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国際女性デーに考えるジェンダー平等と日本の未来(全4記事)

もっと“感情的”になっていい 女性本来のパワーを引き出す「怒る・泣く」という表現

女性の活躍を推進するため、年間を通してあらゆる活動を行なうHAPPY WOMAN実行委員会。毎年3月8日には、国連が制定した「国際女性デー」を新たな日本の文化行事として定着させるべく、「国際女性デーHAPPY WOMAN FESTA」を開催しています。本セッションでは、小島慶子氏ら5名の女性リーダーたちが日本におけるジェンダー平等の歴史とこれからの女性の生き方についてディスカッションしました。

怒りは必ずしもネガティブな感情ではない

小巻亜矢氏(以下、小巻):自分が今、みなさまと一緒にここに座っていることが信じられないくらいです。30代後半の自分はそんなことは夢にも思えなかったんですが。できることをがむしゃらにやって、「なにくそ!」と思うことはありました(笑)。

対馬ルリ子氏(以下、対馬):そうよね。

小巻:「お前はなんぼのものか」と直接言わないまでも、いろいろな人の態度や、ふと無視されるたびに、突きつけられたような気がするんですよね。だからもう自分の実績というか、中身を詰めていくしかないので、(専業主婦から仕事現場に復帰したとき、)仕事の学び直しもそこでスイッチが入ったんだと思います。

先ほど対馬さんの話を聞いていて、やっぱり「なにくそ!」はすごく原動力になっていたと思います。

対馬:「いつか見ていろ!」と思っているとね。

小巻:そこですぐに反論できない自分ももどかしかったり。

小島慶子氏(以下、小島):そうした気持ちを言うと、「怒ると人に嫌われるよ」「みんなが引いちゃうよ」「そうやって男性を攻撃してもなにも解決しないよ」などと言われることが多いので、つい黙ってしまいがちですよね。

でも怒るというのは、必ずしもネガティブなことではなくて、むしろ自分が希望を抱いていて、世の中に期待しているからこそ「どうしてこれはうまくいかないんだろう?」「もっとこうだったらいいのに!」と言える。私はすごくポジティブなエネルギーだと思うんですよね。

島田由香氏(以下、島田):まったくそのとおりですよね。私も、ポジティブ心理学をやっている中で、本当に感情の大切さを伝えています。その中でも、怒るという感情は自分の思いに気付けるチャンスなんです。

まさに慶子さんがおっしゃった、怒るということは、裏を返せば「本当はしてもらいたかったことをしてもらえなかった」「本当はこうしたかったけどできなかった」という悲しみから来るものなので。想像や、「こうしたい」というエネルギーなんですよね。この社会ではとくに出しちゃいけないと言われてきましたよね。

対馬:とくに女はね。怒ってものを言うとすごく引かれるというか。

小島:「うわ、怖〜い」なんてね。

島田:ヒステリーだと(笑)。

小島:ヒステリー。そう(笑)。

怒る・泣くことを抑圧されると何が起こるのか

島田:感情はもっともっとたくさんありますが、もし4つに分類するなら喜怒哀楽。そのうちの怒ると泣くというものは、とくに女性はタブーのように言われてきています。その4つのうちの2つを押し殺してきている人が多いのです。

実はおもしろいんですが、感情はemotionと言いますよね。emotionのeはenergyなんですよね。energy-motion、エネルギーの動きが感情ですから。私たち人間はエネルギーを摂取したり、エネルギーを貯めたりして生きてきているから、感情というものを感じるかどうかが人間である理由の本当に大事なポイント。

その4つのうちの2つを失くしていると、どうなるかわかりますか? 残りの2つも感じなくなるんです。喜と楽。だから自分がなにが好きか、どんなことをしているとハッピーかということに気づかなくなっている人が……。

対馬:それは虐待の、被虐待者の反応ですね。虐待をされているとそのようになっていくので。

島田:それはかなり、今の日本では大きなことなのではないかと思います。

小島:そうですね。今までの構造の中では、より女性がその抑圧が高い面があった。今もあるけれども。でも同時に、労働環境の今までの風土を考えてくると、男性もまた怒りや悲しみを抑圧されて語れなかった部分がありますから。

そうすると見た目上「女は今フェミニズムだのジェンダー平等だの言って怒れていいよな。俺たちは怒ることもできないのに」とすごく不愉快に思う人もいるかもしれないんです。本当はみんなが怒っていいし、怒りをポジティブな動きに変えられるんだというメッセージでもあります。

対馬:それをポジティブに、例えば政治に対する関心に活かすなど、いろいろな活かし方があるんですが、なかなか小さいときから周りと同調するように圧力をかけられていると、とくに女の子は発言してはいけない……男の子ももちろんだけど、泣いたり怒ったりしてはいけないということをやられていると、エモーショナルに動くということが、悪いことだというように刷り込まれていると思うんですね。

感情的=視野が狭いという思い込み

対馬:でも本当は、女性ホルモンはかなり古い脳と繋がっているので、ホルモンが動くとやっぱりエモーショナルに動くんですよ。それは生理的に当然なことですから、そもそもエモーショナルに動くことをなぜ悪いと言うんだろう、と私は思うんですね。

小島:ネガティブな言い方をしますよね。「感情的だよね〜」などと。

対馬:そのエネルギーは生き延びるための最も強いエネルギーなんです。だからこそ女の人は寿命が長い。男の人は症状を感じにくく、自分でいろいろ訴えることもなく、いきなり大病して死んじゃうじゃない? だから短命で大病しやすいのは男性の身体特性なんです。

かえって女性は、ホルモンが動いていることで、エモーショナルにもいいパワーを持っているんですよ。だけどそれが例えば、今までの男性ばかりしか働いていなかった社会から見て、いわば「扱いにくい変な生き物」になってしまうわけですね(笑)。

小島:「ホルモン=論理的でない」というように、「感情が先に立つ=視野が狭い」という思い込みを、実は女性自身も持ってしまっています。自分が感情に突き動かされてなにかを言いたいと思ったときに、「もしかすると私は今、すごく幼稚なことをやろうとしているのではないか」と押さえ込んでしまうこともあると思います。

でも、ここにいる方はみなさん、それを言葉にして行動に変えて、実際にそれで仲間が増えて、助かる人が増えた。

対馬:表現するスキルをもっと身につければいいと思います。思わず泣いてしまうということも、もちろん大事な感情の発露なんですが。でも、そこでうまく表現できれば、周りの人に伝わりますよね。だからもっとスキルアップすればいいのではないかと思います。

島田:絶対にそうですね。

対馬:女性医療の世界でも、男性ばかりが月経の問題や更年期の問題などをやっていて。調査研究でも「当事者である女性が入ったほうがいい研究ができると思うんです」と言うと、「う〜ん、しかし女性はサイエンティフィックじゃないからね」などと言われたりするんですね。

それならば、研究自体がそもそも女性に向いてないのかと思われがちですよね。対象が女性であっても。それはすごく変なことだと思っています。

小島:そうですね。理不尽ですね。

島田:もしかすると私たちも、なにかを聞いたり、見たりしたことで無意識に持ってしまっている先入観で、なにかを無意識に男性側に発しているかもしれませんし。

性別は単なる身体的機能にすぎない

島田:今日はいろいろなことをうかがう中で、あらためて表現するということの大切さに気付きました。先ほどの写真もそうですよね。表現がどんなものなのかによって、訴えるものが違います。だからそれを選ぶ人や、撮る人というものが変わっていけばいい。

はっきり言って、それは男も女も本当は関係はありません。先ほどホルモンの話や、一周まわって今度は男性が直面しているという話もあったけれども。本当にみんなが自分のことが表現できていいと思っている。

私、実は男女はジェンダーでもない気がしているんですよ。男性性・女性性という言い方もありますが、私はジェンダー性別としては女性だけれども、おそらく男性性だと言われるものもすごく強い。

でもHAPPY WOMANをやっていらっしゃる小川さんは、性別としては男性だけれども、女性性がかなり強いと思うんですよね。

小巻:そうですね。違和感ありませんものね。こうした話をしていても。

対馬:本来、どの人も両方のホルモンを持っているんですよ。

島田:ありますよね。ですよね!

対馬:女性性も男性性も持っていて、かつその人がその人らしく成熟していくというのが人間の成長だと私は思っているんです。だからホルモンというのは、単なる身体的ファンクションですから、そこは良い悪いの判断ではありません。単なる事実であり、サイエンスなんです。それを自分が理解して、自分が表現する材料として使えばいいんですよね。

島田:そうですね。自分を知る、理解する、あとは先ほどおっしゃってくださっていた心地の良さ。自分が心地良くあるということが、やっぱりすごく大切なんじゃないかと、あらためて思いました。

人間は性別に関係なく、多面性を持っている

小島:ネーミングはすごく大事だと思っています。男性性、女性性と言われているものは、違う名前にしたほうが理解しやすい気がしますね。

島田:確かに。どう言ったらいいんでしょうか?

小島:男性・女性と言ってしまうと、ホルモンの違いと直結して考えがちですが、機能として違いがあることを知ったうえで、健やかに生きることをそれぞれがやればいい。

だけど人間がもつ多面性や、自分の中にもいくつもの自分がいることは、性別関係なくみんなが同じなのに、それが今まで世の中を回す便宜上「男は(女は)この部分だけに価値がある」と規定されてきましたから。

それが男性らしさや女性らしさというように、男性性・女性性とネーミングされてきたので。つい生まれながらのものなのかと思ってしまうんですよね。でも、みんな実は何人もの自分がいて、それはみんな同じなのに。どの自分も居心地がいい世の中がいいと、おそらくみんながそう思っている。

島田:みんなが思っている! みんなが幸せでありたいと思っていますからね。

小島:思っているのに、どうも世の中がそうした仕組みになっていないからこそ、今まさにこうした場所が必要な理由ですから。

対馬:二元性というか、白黒、男女というように、だからこうしろと押し込めるようなものは、文化的に非常に未熟です。つまらないと思うんですよね。

やっぱりさまざまな人がいて、さまざまな文化や、いろいろな人がいて、いろいろと楽しい、心地良いということが、みんなにとっても心地よかったりすることなのです。それはこれから人類が進化する方向なんだと思えれば、すごく私たちは明るくなれると思うんですね。

島田:本当にそうですね。いや〜もうずっとこのまましゃべり続けられるのですが。

小巻:朝までいきそうな感じですね(笑)。

島田:本当に朝までいきそうなんですが、お時間ということもあり、残念ですが次の質問で最後とさせていただきたいと思います。

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