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株式会社お掃除でつくるやさしい未来(全1記事)

2020.01.22

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地方暮らしや子育てがハンデにならない雇用を創出 kintoneが支える、オフィスレス化の道のり

提供:サイボウズ株式会社

2019年11月7~8日、幕張メッセで「Cybozu Days 2019」が開催されました。7日には、全国のkintoneのユーザーのなかから選ばれたファイナリストたちが活用事例を発表する、「kintone hive tokyo vol.10/kintone AWARD」が行われました。日々の業務でkintoneを活用しているユーザーが一堂に会し、業務改善プロジェクトの成功の秘訣を共有するリアルイベントの模様をお届けします。本パートでは、株式会社お掃除でつくるやさしい未来の前田雅史氏が登壇。地方都市に住んでいる人や子育て中の人々の雇用を創出する取り組みについて発表しました。

本社以外にオフィスを構えずに、事業を全国展開

前田雅史氏:みなさん、こんにちは。株式会社お掃除でつくるやさしい未来の前田と申します。最初に自己紹介を簡単にしますけれども、みなさんにとって、僕みたいなおっさんのプロフィールを聞いたところで何にもならないと思いますのでサクッと行きます。

福岡県生まれのB型、乙女座。趣味でオープンウォーターというのをやっています。オープンウォーターってご存知の方いらっしゃいます? ほとんどいらっしゃらないと思うんですけど、わかりやすく言うと遠泳です。夏の間はひたすら海を泳いでいます。

今、(スライドに)映っているのは鹿児島県の桜島ですね。テレビの企画物などでたまにあるのでご存知の方もいらっしゃるかもしれないんですけど、桜島があって手前が鹿児島市。その間を今、毎年3年連続で泳いだり、今年は東北の震災で壊滅的な被害を受けた南三陸町や愛知県の知多半島など、いろいろなところを泳いでいます。

こういう話をすると、ひたすら泳ぐのでストイックな趣味と思われて、話した人からは「ドMだね」なんて言われているんですけど、確かに僕の名前も前田雅史なんで、イニシャルMMでドMの中のM、キングオブMみたいなね(笑)。すいません、どうでもいいですね、こういう話は。

では、会社の案内から行きます。社名がちょっと長いんですけれども、株式会社お掃除でつくるやさしい未来といいます。創業が1999年の9月なので約20年超えたところですね。

私どもの本社は福岡県にあるんですが、一番遠い営業エリアが東北・仙台、(南へ)下がってきて埼玉県の春日部市、それから関西、そして九州に入って福岡・佐賀・熊本と広域にわたってエリア展開をしています。

しかし、ここで特徴的なのは、福岡以外はスタートの時からオフィスを構えずにやってきました。それと、スタッフの構成としては、約90名のスタッフがいるんですけれども、そのうち男性スタッフは3人だけです。それ以外は全員女性。しかも、子育て中のお母さん1名を含めて、全員がお母さんというカテゴリーに入るのも特徴的なところだと思います。

世の中の大人たちが、子どものせいにしていること

そして、さらに特徴的なのは、先ほどのVTRにも映っていましたが、「子どもを連れて来ていいよ」と言っています。なにも子どもを(職場に)連れて行くことを奨励しているわけではないんですけれども、みなさん思いませんか? 人口減少とか少子化が問題だと言いながら、実は世の中の大人が、物事ができない理由を子どものせいにしているって感じたことはないですか?

子どもがいるから仕事ができない。子どもを見る人がいないから今日は休まないといけないとか、休むことはいいんだけれども、「できない理由を子どものせいにするぐらいだったら連れてきてもいいよ」というのが会社の考え方です。

今、話したような内容を図に表すとこういうかたちです。このときによく言われるのが、「じゃあ、遠方で社員もいなくて営業所もなくて、どうやってマネージメントをしているの?」と。僕たちは、当然kintoneを使っているんですけれども、そもそもkintoneを人を管理するための道具とは考えていないんですね。

どう考えているかというと、遠くで働いているスタッフや、なかなか会えないスタッフでも、お互いが1人ではないんだと、ちゃんとモチベーションが保てるようなツール。つまり、コミュニケーションツールとして位置づけています。

みなさんもそうだと思うんですけれども、心のあり方と仕事の成果は比例すると思うんですよね。だから、事務所があれば、嫌なことがあっても毎朝会社に行けば仲間がいて、そこで会って話したら吹っ切れて、「さぁ今日もがんばろう」となるかもしれないんだけれども。

営業所もない事務所もない中で、たった1人でお掃除をしていると、どんどんどんどんモチベーションが下がっていくんですよね。それをなんとかしたいという思いでkintoneを入れました。

kintoneが変えた「お掃除のおばちゃん」という関係

こちらがその画面なんですけれども、僕たちのスタッフはスマートフォンを持って現場に行きます。現場に行って「どこどこの物件に入りました」とログインするんですね。その時点で日本中の仲間が、「誰々さんがどこの現場に入ったんだね」というのがわかるようにしています。

そして、さらに効果的だったなと思っていることがあります。みなさんもそうだと思うんですけれども、働くモチベーションが一番上がるのは何かというと「感謝」ですよね。

「ありがとう」って。いかに「ありがとう」と言ってもらえるかが大切で、だったら、一生懸命お掃除して、写真を撮って作った報告書にお客さんも入ってきてもらおうと思って、お客さんもログインしてもらうようにしました。

そうすると、今までは「お掃除のおばちゃん」とか、「担当の人」と言われていた関係が、一生懸命がんばっている現場のスタッフとお客様、不動産オーナーさんであったり管理会社さんであったりと直でつながることで、「〇〇さん、いつもありがとう」という感謝の言葉がダイレクトに行くようになりました。

これは僕たちにとって、ものすごく大きな財産だったなぁと思っています。つまりITではなくて……今はもうITという言葉を使わないですよね。ICTです。僕たちにとってはCが大切で、インフォメーション・コミュニケーション・テクノロジー。じゃあ、Cのためにkintoneを使おうと言って今、がんばっているところです。

田舎暮らしや子育てがハンデにならない雇用を創出

その結果、売り上げが伸びたり人が増えたりといったことがあるんだけれども、そんなことよりも、僕たちが本当にkintoneを使って取り組んで良かったなと思うことがあります。

東北などの地方でも(福岡と)同じように、「田舎のほうで働きたいけど、働けない。なぜならば小さい子どもがいるから雇ってもらえない」というお母さん方の雇用を生み出すことができた。僕は九州の福岡の田舎の90人位の中小企業の掃除屋のオヤジだけれども、これがすごく大きな会社の財産だと思っています。

この関東圏の僕たちのスタッフにも、同じことが言えます。普段は子どもがいるので雇ってもらえない。でも、時間も「好きな時間でいいよ」とやることで、彼女たちが働ける。

九州の田舎の中小企業が、都会だろうが田舎だろうが、日本中の雇用を生み出し、1,000キロ離れていても同じ理念のもとに一生懸命働ける環境をkintoneで作り出せた。これが本当に大きいと思っています。

ここでkintone hive 九州大会が終わったんですけども、僕は次のステージとして、ふと思ったんですよ。遠く離れたところで事務所がない、正社員もいない。だけれども高いクオリティのサービスを提供することが可能だと実証できたわけですね。

これってすごいよね、と思った反面、じゃあ、本社はスタッフが出社してくるわけですよ。なぜ他は営業所がなくて、出社なしの働き方でうまくいっているのに、本社は出社しているんだろう。簡単ですよね。会社に来る理由は会社があるからですよね。

だったら会社をなくせば良いと思って、「オフィスレスに取り組みます。この『kintone』さえあればオフィスレスは可能だ」と言って、kintone hive 九州大会の2~3週間後に本社を解約しました。

オフィスレスになって、必要性を痛感したこと

今、完全にはできていないんですけれども、オフィスレス化に向けて、歩み出したところです。この半年間で僕が痛烈に感じたのは、ペーパーレスとかキャッシュレスとか言われますよね。ペーパーレス、ずっと前から言われています。

でも、オフィスがあるときは、言われているけど不自由を感じていなかったので、取り組んでいなかったのです。キャッシュレスもそうです。オフィスがなくなったときに、初めてペーパーレスやキャッシュレスの必要性を痛感しました。

本当はこの順番を追ってオフィスレスがあるところを、最初にオフィスレスをやっちゃったんで問題だらけです。「困った、困った」の連続です。困ったときにこれをどうやって解決するんだ。

ここでありがたいなと思ったのが、社内で困った内容を自分たちでアプリを作って1つひとつ解決していこうと。そのために動いてくれたのが、今日も会場のどこかに来ていると思うんですけれども、仙台のパートさんです。今も一生懸命「これが困っているでしょ、これが困っているでしょ」と言って、アプリを作ってくれています。

なぜ彼女がそこまでわかるかというと、仙台でスタートした時点からオフィスがなかったから。オフィスがない中で働くことの問題点を常日頃から抱えていた。本社全体がそうなったときに、「じゃあ、これを作ろう」と言って、パートさんですけれども、今がんばってくれています。

それがまた僕たちにとっての大きな財産になっています。「良いものを作ろう、時間をかけて完璧な良いものを作ろう」と言ったら、時間が間に合わないです。なぜならば、先にオフィスレスというところに突っ込んじゃったので、日々改善していかないといけない。

だから、粗くても素人でいい。ただ一歩でも改善されるんであったら、何かを作ってスピード重視で出そう。出したあとは走りながら改良して考えるというのを、いまやっている途中です。

ソサエティー5.0は、“見えなかった価値”を可視化する時代

最後に、なぜ僕たちがオフィスレスにこだわるのか。オフィスレスじゃなくてもいいと思うんですよ。でも、なぜオフィスレスにこだわるのか。それはソサエティー5.0、これだと思っているんです。すぐにはならないと思います。今は情報社会でソサエティー4.0と言われています。

4.25とか4.5とか、どこらへんまで行っているかわからない。でも、ソサエティー5.0で必ず来るであろう未来で何が変わるかというと、僕は人の価値観が変わっていくと思うんですよ。いろんなものの価値観。ただ、何かが便利になったというレベルではない。

その価値観の何が大きく変わるかをわかりやすく言うと、目に見える価値と目に見えない価値。ソサエティー5.0によって、目に見えない価値がどんどん見えてくる時代になるんじゃないのかな、と僕は思っています。

僕たちの会社で朝礼をするときに、日本中各地のお母さん方がテレビ電話で入ってきます。当然、事務所がないので家から入ってきます。ということは、子どもも一緒にテレビ電話に入ってきます。

ということはですよ。東北の子どもにとって、働く大人の身近な存在は親です。親の働き方が、その子にとってのスタンダードになっていきます。これから人口減少、地域疲弊の問題、一極集中の問題とか言われています。

でも、この子たちが大人になったときのスタンダードとして、「会社がなくてもいいよね。東北だけど、本社が福岡でぜんぜん問題ないよね。この街で働いていけるよね」という選択肢が広がる世の中になっていたら。

そのときに、その子どもたちの同級生で、「仕事がないから東京行かなきゃ」という感覚の子がいたら「君、ダサいね。そうじゃないよ」と言えるものがたぶんできてくると思うんです。

だから、僕たちはあえて、一般的には「クレイジーだ」と言われておりますけれども、オフィスレスに挑んでいきたい。その過程を今のお母さん方の子どもたちの世代にしっかりと見せていきたいと思っています。

いきなり「2050年にソサエティー5.0で価値観がガラッと変わりますよ」とか、そんな話ではなくて、徐々に徐々に価値観が変わっていくと思っているんです。

掃除を通して「やさしい未来」をつくる製造業

であるならば、僕たちに課せられた使命は、その次の価値が変わる世代に向けてどのように背中を見せていくかだと思っています。だからこそ、あえてオフィスレスにこだわり、そして日本中で僕たちの考え方に「そうだよね。共感してくれる、そうだよね」と思ってくれる人がいるところでは、どんな田舎であろうとこの事業を立ち上げてやっていきたい。

そして、そこで子育てをしているお母さん方とやさしい未来を夢見ながらやっていきたいと思っています。このオフィスレスをやっていく上で、そしてソサエティー5.0で価値が変わった時代に幸せに生き生きと生きていく上で、まず何をやらないといけないのかというと、やはり僕はkintoneで、いかに「困った」を改善していくかが大切だと思っています。

最後にあえて会社の社名を申し上げたいと思います。私の会社は、株式会社お掃除でつくるやさしい未来です。動画を見ていただいた通り、お掃除をやっています。でも、清掃業だとは思っていないです。僕は製造業だと思っています。

何を作っているのかというと「やさしい未来」です。お掃除を手段として、世代を超えて愛されるものを作っていく製造業。これが僕の会社、お掃除でつくるやさしい未来です。以上、ご清聴ありがとうございました。

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