Airbnbに学ぶ「民泊」の仕組み

吉田幸平氏:みなさま、はじめまして。スクイーズの吉田と申します。それではトップバッターということで、私のkintone hiveをご紹介させていただきたいと思います。タイトルを見ていただいても……意味がわからないですよね(笑)。

そんなタイトルをつけてるんですけど、しっかりkintoneの活用事例のお話をさせていただきたいと思っております。私たちは、社長を安心して寝かせたい。スタートアップ企業に潜むオバケを対峙する話を、kintoneを絡めてお話させていただきたいと思っております。

その前に、私たちが会社で何をしているかというお話をさせていただきたいと思っております。私たちは創業5年目のスタートアップのベンチャー企業です。どんな業界にいるかと言うと、民泊業界にいます。

新聞とかテレビとかで最近「民泊」ってよく聞かれると思うんですけれども、「そもそも民泊って何?」っていうところを簡単にご紹介したいと思っております。

民泊は「Airbnb」という言葉と一緒によく連想されます。そもそもAirbnbを使ったことがある方ってまだまだ少数派だと思っています。民泊がそもそも何をするものか。

どうやって民泊を体験するかというと、まず家を貸したい人がいます。空いてるから貸したい人と、日本に来たい旅行客の方をマッチングする。家を貸したい人と旅行したい人をマッチングするようなサイトがAirbnbです。この世界観が民泊だと言われています。

最近なぜこの民泊という言葉を耳にするかですが、今日本の全国各地を歩いていると、海外の方がすごく多いと思うんですね。Airbnbのサイトの中で、なんと日本は東京が(世界で)一番人気のあるスポット。最近大阪に行かれるとすごく海外の方が多いと思うんですけど、なんとその大阪が3番手。ニューヨークを抜いて3番手です。そんな観光大国になりつつある日本で民泊が流行ってきています。

流行っているのには理由があって、そもそも都心部には宿泊する施設がまったく足りていません。

今日はビジネスをされている方がほとんどだと思うんですけれども、大阪に出張に行くと「ぜんぜんホテル取れません」ということもあろうかと思います。そういったものを解決するために民泊が流行ってきているというところでございます。

民泊施設の運営から、そのシステムの提供までをサポート

そこで、私たちがなぜ民泊をしているかですが、ちょっと創業の話をさせていただきます。スライドの右下にいるのが我々の代表の舘林真一です。いつも「真一」と呼んでるんですけど。

館林の実家が旭川で不動産を営んでおりまして、実家のお母さんから「真一、空き家出たんでAirbnb掲載して」って言われたんですね。

そのときに館林はシンガポールで働いていたんですけど、「シンガポールからできるかな?」みたいなことからちょっとやり始めました。民泊を営むには、簡単に言うと大きく2つポイントがあります。まずゲストのサポートですね。24時間のコールセンターと、実際に清掃しに行くこと。この2つが欠かせない。

我々はこれをどうやって解決しているかというと、ゲストの方のサポートは24時間、海外の駐在員のママさんにお願いしてサポートさせていただいています。

当時は館林のお母さんが現地に行って清掃していたんですが、今ではクラウドソーシングといったかたちで、現地の近くにいるお母さんに清掃していただいている。こんなビジネスをやっております。

我々はオーナーさんから物件をお預かりして、民泊を営む会社になっております。まだ公表していないのですが、今は全国で約何百施設もの物件をやらせてもらっているような、そんな会社でございます。

事業は大きく2つですね。民泊を営む事業と、あとはそのためのシステムですね。ITのシステムをご提供するような2つの事業をやっております。

ちょっと戻りまして、私の簡単な自己紹介をさせていただくと。34歳になりまして、ちょっと歳いったかたちでスタートアップに入ったんですけど(笑)。去年スクイーズに入社しました。

こちらが去年の写真なんですけど、この正社員だけで民泊施設を営んでいるような、そんな会社でございます。和気あいあいとしてスタートアップっぽいですよね。ベンチャーっぽいかたちで日々楽しく仕事をしております。

夜中1時にチャットを送ってくる社長に「ちゃんと寝てほしい!」

本題に入ります。私が入社したのは去年なんですけど、とにかく社長がまったく寝ないんですね。

スタートアップとかベンチャーってよく、「社長さん、ぜんぜん寝ないですよね」と聞きますし、想像もしていました。本当に寝ないんです。

本当に寝ないという事例を今日は持ってきました。私たちの日常使っているコミュニケーションツールの1つにslackがあります。

slackは画面の左側でグループを作ってもらって、その中でコメントなどのやりとりを……「おはよう」とか「受注決まったよ!」みたいなことをやりとりするようなツールでございます。ちょうど入った5月くらいに代表の館林がコメントしてるんですね。「これ、確認お願いします」と。夜中の1時です。夜中の1時なんですよ(笑)。

スタートアップだとよくある話なんですけど、私はもう34歳で子どもも2人いて、「ちょっと寝ないのはやばいよな」と思っていて。「社長、寝てるんですか?」と聞くと、社長は「ぜんぜん寝てますよ。3時間くらい」。いや、3時間!?(笑)。3時間しか寝ないんですねと。「なんか夜中になると、すごく気になって寝れないんだよね」みたいなことを言われて。

まあそっか、仕事忙しいしなと思いながら、日々の業務をこなしていたんですけど。やっぱり夜中になると寝れないっていうのはちょっとおかしいよなと思って。ひょっとしてオバケがいるのかな、みたいなことを想像し始めました(笑)。

まぁ嘘なんですけど、例えです。

当たり前なんですけど、なんかおかしいなと思い始めたのがきっかけです。そもそも付き合う側もやっぱり寝たいので(笑)。社長に寝てほしい。

社長、寝てくださいということで、kintoneを入れて業務改善をすることに至ったというのが経緯でございます。

会社に潜む、情報という名のオバケ

「よし、kintoneを使って社長を寝かすんだ!」ということで立ち上がりました。

勇者みたいなことではないんですけど、私がkintoneを使ってなにかできないかなと思ったのがきっかけでございます。

そもそも会社に潜むオバケを私の中で定義をさせていただくと、やっぱり情報ですね。「情報のオバケ」というものが会社の中に潜んでいて、それを退治しないと社長は寝れないんだろうなと思いました。

そもそもオバケ=情報とは何かというと、会社の中にある情報の定義をさせていただくなら私たちは基本、この3つかなと思っています。

向かって左側がいわゆるコミュニケーション系、「おはよう」とかホウ・レン・ソウのホウ・レンだけですね。「よろしく」とか「今日出勤しました」みたいな、そういった日々のコミュニケーションはslackとメールを使ってやりとりをします。

一番重要なのがやっぱり、真ん中にある業務フローですね。業務を司る部分のコミュニケーションというのが重要です。具体的に言うと、他部署の方に「これをやっといてね」というお願いをしたり、逆に依頼されたものがちゃんと返ってくるというような。

こういった双方向のチームでのやりとりというのが、業務フローと呼ばれるものです。我々は基本はslackを使っていたので、slackの中にGoogleスプレッドシート、これはExcelみたいなものですね。Excelみたいなものを貼り付けてやりとりをしておりました。

あとはいわゆる共有系のもの。向かって右側ですね。共有系のものもslackを使って、ファイル管理みたいな機能のGoogleドライブと呼ばれるものを使ってやりとりをしておりました。

ある程度探していく中で、「あ、ここだ」とオバケが潜んでいるところが、ある程度見えてきました。日々の「おはよう」みたいなものはぜんぜんslackでやりとりしてもらっても大丈夫なんですけど、やっぱり業務を司る部分は絶対に変えないといけない。ここにオバケがいるんだなとたどり着きました。

まずチャレンジしたのは業務の可視化

いきなりここでkintoneを入れて、結局失敗してしまいました。何をしたかと言うと、業務を可視化することです。よくみなさんも、今までのkintone hiveでもやられていたような業務の可視化を実践していきました。

向かって左側の、我々のお客さんになり得るところからお客さんになっていくプロセスにあたると。そこから、実際にホテルを運営するという、我々の既存のお客さんになっていくというところを図で表しています。矢印になっているのが関係する部署です。いわゆるコミュニケーションのラインですね。

これを図解していくと、危ないのがこの部署ごとのコミュニケーションが発生する、部署と業務が交わる部分の大量のオバケですね。先ほどの図で言うと、真ん中の緑の部分にオバケが大量にいました。

ここでkintoneをやってみました。ちょっと細かくて見づらいと思うんですけれども、一つひとつのアプリを見ていただくと、なんら大したことはないです。顧客管理をするアプリ、見積もりを依頼するアプリ、受注したあとのお客さんの管理のアプリ、あとはそこからお客さんになったあとのクレーム管理。

こんなものはkintoneのサンプルアプリでもあるようなものなんですが、重要なのは一つひとつのアプリを独立して動かすわけではなくて。ちゃんとした一連の流れ、業務の流れに沿ってアプリを作っていくことでオバケを解決していく。そういったものを我々は作っていきました。

事例に見るkintoneの導入実績

その中で今日は、こういうやり方をしてるんだよ、というのを少しだけ持ってきました。これはもともとslackとスプレッドシート、Excelでやっていたいわゆる業務フローのものです。「こういうお客さんがいて、こういう物件を持っているので、どれくらい収益が出るかを査定してください」という依頼のフローなんですけれども。

20名の会社で、kintoneを使ったことがある人がぜんぜんいなかったため、初めて導入するツールとしてできるだけきれいに生成しました。ここでプラグインを利用しました。smart balloonと呼ばれるプラグインを採用させていただいて、タブを切って、関係部署の方にすごくわかりやすく設計していくと。

下側にあるのがいわゆる依頼系ですね。チェックボックスを入れて、チェックが入ったら他部署の方にメール通知が行く。そういった業務のフローを作っていく。これをkintoneで実装していきました。

もう1つがナレッジ共有の部分なんですが、kintoneを使われている方はおそらくこの会場に多数いらっしゃると思うんですけれども、トップ画面が標準だとすごくチープなんですよね。かっこ悪いんですよ(笑)。サイボウズさんがいる前であれなんですけれども。

なんとかうまくかっこよくできないかなと思って、たぶん使われてる方はけっこういると思うんですけれども、キンスキさんのサイトを見て「あ、これだ!」と思って、トップ画面にポンポンっと、ちゃんとポータルっぽくきれいに作らせていただきました。

これを運用開始後にやった結果、けっこう好評でして。社内にslack以外にもいろいろ使っているツールがあるので、トップ画面に配置することによってkintoneに必ず入ってくる、という仕組みを作ることができました。

日常にkintoneが入ってこなければ、結局は使ってもらえない

こういったさまざまな工夫をしながら、「社長!」と。まぁ、真一さんって呼んでるんですけど。「真一さん、kintoneで作りました。どうですか!?」と聞くとですね、「めっちゃCool」って。シンガポール訛りなので「めっちゃCoolだね」みたいなことを言うんですけど(笑)。やったーって思いました。

でも、結局ぜんぜん見てないんですよね。「見てないんかい!」って突っ込みたくなったんですけど(笑)。これもサイボウズさんにはちょっと悪いんですけど、通知がちょっとわかりづらいんですよね。いろんな手段はあるんですけど、kintoneにデータを入れてもなかなか通知を見てくれないということがありました。

我々社内も「どうやったら見てくれるのか」と思っていろいろ模索して、原因に突き当たりました。2つあります。うちはベンチャーなんですけど、ガラケーなんですよね。これ、実際に使ってるやつです(笑)。なのでアプリが使えないっていう問題です。

もう1つがこっちです。こっち側のほうが重要なんですけど、日々の動線にkintoneが入っていなくて、それを見るという習慣がつかない。これ、けっこう多いと思うんですよね。kintoneを導入した初期にある「kintoneぜんぜん見てくれないんですけど、どうしたらいいですか?」っていう悩みに、私もぶち当たったようなかたちです。

言葉を変えると「どうやったら見てくれるのかな?」と思ってですね。あ、あったと。slackは毎日見てるので、slackと組み合わせられないかなと思って、ちょっと試行錯誤しました。

そこで行き当たったのがkintoneとslackを組み合わせればなんかできるんじゃないかなぁということです。共存運用させるためにカスタマイズできないかなと思ってやり始めました。

kintoneの通知をslackに飛ばす仕組み

そこにお金をかけずにできることがあったので、slack側にですね……ちょっとslackの営業みたいになってるんですけど(笑)。

slack側に標準のアプリがあってメール通知させるという機能があります。そこにkintoneに通知用のメールアドレスを発行して、今kintoneを管理してくれている人事の方もいらっしゃるんですけど、毎回個人用のslackのkintoneの通知チャンネルを作っていて。

そこに、kintoneからなにか通知がくると、すべてslackにも通知がくるような設計にする。slackを見ていればkintoneの通知がくるという、日常の動線に入る設計ができたので、これで格段に利用率が上がっていきました。

社長もしっかりこれを見ていて、「kintoneめちゃめちゃ良くなった」と。そもそもkintoneはやっぱりいいので、それを見る習慣ができて「すごく良くなったよ。Niceだよ」って言ってくれました。

よっしゃーと思ったんですけど、5月26日のslackで、夜の1時35分に社長がまたslackにポーンとコメントするんですね。しかも詰められてます(笑)。怒ってるんですよね。いや、ぜんぜん寝てくれてないなと。

結果、寝てくれてないということです。創業4年目なので社長が寝ないというのは今のご時世、言葉はあれなんですけど当たり前と言えば当たり前ですし。仕事がめちゃめちゃ好きなので、別に寝る間を惜しんで仕事をするというのはぜんぜん苦じゃないので仕事をするということをやってます。

オバケとは、大量の情報にアクセスしづらい状況のことだった

ちょっとまとめに入っていきます。そもそもオバケは何だったんだろうなという話なんですけど、我々の社内で起こっていたのが「ベンチャーだから」「スタートアップだから」ということではなくて、情報が大量にある状態で、その情報にアクセスしづらかった。

さらに本末転倒なのが、業務フローの設計ができていないので、(情報が)あっちゃこっちゃにある状態で社長が寝れない。社長が寝れないというだけではなくて、実はこれ、社員も私もすごく課題に感じていました。

「あの情報どこにあるんですか?」と聞いたときに、「Googleスプレッドシートのあそこにあると思いますよ?」と言われても探せないんですよね。あるのはあるんだけど、探せない。

しかも誰に依頼をしていいのかわからない情報だったので、これは会社として建設的ではないということで、しっかりと業務フローを作って、最たるツールを作って業務のプロセスを回していきましょうというかたちにしていった。これがオバケの正体で、しかも自分が解決したかった、倒したかった相手だったんだなということに気づいたというお話です。

こういう話をしておいて何なんですけど、そもそも私たちがどういう想いで仕事をやっているかというと、社長は眠らないというわけではなくて、眠っていられないくらい、社会を変えたいんだと。

29歳でベンチャーを立ち上げて、民泊運営という事業をやっているので、やっぱりニッチです。それでもなぜやりたいかのかというと、社会を変えたいんですね。

私たちはスクイーズ(SQUEEZE)という会社なんですけれども、最近はムギュッとした人形みたいなのがスクイーズだって先行しちゃってるんですけど、そもそもの意味は「ギュッと詰まった」です。私たちは価値の詰まった社会を作っていきたい。それがいわゆる民泊というアプローチになってます。

日本をこれから価値のある社会にしていきたいという想いで、私たちも社長も一緒に社会課題を変えていきたい。日本をよりよいものに変えていきたいと思っております。その礎にkintoneが中心にあるようなかたちでこれからも運営していきたいと思っております。この話が少しでもみなさんのお役に立てればと思います。以上となります。本日はご清聴ありがとうございました。

(会場拍手)