うまくいかなかったとき、原因をどう捉えるか?

太田温子氏(以下、太田):ありがとうございます。では本日の授業、続いてのセクションですね。しなやかなマインドセットを身につける。こちらをお願いします。

菅原聖也氏(以下、菅原):まずみなさんに質問をさせていただきたいと思います。まずこちらですね。「うまくいかなかった原因は?」というタイトルにしています。チャレンジしたけどもうまくいかなかった経験を思い出してください。

例えば企画書を書いたけれども企画が通らなかったとかですね。プレゼンをしたけどもお客さんにうまく伝わらなかったとか。夢とか目標を持って活動していたけれども挫折したとか。あと入りたい会社に入れなかった、入りたい学校に入れなかったとか。

こう言ってるとちょっと暗くなってしまいますけれども(笑)、暗くなっていただきたいのではなくて、この次の文章にある「そのとき、うまくいかなかった原因をどのように考えましたか?」というのを考えていただきたいと思います。

下の青字ですね。例を挙げています。例えば「自分には向いていない」「センスがない」「そもそも自分には無理だったんだ」とかですね。そう考えたのか。あるいは「努力が足りなかった」「もっと努力すれば、あるいはもっと工夫して取り組めば達成できる」。そう原因を考えたか。

あくまで下のは例なので、みなさんなりの原因の置き方があると思います。そういった経験を思い出していただいて、そのときにどう原因を考えたかをコメントいただければと思います。

太田:まずはみなさんにご自身のことを振り返っていただく時間として質問を設けております。こちら、コメント欄から投稿をお願いします。チャレンジしたけどうまくいかないことってありますもんね。

菅原:はい。どうしてもやっぱりうまくいかないことってあると思うんですよね。そのときに自分がどう考えたか。このあとマインドセットを見ていく中で、これを事前に考えていただいてから授業を受けていただきたいなと思っています。

どこまで成長したいと考えているか?

太田:さっそくコメントがきています。Izumiさん「考古学者になれなかったことかなぁ。集団行動が苦手だったり運動音痴だったり不器用だったり。こんなところでしょうか」と。自己分析をしっかりしてらっしゃる。

菅原:なるほど。ありがとうございます。

太田:ありがとうございます。コメントをどんどんいただきたいんですが、重ねて質問させていただきます。

菅原:もう1つ質問があります。「どこまで成長できるか?」というタイトルです。現在熱心に、あるいは時間をかけて取り組んでいることを思い浮かべてください。熱心に取り組んでいることがとくにない方は、やはりお仕事が1番時間をかけていることかなと思いますので、お仕事で考えていただければなと思います。

その取り組んでいること、その分野でみなさんはどこまで成長することができると思いますか? 下の青字がまた例です。例えば「その分野の第一人者になれる」。例2としては「ある程度成長はできると思うけど、そこそこな人間で終わるだろう」。例3「努力しても大した人間にはなれない」。

どのように成長というものに関してご自身の考え方を持っているかというのを、ちょっと振り返ってコメントいただければなと思います。

太田:好きなこととか仕事の中でもとくに気合いを入れてやっていることについて、思い浮かべてほしいということですね。

菅原:そうですね。

太田:コメントもいただいております。国分さん「段取りに本気が足りなかった。執着しなかった。分析が足りなかった。いけるだろうと甘く考えていた」と。

菅原:なるほど。しっかり分析されてますね。

太田:そうですね。佐藤さん「うまくいかなかったこと。チームワークで連携が十分にできなかった。互いの認識が十分に共有できていなかったとかね」と。

菅原:しっかり課題を見つけてらっしゃる方が多いですね。その課題を乗り越えようという意識があるから、たぶん課題を見られていると思います。すばらしいなと思います。

太田:まず自己分析というか、分析が大事なんですね。ありがとうございます。

菅原:今2つ質問させていただいたんですけれども、こちらは一旦置いといてください。このあとマインドセットの説明に入っていきたいと思います。説明が終わったあとにもう1度ご自身がどう考えたかという振り返りで、またこちらの質問に戻ってきたいと思います。ちょっと説明に入らせていただきたいと思います。

人間の能力は「可変か」「不変か」という問い

菅原:「しなやかマインドセットとは?」です。人間の能力は学習や経験によって伸ばせるものなのか? それとも石版に刻まれたように変化しないものなのか? 

上の説と下の説、どちらの説を信じるかによって、その後の人生に大きな開きが出てくるというのが、キャロル・ドゥエックさんという方の研究で明らかになっています。マインドセットの研究はいろんなポジティブ心理学関係の書籍でも引用されている、とても有名な研究になります。

太田:この前提はけっこうハッとさせられますね。努力しても意味がない。石版に刻まれたように変化しないって。

菅原:ちょっと極端な表現であるかなと思います。これだけだとわかりづらいので、ここから少し細かい説明をしていきたいと思います。

対極にある2つのマインドセット

菅原:この書籍では「Fixed Mindset」と「Growth Mindset」の2つに分かれると説明が書かれています。硬直マインドセット、それからしなやかマインドセットというのが翻訳の言葉です。硬直の人は、自分の能力は石版に刻まれたように固定的で変わらないと信じている人。経験して勉強してもまったく変わらないというよりも、ある程度は変わるにしても限界がある。

太田:あ〜自分の限界と思ってあきらめてしまう。

菅原:「あの人は天才だから。でも自分は天才じゃないから」とか。自分には限界があるというのを考えやすい人と考えていただけるとわかりやすいかなと思います。

太田:あと「自分に向いてないから」とかよく考えてしまいますね。

菅原:そうですね。そういうところもやはり自分の能力を狭めて考えがちというところですね。

太田:これが硬直マインドセット。

人間はどちらのマインドセットもあわせ持つ

菅原:はい。硬直マインドセットという表現になっています。そしてGrowth Mindset、直訳すると成長マインドセットということです。翻訳の人はしなやかマインドセットと翻訳されています。物事をしなやかに考えるという意味でこう翻訳されたのかなと、これは私の推測です。

人間の基本的資質は努力次第で伸ばすことができるという信念をを持った人。持って生まれた才能、適正、興味、気質は一人ひとり異なるが、努力と経験を重ねることで誰でもみな大きく伸びていけるという信念を持った人。

こういう定義はされていて、こうすると「あの人は硬直な人」「あの人はしなやかな人」と、二極になるようなイメージで捉えちゃうかもしれません。書籍にも書いてあって、多くの人が両方を持っていると言われています。ただ硬直マインドセットが多く出るのか、それともしなやかマインドセットが多く出るのかによって、結果的に差が出てきますよという話になります。

太田:なるほど。両方とも持っている。人としては持っている部分もあるけど、多く出たほうが、ということなんですね。

菅原:なんでその差が出てくるのかというところで、次に硬直としなやかの特徴を表した表があります。これを見ていきたいと思います。

硬直マインドセットの人は、自分の限界を目にすることに不安を感じる

菅原:左ですね。挑戦、障害、努力、批判、他人の成功ですね。この5つに対して硬直マインドセットの人としなやかマインドセットの人がどう考えるか、どう行動するかというところを見たものになります。

まず挑戦に対してですね。硬直の人はできればチャレンジしたくない。チャレンジしてうまくいかなかったときに自分の能力の限界が見えてしまう。自分はこんなもんだって思いたくないので、挑戦することに不安を感じ、臆病になりがちです。一方でしなやかマインドセットの人は新しいことにチャレンジしたい。チャレンジすることで、より自分を成長させられると考えるのがしなやかな人です。

障害に対しては、硬直の人は壁にぶつかったらすぐにあきらめる。自分の能力には限界があると思っているので、壁にぶつかったら「もう自分には無理だ」とあきらめがちになります。一方でしなやかな人は壁にぶつかっても耐えて乗り越えようとする。成長できると思っているので、乗り越えるためにもっと努力するというほうに向かいます。

太田:須山さんが「うちの長男は自分でどこまでも成長できると今は信じている。そのまま伸ばしてあげたい」とお子さんのことを(話しています)。小学4年生だとおっしゃっています。子供のときはわりと自分の力を信じていても、大人になったら現実とぶつかるみたいなときもありますもんね。

菅原:そうですね。小さいころってあんまり限界を感じず、好奇心を持ってどんどん行動すると思うんですね。ただそのときに親御さんとか教師の人の接し方で、硬直マインドセット、しなやかマインドセットというのが作られていく部分もあると思います。ちょうどこの少しあとに代表的な実験のお話もします。

太田:子育てのヒントになるようなことも待っていると。

菅原:ちょっと待っていただけたらと思います。

太田:ありがとうございます。

過小評価を恐れ、他人の成功を脅威に感じる

菅原:それから努力ですね。硬直の人は努力は忌まわしいと思いがちです。努力するということは、自分に能力がないから努力しなきゃいけないという考え方をする人がいると。一方でしなやかな人は、努力はなにかを得るために欠かせないという考え方をします。

批判に対しては、硬直な人はネガティブな意見は無視する。自分に対してダメ出しされるみたいなときに、それを受け入れてしまうと自分の能力が小さいとか能力が低いと思ってしまうのでそれを無視しようとしてしまいます。一方でしなやかな人は、批判からも真摯に学んで自分を成長させようとする。

太田:なるほど。しなやかって素直さとかも関わってくるんですね。

菅原:そういうのもあるかもしれないですね。やはり自分が成長できると思っているかどうかという信念というか、気持ちの持ち方ですね。そこが大きく影響してくるかなと思います。

また他人の成功に対して、硬直の人は他人の成功を脅威に感じる。例えば会社に同期で入って、最初は同じくらいだったのに2年後3年後に同期がすごく仕事で実績を残していた。自分はそうでもなかったっていうときに「あの人は能力があるから、才能があるからなれた。自分は能力がないから、才能がないからああなれなかった」と。ほかの人が成功することで自分が小さく見えてしまう。そうやって脅威に感じるというところが特徴としてあったりします。

「成長できると考えるか」「限界があると思うか」で行動は一変する

菅原:一方しなやかな人は他人の成功から学んで気づきを得る。自分はもっと成長できるので、そういう状況があったら同期からいろいろと教えてもらったり、同期を見て自分も真似してみようとか、自分を成長させる方向に行動が向くと。どっちの説を信じているかというので、こうやっていろいろと変化が出てきます。

太田:さっき言った素直さとか心の広さって個人の性質とか性格なのかなと思ってましたけど、マインドセットということは自分の考え方次第で作れたりするんですね。

菅原:そうですね。自分の成長に対して、成長できるものと思えるのか、限界があると思うのかでやはり行動が変わってきます。

次のスライドです。硬直の人は結果的に早い段階で成長が止まり可能性を発揮できない。すべてを決定論的な見方で捉えてしまう。「あの人は天才だから、自分は才能がないから」といったかたちで切り分けてしまう。

一方でしなやかな人は結果的により高い成果を達成できる。すべてを自由な意志で切り開いていける。自分はここでもっと成長したいんだと思えばここでどんどん努力して、結果的に成長できますと。こういうマインドセットをどう持っているかによって差が出てくるというのは、こういった特徴から見えてくるかなと思います。

ここまでお話ししたうえで、みなさんのマインドセットについて振り返っていただきたいと思います。見つめていただくという表現のほうが正しいかもしれません。変わるためには自分を知るということが第一歩になります。自分のマインドセットの状態を知っていただいて、そこから自分を変化させたいと思うのであれば変化させていくということ。なのでまず知っていただきたいなと思います。