裏方にスポットライトをあてたい

富樫憲之氏(以下、富樫):一緒にやらせていただいて、よく福井さんがおっしゃるのが「勝たせてあげたいんだよ」と。それはスタートアップも、一緒に担当している現場の日本郵便の方も、担当している本社の方もだと。

もちろん自分が(オープンイノベーションを)やりたいんでしょうけども、それを通じて、関わっている人たちの満足であったり、実現であったりですとか、「勝たせてあげたい」というようなところをちゃんと見ているというか。本当に自分のためだけにやろうとしているわけではないという。

福井崇博氏(以下、福井):フォローしてる(笑)。

残間光太朗氏(以下、残間):フォローを一緒に放り込んでいかないとまずい(笑)。

福井:でも、実際にプログラムでエンドロールを作ったんですけど。

残間:本当ですか!?

福井:本当です(笑)。本当に作ったんですよ(笑)。(作ってくれた)サムライ(インキュベート)の方が死にかけたんですけど。

(一同笑)

「こんな重いエンドロールだと思っていなかった」みたいな話があるんですけど。でも、なんかリーガルとか共通部門とか、特にオープンイノベーションでの新規取り組みはいろんな人が関わるじゃないですか。彼らって、ふだんはスポットライトを浴びないんですよね。

成功すれば新規事業担当が手柄を取っていって。もちろん、失敗すれば叩かれるのも新規事業なんですけど。今回のエンドロールでいくと、200人以上になったんですよね。そういったいろんな人たちの協力のおかげで、このプログラムとか1個1個の案件が成り立っているんだっていうのを伝えたくて。社長とかみんなが並んでる前でそれを見せたくって、その結果、サムライさんと一緒に死にそうになって作るっていう(笑)。

残間:すごーい(笑)。それはすごくいいですね。やっぱり、スポットライトがあたらないですからね。

実験できる場を持っているという強み

富樫:続きまして、やっと2つ目いきましょうか(笑)。次は光村さんからいきましょうか。「各社の強みをどうイノベーションに活用されたのか」について。

つまりみなさんの会社は、アセットをすごくたくさんお持ちだと思うんですけど、どれがスタートアップに合うのか、もしくは御社的にどれを出したいのか。「これは出してもいいけど、これは出さない方がいいな」とか。

それは会社の思惑であったり、「これはスタートアップに受けがいいです」とか、「一緒にやれそうだ」とか、いろんな視点があると思います。そこをどういうふうに判断されたかや、そこで活用されたものがもしあれば。

光村圭一郎氏(以下、光村):一応これも教科書的に答えると、いっぱい場を持ってること、となるんですよね。東京のいわゆる一等地と呼ばれるものって、だいたい三菱地所か三井不動産か住友不動産が持ってるという話になって。そういう場所を使って、なにか実験とかビジネスをやる時には、そもそも占有権限を持ってる我々が乗り気にならないとものが動きにくいという構図。

これをある種の既得権として活用していくのは、たぶん正しいことなんだろうなぁと思うんですよ。ただ、やっぱり大企業ってそんなに単純じゃないのは、そういう一番の強みというのは、得てして一番外に出したくないというか、一番保守的な本流の人間が握ってる話になるんで、だいたい動かないんですよ。

だから「場を使ってなにか実験しようぜ」「いや、その場の強みである安定的にオペレーションしている状態を壊すような物は入れられないよね」っていう、本業をやっている人たちの抵抗感は、なかなかそう容易には突破できないっていう事例がある。だから、実は場がいっぱいあるということは、僕は強みとは思っていない。どうせ動かないアセットだったら、ないものとして捉えた方がいいぐらいに思ってたりする。

もしくはそれを動かすためには、これぐらい強みとかメリットが見えるような強度のあるネタじゃないと持ち込めないだろうなというところがあるんで、単純に「(強みは)じゃあなんですか?」って聞かれたら、「場」って答えますけども、ただその場を使うためにも、それなりにロジックと事前整理が必要だよねってこともセットで語るべきなのかなと思っているんですよね。

世界で、そして地域間でつながっているネットワーク

光村:実際にはたぶん、そんなことよりもオペレーションに関する非定型的なノウハウとか知見とかが、けっこう効くような感じがしていて。やっぱり僕らって、建物を運営管理する中で、だいたいどういうところで人が転んでケガするかとかを知ってるわけですよ。

どういうふうにやれば、10年後に困らずにメンテナンスのコストを浮かせるかとか、これぐらい最初から清掃しておかないと、あとで大変なことになりますよね、といった、ある種の経験値があるわけですよね。

そういうことは、実は大企業が持っている蓄積が大きくって。しかも、歴史を積み重ねた大企業だからこそ、持ってるものは本当は大きいような気がしていて、それを活かしてやっていくのはあるかなと思いますよね。

富樫:なるほど。実際にスタートアップと一緒にやられた際に、とくに喜ばれたところとか、実際にそことアセットがうまく次に繋がったとかありますか?

光村:すごく雑な言い方をすると、三井不動産の知名度とかブランドとか信用力があれば、極論ではなにをやっても喜ぶんですよ。

富樫:確かに。

光村:こっちからすると別にどうでもいいようなことでも、やれば喜ぶんですよ。そういう意味では「なんでもやるんですよ」みたいなかたちで。なにか強みを提供してやるのは王道かもしれないけど、とりあえずなんでもやればいいんじゃないかと僕は思ってますけどね。

富樫:なるほど、了解しました。ありがとうございます。次は福井さん、強みをどうイノベーションに活用するか。どうでしょう。

福井:はい、教科書的に言うと。

(一同笑)

残間:なんか教科書と本音をあわせて言わなきゃいけない感じになってきましたね。

(一同笑)

福井:やっぱり日本郵便の強みって、2万4千の郵便局のネットワークを持っているところと、ラストワンマイルを持ちながら、世界までつながっている物流ネットワークを持っているところ。

あとは、もともと郵便局長って、140年以上前に地域の地主が私財を投げ打って郵便局を作ってくれたんですけど。やっぱり、地域の中でのキープレイヤーという歴史からの人的ネットワーク、地域内ネットワークと、地域間での局長同士のネットワークっていう3つのネットワークがあると思っています。

ベンチャーを掘り出したいという気概

福井:物流でいくと僕たちはチャレンジャーなので。宅配便の物数でいくと今3位ですし、どんどんアグレッシブにチャレンジして変えていかなきゃいけないっていう、そもそも土壌があるとは思っています。民営化して、この前で10年が経ったんですけど、やっぱり僕たちまだまだだというのは、社内でもみんなが思っていると思います。「変えていかなきゃいけない」という土壌があるのが、一番大きいかなって思います。

本音も似てるんですけど。本当にそう思っているんですけど、やっぱり人の部分でいくと、現場の人と本社の人の両方が強いなってすごい思うんですよね。プログラムとかでもいうと、テーマ担当をやってくれるミドルクラスは、基本的にはエース級に入ってもらってるんですけど。

元公務員なんで、めちゃめちゃ頭いいですし、物事をまとめる力とか、ロジカルに考える力はめちゃめちゃあるなと思っていて。やっぱり公務員って、もともと「国のために」って思ってる人がすごく多いので、その辺のマインドセットやスキルセットの部分は、独自性があるのかなとは思ってます。

もう1つ現場の人でいくと、この前のプログラムとか象徴的だったんですけど、Demo Dayに来てくれた局長が、MAMORIOに協力してもらった東京中央郵便局の局長なんですけど、次の日からMAMORIOのプロジェクトにすごく共感してくれて、自発的にJPタワー内で宣伝して歩き回ってくれてるんですよ。

一同:へぇー!

福井:やっぱりそういう、「自分がこの会社を」とか「この街を」みたいな気概がある人がすごく多いなとは思っています。それが本音ではケイパビリティとして蓄積されていってるのかなというのがあるので。やっぱりうちならではの強みでいくと、一番は人なのかなと思ってます。

経緯も把握した上で、情熱を持って進められる人は貴重

富樫:じゃあ次は残間さん、どうでしょうか(強みをどうイノベーションに活用するか)。

残間:じゃあ私も教科書的に。

(一同笑)

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