不登校本のクラウドファンディングは「正直悩んだ」

今井紀明氏(以下、今井):もうそろそろ時間だと思うので。クラウドファンディングでなにか言いたいことがあれば。

小幡和輝氏(以下、小幡):クラウドファンディングで言いたいこと。まずは、あと3時間です。

今井:3時間……、終わるまでね。

小幡:はい、終わるまであと3時間ですが。正直、やるかどうか悩んだんです。

やってみたら、意外と教育関係の人からも賛同を得られたのですが。でも、教育関係の人からは批判意見が多いんじゃないかと正直なところ思っていました。ある種、自分たちの仕事を否定されることにつながるので。学校は行かなくてもいいですと、大きく言っているので。

実際にはそうした批判意見もTwitterなどで届くんですが、いろいろな人に応援をしていただいて、すごくありがたかったと思っています。

このリターンの中に、実は「僕が本を持って会いに行く」というものがあります。それを入れてくれた方が大人で「私の息子が、あなたと会うのを楽しみにしています」というような。 今度会うのが楽しみなんですが。いろいろな「ああ、良いな、うれしいな」と思うことが本当にたくさんあって、本当にやってよかったなと思っています。

今井:いいじゃないですか。

小幡:あと、3時間なのでラストスパートがんばろうという感じです(笑)。

「こんな人生の選択肢もあるよ」の1つになりたい

今井:ここに来た人は、だいたい応援してくれているような気がするけどな。

小幡:あはは。でもあの……(批判は)本当にありますよ、ちょこちょこ批判的なメッセージも。結局、本質的に突き詰めると「義務教育だから行けよ」という批判なんですよね。

中川和彦氏(以下、中川):そうなんや。

小幡:そこはでも、僕もわかってはいるんです。今の日本の法律というか仕組み上は、(学校へ)行くのが前提です。でも僕は行っていない。行っていなくても、今は楽しい。

中川:うん。

小幡:「こういう人生の選択肢もあるよ」っていう。

今井:選択の1つだよね。

小幡:今日はいろいろな話があるということが出ましたが、不登校といっても、本当にいろんなパターンがあります。

僕は、いじめられたこともあるにはありますが、それが大きな原因ではないんですね。人によっては、障害を持っている、精神的に鬱になっちゃっているなど、いろいろなパターンがあります。そのすべてに当てはまるわけじゃないと思います。

しかも、僕がお話しした「学校に行かないとお金がかかる」「親の負担も大きくなる」などで、それをそもそも受け入れられない家庭もあるだろうと思います。

僕の書いた本の内容や、僕のやったことが、すべての子に当てはまるかというとそうではないと思っています。あくまで選択肢の1つとして、すべてができなくても、一部でもいいから僕の中の体験の中の「この部分は当てはまるな」「できるな」という1つの選択肢、もしくはサンプルになればいいというか。「こういうのもあるよ」というものになったらいいと思います。

今井:素晴らしい。

卒業していない人を「ダメな人」とさせない社会に

中川:先ほど話していた、適応……。

小幡:適応指導教室。

中川:適応なんとかというところは学校ではないんだね?

小幡:一応、行くと出席にはなります。

中川:あ、出席になるんだ。

小幡:自治体が公的にやっているので。NPOなどが入って行うフリースクールというものもあるんですが、それは民間なので出席にはならない。でも適応指導教室は、出席になる。確か、時間が最低何時間行かなきゃいけないみたいな、ある程度の学校的要素があると思うのですが。

中川:あーなるほどね。学校がおもしろいようになったほうがいいかなというのもちょっとあるし、学校を出ていない人を「この人はダメな人ですよ」とならないようにもしていけばいいと思うね。

今井:そうした社会になっていったらといいと思いますね、本当に。先生方もすごくいろいろな苦労をされている方も多いと思う。悩みながらやっている方が、僕は大半だと思うんです。

特に若手の先生はすごくそのように思ってくれているので。選択肢の1つとしてあの本を提供して、そしてなにかが広まっていくようになっていけばすごくいいと思いますよね。

中川:すぐには解決しないことだけれども、僕はこれをきっかけに知ったこと、今日の話を聞いて「あー、こんなこともあるんだ」と知ったこともあるので。まずみんながきっかけになる。そもそも僕みたいな(学校事情を知らない)人がいっぱいいると思うので。なにもそういうことを知らない人に対して「こんなことが起こっているのか」を可視化する、知ってもらうことは大事だなと、今日は思ったけどね。

今井:ぜひ、応援してあげてください。あと最後、3時間くらいあると思うので。僕もクラウドファンディングで応援させてもらったのですが、ぜひぜひこの時間に、会っていただいたりなどしてもらえたらと思っています。

オーダーメイド式な教育はすべての子どもに等しくない?

中川:もうトークは一応、終わっていこうかな。なにかまた「聞いておきたい」という人はいますか?

小幡:僕はまだ、時間はぜんぜん大丈夫ですよ。

今井:これを最後の質問にしましょうか、たぶん……時間的に。

小幡:あとは、僕はここにいるので、なにかあったら聞いてください。

今井:最後の質問です。

質問者6:学生をしています。オーダーメイド式な教育がもっと必要である、という話があったと思います。そうしたものを導入するとなると、個人の選択に委ねるようなものが多くなるかと思います。そうなると、階層が高い子どもには有利ですが、そうじゃない階層が低い子どもはなかなかその恩恵が受けられないのではないかと思っています。

例えば、アメリカの調査で、インターネットがこれからの教育を変えていくのではないかという話があると思いますが、それを有効に使っているのは階層が高い子どもたちです。

中川:階層って?

小幡:階層って、収入ということですよね?

質問者6:(親の)収入、学歴、職業などもあるのですが。階層が高い子どもは勉強に使うのですが、階層が低い子どもはYouTubeばかり見ているという、そうした調査があります。僕はオーダーメイド式の教育を導入したら階層間格差が広がるのではないかと思うのですが、そのあたりについてはどのように考えますか。

小幡:そうですね。難しいな。最終理想形でいうと、オーダーメイドをやりながら、教育というのは未来への投資なので、ある程度、行政がお金を出しながらやるというものです。

とはいえ、どちらかというと価値観の方が大事だと思っています。先生や周りなどがもう少し多様性を受け入れるようになるというか。そもそも今の価値観がまず、学校に来ることが正しく、来ない子は間違っているから適応させるために適応指導教室がある。そういう現状じゃないですか。

それがもう少しなめらかになっていって、こういう選択も、こういう選択も、こういう選択もある……というように、もう少し周りの価値観として「学校に行かない」という選択もあるよね、くらいに認めてもらうだけでも楽になると思っています。それにはあまりお金がかからないじゃないですか。まず、必要なのはそこです。

あとはそもそも前提として、もう少しオーダーメイドにしたいということ。一人ひとりが選択的な教育ができるような部分を……そこは政策問題でもあると思うのですが。お金のかからないカタチでできるというところ。

教育機関の変わり目の段階

今井:もう1つ言うと、先ほどのオーダーメイド教育は実質的にまだ実験段階です。現状、使っているのが富裕層だけであるという話なだけで、これから実験的にアメリカもそうですが、他の学校教育にも広げたいというところで動いているのですね。

まだそこに関してわかりませんが、ただ習熟度別にやっていくことで、さらにそれを公立校から広げていくことは教育的にはいいのかもしれない、ということを実験的にやっている感じですね。だから、結論的にはまだわからないのではないかと思っています。

質問者6:僕の問いは、そうした問題がある中で、みなさんはどう考えているのかということを聞ききたいです。

今井:あ、なるほど。たぶん……僕から言っていい? そこでいうと、僕はおもしろい質問だなと思っています。

僕がいつも思っているのは、とにかく今は試す段階だと。例えば、N高校さんです。わかります? みなさん。N高校を知っている方、どのくらいいます? 

(会場反応なし)

あ、ほとんど知らないんだ。通信制高校で、角川ドワンゴがやっているインターネットの学校があるんですよ。

ここは今、1年間で4,500人の生徒が集まって、ほとんど学校に通わずに単位が取れる。通信制高校というのは、もともとそういう仕組みなので。そこもかなり実験的だと思うんですね。インターネットだけで勉強できる。

そこで不登校や高校中退の子たちがどういった影響があって卒業していくのか、まだまだトライな段階だと思っています。そうしたものを僕らの世代で作っていくことが、今の現状では必要なのではないかと思っているんです。

仮にそれがうまくいったときに、行政にそれを提案して公立高校でもうまくいくようになるのであれば、うまく取り入れていくのが重要。今は変わり目の段階だと思っているので、そうしたところが重要だと個人的に思っています。

小幡:確かに、N高校は1つの実験ですね。

でも僕はすごく期待しているし、すげえなぁと思っています。「さすがドワンゴ!」という感じです。あれをニュースで見た瞬間「うわぁ、すげえ!」と思いました。

新たな通信制高校「N高」の可能性

小幡:実はあの社長の川上(量生)さんに、Facebookメッセージを送ったんです。「なんとか関わりたいです」といったような(笑)。一応、返信は返ってきたんですが、僕自身が和歌山にいるので、なかなか関われるようにはならなかったですが。

これは本当に、めちゃくちゃいいなぁと思っています。本当になにか、これが1つの成功事例というか……選択肢ですよね。

まだ卒業生が出ていませんよね? 今、2年生かな、3年生。

今井:卒業生は一応出てる。初年度から入ってる卒業生は出ました。

小幡:なるほど。

というような感じで、これからどうなるかはわかりませんが、でもすごくおもしろい取り組みだと思いますね。通信だから学費もそんなに高くない……普通より高いのかな。まあ許容範囲の金額かなと思っています。もしかしたら、N高校がその1つの答えなのかもしれない。

本当にいろいろな取り組みをしているおもしろい学校なので、ぜひみなさん一度調べてみてもらえたらうれしいです。

中川:それでいいですか?

質問者6:はい。

中川:いろいろと話は尽きないことだと思いますが、ここでいったん終了させていただきます。今日は本当に長時間ね、小幡くん、今井さん、ありがとうございました。

今井:僕はあの……彼のサポートですので。

小幡:あはは。本当にありがとうございました。

(会場拍手)