2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
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加藤実紗子氏(以下、加藤):それではお時間になりましたので、始めさせていただきます。みなさんこんにちは。ただいまより「現役産業医の著者に聞く、対人関係の悩みを解消するメンタルハックとは?」と題したランチタイムセミナーを開催いたします。
本日司会兼進行役を担当します、日本能率協会マネジメントセンターの加藤と申します。どうぞよろしくお願いします。今回の書籍では編集者も務めました。今日は井上さんにいろいろお話をうかがいたいと思っています。
『「あの人がいるだけで会社がしんどい……」がラクになる 職場のめんどくさい人から自分を守る心理学』(日本能率協会マネジメントセンター )
本日は3日前(2021年12月21日)に刊行されたばかりの書籍『職場のめんどくさい人から自分を守る心理学』の著者である井上智介先生をお招きしております。井上さんは精神科医の傍ら、産業医として毎月30社以上の企業を訪問され、職場の人間関係の悩みを抱える約1万人以上の方々と向き合ってこられました。
本日のセミナーでは、井上先生のご経験をもとに、人間関係の基本を押さえつつ、ニューノーマル時代の新たな悩みにも対応した、仕事の人間関係を楽にするポイントを解説していただきたいと思います。 それでは井上先生、よろしくお願いします。
井上智介氏(以下、井上):よろしくお願いします。精神科医で産業医の井上智介と申します。軽く自己紹介をさせてもらおうかなと思うんですけども、現在、大阪を中心に活動しています。「精神科医」はみなさんもイメージが付くのではないかなと思います。病院、クリニックで、何か精神的な症状のある方に治療するという役割を担っております。
もう1つが「産業医」という役割で、だいたい今40社近くを毎月訪問させていただいて、従業員の方のメンタルのケアだったり、心の在り方だったり、予防の側面も含めて取り扱っています。
その中でも、どうしても「職場の中での人間関係」の悩みがすごく多いなと思いましたので、今回こちらの書籍を出版させていただきました。よろしくお願いします。
加藤:ありがとうございます。お話しいただいたとおり、職場の人間関係で悩んでいらっしゃる方がすごく多いなと私も思っていまして。
実はかくいう私も、これまでとてもいろいろなことがありまして。井上先生だったらいろいろ答えてくれるのではないかなという思いもあって、この企画が実現しているという背景があります。
今日ご参加いただいているみなさんも私も、悩みに共感するところもあると思いますし、当事者としていろいろ私も参考にさせていただきたいなと思っております(笑)。
参加者のみなさんから事前にたくさんの質問をいただいていまして、井上さんもできるだけ質問にお答えしていきたいとおっしゃってくださっていますので、今日はご質問にどんどん答えていくかたちで進めたいと思います。
お話を聞いている中で、こういうことも聞いてみたいとか、事前に質問できなかったんだけど悩んでいるんだよねということがありましたら、チャットでご質問ください。そちらからもできるだけお答えしていきたいなと思いますので、ぜひ積極的にご参加いただければと思います。
ここから本題に入っていきたいんですけれども、質問の中で、対人関係の悩みを解決する秘策というか、まずどんな心構えで望めばいいのかという質問が多かったんですけれども。そのあたりからお話を始めていただいてもよろしいですか?
井上:ありがとうございます。そうですね。「対人関係」にもいろんな関係性があると思うんですけれども、職場の関係性は、すぐに離れられないというのが大きな問題点かなと思います。
友だちであれば、一方的にと言ったら大げさですけど、縁を切ることもできますが、隣に座っている職場の人となるとそうはいかなかったりするのが、一番大変なことかなと思います。それ故に悩みの種になりやすいのが、人間関係なんだろうなと思うんですけれども。
井上:やっぱり僕たちは「自分の力でどうすることもできないもの」に非常にストレスを抱えていまして、代表例として「他人」というものがあります。
それが人間関係につながっていくんですけれども、どうやってうまく人間関係を作っていくかというと、「他人」はどうすることもできないからこそ、自分自身がどう向き合うか、どう捉えるかが解決のヒントになってくるんですよね。
相手を変えることができないなら、自分がどうするかという視点は持ってほしいなと思っていまして。それでも、その中で自分ができることは限られているというのが、実際なんですね。
ただ、人間関係の悩みを多く抱えている方は、自分で何も防御の行動ができないパターンの人が多いなと思います。ずっとダメージを受け続けて、その結果人間関係に苦しんでいるところが大きいので、何かしら1歩でも2歩でも動くというのが、まず大きな心構えとして必要なことです。
人とうまくやっていくのが大事とか、同僚からあまり嫌われたくないといった価値観はみんなあると思うんです。もしかしたらそれ(自分から行動すること)によってそういった価値観が崩れることはあると思うんですけれども、そういったものを失ってでも自分から動いていただきたい。
人間関係で自分の心を傷つけてしまうのは間違っていますので、そうならないために自分がどう動くかというところが、まずはすごく大事なことです。書籍の中ではいろいろなケースを想定して具体的に書かせてもらっています。今回は具体的な質問もけっこうあるのかなと思うので、そのあたりも答えていきたいなと思います。
加藤:ありがとうございます。確かに、一方的にやられているのは本当に心が優しい方が多いと思います。我慢しなきゃいけないんじゃないか、相手が傷付いちゃうんじゃないかということを考えて、なかなか行動できない方が多いと思うんですけれども。そういう方でもほんのちょっとの心掛けで変わるというコツを、今回の新刊にはたくさん書いていただいているので、もし興味のある方は見ていただければと思います。
上司のアドバイスも聞かず、自己中心的な社員への接し方について、その人の発言・態度によってチーム内の雰囲気が悪くなってしまっており、この様子を側から見ていても非常に気分悪いです。このような自己主張ばかりで利他の精神がない人から周囲が悪い影響を受けないで済む方法を知りたいです。
井上:確かにチームでやっていると余計に(気になりますよね)。空気の読めない発言や振る舞いをしてしまう人は、何かしら心理的な背景があるのかもしれませんけど、そういう人はいるよなと僕も思います。
そういった人とどう向き合っていくかという話なんですけども、やっぱりチームでやっている以上、しかもこの質問されている方だけじゃなく、周りの人も同じような思いをされている感じなので、チームとして向き合っていく必要がありますよね。
特に、ちょっと問題な発言をされる方の上司もそこにいると思うんです。その場所にいなくても、上司や上席の役割の人がいると思うんですけど、やはりその人に何かしら相談をしなきゃいけないと思うんですね。
ただ最初にお話したように、「チクってる」とか「告げ口じゃないか」というように、それをすごく嫌がる方が多いですよね。さっき言ったように、ちょっとした価値観だったりを、相手への期待値を含めて変えていかないといけない。このままずっと何もしなかったら、たぶん我慢のままで終わってしまうと思うんですよ。
井上:告げ口に関しても、どこまで自分の感情で話すのか、ちゃんと論理立てて話すのかによって、伝わり方はぜんぜん違います。「あの人、空気読めない発言ばっかりしててすごく不満なんですけど」だと、たぶんピンと来ないというか、上司の人も「それぐらいあるよ」で終わってしまうことでしょう。
やはりある程度、証拠と言ったらちょっと大袈裟かもしれませんけど、具体的にこういうことがあって、こう悩んでいるという、ロジカルな説明が求められるかなと思うんですね。
決して告げ口ではなく、そこをちゃんと提示した上での相談というかたちで、周りのチームが困っているとお伝えすることによって、少しでも「その人の発言が間違っているんだな」と(上司に気づいてもらう)。これは上の人がちゃんと注意しなきゃいけないところなので、チームメンバーがどうこうするのは、逆にやめたほうがいいかなと考えております。
加藤:ありがとうございます。ちょっとどうなのかなという人に対しては、自分が何かアクションしたり、メンバー同士で何かするというよりは、感情的な悪口にならないように、上司に相談するのが重要なんですね。
井上:そこで憂さ晴らしじゃないですけど、不満を言うだけだとたぶん伝わらないというか、下手したら質問されている方が「愚痴を言っている人だ」となってしまうので。
やはりロジカルなところは非常に必要です。こういう時こんな発言をされてみんなの士気が下がったとか、ちゃんとしたエビデンスがあった上でお話すると伝わりやすいですし。
「さすがにそれはちょっと注意せなあかんな」と、上司の人をいかに思わせるかというところが大事なので、証拠を集めるのは大事な考え方だと思います。ぜひトライしていただきたいなと考えています。
加藤:ありがとうございます。そういう意味では、チームのメンバーにヒアリングしていくといいですね。思い込みで「みんなもそう思っているはずだ」ではなくて、ちゃんと声を聞いて、「みんなもそう思っていて、チーム内でもそういう意見が多数なんです」という「報告」にすることですね。
井上:そこはすごい大事で、チームの意見として出すわけです。自分1人の告げ口となると、責任を全部負っちゃっているイメージがあると思うんです。
もうちょっと主語を「チーム全体が」と大きくして、本当は必要はないんですけど責任感を少しでもぼやかすことはできますので、そういった守り方をしながら伝えていけたらいいんじゃないかなと思います。
加藤:ありがとうございます。チャットで「対応ルートを間違えないこと。感情的にならないこと。実害を伝えることが大切ってことですね」といただいていますが、まさにそうですね。
井上:そうですね。ありがとうございます。
加藤:せっかく勇気を出したのに変に受け取られるのが一番嫌ですもんね。
井上:質問した側が「文句ばっかり言うやつだ」とは一番なりたくないですよね。それは確かにみんななりたくないし、だからさっき言ったように、ちゃんとした理由が必要だということですね。
加藤:ありがとうございます。
職場の嫌な人と平穏に接する方法
井上:こういう悩み、大雑把かもしれませんけどみんな思っていることじゃないかなと思いました。ただ、みんな思ってはいると思うんですけど、正直、「平穏に過ごそう」と思っているのが間違いだと言ったら失礼ですけど……。
加藤:(笑)。
井上:うまくいかないもんです。人間というのはそんなもんで、嫌いな感情やネガティブな感情は非常に引きが強いので、自分がいったんもう嫌だと思ったものは、それを切り替えてフラットに見るには、めちゃくちゃなエネルギーがいるという話です。
基本的にまず「穏やかに過ごそう」と考えるのではなくて、どっちかというと嫌なら嫌でぜんぜん構いません。「仕事上トラブルがないようにだけすればいい」という考えでいてほしいなと思うんですよ。
接点を減らしていくのはすごく大事な考え方です。少しでも穏やかにするためにちょっと雑談をしてみたりとか、逆にがんばる人が多いんですよね。それで少しでもその環境に慣れていけたらとなるんですけど。
でも嫌なものは嫌で、その時はみんな震えているというか、緊張している状態なので、決していい慣らし方でもないし、ほとんど慣らせないんですよね。
なので、基本的にはもう嫌いは嫌いでいいので、仕事上ミスコミュニケーションだけ起きないようにだけ注意して、雑談もする必要もないです。業務上のやりとりはうまくいけばいいという割り切りもすごく大事で、接触を減らすためにメールでのやりとりを増やすというやり方もあります。
井上:対面ばかりがコミュニケーションではありませんし、オンラインを使うのももちろんありです。メールとかチャットツールを使ってのコミュニケーションをしながらやってみるのもありなので、敢えて穏やかに過ごそうと思うのではなく、できるだけ接しないように、その人のことが嫌いな自分はそのまま受け入れてほしいなと思います。
加藤:そういう自分を受け止めていいというのは、すごくありがたいです(笑)。
井上:なかなか嫌いなものを好きになっていくのは難しい話ですから、それで大丈夫です。
加藤:この企画自体も、実は同じところから出発していまして。この本を私が企画した時のもともとのタイトルは、『職場のめんどくさい人とうまく付き合う心理学』だったんですよね(笑)。
井上:そうでしたね(笑)。
加藤:それを持っていったら、「いやいや、そもそもうまく付き合おうとすること自体が間違いです」と言われて、「え!」というところから本の取材が始まっているという裏話があるので、この質問をくださった方の気持ち、私はとてもよくわかります(笑)。
そのがんばりの気持ちはとても素敵なことではあるんですけども、そうやって何とかうまくやろうとすることで傷付いてしまう可能性も高いですもんね。
井上:そうですね。すごく優しい人なんだろうなと思うし、真面目な人なんだなと思うんですけど、僕が見る限り、それで結果うまくやれた人はほとんどいなくて。
その結果、エネルギーを使い果たしちゃう人のほうを僕はたくさん見ているので、それが最適解とはどうしても思えなくて。それだったら自分を守る方向に入ったほうがよくて、嫌いなものは嫌いという、自分の気持ちをちゃんと大事にしてほしいなと思います。
加藤:そうですね。今チャットで、「ネガティブになったっていいというのは救われます」と書いてくださっていて。確かに、人を嫌ってしまう自分に自己嫌悪してしまう人もいますよね。私もそういうところがあって、「嫌な人だと思いたくない」という気持ちはありますけどね(笑)。
井上:それもたぶん価値観としてみんなあるもので、人をあまり嫌っちゃいけないし、職場の人とみんなと仲良くしないといけないというのがあると思うんです。でもやはりそこが邪魔しちゃうと思うんです。
人間関係をうまくやるコツで、「自分の価値観をいかに崩していくか」は大事なところですので、そこを意識しながらみなさんも過ごしてほしいなと思います。
加藤:ありがとうございます。価値観の話が出たので、さっきの話の中で補足したいところがあったんですけど、「仲良くしなくてもいい」というのと、「業務がちゃんと円滑に運べばいい」というのがポイントだなと私は思っていまして。
嫌いになるというと「NO」のイメージをされる方が多いんですけれども、NOと仲良し・大好きの間に、「コミュニケーションはちゃんと取っているけど、とっても仲良しなわけでも、とってもネガティブなわけでもない」という関係性があることが、この本で伝えているポイントかなと思うんです。そのあたり話していただいてもいいですか?
井上:人間関係はグラデーションがありますので、好き・嫌いの2択ではなくて、やっぱりその中間がいくらでもあるなと思うんですよね。
悩んでいる人は、2択とは言いませんけど、かなり選択肢の数が少ない。人を嫌うのは駄目だという価値観を持っていたりすると、さっき言ったように嫌な人でもちょっとでもフラットにしよう、仲良くしよう、うまくやっていこうという方向に振り切っちゃう人が多いんです。
でもそうじゃなくて、みなさんは職場に仕事をしに行っているわけですから。基本的に仕事がスムーズに回れば合格点なので、そこさえ問題なければ心配はいらないです。
コミュニケーションを取る回数だったり質だったりを、仲のいい友だちと同じようにする必要はありません。もちろん本当に仲のいい円満な温かい職場も理想だと思うんですけども、一人ひとり、みんながみんなそうではないということですね。自分にとって苦手な人にまで、わざわざそんな環境や空気感を作る必要はなくて。
自分を守る。エネルギーの不足になったり、心が傷付いたりするのを防ぐというのを第一にやっていただくことが、持続可能な働き方ですよ。
加藤:SDGsですね(笑)。
井上:僕はそう言っているので、みなさんも持続可能な働き方を大事にしていただきたいですね。
加藤:ありがとうございます。
加藤:今、ちょうどチャットに「井上先生の本を読んで、休職する勇気が出ました。ありがとうございます。本を参考に産業医さんにも相談したんですが、私の話を聞いて『クリニックの指示に従ってください』だけの対応で、井上先生のような産業医さんはなかなかいないのだなと思いました」と。こういう声があると、本の価値を感じますね。
井上:いやぁ、気持ちがいいですね。ありがとうございます(笑)。
加藤:(笑)。
井上:そう言うていただけると気持ちがいいな。
加藤:爆笑してしまいましたけど。
井上:質問者さん、ありがとうございます。そう言っていただけると心地が良いですね(笑)。
加藤:涙が出ちゃった(笑)。ちょっと笑いすぎた(笑)。
井上:いやぁ、正直に生きたいじゃないですか。そう言っていただけるとうれしいなと思います。
でも確かに産業医っていろんな先生がいるので、あまり乗り気じゃない先生もいるんだなと、僕も知ってはいます。そういう先生はいますし、当たり外れって正直あると思います。それはどこの病院に行ってもそうだし、上司もそうだと思うんですよね。
当たり外れがある中で、いかに自分が振る舞うかはすごい大事だし、そのためにいろんな選択肢があるということを、事前に知識として知っておくのもすごく大事なことだと思っているので。こういった本をしっかり読みながら、「あ、こういう方法あるんだ」とぜひ学んでいただけたらうれしいです。
加藤:ありがとうございます。「会社には働きに行っているだけだと割り切るのも大切ですね」「持続可能な働き方、いい言葉ですね」とコメントにきていますね(笑)。本当にそのとおりです。自分の行動にいろんな選択肢があることを学ぶのも、すごく大切なことですよね。
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