伝統的な小売の就業規則は、IT人材にはミスマッチ

西澤直樹氏(以下、西澤):全体の戦略から2万人を巻き込む。まずはデジタル改革の第一歩を踏み出した後、今カインズさんは200名の内製化組織まで大きく拡大されてらっしゃいます。どういうプロセスでそれを実現されていったのか、ぜひお話をお聞かせいただければなと思います。

池照直樹氏(以下、池照):はい。今の組織自体は、マーケティング統括部、デジタル戦略本部の中に、旧来のマーケティングの部隊とデジタルマーケティングの部隊が入っていたり、実際にものを作る人もいます。さらに200人ぐらいになってるので、小さいと言っても、まあまあでかい会社ですね(笑)。

西澤:そうですね(笑)。

池照:なので、企画や全体の総務をやってくれる人たちも揃えています。始めた時は、マーケティング部門はぜんぜん別の部隊として動いていましたし、さらに俗にいうデジタルの世界では、十数名の人たちがWebサイトをどうにかしたり出荷の仕事をしていた状態です。

そこにデジタル戦略本部を作り、まず一番最初にやったのは人員計画です。今、表参道にオフィスを持っているんですが、それだけではなくて。伝統的な小売の就業規則だとIT人材がまず勤めてくれないですね。

エンジニアが、朝9時に会社に来るとは思っていないんですよ(笑)。もちろん、お店の従業員は開店の時間までに来てくれないと困るんですけれども、エンジニアは開店時間があるわけではないので、好きな時間に働いていただいていいと思うんですよね。そういうふうにルールを変えていったりして、人材の採用を進めていきました。

今は全部で209人います。eコマースで15人、デジタルマーケティング21人。これは普通のマーケティングの人よりも(多く)入ってますね。特にエンジニア部隊は今は90人ほどいて、その下のデータ型推進部もデータサイエンティストなどのエンジニア的な仕事をしています。

最初の3ヶ月で本部を作って、30人の採用をしたんですね。15名のエンジニアと15名のデジタルマーケティング人材を採用しています。正直、けっこう苦労はしました。3ヶ月で300人ぐらいに会いました。1ヶ月100人なんですよね。

西澤:会うのだけでも、もう……。

池照:そう、週5日働くとすると20日間なので、1日5人ずつ会ってるんですね。1時間ずつだから、だいたい他の仕事はしないで採用ばかりしていました。

「カインズ? デジタル?」というイメージからの脱却

池照:採用に際して何が難しかったかというと、当時のカインズは普通のホームセンターなので、雑誌にも「デジタルのなんちゃら」とかで出てないわけですよ。そうすると、まずは、ヘッドハンターさんが「カインズさん、何するつもりですか?」というところからきますよね。

普通に求人票を出してもぜんぜん回してもらえなかった時代も、当然あります。何をしたかというと、会社全体のエージェントさんを集めてもらって、7〜8社で「僕にプレゼンさせてください」と、とにかく丁寧にエージェントさんに戦略のプレゼンテーションをさせていただきました。

当然、面接に来ていただいた方にも僕らの戦略をとにかく話します。1時間のミーティングであれば30分ぐらい戦略の話をして、その中でどんな仕事があるかというお話をして、次に、そのご本人のキャリアをどうしていきたいかという、キャリアコンサルタントみたいなことをやるわけですね(笑)。

「こっちの道に進みたい」という話があると、僕らのオファーできるいくつかのポジションでいいところと悪いところ、学べるところと活かせるところを話し合って、「じゃあ、このポジションをつけてきてくれないか」というオファーに変えていくようにしていました。

とにかく人はさっさと決めていました。「入りたい」という気持ちのある人は、僕の面接だけで終了ということもありました。今は人が増えてきたので、もう少し長いプロセスにしています。ですから、1回面接に来たら決まっちゃったという人が、たぶん5人ぐらいはいると思います(笑)。

そのくらいきちんと決めてやっていかないと、特に最初の頃は、「カインズ? デジタル? はぁ?」と思われていますから。そこから抜け出すのも大事だと思っています。

転職者も育て上げる覚悟を持って、採用や配置をする

池照:あとは戦略の一部でもあるんですが、長期の成長機会を示していくこと。今はこのステップをやって、次のステップとしてうちの会社でこれをやらないか、というふうに話をしています。

あと、雑な大量採用をしないことを「One to One Hiring」と呼んでいるんですが、(求職者の)キャリアプランを聞いて、こちらからポジションを提案していく。「採ってやるからさ」という態度ではなく、やりたいことと合致している人たちとシェイクハンドしていく感覚なんですよね。

(カインズに)来ていただく時も、その道のプロかもしれないけれども転職のプロではないので、きちんと(育てる覚悟で)採りっぱなしにしない。もう本当に毎日のようにケアしていかないとうまくいかないです。

たくさんの人を採ろうとすると、必ずしも役職上位者だけにはならないんですよね。だって、偉い人はやめるのに時間がかかるじゃないですか。だから、ひとまずは全部兼務するつもりでやっていく覚悟が必要なのかなと思います。

あと大事なこととして、継続的な研修制度を用意したり、将来の成長の道を作ってあげることは、リーダーが心の底から思わなければいけないことだと思うんですね。

転職者でもみんな、2回くらいしか会わないで採ってますから、当然「あれ?」って思うことだってあるわけです。でも、そう思った時にちゃんと育て上げる覚悟を持っているのかがすごく大事かなと。なんか「思ったよりできないよね」と、ぽいっとされたら、やっぱり採られた側も困っちゃうじゃないですか。

ただ、ミスマッチというのは確実にあると思うので、その時は早めに配置転換をしてあげるのもすごく大事かなと思います。

人によっては大きいチームを持つのが得意な人と、職人的に働くのが得意な人がいますし、やっぱり1回、2回の面接じゃわからないことがあります。

任せるチームの大きさも、最初に15人ぐらい任せていて、あまりうまくいかなかった人がいましたが、3人のチームにしたらすごくうまくいくようになったり。規模やスコープを動的にコントロールしてあげる必要があるなと、すごく勉強になりました。

あえて使い勝手が悪いままリリースして、毎日直す

西澤:いわゆるデジタル戦略とやるべきことを決めて、あとは採用だという時に、ベンダーを探そうという会社も多いと思います。

池照さんは、先ほどおっしゃっていたように、まず最初に人材採用にかなりの時間を割いてらっしゃったと思います。あえてそこを自前でやっていこうと思った動機や理由は、どのあたりだったでしょうか。

池照:やっぱりカインズとしても、実験的なことがたくさんあると思うんですよね。トライアンドエラーがいっぱいあるんだろうなと思っていて、実は今みたいな大きな内製組織を作ろうと思って進めていたわけではなかったんです。

例えば、アプリの開発ってすごく変更が多いじゃないですか。お客さまに合わせて変えていかなきゃいけないものはすごくたくさんあって、そこにベンダーさんとのコミュニケーションが存在すると、なかなか前に進まない。

現場の声がベンダーを管理している人を通してベンダーさんに伝わるという、伝書鳩みたいなコミュニティケーションルートができてしまうと、早くは(対応)できないんだろうなと思って、まず小さいアプリのチームを作ったんですよ。

取り置きの仕組みなどをやり始めた時に、Salesforceの開発をしていったんですが、ちょっと教育すると、その開発はまあまあできるようになっていく。今までベンダーマネジメントをしてた社内の人材に、ノーコードやローコードの開発を覚えてもらってやっていくようになっていったんですね。

そうすると、やっぱり店舗とのコミュニケーションをよくするようになって、「これはいいんじゃない」と、彼らがダイレクトにやり始めるようになるわけです。それで内製化組織をどんどん大きくしていった感じですね。

西澤:なるほど。まずは社内でやらせてみて、その環境を整えて成功体験を積ませていくことで、別にベンダーさんにお願いしなくても自分たちでもできちゃうんじゃないか、という成功体験を積み重ねていく。

池照:そうですね。業務をアプリケーションに載せていく方法はたくさんあると思います。例えばローコードとかノーコードを使っていくと、使い勝手が悪くなるんです。実は(最初は)使い勝手が悪いままリリースさせてるんですね。

要は、「要件定義に3ヶ月間かけるんだったら、2週間でとりあえずデータモデルと画面のあるものを出してくれ」と。「さんざん文句言われたものを毎日直してくれ」と。それで2~3週間経つと、とってもいいアプリケーションができるんですよね。

塚本洋氏(以下、塚本):まさにアジャイルですね。

池照:そうなんです。パイロット店舗として5店舗ぐらいに展開するので、そこでの1ヶ月の教育を経て、2ヶ月以内に二百数十店舗に出していくようなことを今進めているんです。

やっぱり、現場の人間も気軽に「ここ、ちょっと気に入らないんだけど」と言える状態だと安心感を持って、仕事自体を進められるかなと思います。

塚本:ありがとうございます。

商売は部下から学び、戦略を部下に共有していく

池照:もう1つが既存人材の初期育成ですかね。僕らは伝統的な小売を40年以上やってきて、システム投資といったことは、ほぼやっていなかった会社です。もちろん基幹系の物流システムはありますけど、それ以外はやっていませんでした。

社内人材の育成と言っても、どちらかというとプロダクトオーナーというか、プロダクトマネージャーというか。そういう人たちにどういうふうに(人材を)育ててもらうのか。既存の人たちは、もちろん目の前のお客さまにきちんと対応をしてきたんだけれども、ともすると今日の売り上げ、明日の売り上げ、1週間後の売り上げという(ことを考えてきています)。

小売はあまりプラットフォームが進化していなかったものですから、将来のプラットフォーム作りには、あまり慣れてはいないんですよね。かといって、できないということはなくて、成長シナリオを作るにはどうしたらいいんだろうかということで、戦略資料の作成を一緒にやりました。

とにかく偉そうにレビュワーにならないというところが大事ですよね。ふむふむというのでは、たぶん人は勉強してくれないです。

アマゾンのPR文がWebなどに載っているので見ていきたいんですが。自分の作ろうとするサービスを広報的に出すとしたら、どんな文章になるんだろうかというのも、ちょっと真似してみたり。

あと、(旧)住友スリーエムのスリーエムさんは、昔からシナリオを書きながら事業を作ってきていました。こういうイメージしやすい手法をいろんなところから調べてきて、取り入れていきました。

完璧ではないと思うんですが、エッセンスだけを入れていく。ただ、これからできてくる論理構成を徹底的に議論していくところのハンズオンがすごく大事だったかなと思います。

ただ教えるにしても、足りないものを劣等感を持たせずに付け加えていくことが、すごく大事なのかなと思います。商売においては僕よりも、圧倒的に僕の部下が先生だったんですね。だから、何が良くないのかは部下に聞く方がわかるし。

ただ、戦略においては(部下が)生徒だったので、さっきも「相手の土俵で相撲をとる」と言いましたが、必ず自分の土俵じゃないところで相撲をとり続けて、会社の雰囲気を変えていくことがすごく大事だと思います。

とにかくしつこいくらいハンズオンをしましたし、僕も世の中にあるフレームワークをすごく勉強しました。「これだったらみんなに伝えられるかな」というのを選んで、植え付けていったというのはあります。

内製化したデジタル組織の開発能力は2倍、コストは15%削減

池照:やっぱり小売で入って小売の仕事をやってきた人たちですから、何年かやったあとに、メインのキャリアパスに戻してあげることはすごく大事かなと思っています。

それは僕ら、デジタル推進する側にとってもすごく大切です。立派なプロダクトオーナーがいるところは、プロジェクトが必ずうまくいく。戦略の理解とか、スキルのある現場の構築ができたり、デジタル改革を民主化していってくれる。

デジタル改革は、一部の人間が一生懸命前に進めている状態では発展性がないので、どんどん民主化して、誰もが共通した考えを持てる組織を作っていかなきゃいけないですね。

あとは育成人材のアメーバ化。そういう(デジタル推進をする)人たちが、うようよと伝播していくような状態で、また新たな人材をハンズオンで育成したり、僕のところに違う人が来て育成していったりすることが大事かなと思います。

教育システムも作っています。エンジニアの人向け、プロダクトオーナー・プロダクトマネージャーの人たち向け、デジタルマーケティング向け、サービスデザイン向け。応用特化型から、オンラインでの広くあまねくという教育を今、200人のチームに提供しています。スポンサーをしてくれている、GoogleさんやSalesforceさんにもご協力をいただいています。

この内製化によって、だいたい今は2年前の2倍ぐらいの開発能力を持っています。コストとしては、15パーセント削減された状態。ある一定規模の量があれば、こういうふうに削減しながら開発能力を持つことは可能なのかなと思います。ただ、やっぱり最初の頃の僕らのような、小さい規模の組織が、もっと存在してるのかなとは思います。

西澤:これはいわゆるオフショア、ベンダーさんにお願いした時の想定のIT費用と、実際に今内製されてる時のコストの比較ですね。

池照:今は内製とオフショアのコンビネーションなんですよ。だから、国内のSIerさんにお願いしてる部分は、ちょっと少なくはなっているんですけれども。だいたい今はオフショアで、優秀なエンジニアで50人ぐらい。あとで、どういうふうにチーミングしてるかもお話しできればなと思っています。

「チームの型」をどう作るかで、生産性が大きく変わる

塚本:これは従来の、SIerさんなどに完全にアウトソーシングされてた時とのコスト比率ですよね。

池照:上が成り行きのシナリオです。

西澤:15%削減で2倍の能力。

塚本:2倍のほうがはるかにインパクトありますよね(笑)。

池照:そうですね、やっぱり開発能力を高めたいなと思ったんです。今までやってきた仕事って、僕らもある意味、普通のことをやってきたんですよね。でも、もっと考えなきゃいけないのは、これから人口が減少していってリテールが苦しくなるだろうし、経済が苦しくなっていくと思うんです。

そういう中で、リテールがどうやって生き残っていくのかという、新しいモデルを考えていかなきゃいけなかったり。10年後に向けてやらなきゃいけないことって、たくさんあるんですよね。

塚本:単純に内製したら2倍になるわけじゃなくて、こういう組織だから2倍になった、こういうチームだから2倍になったというのは、やっぱりポイントがあると思います。2倍にするうえで一番大事なのは、どういうものになるんですか?

池照:やっぱり、一つひとつのスクラムチームが機能していくことだと思うんですね。かつ、その上側を見ているいくつかのファンクション、イノベーションを見ていく人や全体アーキテクチャをコントロールしていく人たちがすごく大事になってくると思います。チームの型をどう作るかで、生産性がずいぶん変わってくるかなと思います。

塚本:僕の好きな言葉ですけど、「スクラム」とか、アジャイルの開発手法の1つですよね。それがうまく浸透したチームの生産性がどんどん上がっていくみたいな。良いチームを作るようなところですか。

池照:チームも最初から全部、自分のところではできないと思うんですよ。僕らもいろんなところから教わりました。この部分はこの会社から教えてもらおうとか。いろんな会社から教えてもらって、まずはそのままやってみよう。それで、不具合が出るんだったら、僕らの中で直していこうよということを続けた2年半だったかなと思います。

塚本:あと「これって将来的にこれだけ削減できるよね」とか、開発力が上がっていくというのは、まさにIT企業だからこそできるような、腹をくくった内製化だと思うんですよね。やっぱり何かDXの施策があって、それに対して開発予算がついて……となっちゃうと、なかなか腹をくくって採用したり育成していけない。長期的な視点を入れたことがいいなと思うんですよね。

池照:変化の大きい時期だからこそ、長期の読みが大事になっていくんだと思うんですね。特にチームを作り直していくのは、人の採用も固定資産投資もあるし、事業の計画自体をきちんと10年周期とかでどうなってるんだろうということは、相当想像しなきゃいけないですけど。でも、その中でとにかく「こっちに向かってるんだろう」という絵を持つことは、すごく大事だと思います。

デジタルチームを内製で立ち上げる時のポイント

塚本:わかりました。ちなみに今、Q&Aで質問が来ているので、「採用の時に一番大切にした基準」があれば(教えてください)。

池照:「いいやつ」(笑)。

塚本:コアバリューとか人間性みたいなものですかね。

池照:必要となるスキルはどんどん変わっていくんですよね。言語もコードも変わっていくし。でも、そこで必ず成功している人は、素直で人の意見を聞けて、さらに努力ができて、新しいものを自分で覚えていける。「学び力」の源泉は、素直であることだと思うんです。自分は「まだまだこれからだ」と、謙虚であることはすごく大事なのかなと思います。

塚本:なるほどですね。わかりました、ありがとうございます。

池照:次に、立ち上げにおける重要ポイントとして、僕なりに「こうだったのかな?」と思うものを挙げさせていただきます。チームの立ち上げの時に、想定でもいいので、あるべきアーキテクチャをきちんと設計していくこと。そして、作りやすい環境を提供していくことが大事かなと思います。

僕らはAPIや小さなプログラム単位を部品庫として、再利用性を担保しようと決めました。これはもう最初に決めています。そして、ローコードの開発ツールを入れることも決めました。なぜかというと、ベンダー管理をしている人たちにも、エンジニアになってほしかったんです(笑)。「ベンダー管理からモノ作りへ」という姿になってほしかった。

あとはクラウドの有効活用。RDS(クラウド内でデータベースのセットアップや運用、およびスケールが行えるマネージド型サービス)とかEC2(アマゾンがAWS上で提供している機能の1つで、仮想サーバを構築できるサービス)は、そもそもAmazonが提唱してるものではないんですね。

もっとLambda(サーバーレスでプログラムを実行できる環境を提供するAWSのサービス)を使ったり、そういうものを技術的にもきちんと入れていく。しっかりとした作り方の骨格があると、エンジニアも立ち上がりやすくなっていきます。だから「テクノロジースタック」をあまり分散させすぎないのがすごく大事ですよね。

あとは新入人材の戦力化ということで、レベルの見極めと最初の開発プロジェクトの選定。当然みなさん、「できる」「できる」と言って入ってきますけれども、それは個人の評価じゃないですか。相対的にどうなのかをきちんと見てあげて、「自分で思ってるほどじゃないな」という方も当然います。だったらやりやすいプロジェクトに入れてあげて、そこから勉強していく機会を持つということだと思います。

最初の数プロダクトは僕が設計に入り、求める作り方をしつこく伝えているという(笑)。最初の半年ぐらいは、しつこいくらいのハンズオンをやってますよね。開発側でもフレームワークの対応はすごくしています。

「10年後に求められるリテールストア」とは

池照:あとは、作り方のフレームワーク化がすごく大事だったかなと思います。盗めるものを貪欲に盗むために、いろんな企業のやり方を勉強しています。

例えばSalesforceの開発の仕方やデプロイの仕方は、テラスカイさんのCoEサービス(社内のさまざまなITプロジェクトにおいて得られた知見やベストプラクティスを、他のプロジェクトに適用する役割を持つ仕組み)というものを使っていました。スクラムチームに関しては、TATAさんのアジャイルフレームワークを使ってますし。

APIの管理では、MuleSoftのC4E(テクノロジーとビジネス戦略を連携させるために横断的な部門によって編成され、ITの生産性とプロジェクトのROIの向上を促進するチーム)を使っています。こういう、僕らが持ってないものは人に聞いちゃえばいい(笑)。それで、もっと自分たちなりに良くできるんだったら変えていけばいいと考えています。

チームとしては今、TATAさんという海外のスクラムチームを参考にして構成しています。この1個1個のところに人を当て込んでいくんですが、最初から全部、海外と日本も1チームで動くような状態を自前で作れたかというと、そんなことはないんですよね。

イノベーションチャンピオンに来てもらったり、アジャイルコーチに来てもらったり。アーキテクチャは僕と一緒にディスカッションする人がいたり。そういう人たちでチームを立ち上げていって、人が入ってきたら自前のリソースにリプレイスしていくようなことを繰り返して、今のチームができています。

このようなチームをもって、今後のリテールストアを再定義していきたいなと思っています。カインズでは今、「Vision 2030」というものを作って、10年後に求められる店の姿は一体何なんだろうということを検討している最中です。

「会社の進化のために」というのは、僕が僕なりにいろいろ勉強してきたものの中で、大事だったかなというものです。

戦略論としては、古いんですが『戦略プロフェッショナル』、『V字回復の経営』。元ボスの三枝匡さんの本なんですけれども(笑)。こういったものと、『ザ・ゴール』といった、制約条件のコントロール。これは漫画版もあるので、ぜひ読んでいただければなと思います。

リーダーシップ論に関しては、Amazonの『Leadership Principles』。こういうものを啓蒙している、アマゾンのみなさんをつかまえて教えていただいたり(笑)。あとは、今から5~6年前に別の会社にいた時に、Googleのエグゼクティブフォーラムがあって、シリコンバレーに招待していただいたことがあったんですね。

その時に、「『最高のマネージャー』に求める10の資質」を一つひとつ教えてもらいました。こういうものはやっぱり言語化がすごく上手にできているので、参考にしてやってきてはいます。

その他、エンジニアじゃないからといってアーキテクチャを勉強しちゃいけないわけではありません。おそらく両方とも知っていることがすごく大事だと思いますので、ビジネス側の人もある程度の仕組みは勉強していく必要があるかなと思います。以上です。