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株式会社イエムラ(全1記事)

2020.01.20

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小さな製造業がkintoneで1つだけ「見える化」したら、社員に自主性が生まれた

提供:サイボウズ株式会社

2019年11月7~8日、幕張メッセで「Cybozu Days 2019」が開催されました。7日には、全国のkintoneのユーザーのなかから選ばれたファイナリストたちが活用事例を発表する、「kintone hive tokyo vol.10/kintone AWARD」が行われました。日々の業務でkintoneを活用しているユーザーが一堂に会し、業務改善プロジェクトの成功の秘訣を共有するイベントの模様をお届けします。本パートでは、仙台で製造業を営む、株式会社イエムラの家村秀也氏が登壇。体育会系サラリーマンとしての成功体験を経て家業を継いだ社長としての失敗と気づき、そして小さな会社ならではのkintoneの有効な使い方について語りました。

宮城県で金属製品製造業を営む、“努力と根性”の社長

家村秀也氏(以下、家村):みなさん、こんにちは。仙台から来ました家村です。今日の僕のプレゼンは、あまりやり方とかそういうところは出てきません。ですから、もしやり方を知りたかったら、ぜひ他の方のプレゼンをよくよく聞いてください。

それから、大枠はパンフレットの中に書いてあります。だから短い時間の中で、お伝えしたいことを絞っています。これからお伝えしたいのは、「がんばってがんばってがんばったら、業績って良くなるんですか?」なんてことをお話ししてみたいなと思います。

最初に会社と僕の自己紹介をします。会社は宮城県で金属製品製造業をやっています。20名の小さな会社です。ステンレスという金属を加工して、主にビルに必要なドアとか、それから手すりなどを作っています。

作って、そして建設現場に運んで、工事部のスタッフが職人さんと取付工事をする。こんな仕事をやっています。詳しくはホームページもありますし、パンフレットにも載っていますから、ぜひそちらをご覧ください。

僕のこともちょっとだけ自己紹介します。昭和41年に生まれました、53歳です。小中高の12年間野球部で、45歳まで草野球を続けてユニフォームを着ていましたから、まさに体育会系です。

僕の体の中には、「がんばる」とか「努力」とか「根性」というのが完全に染み付いちゃってます。それが良かったり悪かったりします。

ちなみにここ(スライド)に「まっすぐ」と書いています。性格はけっこうまっすぐなんですけど、ピッチャーをやっていて、決め球はサイドスローだったので、カーブというのが特徴ですね。

「がんばれば達成できる!」サラリーマン時代のあだ名はドーベルマン

さて、エピソードを1つご紹介します。若かった頃のエピソードです。大学を卒業して、23歳で東京のあるメーカーの本社に就職しました。経済学部だったので、本社では営業で採用されたんですけど。

入社3日目に人事部の部長に呼ばれて「家村くん、大事な話がある。人事異動」と言われちゃって、3日目から工事部に所属して、そして現場監督になりました。当時の写真です。

現場監督になって仕事も大変だったんですけど、もっと大変なことが起きました。入社4ヶ月後に、当時付き合っていた彼女に振られてしまった。ショックです。ショックでショックで、当時住んでいた寮の先輩が心配して僕の部屋に来てくれました。

僕、先輩に言いました。「先輩、もうダメです。生きていられない。仕事も辛いし、やってられない。死にたいです」って言ったんです。そしたら、この写真に写っている先輩が、僕にこう言いました。

「家村くん。自殺するのはかっこ悪いからやめろよ。その代わり、過労死しろ、過労死。お前ね、死にてぇんだったら過労死しろ」と。酔っ払ってヘロヘロになりながら、その言葉聞いて「そうだな。かっこ悪いな。よし、じゃあ、過労死してやっか」みたいなことを思っちゃって。

そこから毎日毎日残業したり、難しいプロジェクトがあると真っ先に手を挙げて、「部長! 僕がそのプロジェクトやります」と言って、会社の困難な仕事を次々引き受けました。

その結果、どうなったかというと、会社の中であだ名が付きました。ドーベルマンです。「本社の工事部の二課にドーベルマンがいる」と。当時、『ドーベルマン刑事』っていう漫画があったんです。ドーベルマンと言われていました。

仕事ができるようになったんです。仕事はできるようになると楽しくなります。そして、楽しくなると好きになります。だから、「努力ってこんなにも大切なんだ。報われるんだ」とずっと思っていました。

当時は本当に思っていました、「がんばれば達成できるんだ、やれるんだ」と、そう思っていました。そこで「もっともっと仕事しよう、もっともっとがんばろう」。そう思いました。

「結果が出ない努力を続けるのはただの我慢」家業を継いで気づいたこと

さて、数年後に今度は父親が経営している会社に呼び戻されます。父親が創業者なもんですから、東京で働いていたある日、電話がありまして、「お前、そろそろ東京から帰ってこい」。そう言われて実家に帰ります。

そして、実家でもがんばるんです。がんばる。とにかく寝ないでがんばるんですけど、今度はそういかない。一生懸命、一生懸命がんばっていたんですけど、なんと当時の僕の会社、右肩下がりです。本当に毎年、売上がどんどん下がっていってしまう。

このときにどう思ったか。みなさん、どう思ったと思います? そうなんです。「がんばりが足りない」と思っちゃったんです。なので、ますますがんばるんです。そして、僕ががんばるだけじゃなくて、今度はスタッフにもがんばりを強要します。

「お前ら、がんばり足りねぇんじゃねぇの? がんばり足りないから(売上目標まで)いかないんじゃないの?」。でも、売上は一向に回復しないですよね。そうなんです。

(スライドの)ここに黄色い線があります。これは、当時の東北地区の建設市場の市場規模を表しています。これをリンクさせると、まさに相関。わかりますよね。僕がどんなにがんばったって、業界全体が沈んでいってしまっているので、なんともならないんですよ。なんともなんないの。

これに気づくまでに、ずいぶんかかりました。だから、このときに思ったんです。「あ、そうなんだ。がんばるだけじゃダメなんだ。がんばる方向性、結果が出る方向に変えなきゃ」と、そう思いました。

そこで、いろんなことをやり始めて、みなさんがご存知のように2011年3月、震災です。震災が起きて、僕の会社は変わりました。みんなが助け合うようになったり、そして売上も上がってきました。

そんなときに気づきました。僕が今までやっていたのは、努力じゃなくて我慢だったんだ。だから、「結果が出ない努力を続けているのは我慢だから、結果が出る方向に変えよう」。みんなにそう話しました。そして、次々と社内の改革がスタートします。

社長主導で「kintone」を導入、社員の反応は「めんどくさいよ」の一言

その1つが「kintone」の導入でした。2年前にとある方の紹介で「kintone」に出会いました。当時、少しずつ(売上が)回復してきて、社内のデータや情報を共有したいなと思って、いろんなことを調べたり、いろんなところに行ったりして出会ったのが「kintone」でした。

コストもいいし。導入のきっかけについてはパンフレットに載っていますから、説明を省きますけど、いずれにしても、とってもいいなと思ったんです。

だけど1つ、この開発の途中でまた病気がでちゃう。「努力」です。「kintone」の導入を決めて、そしたら僕、またがんばっちゃうんです。みんなが帰ったあと、事務所で1人で手書きでコンテンツや設計図を書いたり、一生懸命ネットで調べたり。

「こうやったらああなってこうなるけど、こうなってこうなって……あ、これもアプリできるな。これもできるな。あれもできるな。これもできるな」、どんどんどんどん頭(の中でイメージ)が膨らんでいっちゃう。

どうです? みなさん。僕1人ががんばって業績って良くなるんでしたっけ? 社員に言われました。プロトタイプを公開したらひと言、「めんどくさいよ、社長」。20人しかいない会社でスタッフにこんなこと言われたら、ショックですよね。「めんどくさいよ」と言われちゃったんです。

一生懸命やったのに、「めんどくさいよ」と言われちゃった。ショックです。ショック、めちゃショック。「あー、まずい、またやっちゃった」みたいな。それで、開発の途中からスタッフを入れることにしました。

「なんとかしなきゃ」他の人に見られてる意識が、努力につながった

今度はスタッフと一緒に「じゃあ、どうしたらいい?」って開発に参加してもらうようにしました。そして、今できたのがこんな感じ。僕のうちは20人の小さな会社なので、たくさんのことはやっていません。

この会場のこの場所に選ばれたのも、たったこれだけ。「kintone」を赤くしただけなんです。たったこれだけ。案件管理の利益率、粗利率ですね。この粗利率のところにバックデータを入れてあります。

バックデータを入れてあって自動集計して、ある一定の数値をクリアしない場合に、自動的に背景が赤くなります。これだけなんです。僕のところでやっているのはこれだけ。だけど、これがみんなの心を変えるんです。

現在は売上もグーンと伸びてきて、(スライドを指して)ここがちょうど震災ですね。ここからずっと伸びてきているんですけど、なんと前年は売上が落ちたのに、利益が上がったんです。

これは「kintone」のおかげです。「kintone」でみんなの意識が変わったので、売上はちょっと下がったんですけど、利益率がグンと上がりました。

なぜ変わったのか? そうなんです。僕の会社の最大の弱点は、“気が利く人しか気づかない”という仕組みだったんです。気が利く人しか気づかないんです。だから、みんながやろうとしていることがバラバラだったんです。

それを、「誰もが気がつく」。そして、「見えるということが見られるということに意識が変わっていく」という仕組みにしたんです。赤くしたということは、「見られる」ということなんです。

自分の案件が赤いって、他の人に見られちゃうんです。見られちゃう。だとすると、自然と見られることに意識が行くんで、「なんとかしなきゃ」って自助努力が働く。こんな仕組みなんです。

行動を変えるには、仕組みではなく“心”が変わるスイッチを探そう

いいですか、みなさん。ここで気づいたんです。一生懸命に仕組みを変えようとするんだけど、仕組みを変えただけじゃ誰も動かない。まして、社長だけが気持ちいいことになっちゃって会社がぜんぜん良くならない。

だけど心が変わると、行動が変わってきます。僕は「kintone」を導入してこのことに気づいたんです。だから、最初に言ったでしょ? がんばってがんばってがんばったら、業績って回復するんですかね? と。

今度はがんばってない。赤くしただけなんです。赤くしただけでこんなに効果が出るなんて、僕も思っていませんでしたけど、でも、そもそも心が変わったんです。スタッフの心が変わったんです。だから、こんなふうになったんだと僕は思います。

みなさんはこれから「kintone」に関わっていく、もしくは今、関わっている。もしくは、これから導入しようかどうかって迷っている方、この会場にたくさんいると思うんですけど。

僕がお伝えしたいのは、たった1つのことでもスタッフの心が変わるんだったら、まずはそのスタッフの心が変わるスイッチを探す努力をしてみたらいいんじゃないかな、ということです。

心が変わるスイッチって必ずあると思うんです。そのスイッチを探す、そういう努力を一番最初にやったら、もしかしたらみなさんが関わる「kintone」って、もっともっと効果のあるものになるんじゃないかな、と思います。

社員に自主性が芽生え、輝くチームが生まれた瞬間

1つのきっかけでみんなが輝く。そんなチームができたらいいんじゃないかなと思います。僕のチームも最近はキラキラ光っていまして、今日、この会場に僕の会社のスタッフは誰も来ていません。誰も来ていないんです。

なんと、業務が忙しくて「一緒に幕張に行く?」って聞いたら「社長、今、忙しいんです。忙しくてお客さんの相手しなくちゃいけないんで、それどころじゃないでしょ」と言われてしまいまして。だから今日、誰も来ていません。

会場には誰も来ていないけど、僕が外に出ている間、彼らはきちんと仕事をしてくれている。最高のスタッフです。

それもこれも、あれもこれも全部、彼らの心が変わったから。自主的にやってくれるようになって、本当に僕は幸せだなと思っています。そういう彼らのサポートを僕はこれからしていきたいなと思っています。

そして今日は会場にたくさんのいろんな方がいらっしゃるので、ぜひアドバイスを逆に僕がもらいたい。ブースもたくさんあるでしょ。僕はもう時間がある限り、ブースを周りたいなと思っています。いい知恵を貸してください。そして、シェアしましょうよ。

プレゼンは以上で終わりたいと思います。ぜひ、みなさんの会社が良くなるといいなと思います。ご清聴ありがとうございました。

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