2024.11.25
「能動的サイバー防御」時代の幕開け 重要インフラ企業が知るべき法的課題と脅威インテリジェンス活用戦略
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若宮和男氏(以下、若宮):パッションエコノミーとか、今はいろいろグローバルでも言われていることがあると思うんですが、その大きな視点から尾原さんにもお話いただけるといいかなと思います。
尾原和啓氏(以下、尾原):今の「夢中は努力に勝てない」みたいな話。例えば今、Clubhouseがちょっと盛り上がって過疎って、それでもTwitterからの時価総額3,500億円の提案を蹴った、という話がありますけど。「パッションエコノミー」という話があってですね。
これ、Clubhouseに投資しているアンドリーセン・ホロウィッツが言ってるんですけれども。要は、正直もう機能は深センに勝てないワケですよね。4年ぐらい前からベイエリア・シリコンバレーでは、「Kickstarterの悲劇」ということが言われていて。
結局、Kickstarterでどんなに良いアイデアを出したとしても、もうその1週間後には深センで、機能としては8割ぐらいかもしれないけれども、半額ぐらいで同じものが開発されています。しかも今、深センからシリコンバレーって3日で商品が届くので。そうするともう、Kickstarterでハードで素晴らしいコンセプトを出しても、機能だけだったらパクられて終わっちゃうんですね。
それに対して、コピーできないものって何かというと「夢中」というパッションです。「この機能を買いたい」じゃなくて「この人から買いたい」というエコノミーが、次の未来にくるんじゃないか……という話を、2年ぐらい前にアンドリーセン・ホロウィッツが言っていて。
そうやって、パッションとパッションをつないでいくようなプラットフォームができるんじゃないか、みたいなことを予言していました。まさに今の秋元さんがやられてる事業は、このパッションエコノミーの事業体の1つですよね。
尾原:とはいえ日本の場合って、B2Bはまだ“不”がいっぱいあるから。“不を丁寧に取り除いていく機能”を積み上げていくタイプの起業もたくさんあるとは思うんですが、人って結局、機能価値にお金を払っているのか、感情価値にお金を払っているのか。「何にお金を払っているんですか?」というお話をしていくことって、すごく大事だと思っています。
例えばTシャツって、ユニクロで高品質なものが1,000円とかで買えるワケじゃないですか。でも僕はもう50歳で古い人間なので、やっぱりミック・ジャガーのTシャツとかには1万円払ったりするワケですよね。
それって、9,000円はミック・ジャガーの生き方を自分に乗り移らせるために払っていたり、ないしはそのTシャツを着ていることで、フェスとかに行くと「おっ、お前もファンか」みたいな話で出会うという、その出会いの価値に払っていたり。
機能価値にお金を払う競争ってヘトヘトになりやすくて、感情価値やパッション価値、夢中価値に払うものは、やっぱり1on1になりやすい。こういうのは、山口周さんが「『役に立つ』から『意味がある』へ」という言い方でやっていくところでもあったりしますよね。
秋元里奈氏:若宮さんの『ハウ・トゥ アート・シンキング』も読ませていただいたんですけど、その中でも「自分らしさを」みたいな話があったと思うんです。そこもすごく近いですよね。結局、真似できない価値を作っていくっていう。
若宮:そうですね。僕、出たばっかりの尾原さんの『ダブルハーベスト』も読ませていただいて。
尾原:ありがとうございます(笑)。
若宮:「ユニークバリュープロポジション」という話が、アート思考的なところにもめちゃくちゃ近いし、それをAIに対して言っているのは超おもしろいなと思ったんですけど。僕の用語だと「『新しさ』より『らしさ』」っていうのを言っていて。
要は、新規事業って“新しさの価値”で作るんですけど、それってデジタル世界だとすぐコピーをされちゃうので。みんな真似してくるから、新しさだけの価値だとすぐ陳腐化しちゃうんですけど、そこに偏愛とか夢中・パッションみたいなもので偏っていると、コピーできないというか。コピーしにきても、1歩先をずっと走り続けられることがあるなと思っていて。
例えば、秋元さんの本のエピソードで好きだったのは、農家の人が「ITの人がいっぱい来るから断ろう」と思っていたら、農園に行った時に(秋元氏が)「前に来た時、この辺にとうもろこし生えてましたよね」と言って。覚えていることに感動してしまって、それを聞いた時に一緒に走ろうと決めた……というがあって。これって「農業ってこれから儲かるよね」というビジネスアイディアから始めてる人には見えない景色だと思っていて。
「いびつさ」という言い方をしてるんですが、正解がない時代、正解の反対って今までは不正解だったんですけど、不正解の「不正」という言葉を1個にギュッてすると「歪」という言葉になる。ほかにコピーできないものは、この「いびつさ」だと思ってるんです。たぶん、「いびつさ」という偏愛を持っている人にしか見えない景色はあると思うんですよね、とうもろこしの例とか。
しかもそれをやる時に、みんなが諦めちゃうところでも、その熱量でどうにかこうにか続けていく。起業家はほとんど否定されまくりながらいくので(笑)、普通は辞めちゃうところも越えて、さらにそれを成功するまで執拗に続ける。この“いびつな熱量の掛け算”で生まれていったものが、コピーできないものになると思っています。
だからとうもろこしの例とかも、ロジカルに説明してどうこうじゃないんだけど、そういうものにものすごく人が引き寄せられてくるし、コピーできないです。その人らしい“いびつさ”のほうにどんどん行くから「食べチョク」と事業モデルが一緒でも、コピーできないっていう。
尾原:そうなんですよね。実際にAIが進んでいくことで、むしろアートとパッション、今日のテーマで言うと「偏愛と夢中」の話が大事になる。実は『アフターデジタル』ってパクリ本で、もともと、Googleのチャイナのトップになるカイフー・リー(李開復)さんという人が言ったOMO(オンラインとオフラインが併合した社会)の話を、僕たちが日本向けに書き直しただけなんですけど。
彼が3年前のTEDで「AIによって、むしろ私たちは人間らしさを取り戻せる」という話をしてるんですね。この時、僕もTEDに参加して、カイフー・リーと久しぶりに話したんです。結局、AIっていうのは、何回も繰り返すような問題には強いんですが、少数のデータを使ったものには弱いワケですね。
じゃあこの少数なものの中に力を発揮することって何か? というと、やっぱりアート思考みたいな話で。ないしは秋元さんみたいに「生産者さんに貢献したい」という思い。
そうなった時に「AIに置き換わらない仕事って何なのか」という話を、カイフー・リーは2軸に分けて言うんですよ。1つが、さっき言ったクリエイティブな軸ですね。ルーティンワークなのか、少数のデータからやるクリエイティブな決断なのか。
尾原:あともう1個大事なのが、コンパッションの軸だと言っているんです。英語でCompassionって、日本語だと「共感」と訳しちゃうんですが、正確に訳すと「accompany with passion」なんですね。つまり「情熱に寄り添う」。だから人って、なにか新しいことを始める時や行動をする時に、やっぱり「Skill」よりも「Will」のほうが大事になってきて。
「彼が言ってくれるから私はやる」「彼が寄り添ってくれたからできる」「彼女が背中を押してくれたから私は変われた」みたいなことが大事で。結局、AIって誰がやったって同じような仕事と、ルーティンワークの仕事は変えていける。
だけれども、コンパッションが必要かつ、少数のデータの中から意思決定しなきゃいけないものだけは、AIに置き換えられない。だからやっぱり、コンパッションなのかどうなのか、クリエイティブなのかどうなのかっていうところでやっていかないと。
ディー・エヌ・エーみたいに「5年ぐらい勝ち抜けて、時価総額を貯めりゃいいや」みたいな会社だったら別にいいですが、そうじゃなくて「10〜20年先まで、1つのやりたいことでお客様を支えていきたい」という話になったら、そこは20年がかりでAIとの競争になってくるので。
やっぱりそこは考えていったほうがいいのかなということで、今回の(テーマの)「偏愛と夢中」は、3年ぐらい前にTEDでも言われているぐらい、重要なテーマなんだなと思いますよね。
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