してそこまでにいたったのかというHow論のところってお聞きしてもいいですか?

吉成:もともとChatworkって2019年くらいまで、人事の専任ってほぼいなかったんですよね。なので、事業部が採用するのが、基本的にスタンダードになっていました。結構これが大きくて、入ったときから、いわゆるビズリーチとか、ダイレクトソーシング系は基本的に部門が回すというカルチャーだったんですね。

僕が入ってまず思ったことは、うまくエージェントを使いきれていないなということだったんです。

ダイレクトソーシングはグルグル回しつつ、そこにどういう人を採りたいというペルソナを整理し、そこからからどういうチャネルを使っていこうかを設計して、結果的にエージェントの整理から始めることになりましたね。

渡辺:エージェントをうまく使えていないというのは、どういうことですか?

吉成:事業にどういう人が必要で、例えば「2021年の終わりぐらいにどういう組織にしていたいから、こういうペルソナの人が欲しい」というところまではなんとなくあったという状態なんですけど、「じゃあ、それがどこにいるんですか?」というのが、うまくアプローチができていなかった。

もともと採用に強い人間があまりいなかったので、例えば大きなエージェントが持っている候補者の層と、それこそ小さいエージェントが持っている候補者の層とでは各種全然違うという文脈があるなかで、じゃあ僕らはどこに網を張ったらいいんだっけというところが、ちゃんと整理ができていなかった感じだったんですよ。

渡辺:ああ、なるほど、なるほど。

吉成:どちらかというと役員が直でエージェントとずっとやりとりしていた状態だったので、その整理から始めて、エージェントチャネルをどう使っていくか、結果としてダイレクトソーシングとエージェントの両立でやっていったという感じですね。

エージェントは、採用を一緒に成功させるためのパートナー

渡辺:ご質問にもあったんですが、エージェントコミュニケーションのなかで、当然チャネルの整理、どのエージェントを使っていくかという話に加えて、チャットってSlackとかTeamsとか、ジャイアントがいるわけですよね。そこでエージェントにChatworkに人を紹介してもらう優先度を高めるという活動のなかで、Chatworkの優位性というのはどう伝えていったんですか?

吉成:ビジネスチャットの業界が、さっきあったようにそもそもの普及率が低いという実態があります。そのなかで、SlackはITに強い会社に強かったり、Teamsはエンタープライズに強い会社に強かったり、セグメントが分かれている特徴があるんですよね。

「Chatwork」は中小のお客さまに強いという特徴があって、ここでいうマジョリティのところで使っていないお客さんって、中小企業のお客さまがけっこう多いという実態があった。だからこそ「Chatwork」は勝ち筋があるっていうストーリーは、もうアトラクトで、基本的に口説けるという状態に近かったんですよね。

渡辺:なるほど。

吉成:同じことをエージェントさんにも話していて。エージェントさんも同じことをしゃべれるようにしてました。

渡辺:じゃあそこのチャネル選定もそうですし、コミュニケーションの密度みたいなものを一気に高めて、同じ目線で語れるような状態をつくったというところからスタートしたというかたちですね。

吉成:これは僕のポリシーでもあるんですけど、エージェントのみなさんってパートナーだと思っているんですよ。業者とかではなくて、基本的には採用を一緒に成功させるためのパートナーなので。

やっぱりお互いがWin-WInになるような関係性で、かつやっぱり同じような情報量をちゃんと出したり、彼らが活動しやすい土俵をつくるのが僕らの仕事だと思っています。じゃあ、それをどういうふうにしたらできるのかというのは、めちゃめちゃこだわっていた感じですね。

払拭すべき課題は「知っている人・つながっている人」しか来ないこと

渡辺:なるほど。ありがとうございます。今度は松尾さんにお聞きしますけど、10Xって、元マッキンゼーの方とか元メルカリの方とか、めちゃくちゃ優秀な方々が集まっている20人だったイメージが、僕にはあったんですけど。そのなかで、人数を増やしていくにあたってのチャネル選定って、どうされていたんですか?

松尾:ありがとうございます。まさに今渡辺さんがおっしゃったようなイメージが強すぎたというところが、まず1つ払拭しなきゃいけない、解決しなきゃいけないイシューだったなと思っています。

その背景に、まずチャネルとしてオーガニックかリファラルしかなかったというのがあったんですね。なので、いわゆる10Xを知っている人しか応募しないとか、つながっている人しか応募しない。もちろんできないわけじゃなくて、オーガニックではできるんですけど。そもそも「しづらい」みたいなところがあった。

それには背景があって、そもそもどこまで大きくなるべき会社かというのがまだ見定められていなかったという、事業上の不確実性が非常に高かった。一方で、組織を拡大していくぞとなったときには、オーガニックとリファラルだけ、あるいは固定化されてしまった市場からの印象みたいなところを、いかに払拭していくかというところが、非常に大きい課題でした。

採れるHowって、もちろん突飛なことはなくて。まず当たり前のようにダイレクトリクルーティングのチャネルを拡充していく。そして私も4社か5社くらいかな、エージェントさんとパートナーとして契約をさせていただたのが、1年ちょっと前に初めてやったところでした。

会社のことを「知らない人」にアプローチするための施策

松尾:これは人員を単純に増やしたいということだけではなくて、やっぱりオーガニックとかリファラルだけだと、似たような人ばっかりが集まってくるんですよね。

10Xはダイバーシティー&インクルージョンポリシーというのを別で定めているんですけれども、そのなかで似たような人たちが集まることによる見えない弊害だったり、顕在化しないイシューはずっと溜まっていくということを、経営と一緒に強く認識はしていました。

そのためにも、とにかく知らない人であるとか、知ってほしい人にいかに届けるのかというところでLinkedInとビズリーチ、あとはYOUTRUSTといったダイレクトリクルーティング。加えて、多くご紹介いただけるようなエージェントというよりも、個別にお付き合いがあって、どちらかというと小さなエージェントさん4、5社だけ、まずは契約させていただいた。

そこで半年で1つずつ成果、決定実績みたいなところをつくりながら、今チャネル別でだいたい3分の1ずつくらいで決められるようになってきたかなというのが、まあいい成果かなとは思っています。

渡辺:エージェントさんって、世の中に数多あると思うんですけども、その中での4、5社の選定基準はどんなものだったんですか?

松尾:立ち上げだったので、前職だったり、あとは社内での強いリファレンスのあるエージェントさんというところを、まず契約させていただいたというところがあります。

渡辺:なるほど。

松尾:何よりも、吉成さんがおっしゃっていたとおり、まさに(エージェントは)パートナーだったので。何人紹介してくれとか、決定しないとどうこうなるみたいなことというよりも、10Xのファンになってもらって、それを自分の言葉で潜在的なキャンディデイトの方に伝えていただけるとか。10Xを応援したいと思っていないと、紹介なんてしないと思うんですよね。

だからそこに対して、どんなに細かくでもコミュニケーションをとらせていただいたり、要望に応えていく。あるいはこちらからきちんと情報を出していくというチャネルマネージメントが基本中の基本ですよね。それは属人的ですけど、私がまずは立ち上げてちょっとやって、少しずつ冗長化したというのが今の組織になっているかなと思っています。

渡辺:なるほど。ありがとうございます。