システム初心者でも実現できた! 申込書の電子契約システムの導入

加藤亜美氏:ディップ株式会社の加藤と申します。私からは「システム初心者でも実現できた! 申込書の電子契約システムの導入」についてお話をさせていただきます。よろしくお願いいたします。

私は2008年にディップ株式会社へ営業として入社しました。営業の頃は「顧客対応はマメだけど社内処理は雑」という、営業の典型的なタイプでした。現在はスタッフ職について4年も経っていますので、なんとか仕事をスムーズに進められています。

現在は、経営管理本部業務管理部に所属しています。業務内容としては、売上処理における全社の社内効率化や改善を行っています。

私生活では1児の母でもあります。5歳の息子がとてもかわいい時期です。仕事と家庭の両立を行うためにも、毎日定時に帰宅しています。

ディップ株式会社のご紹介をさせていただきます。

六本木グランドタワーというビルに本社を構えておりまして、設立はサイボウズさんと同じ1997年です。前期に設立20周年を迎えました。

事業内容はわからない方が多いかと思いますので、まずはCMをご覧ください。

(CM映像が流れる)

ご覧になった方はいらっしゃいますでしょうか? CMにもあるように、「バイトル」を中心とした広告事業と、「ナースではたらこ」という看護師の紹介サービス、それ以外に「LIMEX」という新素材販売事業を行っています。

初めて聞いた方が多いと思いますが、水と木を使わない、紙・プラスチックの代替となる新素材を「LIMEX」と呼んでおりまして、そちらの販売事業を行っております。

(会場の)入り口で配っていたファイルと中に入っている印刷物もLIMEX製の製品で作っています。

触っていただくとわかると思いますが、LIMEX製の素材は触り心地がつるつるしております。それ以外に、破ろうとしても破れないというところが特徴です。

LIMEX製の名刺であれば、100枚で約10リットルの水を守ることができます。ディップでは約1,800名の社員が全員LIMEX製の名刺を使っています。

こちらを水に換算にすると、1万8,000リットルの水を削減できるため、地球環境にもかなり配慮した素材になっています。本日、LIMEXの営業担当がおりますので、よろしければぜひお声がけください。

3事業の成長と課題

先ほどの3つの事業をもとに、会社の成長と課題についてお話しさせていただきます。

ディップの成長推移です。2014年の東証一部上場後、売上は3倍の380億、社員数は2倍の1,800名と、売上・社員ともに右肩上がりに成長しております。

拠点数も33ヶ所。北は北海道から南は九州までと幅広く拠点を構えています。

この売上・社員数の増加、拠点数の拡大とともに、私たちは申込書の処理に追われ、書類に埋もれ始めました。

少し大げさな言い方ですが、私も3年前、申込書の処理をしていました。その頃はもう月の後半になると、だんだん目の下にクマができるほど処理に追われていたので、今のスタッフのことを考えると想像もしたくないぐらい辛いんじゃないかと思っています。

現状の見直しと1つの決断

そこで、現状の見直しと1つの決断を行います。見直しとしては、本来の業務を「営業」「クライアント」「スタッフ」の3つの観点で分けました。

まず営業であれば、アポイントやコール、訪問という通常の営業活動を想像をされると思うのですが、ディップに関しては求人広告を営業が作っています。なので、動画撮影や原稿作成も営業が担当しています。

プラスアルファで申込書回収業務があるため、業務がかなり多岐にわたっております。なので、ディップの営業はプランの提案だけではないということです。

次にクライアントです。(クライアントは)そもそも人不足でディップにご用命いただきます。なので、求職者の募集として声をかけていただいて、ディップの申込み手続き後、掲載となります。その後求職者対応となるとかなり忙しい状況ではあると思います。

人不足なので、従来の業務にも追われて、また本来の業務として既存スタッフのフォローもあります。掲載をし出したら求職者の対応と、オーナーさんは本当に忙しいので、申込み手続きに関しては付随業務だということです。

スタッフに関しては、申込書回収、売上処理、帳票保管というところ以外にも、営業の受注・売上集計、クライアントフォロー、帳票管理がかなり大変でした。

それ以外に、ディップの営業に関しては、昔の私と同様に社内処理が本当に雑です。なので、内勤が営業に対して「早く回収してください」と回収の催促をしております。そこに業務負荷がかかっているのですが、通常業務ではありません。

この3つの観点をもとに、紙の出力、FAXからの返送、保管コストが無駄だと考えました。申込書回収業務の負荷を軽減する必要があるということです。

脱「紙」管理を決断、電子契約の導入へ

そこで、ディップは脱「紙」管理の必要性を感じ、手法として「電子契約の導入」という大きな決断をいたしました。

では、どういったものを導入したのか。導入までのポイント・効果についてご説明いたします。

ディップのシステム導入における絶対条件はこちらの3つです。

1つ目は、最短導入。ベンダー選定にはかなり苦労しました。セキュリティ、システムの柔軟性、金額の3つをクリアするベンダーさんはいらっしゃっても、ディップで一番重要視する「リリースまでの対応スピード」をクリアするベンダーさんがいらっしゃいませんでした。なので、最後の願いをかけて出会ったのがkintoneです。

アポイントをいただいて、ディップにご来社いただいたのですが、私たちの希望を話すと、ご担当の方が「ああ、はいはい。わかります」と軽いご返答をされました。

今だからこそ言うのですが、ベンダー選定に苦労していたので、「本当に大丈夫なのか?」と心配でした。しかしながら、次にお会いした時には、まさにディップにドンピシャなプランをご提案いただきました。

結局のところ、要望を30分ほどで理解していただき、ベンダー選定に2ヶ月もかかっていたのにもかかわらず、システム導入が1ヶ月というかたちで、本当にトントン拍子で進んでいきました。

今回のシステム導入にあたっては、「営業負荷の軽減」と「操作の簡易性」の2点をかなり注視してシステムの構築を行い、フィジビリリリースしたのですが、その効果がどんどん社内の口コミで広がりました。

いろんな部署から「早くやらせてくれ」と声がけをいただき、全国リリースを大幅に前倒しできました。

導入前の想定としては、導入から6ヶ月で利用率65パーセントを想定していました。

この数値は、全社の事前調査で紙でしか申込み手続きすることができない企業が35パーセントあったため、電子契約可能企業が65パーセントだというスケジュールを想定したものとなります。

しかしながら、全国リリースの初月で53パーセントとかなり高く、翌月は66.2パーセントと1ヶ月で目標をクリアしてしまい、ちょっと驚いたというところが素直な感想です。現在は、利用率90パーセントを目指しているところです。

導入に伴う負荷軽減の取り組み

では、口コミで拡がったシステムがどのようなものかをご説明させていただきます。

営業のシステムの変更点です。今、(スライド)左側に表示されている部分の変更点は、押す箇所の変更のみです。

紙で出力する際は、もともと設置していた「発行」というボタンから、電子契約をする際は、「Web申し込み」というボタンを押せばクライアントに自動でメールが飛び、クライアントの手続きが完了すると完了通知が営業にも自動で届きます。

回収状況に関しては、既存の見え方が変わってしまうと営業がパニックを起こしてしまうので、電子上で手続きしているかどうかに関しては、赤字で表示するという変更のみにしました。変更点は1箇所のみで、メールの作成も削減するといったように、営業の工数を徹底的に省きました。

次に、クライアントの手続きについてです。

先ほど、営業が「Web申し込み」というボタンを押すとクライアントにメールが飛ぶとお話ししましたが、そのメールの中にURLが入っています。

そのURLをクリックしていただくと、手続き画面になります。今回は資料の関係上表示しておりませんが、URLを開くと上のほうに企業情報、商品情報などの契約内容の記載があります。そちらに問題がなければ下のほうにスクロールして、メールアドレスの入力をしていただき、送信を押していただくと確定します。

資料の表示上は3ステップですが、実際は2ステップです。なぜここまで簡易にしたかというと、幅広いお客様に出会う機会がある求人広告事業では、どの企業様も簡単に操作できるような環境を用意しなければいけないということで、操作の簡易性を追求いたしました。

操作の簡易性をどのようにチェックしたかというと、ディップの営業には、システムが苦手な者がたくさんいます。なので、社内からPCが苦手な人を複数名ピックアップして「使ってみて」と説明せずにやらせてみました。

運用面についてご説明いたします。まず、説明会を実施しました。どのように実施したかというと、朝礼or夕礼後の機能説明を15分程度、営業の邪魔にならないように実施しました。

説明会も全員参加できるわけではないので、リリース後、営業のそばに座っていつでも質問しやすいような環境を作りました。でも正直、質問に来る人はいませんでした。寂しかったです(笑)。

だんだん不安になってきて「なんで質問してくれないの?」と仲の良い営業に声をかけに行ったのですが、その営業は「簡単すぎて質問するがことないですよ。逆に何を質問するんですか?」と言ってきました。

「じゃあこの操作の説明ってそもそも必要?」という話に変わったところ、「いらないんじゃない?」という話をもとに、説明会はフィジビリ導入を行った部署にしか実施していません。

全国リリースした時には、2週間継続して、毎日Q&A表を配信しました。どのようにやったかというと、営業から1回でも質問・要望が合ったものに関しては、整理して一覧化し、毎日速報として配信しました。

その際に、質問だけではなくて、「こんな機能があったら導入するのに」というようなストレスもあるので、そこも整理して「いつまでには導入しよう」とか「検討してます」といった要望も記載しました。

実際の導入効果

実際の効果はどうだったのかというと、クライアントには、「既存の業務以外にも面接にも専念することができました」と言われました。

それ以外にも、クライアントの実際の声として、ディップの申込書は「オンライン情報サービス申込書」という名称なのですが、(名称は)「オンライン」なのに「紙」で渡していたんですね。

「アナログじゃないか」とずっと言われていたのですが、Web申込みを導入するにあたって「やっとインターネット広告事業っぽくなってきたね」というお話もいただいて、営業と私たちのなかでちょっとした笑い話でもありました。

営業部に関しては、回収期間を2週間短縮することができました。工数としても月間で約1万5,000時間削減でき、その分営業活動に専念することができました。なので、受注率もアップしたという声もいただいております。

クライアントにはそもそも紙で出力していたので、回収してきた書類をディップの内勤が内容に間違いがないか細かくチェックする時間として月に800時間ありました。その時間をまるまるカットすることができ、かつ紙で出力していた分の保管コストも年間175万円削減することができました。

こちらができたのも、柔軟性のあるkintoneだからだと思っています。そのkintoneに頼りながら、私たちは現場との会話を繰り返し行って、ユーザビリティを追求しました。

冒頭でもお伝えしましたが、私は今回初めてのシステム導入になります。初めてなので、正直「やってみろ」と上司から言われた時に、「右も左もわからない」というかたちですごい不安だったのですが、要望を伝えてから形が出てきたら、だんだん楽しくなってきてしまいました。

「背景の色は何にしたらいいかな? ディップカラーのオレンジかな」とか「文字の色は青がいいかな」とか、「文字の配置はここにあったほうが見やすいんじゃないか?」といったワクワク感に駆られて、どんどん進めることができました。

全社で約1万5,000件の申込書件数をWeb化するということはかなり大事ではあります。これを私ともう1名ですべて対応することができたのもkintoneだからだと思っています。

自己紹介でもお話ししたように、私は1児の母です。このシステムを導入するからといって、家のご飯を作れないとか、保育園のお迎えに行けないとか、そのような著しい家庭への影響も一切なく、むしろ仕事と家庭の両立を楽しくやらせていただきました。

私は今回のケースを経て、システム導入は楽しいものでしかないと感じ、ディップとしても今回の導入でかなり味をしめています。

今回は申込書の電子化でしたが、その先の「電子請求」というところを先に見据えております。そちらも今後、kintoneさんにお願いさせていただき、ディップの改善をお手伝いいただければと思っています。

ご清聴ありがとうございました。