インフラを影で支える神輝興産

吉田可也氏(以下、吉田):「ドボク業界のイノベーション」と題しまして、有限会社神輝興産の吉田が発表させていただきます。

はじめに自身の紹介をしたいと思います。吉田可也と申します。こんにちは。西宮出身の35歳で、学生時代から数学に興味があり、大学時代は情報科学を専攻していました。

こう見えて3歳と5歳の娘がいる主婦です。写真にありますように冬はスノーボードに行ったり、夏は海や川、今のシーズンですと隔週でキャンプに行ったりと超アウトドアな休日を過ごしています。

最近のマイブームはエクストリーム出社です。会社が六甲山に近いので、3日前くらいも六甲山に登ってから会社に出社しました。

続きまして職歴について少しお話させていただきます。大学卒業後は一旦カーナビの組み込みソフトウェア会社に就職しておりました。そちらで2度の育児休職・復職を経ましたが、なかなか育児をしながらバリバリ働けるような環境ではなかったので、現在の会社に転職いたしました。

弊社では時短勤務はもちろん、在宅勤務、またコアタイムに縛られない超フレックスな勤務など、育児と両立しながらキャリアアップできる環境が整っています。

こちらの写真は、のちほど詳しく説明しますが仕事でロープワークを使うことがあって、その特訓風景です。めちゃめちゃ大変でした。

「橋梁点検」とは何か?

続きまして会社の説明をさせていただきます。弊社は有限会社神輝興産と申しまして、橋梁点検の会社です。

「橋梁点検」という言葉はあまり聞きなれないと思いますので、ここで少し橋梁と点検についてご説明させていただきます。

みなさん、全国の橋梁数はご存知でしょうか? 約70万橋もあるんです。そのほとんどが高度経済成長期に建てられたもので、現在は18パーセント、10年後は43パーセント、20年後は67パーセントも共用開始後から50年が経過しようとしています。

ここでいくつか損傷の例をご紹介したいと思います。

これはコンクリートが剥がれ落ちてしまっているもの。真ん中のものは、そのコンクリートからさらに中の鉄筋が見えてしまっているものです。1番右にあるものはスチールのひび割れです。

またコンクリートが抜け落ちてしまったり、コンクリートがひび割れてしまうこともあります。

これらの損傷を放っておくと、橋が落ちてしまうなど甚大な被害をもたらすことがあります。

一方でこちらは京都にあります七条大橋という橋ですが、鴨川に架かる最も古い橋と言われています。

105歳になる現在でもこのように建てられた当時とほぼ変わりない姿を維持しています。

このようなレアなケースもありますが、ほとんどの橋梁について老朽化は明らかであり、弊社の行なっている点検業務は社会の資産を作り手としてではなく守り手として残していく、社会貢献性の高い仕事であると言えると思います。

ここでいくつか点検方法についてもご紹介したいと思います。

点検は近接目視が基本なのでさまざまな方法で点検箇所にアプローチするんですけれども、基本はこのように徒歩で行います。ですが、はしごを使ったり、高所作業車と言われる特殊作業車やピアフロートや移動式足場など特殊装置を使うこともあります。

こちらは自己紹介でも少しお話させていただいたロープを使った点検です。

このロープアクセスという技術は非常に高度な技術を要しますが、特殊車両や特殊装置では困難な箇所の点検において非常に有効な手段であると言えます。 

社会貢献活動に取り組むため、kintoneを導入

点検と橋梁について少しご説明させていただいたところで、弊社の紹介に戻らせていただきます。点検業界は高齢化傾向にありますが、弊社は業界ではめずらしい平均年齢28歳の若手が活躍する会社です。

また神戸に事務所を構えて、神戸を愛そう、神戸を盛り立てようということで、神戸を中心にさまざまな活動でスタッフの人間力育成にも積極的に取り組んでいます。

このような活動について、弊社の行なっている点検業務の社会貢献性と神戸に対する想いから、地域のためになにかできることがしたいとなったんですけど、点検することが地域貢献なのか? もっと地域に恩返しできる貢献はできないのか? 業務に追われてなかなか実現できないね。それは仕事のやり方に問題があるんじゃないかということで、まずは自社の仕事のやり方について見直していこうということになりました。

まず1つ目の問題点ですが、点検スタッフと事務スタッフが働く場所や時間が異なって顔を合わさないことが多く、なかなかコミュニケーションが取れずに、業務が円滑に引き継ぎできていないことが挙げられました。

2つ目は、点検報告書作成方法がアナログということで、点検スタッフが点検結果を紙に手書きでメモして、それを事務スタッフがPCに打ち直して報告書を作成するといった非効率な作業、かつ人為的ミスが多いことが挙げられました。

これら2つの問題を簡単に解決できるなにかいいツールはないかなと探したところ、「そうだ、kintoneがあった!」ということでkintoneにめぐり合いました。

スタッフ間のコミュニケーションをkintone化

まずスタッフ間のコミュニケーションを向上させるアプリを作りました。

働く場所や時間が異なっても交流したいということで、「リーダーシップって何やろう?」といったお題出題形式の掲示板アプリを作成しました。これは社員同士が自由に考えを交わす場として活用しています。

次に、ものの管理をシステム化したいということで、「今日の点検に必要な道具は何やろう?」と点検内容ごとに基本となる道具セットを提示してくれる携行品チェックアプリ。

「カナヅチとはしご、あとロープも持って行かな」というときは、持ち出されたものの状況の一元管理をしてくれる物品管理アプリ。

「あ、チョークがなくなりそう。補充せんと」といったときは、消耗品がなくなりそうなときに事務スタッフに必要な物品の購入依頼ができる購入依頼アプリなどを作成しました。

これらのアプリによってスタッフ同士をつなげました。

では、スタッフの管理は? ということで、直感的に認識できるお天気マークでコンディションを報告してもらっています。

このアプリはカスタマイズすることによって、このようにお天気マークを選ぶことで簡単にコンディションが入力できたり、見やすい遷移表を作成して、自身のコンディションの状態を確認することが簡単にできるようにしています。

報告書のクラウド化で効率UP&ミス削減

スタッフ同士のコミュニケーションが改善したところで、次の問題、点検報告書作成方法がアナログである、という問題について考えていきたいと思います。

通常点検は点検スタッフが点検結果を紙に手書きでメモし、それを事務スタッフが同じ内容を見て「何を書いてるのかな?」となんとなく推測しながらPCに打ち直して報告書を作成しています。

「でもこれって1度にやれたらめっちゃ効率的やないの?」「現場で簡単に入力できるツールがあったらすぐできそうやん?」ということで、「そうだ、kintoneがあったやん!」と、またkintoneを活用しました。

さらにkintoneを便利にカスタマイズできるプラグインを活用して、データ共有に欠かせないクラウドと連携しました。

まずkintone上で橋梁の規模や位置、設計情報などを盛り込んだ橋梁データベースを作成しておきます。点検に行ったとき写真を撮るんですが、その写真をリアルタイムでネットワーク経由でクラウドにアップロードします。

点検結果はタブレットPCでどんどん現地で入力していきますが、そのときクラウドにアップロードした写真と橋梁データベースから橋梁の情報を点検結果に紐付けて、現地で報告書を作成できるようになりました。

また、その報告書をクラウドにアップロードすることによって、離れた場所にいる事務スタッフに報告書のチェックや、写真やデータの整理など同時に作業ができるようになり、作業時間の短縮ができるようになりました。

さらに、点検スタッフが自らPCにデータ入力するので人為的ミスが減り、またクラウドの活用によって点検結果がデータ化されて即時共有されるので、別作業にそのまま転用できるなど大幅な作業時間短縮を図ることができるようになりました。

またデジタル化されているのでダブりのチェックが簡単にできるので、そういったチェックをしてくれる工程管理アプリや、GPSと連携した点検のマップアプリ、また先ほども少し登場した橋梁データベースアプリなど、kintone上で情報を一元管理することで業務の無駄を徹底的に省きました。

「地元は地元で守る」ために

では原点回帰です。「私たちにできる地域貢献って何やろう?」と考えたときに、kintoneで業務を効率化して、できた時間で本当にやりたかったことは橋梁をはじめとする地域のインフラを守ること。地域のインフラを守っていくためには地域を衰退させないこと。

それは人と地域のつながりでできるんじゃないかということで、地域の居場所作りを始めました。道具置き場を自分たちで改装して、地域の居場所として設営しました。

一般開放の社員食堂や地域大学とのコラボ、こちらは近所のお米屋さんですが、その道のプロを招いた食育セミナーなど、食を通じた地域交流の場としてこの春から少しずつ活用していっています。

食を通じた地域交流により地域内での顔の見える関係の構築は、必要なときに柔軟に連携できるネットワークを強化し、お年寄りから子供までライフステージに応じた人材力の活性化をすることで、橋も、街も、人も地域みんなで守っていくことが本当の地域貢献ではないかと弊社は考えました。

ここに「地元は地元で守る」という言葉をあげさせてもらっています。

その土地に住まう人々ですら地元をほったらかしにしていたら、どんなに歴史のある場所も時の流れとともに消えて行ってしまいます。

まず居場所を通じて地元を好きになってもらい、自分たちの好きな場所は自分たちで守れるようになってほしいという想いから、インフラの維持管理・補修について誰もが学べる環境の整備。またインフラ維持の専門資格設立にも弊社が携わらせていただきました。

またkintoneをはじめとするICTの導入も今後もっと活用していきたいと考えています。行政だけでなく市民も含めて、みんなで地域のインフラを守っていこうという意識が最も重要であると考え、まずは地元神戸を守っていけるように神戸に根ざして尽力していきます。ご静聴ありがとうございました。

(会場拍手)

神戸愛溢れるkintone活用

伊佐政隆氏(以下、伊佐):ありがとうございました。めっちゃ神戸愛ですね。

吉田:そうですね。

伊佐:もう神戸愛がすごいなと思って!

吉田:滲み出てます。

伊佐:本当に(笑)。わかりやすいですね。時間を作って、会社全体で神戸愛に投資するってことですよね。

吉田:そうですね。溺愛してます。

伊佐:今日はみなさん応援してくださっていますが、みんなやっぱり神戸愛ですか? あ、神戸愛ですね。すごいなぁ。

うちも大阪の所長に玉田という者がいるんですが、神戸愛が強くて。今日「朝一緒に大阪走りましょう」って言ったら、「いや、僕は神戸走るんでいいです」って言われて断られちゃったんですけどね(笑)。

kintoneの話に戻りますが、2度打ちをなくすというのはかなりポイントですか?

吉田:そうですね。先ほどのほかの発表者の方も言われていましたが、やはり紙ベースからデジタル化するところが大変で、kintoneは役に立っていますね。

伊佐:本当ですか。でも平均年齢が若いからというわけではないですが、比較的スムーズに使っていただいたんですか?

吉田:機械を過酷な現場に持っていくのが大変で、なかなか紙から抜け出せないところもあります。そこはもう少しいろいろなアプリを作ることで改善していきたいと思っています。

伊佐:まだ今はすべての業務がkintoneに移行できていないということですね。ですが報告書などはすでにkintoneに入れたらオッケー、みたいな感じになっていると。

吉田:そうですね。

伊佐:あと、天気予報マークを使ったスタッフの体調管理。これはすごく重要だと思います。とくに現場に行く方は、体調によって仕事のパフォーマンスが左右されるじゃないですか。

周りのメンバーの体調がわかれば助け合いもできるなと、見ていてすごく思いました。調子が悪いことを知っていれば、調子悪いということを前提にその日1日一緒に仕事ができて気遣いができます。それをみんなで共有し合えるって素敵な環境だなと思いました。

吉田:絶好調を押すのは私くらいしかいない(笑)。

伊佐:たぶん僕も毎日絶好調を押しちゃうかもしれないですね(笑)。

吉田:どうしても虹のマーク押してしまうんです(笑)。

伊佐:虹のマークが絶好調なんですね。めちゃくちゃいいですね。あれは今度うちも社内で試したいなと思いました。

それぞれのアプリをつなげていきたい

伊佐:2度打ちや体調管理など、すごくいいなと思ったんですが、ほかに気に入っている使い方はありますか?

吉田:さっき軽くしか紹介しませんでしたが、点検のマップアプリが、今は位置しか出ないのでもう少し情報を付加したいです。

伊佐:今日行くべき点検の場所が地図で見られるということですか?

吉田:その業務で受けたエリアのすべての場所が見れるのですが、まだ位置しか表示できないので、過去の情報などを情報を全部紐付けられたらいいなと思っています。

伊佐:それめちゃくちゃいいですね。今は位置が出てポチっと押したら、そこに報告書はけるんですか?

吉田:今はそこまではいってないですね。

伊佐:それももし現場の方から要望があったら良さそうですよね。地図を見て行く場所を確認して、行き終わったらもう1回地図からボタン押して報告するとか。あと、過去の履歴は確かにおっしゃる通りめちゃくちゃ良さそうですね。

吉田:そうですね。まだアプリがバラバラにあるので、つなげていけたらいいなと思います。

伊佐:いいですね。それでさらに時間を削ることができれば、さらに神戸に投資ができるという、いいサイクルがまた回っていきますので。今日は本当に素晴らしい発表をありがとうございました。

吉田:ありがとうございました。

(会場拍手)