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特別対談「伝える×伝える」 ~1on1で伝えること、伝わること~(全6記事)

今までの1on1は「上司のための時間」になりがちだった “ただの面談”で終わらせない、部下との対話を深めるポイント

一般社団法人プレゼンテーション協会が開催する、特別対談「伝える×伝える」シリーズ。今回は1on1コミュニケーションの専門家である世古詞一氏をゲストに迎え、1on1での上司と部下の対話がうまくいくコツ・実例などを語りました。2記事目となる本記事では、「従来の面談」と「1on1」の目的の違いなどを解説します。

1on1の頻度は「最低月1回以上」を推奨

世古詞一氏:「1on1って何?」という話なんですが、まず「上司・部下」という点。1対1で誰と話しても1on1なんですが、一応メインどころは上司・部下としています。

特徴を2つ挙げると、まず頻度は高めだよと言ってるんですが、私は最低月1回以上と言っています。週次でやってるところや月2回のところもありますが、今までの面談が年2回とか、多くて4回ぐらいだったのに対して月1以上。定期的だということがけっこう大事です。

不定期に「ちょっといい?」というふうにやるのは、やっぱり用事がある話、コトの話なんですよね。なので、まずは定期的にやる。このためにはスケジューリングをしなきゃいけないんですね。

例えば、最初に「こういう目的で、第4月曜日の朝10時から10時半ね」と決めたら、ここは無機質にスケジュールを入れちゃう。半年先、1年先まで労力をかけないということですね。繰り返し予定で入れてしまう。これをしないと、なかなか定期的に行えないところがあります。

もう1つが「メンバーのための時間」というふうに言ってるんですが、これがありそうで実はなかった時間だったんじゃないかと。逆に言うと、今までの1対1の対話は上司のための時間だったんじゃないかってことなんです。

「部下にとっての目的」というふうに位置付けてますが、今までの面談は上司のための時間だと言ってるのは、目標設定をしたり評価査定を行ったり、上司が役割としてやらなきゃいけないことですよね。

部下から話を聞いて、何かを書いて人事や経営に出すとか、進捗を確認して次の会議に出すとか。あるいは指摘管理で「ちょっといい?」と呼び出して、「こういうことをされちゃ困るんだよね」と、上司が指導しなきゃいけない。

あるいは短期的な成果。目先の案件ベースの話について、上司が思いついたアドバイスとかをしていくということですよね。これは上司側が主体です。

「従来の面談」と「1on1」の目的の違い

一方で1on1は目的を5つ挙げてます。「for部下」と、部下にとってはこういう目的なんですよということを言ってるんですが、1つは信頼関係作り。お互いのことを知っていきましょうってことですね。(1on1導入の)最初の目的として、こういうところが多い会社さんも多かったと思います。

信頼関係をとにかく広く知っていく。「仕事以外でもそういう活動をされてるんですね」とか、知らないことを知れていく。あるいは「この業務、こういう思いでやってたんですね」という、考え方や価値観レベルで深く知れていく。広く深く知れていくことで、相互理解が広がって信頼関係につながるよということですね。

ただ、この手の信頼関係自体を目的にした対話ってちょっと浅くなりがちなんですよね。だから雑談みたいな話になって、2回目、3回目ぐらいはいいんですが、「これ、意味あるんですか?」みたいになりがちです。

そういうところで「中長期の成果」と言っていますが、業界の雑談とか、最新の技術の話とか、雑談もいろんな雑談があります。

「最近こういう記事を見ました?」「あれ、うちでどうやって取り入れられるんですかねぇ」とか。「今、使っている自社の商品、サービス、製品の2年後、3年後、5年後はどうなってくといいんでしょうね?」とか。中長期の成果について、クリエイティブな話、クリエイティブなディスカッションができるような時間にしていくといいんじゃないかと思います。

シニアの方や中堅以上の人から、持っている知見を引き出していく。そういうことに使っていくといいんじゃないかということですね。

若手の人は特に成長促進とか、ことさら成長にフォーカスされている時間にする。この1ヶ月を振り返って、業務を通じてどんな成長があったか、どんなことが学べたか、得られたか。

あとは「モチベーションのケア」と言っていますが、「モチベーションアップ」までいくとお互いにプレッシャーがかかるので、ちょっともやもやしてることを解消していく。

部下側の視点に立つと、プロとして自分がもやもやと思っていることを、上司を活用してちょっとクリアにしてスッキリして、業務に集中できる環境を作っていく。あとは、心身の面でもお互い確認していく。

なんとなく雑談しちゃう……意味のある対話をするには?

最後に5つ目は「働きがい向上」と言ってます。そもそも「働きがい」とは何か? という話もありますが、ここでは、部下やメンバー的には、どうしても目先の現場の案件の話に目がいきがちなので、特にチームや組織の話をしていく。

今、自分がやってることが組織にどういう影響を与えているか、方針に合っているか、どういう貢献をしているかが見えてくると、働きがいにもつながるんじゃないかということです。

上司もそうですし、メンバー側も目的がいろいろとある中で、この時間はどういう目的につながるような話ができていくといいのかを、最初にちょっと考えてほしいということです。

例えば「成長につながる話がいいですね」なんていうことを決めたら、次に「じゃあ、具体的にどういうテーマで話をしていくか」を一緒に考えてみる。「こういう目的、中長期の目的」につながるような、具体的なテーマをいろいろと洗い出す。

具体的なテーマのイメージがお互いに持てていないケースが多くあって、だからなんとなく雑談しちゃう、みたいな話になりがちなんです。なので、まず1回目は「テーマの洗い出し」をテーマにしてみることをすごくおすすめしてます。「こういう話もできるんじゃない?」ということですね。そのヒントは後でまたお伝えします。

(この目的を活用して)今、話しているテーマがどういう目的につながっているのか、度々検証していただきたいという話をしています。雑談もいいんだけど、雑談によって信頼関係につながってるとか、中長期の成果につながってるのであれば、意味のある雑談ですね。

指示や問題解決だけでなく「対話・支援」を取り入れる

ここまでは、部下にとっての1on1の目的です。一方で会社にとっての目的についてです。「パフォーマンスマネジメント」という言い方をしていますが、指示解決型。

上司のコミュニケーションはほぼこれだと私は言ってるんですが、教える・指示する・問題解決する……というコミュニケーションがほとんどなんですよね。部下から「これ、どうしたらいいですか?」と聞かれたことに対して、そういうコミュニケーションをとるわけです。

短期的な成果を軸に置くと、このコミュニケーションでいいというか、そのほうが効率的なので上司は必要なんですね。これはこれで必要なんですが、ピープルマネジメントが必要なんじゃないか。「対話支援型」と言っています。

ピープルマネジメントとは何かというと、個人の力が最大限発揮できるように、個人の持ってるポテンシャルをどう最大化しましょうか? というところが焦点なんですよね。

こういう話って本当にたくさん聞いていると思われるんですが、これを具体的にどうするのかというところは、まだまだなかなか浸透していないなと思ってます。

ヤフーさんも、実際に「なんで1on1やるのか?」という中で、社内外でお伝えされているのが「社員の才能と情熱を解き放つために1on1をやってるんだよ」ということです。

才能、秘めたる能力、ポテンシャルとして持ってる強みとか、見えてないところ。あるいは情熱、秘めたる思いですね。これを解き放つという表現をされていますが、やっぱりそれも「ポテンシャルを最大化しましょう」なわけです。

人手不足な中で“今いる人”のポテンシャルを最大化する

それをやっていくためには、「言われたことをやる」だと最大化できないので、自律型人材(を育成する)。これもどこの企業さんもおっしゃってますが、自分で考えてできる、動けるということなんですね。

でも、「私はこういうことをやりたいです」ということを全部叶えてあげられるかというと、そういうことでもなくて。組織のベクトルと合ってないとパフォーマンスとつながらないので、上司は「個人と組織をどうつなげていくか」をやっていかなければいけない。それが従業員エンゲージメントになるということです。

従業員が自発的に組織に貢献していく意欲を高めていきましょう。このエンゲージメントスコアが高い企業が、要するにとにかく結果を出してきているということで、今まさに投資家なんかも参考・先行指標にしている。

結局、やっぱり生産性を上げていきたいということなわけです。人も足りないし、いる人をどう最大化するか。会社としてはこういうことをやっていきたいわけです。それをやっていくために、ポテンシャルを最大化するために、対話が必要だねとなっているわけですよね。

人的資本経営と言われていますが、今の言葉で言うとこういうことになります。人的資源というのは、結局「コト」なわけですね。このコトを成すために、リソースとして人をどううまく活用していくか。「人的資源管理」なので、コトが優先なわけですよね。コトを成すためにできるのか、コトが成せない人は使えないリソースという見方をされるわけですよね。

短期的にはこういう見方でもいいんだけど、中長期で見た時には人的資本(が重要)です。今度はコトじゃなくて人を見て、その人の持っている中で使えるものやまだまだ眠っていることは何があるかを見る。

それが今のコトを成すにはうまく使えてないけど、社内にある中でマッチングできることがないかな? と探していくことが必要になってきてる。だけど、そういう時間って取れてるんだっけ? ということですよね。

つい慣れたコミュニケーション手段を取りがちに

左側のコトをどうやっていくかというコミュニケーションはすごく得意で……というか、お互いに慣れちゃってるので、そればっかりやっているんですね。

右側のコミュニケーションも概念としてはみなさんわかってるんですが、右側のコミュニケーションをとるのはかなりお互いに慣れてないところがあります。

お互いに慣れてないとはどういうことかというと、部下は部下で「自律型人材にならなきゃいけないんだな」という、ある種の役割を持って(1on1に)臨んでいるか。自律型人材ってことは、自分で考えて動ける人の育成ということなわけですよ。

でも、上のコミュニケーションのパフォーマンスマネジメントをやってると、やっぱり「言われたことをやる人」になるんですね。

自分で考えて動けるってことは、自分が主体となって考える場が必要なんです。この時に上司は、支援の立場に回って対話していくことになるわけですね。支援型と言っていますが、いわゆる傾聴、質問、承認というコミュニケーションが主体になります。

お互いの役割が両輪であると、質の高い対話になっていくんです。ただ部下側も、そういう役割の意識がなかなか持てていないと言いますか、上司に聞いて、上司から言われるものをやるというような左側の流れに慣れちゃってるんですね。

「お互いに役割があるんだよ」「会社としてはこういうことやっていきたいんだ」ということをわかってやっていかれるといいかなというところなんですが、どうしても単に「1on1をやりましょう」となると、上のコミュニケーション(パフォーマンス・マネジメント)になっちゃうんですよね。

部下が困りごとを言って上司が解決して、「わかりました」という話になっちゃうと思います。なので、お互いに「何のためにやるのか」をマクロ的な視点で見てほしいですね。

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